北海道の交通関係

ジェイ・アール北海道バスの札幌周辺営業所再編と「お人好し」

2021/10/11

ジェイ・アール北海道バスは国鉄の自動車営業部が分割民営化で1987年にJR北海道に移管、そしてその後2000年に分社化されたものです。

国鉄時代の「国鉄バス」は鉄道予定線の先行として、また、代行や短絡線、そして鉄道の補完などを目的に運行されており、北海道では小樽-札幌・札幌-江別・札幌-北広島・長沼など札幌周辺のほか、鉄道の日高線と広尾線を接続する日勝線、札沼線の新十津川以北の廃止区間を代替した石狩線、また、伊達、美瑛、厚岸などにも営業所を持っていました。

民営化後はJR北海道の自動車事業部として引き継がれ、その後も深名線の代替バスを1995年から運行、伊達、厚岸の各営業所を廃止しています。

2000年にはJR北海道から分離独立しジェイ・アール北海道バスとするものの、その後の札幌市営バスからの路線移管を前に岩見沢・滝川の営業所を廃止しています。
現在の営業所は
・小樽営業所
・手稲営業所(旧札幌営業所)
・琴似営業所(旧札幌市交通局琴似営業所)
・札幌営業所(札幌-苗穂間高架下・旧札幌中央営業所)
・厚別営業所
・長沼営業所
・様似営業所
・深川営業所
となっています。車両数は424両で、うち路線車は392両となっています。なお、昨年JR北海道の子会社再編で札新開発と合併、桑園イオンの屋上にある桑園自動車学校を直営しています。

各地域で一般路線バスを運行するほか、単独で札幌-えりも・広尾の高速バスを、また、中央バスなどとの共同で札幌-小樽・札幌-旭川・紋別の高速バスも運行しています。日高線の廃止による再編で苫小牧・新千歳空港-浦河・えりもの便も運行しています。

ちなみに北海道内の路線バスは2019年度で98事業者、4111両で、最大手の北海道中央バスが路線車両1100両近くとなっていますので、道内でも非常に事業規模の大きいバス会社といえると思います。

北海道中央バス白石営業所問題

札幌市内営業所の再編の話を書く前に北海道中央バスの白石営業所撤退問題でジェイ・アール北海道バスが関係したことについて触れる必要があると思われます。

札幌市交通局の白石営業所の経緯

札幌市は交通局として「市営バス」を運行していました。交通局は1960年に白石営業所を白石区本通の国道12号線沿いに建設。現在札幌国際交流館 (リフレサッポロ)のある場所になります。白石、東区の路線を統括しており、地下鉄東西線開業前は札幌都心部の大通バスセンターから東札幌、青葉町(現新札幌付近)、もみじ台、北都団地(北郷)、米里など各方面に多数のバスを運行していました。1976年の東西線白石開業、1977年の市営バス東営業所開業で路線を再編し市営バスは地下鉄駅からのフィーダー輸送をメインの運行となります、しかし一部便は都心部にも乗り入れており、民営バスと競合する区間がありました。

1986年には白石営業所が手狭になったこと、厚別区の分区を控え需要が高まっていることを受け、新さっぽろ駅(新札幌駅)からほど近い厚別区厚別中央5条2丁目に白石営業所厚別支所を開設しています。民間移譲後は営業所機能を廃止して北海道中央バスの一時待機所ならびに建物は札幌日交タクシーの営業所として使用していたようです。現在はDCMホーマック厚別東店となっている場所です。

白石営業所は1993年に白石高校付近の旧豊平川沿い(白石区川北2254)に移転し、郊外から地下鉄駅への運行が行いやすくなった面がありましょう。ただ、川北、川下地区は札幌市内でも人口希薄な地区であり、札幌市が目論んだであろう住宅地の郊外移転には繋がらなかった面はあります。
ジェイ・アール北海道バスの札幌周辺営業所再編と「お人好し」
(地下鉄白石駅の中央バス車両2018年撮影)

札幌市は交通局経営健全化計画・市営企業調査審議会で段階的に市営バスの民営バス会社移管を発表します。不思議なのはこの比較的大きい問題について北海道新聞があまり報じてこなかったことです。札幌市内面で「移譲」の事実だけが発表されます。結果的に全面撤退の方向が発表されてから後出し的に批判記事や社説を掲載することになります。市営バス問題を「問題」と認識せず取材が足りていないのではないかと思われるところです。

札幌市営バス 9路線 中央バスへ 白石、厚別区内 4月から移譲
2001/02/20 北海道新聞札幌市内面
> 札幌市は今年四月、市内白石、厚別両区内を運行する市営バスの九路線を北海道中央バスに移譲する。
> 各路線とも四月一日から中央バスが運行する。市営バス白石営業所(白石区川北)も、一日から中央バス白石営業所となる。
 中央バスへの路線移譲に際し、各路線の運行経路や便数、運賃などのサービス内容は変わらず、定期券や地下鉄との共通ウィズユーカードなども、これまで通り使用できる。また、これら九路線の定期券は、これまで通り市交通局の各窓口で購入できる。


札幌市営バス全面民営化 審議会答申へ 収支改善見えず
2001/11/09 北海道新聞
> 赤字が続く札幌市営交通のあり方を検討する札幌市長の諮問機関「市営企業調査審議会」は八日、交通部会(部会長・小川正博札大教授)を開き、市営バスの全路線を民間のバス会社に移譲すべきだ-との意見書案をまとめた。二十日の同審議会総会を経て正式に桂信雄市長に答申するが、同審議会がバス事業の全面民営化を打ち出すのは初めて。市は意見書の内容を踏まえ、年内にも経営改善策をまとめる方針だ。
 市営バスは二〇〇〇年度決算で十五億千六百万円の赤字で、今後、一般会計から毎年八億-十六億円を補てんしても、年間三十億円を超える赤字が発生する見通しだ。


<社説>札幌市営交通 競争の激化を見据えよ
2001/11/24 北海道新聞
> 火の車状態にある札幌市営バス、路面電車、地下鉄の交通三事業について、札幌市営企業調査審議会が抜本見直しを迫る意見をまとめた。
 バスは民営化、電車は早急に方向付けをし、地下鉄は広範な業務の民間委託化を求めている。
 これを受けて市は、まずバスについて全路線を二〇〇四年度末までに民間移譲する方針を打ち出した。
 背景には来年二月からの規制緩和がある。先行した航空業界と同様に、バス業界も路線への新規参入が原則自由化されるうえ、料金も届け出だけで引き下げられるようになる。
 民営化方針は、激しい競争時代を前にして、さっさと白旗を上げてしまった格好だ。


北海道中央バスは2001年の路線移譲後、基本的には系統番号もそのままに路線を運行し、2004年の平和大橋開通で北郷地区から都心直通便を復活(道新は過去にないと報道しているが、上記の通り地下鉄東西線開通前はそのような路線があった)させるなど、路線の拡充を行う反面2006年には便数の削減などの効率化を行っています。そんな中、少なくとも住民には前触れも無く「廃止」を表明します。

北海道中央バス白石営業所撤退問題の発生

中央バス 札幌の路線廃止発表
2008/06/11 北海道新聞夕刊
> 北海道中央バス(小樽)は十一日、赤字運行の続いている白石区や厚別区など札幌市内の路線バス九路線を十二月末で廃止すると発表した。住民説明会などを経て、二十日をめどに北海道運輸局に廃止を届け出る。
 廃止する路線は北郷線、川下線、本郷線、米里線、山本線、厚別通線、小野幌線、白石本線、北郷本線。一日当たり四百八十便が運行され、年間のべ三百三十九万人が利用している。
 このうち白石本線と北郷本線を除く七路線は二〇〇一年に札幌市営バスから移管された路線。〇四年春に完全民営化が行われた後、旧市営バス路線の大規模な廃止は初めてとなる。
 札幌市内の中央バス札幌本部で記者会見した牧野和夫専務は九路線廃止の理由として、利用者が少なく年間約一億五千万円の赤字状態になっているうえ、札幌市の新たな補助制度では収支均衡が望めないなどと説明。〇六年十二月から札幌市などと存廃をめぐり協議を続けてきたが、「進展がなく、赤字負担が限界で廃止を決断した」(同専務)としている。
 一方、札幌市の下村邦夫市民まちづくり局長も記者会見し、「地域住民の心情を考えると(廃止は)市として到底受け入れられない」としたが、他の事業者と協議して代替のバスを運行してもらうよう努力する考えを示した。


中央バス 札幌市内9路線廃止 12月末 白石、厚別の480便
2008/06/11 北海道新聞(全道)
> 北海道中央バス(小樽)は十日、白石区や厚別区を中心とする札幌市内九路線を十二月末で廃止する方針を決めた。このうち七路線は二〇〇一年に経営難の札幌市営バスから移管されたが、赤字が続き継続は困難と判断した。これらの路線では一日約四百八十便を運行し、通勤通学客を中心に延べ一万人が利用。代替路線がほとんどないことから住民生活に多大な影響が出そうだ。


<解説>中央バスの札幌9路線廃止案 支援減り市側と溝
2008/06/11 北海道新聞
> 〈解説〉北海道中央バス(小樽)が札幌市内九路線の廃止に踏み切る背景には、市バス民営化後の赤字路線への支援をめぐる札幌市との確執がある。現行の札幌市の支援制度の下では、同社がさらなる旧市バス路線からの撤退に踏み切る可能性もあり、住民の足を確保するために冷静な議論が求められる。
 引き金になったのは、二〇〇四年四月に引き継いだ東営業所(東区)と新川営業所(北区)への札幌市の支援策の変化だ。両営業所は同社が継承した三十三路線のうち十八路線を管轄。市バス時代に約七億円の赤字を計上していた。このため市は移管にあたって当面二年間、最大で年間四億八千万円の赤字補てんと、両営業所の土地や建物を無償賃貸した。
 だが、市は〇六年度に市内路線に新規の補助金制度をつくり、両営業所管轄の路線にも一律適用。同社によると、赤字補てん額は約40%減るという。土地・建物も年間七千万円の賃貸料を払うことになり、両営業所の赤字は年間約三億円に膨らんだ。
 こうした状況で民営化以降も不採算で上向く兆しのない白石、厚別の九路線の廃止に傾いていった。同社幹部は「採算条件がまったく違う路線への一律の支援は納得できない」と訴える。
 一方、札幌市側は「市財政が厳しい中で、路線を維持するための補助金は公平でなければならない。(営業所の)無償賃貸を続けることは市民や議会の理解を得られない」と話す。
 今回の九路線廃止に伴い、札幌市は東、新川営業所に対する〇七年度の補助金支給も「市内路線から撤退するのに別の路線だからといって補助金は出せない」と手続きを拒むなど、利用者不在の両者の行き違いはエスカレートしている。


北海道新聞はこのように市の問題を大きく報道しています。
北海道中央バスが行った住民説明会でも市の対応が悪いと説明する北海道中央バスと、北海道中央バスに存続署名を渡そうとしたが「市に声を届ける必要がある」と北海道中央バスは悪くないとする住民代表の不思議な対応も報道されます。

中央バス9路線廃止へ 地域住民「あまりに突然」 説明会で反発の声相次ぐ
2008/06/15 北海道新聞札幌市内面
>存続を求める百二十八筆の署名を(管理者注:北海道中央バス)加藤常務に渡そうとしたが取りやめ、「中央バスに存続を求めるのでなく、市に声を届けていかなければならないと分かった」と、路線を守るための住民団体発足を目指す考えを示した。


さて、その後も責任のなすりつけのような形で北海道中央バスと札幌市の確執だけが報道される中、札幌市は白石営業所路線の後継事業者を探すことになります。そこに名乗りを上げたのがジェイ・アール北海道バスと北都交通でした。

路線後継に名乗りを上げたジェイ・アール北海道バス

中央バス路線廃止 後継にJRバス
2008/07/30 北海道新聞
> 北海道中央バス(小樽)が札幌市内の九路線を廃止する問題で、札幌市は二十九日、後継事業者をジェイ・アール北海道バス(札幌)にする方向で最終調整に入った。市が最も重要視している廃止路線の一括継承を、JRバスが引き受けられると判断した。後継事業者には北都交通(北広島)も名乗りを上げていたが、九路線の一部運行の意向を示すにとどまっていた。
> 市とJRバスの担当者は二十九日、同社で直接協議。乗務員やバス車両にかかわる初期投資の資金協力や、補助制度など、JRバスが事業継承の条件とする支援策について話し合ったとみられる。


厚別に営業所をもつジェイ・アール北海道バスは厚別区内や白石区内の旧市営バス路線とも一部並行路線があり、当然路線運営のノウハウがありますので、ホワイトナイトとしては有力視されていたでしょう。丘珠空港路線など札幌市内の一部で路線運行を行う北都交通は通学便などの運行に特化するつもりがあったのではないかとおもわれます。さて、これで解決しそうですねって思ったら大間違いになります。北海道中央バスにしてみれば、単純に市に対して補助金増額や営業所費用の軽減を求めていたそのダシに廃止をちらつかせて市が折れるのを期待していたわけですから、その目論みが外れることになります。しかも、移管にはそれなりの年月がかかると踏んでいたものが「12月から転換可能です!」ってなったわけで、これでは北海道中央バスの面目は丸つぶれです。

中央バス路線廃止 札幌市10億円超負担 JRバス後継決定 3年間業務委託
2008/08/01 北海道新聞
> 北海道中央バス(小樽)が札幌市内の九路線を廃止する問題で、札幌市は三十一日、後継事業者にジェイ・アール北海道バス(札幌)を選定したと発表した。二〇一一年度までは同市がJRバスに業務を委託、一二年度からJRバスの自主運行に移行する。市は業務委託中の三年間の初期投資として十億円超を負担する。
 中央バスは十二月二十日で路線を廃止し、JRバスが翌日から事業を継承する。初期投資費は、約五十台の車両の購入費や営業所の整備費。このほか三年間の赤字補てん分として四億-五億円を見込んでいる。JRバス側の要求に大筋で札幌市側が合意した。また自主運行に移る前に地域住民と協議し、路線や運行本数を見直すことも決めた。上田文雄市長は記者会見で「地域の足を確保できる連携体制をJRバスと築きたい」と述べた。
 JRバスは「札幌市から約十億円の初期投資を受けることで、運行が可能になった。約八十人の乗務員の確保は大変だが、早急に進めたい」としている。


この記事には続きがあります。ジェイ・アール北海道バスが車両や乗務員確保で10億円を市から提供を受ける話を単純に比較して「北海道中央バスに10億円払ったら10年運行できるじゃないか!」とぶちあげたわけです。

市と中央バス 交渉成立なら 「10年安泰の額」
> 北海道中央バス(小樽)の市内九路線の廃止問題は、札幌市が後継事業者にジェイ・アール北海道バス(札幌)を選定し、ひとまず決着した。道都・札幌と道内バス最大手が補助のあり方をめぐり、引くに引けない駆け引きを演じた異例の対立劇は、十数億円という税金投入が生じる結末に。中央バスと交渉がまとまっていれば、赤字補助に充てても十年先まで九路線が安泰となる金額で、利用者不在の泥仕合の代償はあまりに大きく、市民の反発も予想される。
 市はJRバスと三年間の業務委託費について協議中だが、バス車両約五十台の購入費など初期投資分として十億円超のほか、営業所確保の経費なども想定。さらに赤字に対しても補助する考え。JRバスの要求を市が“丸のみ”した格好だ。
> 三十一日の記者会見で、上田文雄市長は「市民の足を守るための緊急避難的な措置」と説明。「何度もチャンスを生かそうとしたが、こういう事態に至った。(中央バスに)もう一度お願いすることは考えていない」と述べ、苦渋の表情で理解を求めた。市内のバス事情に詳しいNPO法人「交通倶楽部ゆうらん」の松本公洋理事長は「路線見直しの工夫もせず、混乱回避のため、その場しのぎで金を出したようなもの」とムダを指摘している。


このあと、この10億円の話が膨れ上がる異常な状態になります。また、ジェイ・アール北海道バスも厚別営業所の敷地だけではバス駐車スペースが足りず、8月21日には札幌市は近くの市有地を確保し、そのときに備えた形になります。しかし、ここから北海道中央バスの政治的な巻き返しが始まります。

廃止届提出済みの北海道中央バスが「運行継続希望」

中央バス 9路線 継続運行希望 札幌市は態度を留保
2008/08/22 北海道新聞
> 北海道中央バス(小樽)は二十一日、札幌市中央区の同社札幌本部で会見し、廃止を予定している同市内の路線バス九路線について、条件次第で継続運行する意向を表明した。同社は、市が後継事業者に選定したジェイ・アール北海道バス(札幌)への業務委託で、初期投資に十億円超の負担を計画したため、「既存のわれわれが継続する方が経済的」と方針転換の理由を説明した。


そんな無茶な話があるか?ってところなんだけど、北海道中央バスにしてみれば自社が路線を廃止したことで他社のエリア進入を許した上で、しかも相手には10億円の補助が投入される「大失態」を挽回するには、ジェイ・アール北海道バスより安く運営できることを言うこと、また、自社の政治的なコネクションを使えることも考えたのでしょう。記事の続きでは、


 会見で中央バスは、平尾一弥社長が同日、札幌市の上田文雄市長に継続運行の意向を伝えたと説明。「十億円が費やされる異常事態の解消が必要」と指摘した上で、「市が路線維持できるよう補助制度を見直し、われわれを選択してくれるならやりたい」と述べた。


中央バス路線廃止撤回 真意見えぬ“変心” 札幌市 関係者困惑「今さら」
2008/08/22 北海道新聞
> 北海道中央バス(小樽)が二十一日、札幌市内の九路線廃止方針を一転して撤回したことで、関係者は大混乱に陥った。突然の「変心」について同社の説明は不可解な点が多く、札幌市や後継事業者に選ばれたジェイ・アール北海道バス(札幌)は「真意が分からない」「非常識だ」などと困惑する。
> 札幌市内には中央バスの路線が多数ある事情もあり、市長は同社との関係を修復するつもりで同社を訪れたのだ。
 ところが、平尾社長は唐突に「継続運行する用意があります」と表明。驚いた上田市長は、その場では「真摯(しんし)に受け止めます」と答えるにとどめて引き揚げたが、「青天の霹靂(へきれき)」の情報は関係者の間を一気に駆け抜けた。
>(管理者注:中央バス) 車両やバス乗務員確保のため、市はJRバスに対し十億円超の初期投資を行う。これを中央バスは「市民目線では無視できない異常事態」と指摘し、税金投入を防ぐために名乗りを上げたと主張した。
> 後継のJRバスにも動揺は及んだ。ある幹部は「寝耳に水で考えられない話。一体どうなってしまうのか」と、突然の廃止撤回表明を聞き絶句した。
 既に同社は百人の運転手の募集を開始しており、二十数人が内定している。運行に必要な五十五台の車両のうち、新車二十五台はすでにメーカーに発注し、中古車二十台の確保も依頼済み。いまさら手を引くに引けないところまで来ている。
 あるバス会社の経営者は「廃止撤回などあり得ない話。同業者として恥ずかしい」と怒りをあらわにした。


そして政治的にも北海道中央バスの運行継続を支援する動きが出ます。まず「市民団体」の形で反対の声を上げさせる。

中央バス運行継続を 沿線住民が署名活動 札幌
2008/08/29 北海道新聞札幌市内面
> 北海道中央バス(小樽)の札幌市内九路線の廃止問題で、沿線住民でつくる団体は二十八日、札幌市がジェイ・アール北海道バス(札幌)に事業継承を委託する際、多額の税金を投入することに反対し、中央バスの運行継続を求める署名活動を市中心部で行った。
 約三十人でつくる「中央バス運行継続を求める会」(紺野勝歳会長)。「中央バスの赤字を補てんすれば、JRバスに多額の税金を投入しないでいい」などとして、署名活動を始めた。


中央バスの運行継続を 自民党が市に要望
2008/08/30 北海道新聞
> 札幌市議会の自民党は二十九日、北海道中央バス(小樽)が撤退する白石営業所管轄の九路線について、同社に引き続き運行してもらうよう求める申し入れ書を札幌市に提出した。
 同会派は路線継承に伴う多額の税金投入を問題視し、「市民に大きな負担を強いることは到底容認できない」などと指摘。「現状のバス事業者が運行継続できる環境整備に最大限努力すべきだ」と訴えている。


そして、札幌市はその批判に耐えかね一転して北海道中央バスの運行継続を表明し合意することになります。(その前に当時の札幌市上田市長と中央バス平尾社長との間の会談で運行継続を市長が飲んだ、飲まないでも悶着がある)
地域の住民が困っている状態から火中の栗を拾って支援を表明したジェイ・アール北海道バスは単に梯子を外された形になります。

結果的に北海道中央バスの運行継続で決着。ジェイ・アール北海道バスへの違約金も批判

札幌市、中央バスと継続合意 曲折の末 振り出しに JR決断で急展開 補助問題はこれから
2008/08/31 北海道新聞
> 札幌市内で存廃に揺れたバス九路線は三十日、曲折の末にもともと路線を運行していた北海道中央バス(小樽)が維持することになった。
>◆批判が殺到
 上田文雄市長が中国外遊中の二十八日、札幌市役所に近いジェイ・アール北海道バス本社。同社の小森宏明会長と向かい合った下村邦夫市民まちづくり局長は「大変な状況です。何とか打開策はないでしょうか…」とすがるように口を開いた。
 中央バスが二十一日に条件付きで路線継続を表明して以来、市から後継予定だったJRバスへの約十九億円に上る運行委託費には批判が殺到し、日増しに強くなっていた。
 見るに見かねた小森会長はたまらず「検討してみましょう」と応じた。
 ここから事態は急展開。上田市長が帰国した翌日の三十日午前、市内のホテルで小森会長とのトップ会談に至った。市の窮地に対し、JRバスが「大英断」(上田市長)を下して助け舟を出した格好だ。


ここまで毎度の話ですが、北海道新聞もジェイ・アール北海道バスへの支援額を批判し続けたことがあります。当たり前ですが、今まで運行していなかった路線に、新規で運行する、それも期間がわずか半年という中、既存の事業者が無支援で9路線もの路線を引き継げる可能性はありません。北海道中央バスが路線廃止を言い出さなければ発生しなかった金額ですので、これをジェイ・アール北海道バスが非難される必要性はありません。
北海道中央バスは6月17日時点で廃止届を北海道運輸局に提出していました。ここからわずかな期間でジェイ・アール北海道バスが路線引き継ぎを表明し、人員を確保、車両50台をすでに発注し、12月の廃止期限になんとか体制を作るべく努力したこと。これを批判するいわれは無いと思われます。
そして、2ヶ月で廃止撤回を行い、政治力を使って「挽回」することに成功した北海道中央バスに対する批判は残念ながらマスコミからは聞かれません。
記事はさらに続きます。


>◆場当たり的
 市の方針転換の背景には、二十一日の上田市長と中央バスの平尾一弥社長との初のトップ会談がある。平尾社長が突然、路線廃止の撤回を切り出すと、市長はJR側の意向を確認するより先に、前向きとも取られかねない返答をした。
 翌日に市長が会見で否定したため中央バスが真意をただす質問状を突き付けるなど、交渉のまずさがあらわになった。
 今回も市は、中央バスに事前に確約をとらないままJRバスに運行委託の白紙撤回を要請。上田市長は記者会見で委託撤回を表明した後、背水の陣で小樽にある中央バス本社に直行し、平尾社長に頭を下げた。運行継続で合意できたとはいえ、無謀とも言える交渉過程をたどっていた。
◆問題は複雑化
 ひとまず混乱は収拾したが、一連の問題は「スタート地点」(上田市長)に戻ったにすぎない。中央バスが廃止を求めた九路線への補助や営業所の譲渡問題など、課題は手付かずのままで残っている。
 さらに、約十九億円の税負担は回避されたとはいえ、どれぐらいの「節約」になるかは中央バスとの今後の交渉で変わってくる。また、市はJRの車両発注に伴う違約金が発生した場合に補償し、JRは乗務員二十四人の内定者を採用するため「余剰人員」を抱える。問題はより複雑になったとも言える。
 このため、市と中央バス双方への風当たりは強まっている。道バス協会会長でもあるJRバスの小森会長は、市に対しては「判断を二転三転させるのは困る」、中央バスには「簡単に廃止届を出してほしくない」と注文を付けた。


札幌市の対応は全く不可解ではありますが、北海道中央バスがバス路線存廃で札幌市からの補助金問題を解決しようとした、いわば住民の足を人質をとって交渉したことは、個人的にも非常に衝撃的でありました。そして、バス会社として「廃止届」の重みを理解しているジェイ・アール北海道バスが地域の交通網を守るというその気持ちだけで立ち上がっていることは間違いのない話で、札幌市も当然市民の足を守るという立場上この方法しか無かったという「最善の策」を北海道中央バスにかき回され反故にされたことは、今後も引きずっていくと思われます。もう二度とジェイ・アール北海道バスは他社の廃止路線に手を上げて参入するようなことは行わないでしょう。

最終的に北海道中央バスは北海道運輸局への廃止届を9月4日付けで取り下げ、受理されました。11月には札幌市からジェイ・アール北海道バスへの損失補償額を確定。この4900万円という非常に少ない額でも批判が起こります。2009年に北海道中央バスは白石営業所管内2路線の廃止を行い現在に続きます。

白石営業所開設の時点でも、郊外に広がり続ける住宅地への足を確保することが急務で、あえて川下地区につくられ、多くの路線を乗り入れた形ですが、その後都心部への移住がすすんだこと、もみじ台地区などバスだけの住宅団地の高齢化、人口減少は続いており、北海道中央バス白石営業所問題から13年経った今、また同様の問題は起こりかねないと危惧しています。そして、当然そのときにはどのバス事業者も手を上げることはありません。


ジェイ・アール北海道バスの札幌市内営業所再編

やっと本題でありますが、ジェイ・アール北海道バスは新幹線工事に伴い用地を使用できなくなる札幌営業所を移転する必要があります。
現在、ジェイ・アール北海道バスは本社を旧市営バスの営業所を引き継いだ琴似営業所に設けており、比較的都心に近い琴似営業所に一部の高速バス車両などを移管するのではないかと思われます。
ジェイ・アール北海道バスの札幌周辺営業所再編と「お人好し」
(札幌駅東側の高架下を使うジェイ・アール北海道バス札幌営業所)

北広島球場輸送に関する営業所問題

以前から何度か記載しています、北広島市に建設中のボールパーク観客輸送について、北広島市は資料で次のように記載しています。

ボールパーク構想推進に係る市民説明会(配布資料)
https://www.city.kitahiroshima.hokkaido.jp/hotnews/files/00140000/00140073/20210316_siryou.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20210624_02.pdf " target="_blank">https://traffic.north-tt.com/txt/20210624_02.pdf


これによるとボールパークと札幌市内や江別市内へのシャトルバス輸送はジェイ・アール北海道バスと北海道バスが幹事社となって行われるようです。うち、新札幌駅発着は路線バス方式とのことでジェイ・アール北海道バスの路線車両が使用されるものと考えられます。なお、北広島駅とボールパーク間の輸送は千歳相互観光バスと北海道バスが幹事社となっているようですので、ジェイ・アール北海道バスは(場合により車両、乗務員の提供がある可能性はあるかもしれませんが)概ね無関係になりそうです

いずれにしても現状では最も近いバス営業所は厚別営業所ですのでボールパークまで約10kmとなります。しかし、厚別営業所から新札幌駅はともかく、入場、退場の渋滞が見込まれる国道274号線が回送路線となることから、現状のままにボールパーク輸送を行うのは厳しいと思っている可能性があろうかと思います。

今回名前の挙がらなかった北海道中央バスは北広島市内に大曲営業所を持ちますが、こちらも道道1080号栗山北広島線を経由しなければボールパークに行けませんので、こちらも渋滞との戦いとなりましょう。北海道最大手のバス会社である北海道中央バスが「広域連携」には名を連ねるものの、ボールパーク輸送に直接的には参画しないことというのは、ボールパークへの魅力を感じていないのか、広域的な輸送のほうに魅力を感じているのか、今のところそれは見えていません。

ジェイ・アール北海道バスは今のところ公式的には発表はないものの、北広島市内の道道46号江別恵庭線沿いに北広島営業所と銘打った営業所施設の建設を行っています。この予定地はボールパークから3kmほど、新設が予定されている西浦通を経由することで10分以内にアクセスできるであろう立地となり、ボールパークアクセスのバス拠点としての意識があろうかと思います。ざっと敷地は1万平米ですので50両から60両程度の所属になるのではないかと思われます。

ボールパーク輸送に関してもジェイ・アール北海道バスは好んで手を上げたのか、それとも依頼されて仕方なくなのかは知る由もありませんが、ここでも頼まれると断りにくい「お人好し」な面を感じないでもありません。札幌ドーム輸送では白石駅、新札幌駅というどちらかといえば本質ではない運行を行っているジェイ・アール北海道バスですが、北広島の球場輸送では新札幌駅へのシャトルバス輸送は重要視され、しかも途中の渋滞を避けられない、また、比較的距離があり、所要時間もかかるなか、乗務員数も車両数も必要であると思うと、多くのバス会社はおいそれと参入できないと思われます。車両数424両、従業員数994名という企業が単独で請け負うことは不可能で、幹事社として他社の車両、乗務員まで管理する必要があると思うと、北海道最大手の北海道中央バスが「降りた」ことがどれほど大きいことかと思うところです。
ジェイ・アール北海道バスの札幌周辺営業所再編と「お人好し」
ジェイ・アール北海道バスの札幌周辺営業所再編と「お人好し」
(建設中のジェイ・アール北海道バス北広島営業所)

ジェイ・アール北海道バスの北広島・長沼・南幌地区のバス路線

北広島地区のジェイ・アール北海道バス路線は、以前は長沼線・空知線として札幌・江別から北広島・恵庭を結び、また、恵庭市内、北広島市内にも路線を持っていました。

現在は
●北広島線
・札幌・大谷地バスターミナル-北広島駅(北広島-大谷地で平日24.5往復)
●長沼線
・大谷地・新札幌・北広島-ながぬま温泉(長沼-北広島で平日18.5往復)
●南幌線
・大谷地・北広島-南幌ビューローで(南幌-北広島で平日10往復)
●共栄線
・江別駅-北広島駅(平日7往復)

となっています。これらの路線は基本的に長沼営業所の所管となっています。1940年とかなり以前からこの地区を運行していた歴史ある路線ではありますが、再編が進み現在は長沼営業所に所属の車両は20両を切っていると思われます。単純にローカル路線となりますね。ちなみに長沼営業所と南幌ビューローは約10km。ですので、南幌発の朝時間帯の便は長沼から回送して運行されているということになりましょう。

今は特段公式的な情報はありませんが、長沼営業所を北広島営業所に統合するとした場合、北広島営業所予定地から南幌ビューローまでの回送距離は約10kmと今までと変わらず、長沼市街地まででも約15kmでありますので、極端な利便低下は避けられ、なおかつ効率化も図れるという判断ではないかと思われます。また、江別駅までであっても約13km、そして、いずれも渋滞のほとんど発生しない地域でありますので、厚別営業所の補完を行うには非常にいい場所に設定したと思われます。


厚別営業所の機能分散

厚別営業所は車両100両以上を配置している営業所になります。国道274号線に隣接しており、新札幌駅まで約3kmほどと、1万3000平米ほどの敷地があり、ここでは修繕などの作業はほぼ行わないようですので非常に混みあった営業所という印象があります。
札幌営業所の閉鎖により、一般路線車が20両程度移籍した場合、こちらにはそれだけ置くスペースはありませんので、北広島営業所で新札幌-江別などの路線も一部運行することで、トータルの台数に増減がない状態にするものと思われます。
ジェイ・アール北海道バスの札幌周辺営業所再編と「お人好し」
(ジェイ・アール北海道バス厚別営業所)

札幌・厚別・長沼で使用する150両以上が厚別と北広島に再編(プラス球場輸送用の車両が加わる)することになりそうです。


小樽・手稲・琴似営業所の機能分散

札幌-小樽の札樽線といわれる路線に関しては、小樽営業所で高速おたる号のジェイ・アール北海道バス運行分をほぼ賄っており、配置は8両程度と少なくなっています。しかしながら、小樽営業所をなくしてしまうと手稲からの回送距離は23kmほど、30分以上かかり、なおかつ渋滞もする地域ですのでこれを避けていると考えられます。

手稲営業所は車両80両ほど。敷地こそそれなりの広さはあるものの、整備拠点もあります。札幌営業所からの車両を転属させるスペースとして、旧スマート石油の敷地を使うことが検討されているのか、最近スマート石油時代の壁を撤去する工事が行われていました。

琴似営業所は車両120両程度、敷地は2万平米を越えますので、旧市営バス営業所とはいえ本社社屋も建てた上で市営バス移譲路線だけでなく既存の路線も含めた運行を行っています。ここには一部高速路線用車両も配置されていますので、札幌営業所の高速路線車と一部貸切車もこちらに移譲されると思われます。

手稲側は200両を超える大所帯になりそうです。ジェイ・アール北海道バスの424両の車両のうち400両近くが札幌周辺に所属することになります。

ちなみに深川営業所は5両、様似営業所は25両まで無いはずで、札幌偏重というか、地方の厳しさも見えるところではあります。
ジェイ・アール北海道バスの札幌周辺営業所再編と「お人好し」
(ジェイ・アール北海道バス様似営業所)


北海道の交通関係 北広島球場輸送 路線バス

検索入力:

記事カテゴリ

最近の100件を表示



当サイトにOFUSE 当サイトではOFUSEのシステムを使用した「投げ銭」ボックスを設置しました。当サイトが何かのお役に立てて、ご協力いただけるのでしたら少額で構いませんので、ご寄付いただけますと励みになります。