北海道の交通関係

JR北海道2021年新ダイヤ素案発表

2020/12/10

例年この時期に来年3月に予定されるダイヤ改正の概要が発表されます。JR北海道はJR他社より早く12月9日に発表を行いました。

そのリリース文を読んでみましょう

JR北海道 2020.12.09
来春のダイヤ見直しについて
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20201209_KO_kaisei.pdf



その前に現行ダイヤである今年3月のダイヤ改正は、インバウンド客増加を背景に札幌圏の輸送体系を見直すことに重点が置かれました。快速エアポートの日中1時間5本への増便、区間快速廃止にともない、札幌圏の普通列車停車駅は乗車機会が増えるものの、全体としては快速エアポート増便分函館線は減便になったと言える改正でした。特に地方はこの改正では大きな変更が無く、むしろH100形に置き換えられた函館線小樽-倶知安-長万部など、輸送改善もおこなわれました。

しかし、このダイヤ改正と前後し、世界的な猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大により、新千歳空港の利用客が激減、北海道は他地域より感染者数も多く、道による緊急事態宣言、そして3月13日に成立した新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づき国の緊急事態宣言が出されたこともあり、JR北海道はすでに代替バス運行を行っていた札沼線北海道医療大学-新十津川の列車運行を前倒して終了する異例の措置まで執られました。また、特急列車、快速エアポートの減便、職員の一時帰休も行われるという状況まで悪化し、四半期決算でも昨年は黒字化していた札幌圏の営業損益すら大幅な赤字に陥った状態です。

それを踏まえた来年改正では、アフターコロナで利用者が元の状況に戻るのは、少なくとも来年には考えられないこともあり、手を入れざるを得ない状況になった、そんな中でもある程度利用者負担の増大を少なくする減便に留まったといえるかもしれません。


輸送改善

あきらかに暗くなる話題の方が多くなりますので、先に「よくなるところ」を書いておきましょう。(マニアの人にとってはどうかはわかりませんが)今回大幅に改善されると思われるのはH100形気動車の大量導入による冷房化などサービス改善とスピードアップです。

(長万部で並ぶH100形とキハ40形)

■室蘭線
・苫小牧-室蘭の66本中43本がH100形におきかえられます。また、最大11分の速達化を行います。
この66本の内訳ですが、1本が特急型車両の間合い運用(現行4471M)、18本がキハ143(学園都市線で使用していた冷房装備車両)、そして、糸井-苫小牧を運行し岩見沢方面への列車と共通運用になるもの4本で23本ですので、それ以外の全ての列車がH100形に置き換えられることになります。苫小牧付近の数本を除きキハ40が残る可能性のある列車はありません。

追記
キハ143使用列車の本数は19本でした(当サイト時刻表による)
苫小牧-室蘭の列車本数は現状65本ですので、若干計算が合わない面があります。
4471Mはすずらん10号からの折返しで、この現行すずらん10号に近い時刻に函館行き(新)北斗22号が運行されることからこれに接続される気動車列車が運行される可能性について「北海鉄旅いいじゃないか」サイト様が検証されています。
https://www.geni-tetsutabi.com




・東室蘭-長万部の20本がすべてH100形におきかえられます。また、最大11分の速達化を行います。
豊浦・伊達紋別発も含めた全ての普通列車がH100になります。長万部駅に乗り入れる函館方面からのキハ40以外このあたりでキハ40を見かけることはもう無くなりそうです。

なお、室蘭線の苫小牧-岩見沢・日高線苫小牧-鵡川・石勝線千歳-新夕張には当面H100を運用しないとなりそうですが、ほぼキハ150で運用できる数となりますので苫小牧運転所のキハ40は概ね引退となろうかと思われます。状況のよいものを他線にとなりそうですので、函館や旭川の量産先行車も含むエンジン未換装車も引退になろうかと思われます。

それにしても、室蘭線に関しては駅の廃止すら無く、待避待ちも多くありませんし、キハ40も全てエンジン換装車での運行でしたので、最高速度の5キロアップを考慮したとしても、それほどまでH100との性能差があるということに驚きますし、過去にある程度普通列車車両も置き換えできていたら、もうすこし利便が高かったろうにと思わないでもありません。


■宗谷線(旭川-名寄)
・37本中34本をH100形におきかえられます。また、最大31分の速達化を行います。
31分!って凄い話です。まず、本数を確認します。現在区間運行も含めて旭川-名寄は39本ありますが、旭川-比布の1往復を廃止しますので37本。うち、キハ54で稚内・音威子府直通を行っている3本(現行321D、327D、3320D)以外は全てH100となりそうで、これにより宗谷線はH100形とキハ54に統一され、宗谷線からはキハ40が1本も運用されないことになります。
ただし、現在キハ54とキハ40の2両編成を組む現行321Dをどうするのかはわかりません。H100形とキハ40は連結できないので、現行運用は行えず、なおかつ通学時間帯でもありますので1両にするとも思えないのですが。

宗谷線で驚くのはその速達化です。例示されている「短縮効果の大きい主な列車」では、
・旭川11:30-名寄12:52(1:22)-->旭川11:30-名寄12:39(109▲13分)快速
・旭川17:51-名寄19:14(1:23)-->旭川18:00-名寄19:14(114▲9分)快速
・旭川20:10-名寄21:37(1:27)-->旭川20:30-名寄21:50(120▲7分)快速
・旭川21:20-名寄22:55(1:35)-->旭川21:39-名寄23:00(121▲14分)

・名寄06:23-旭川08:24(2:01)-->名寄06:45-旭川08:15(1:30▲31分)
・名寄13:25-旭川14:45(1:51)-->名寄13:38-旭川14:55(1:30▲21分)快速
・名寄14:33-旭川15:55(1:20)-->名寄14:44-旭川15:55(1:17▲3分)快速
・名寄17:04-旭川18:55(1:22)-->名寄17:25-旭川18:55(1:11▲11分)

31分マイナスはすごいですね。旭川駅での乗り継ぎ時間の短縮も含めおおむね札幌-名寄を3時間程度で結ぶことになります。地方ローカル線での輸送改善は遅れており、今までも快速列車は決して鈍足イメージではなかったものの冷房車による快適化と速達化が行われることになります。

室蘭線も宗谷線も過去の特急速達化で線路設備が高速化されていることで効果があがる路線です。しかし、車両の高性能化で所要時間が短縮できるのは素晴らしいことです。これまで明るい話題のほとんど無かった地方線区ですが、遅かったとはいえ軌道の強化などに資金を投じた路線に改善が行われたのは、非常に嬉しいことでもあります。


■石北線(旭川-上川)
おこぼれとまでは言いませんが、この区間は2本がH100形におきかえられ、最大7分の短縮となります。


■函館線(旭川-滝川)
旭川19:30発深川行きの普通列車が滝川に延長になります。これにより岩見沢、札幌方面、富良野方面への普通列車への乗り継ぎが可能になります。これはこのあとの22:04発滝川行き普通列車が廃止されることの代替ともなりますが、この列車はその先の接続がありませんでしたので、札幌まで普通列車で行くことのできる列車が増発されたという意味では朗報と感じる方もおられましょう。

■学園都市線
・札幌-あいの里公園・石狩当別の普通列車の一部10本を北海道医療大学に延長。(石狩当別-北海道医療大学-月形方面列車廃止の補償の観点がある)

減便列車

特急列車の利用が減っている事への対処として、今回定期特急列車の臨時化と廃止が行われることになりました。特に特急北斗に関しては、北海道新幹線開業時に増発された経緯もあり、北海道新幹線も含めた利用客の減少が大きいと踏んでいるものと思われます。

■札幌-函館 特急北斗
・函館8:55発北斗5号、札幌13:27発北斗14号が季節運行(4・10・11月は水・木運休、年間30日程度の運休)となります。
・函館19:54発北斗23号、札幌20:00発北斗24号が廃止となります。運行間隔を調整するために北斗22号、すずらん10号の時刻を変更します。
また、編成を7両編成から5両編成とし、利用に合わせて増結します。(自由席は2両のまま変わらず)
・キハ281系は現行通り3往復で使用しますが、使用号数が変わらなければ季節運行の1往復はキハ281での運行になります。

■札幌-旭川 特急カムイ
・札幌9:30・16:30・旭川14:30・18:30の4往復を土曜休日運転とし、平日は運休します。

■旭川-網走 特急大雪
・全ての「大雪」が季節運行(4・5・10・11月は火・水・木運休、年間50日程度の運休)となります。
・特別快速きたみはほぼ現行通り運行されます。

■旭川-稚内 特急サロベツ
・旭川20:06発サロベツ3号・稚内13:01発サロベツ4号が季節運行(4・5・10・11月は火・水・木運休、年間30日程度の運休)となります。

■札幌-釧路 特急おおぞら
・編成を6両編成から5両編成とし、利用に合わせて増結します。(自由席は2両のまま変わらず)
・キハ283系は現行通り3往復で使用します。

■快速エアポートの土曜休日運休列車
・札幌7:09・8:48・20:18・新千歳空港8:05・9:42・21:07の6本が土曜休日運休となります。

■札幌圏の土曜休日運休列車
・ほしみ-江別の5本(うち1本はエアポートの普通列車区間ふくむ)
・学園都市線2本

■札幌圏の減便列車
・札幌-手稲方面3本(札幌-小樽直通は本数変更無し)
・札幌-千歳・苫小牧4本(1本は統合)

■地方部の減便列車
・旭川22:04滝川行き(代替は旭川19:30発を滝川行きに延伸)
・留萌線3本留萌8:11・13:30・深川19:22(車両運用数を3->2に減少)
・根室線滝川-新得2本
 滝川9:42(富良野行きに変更)・東鹿越12:09
 いずれも東鹿越-新得の代行バスも減便。特に富良野-新得の直行代行便も廃止となる。
・根室線新得-釧路4本帯広10:02・17:52(芽室行きに)・新得10:35・厚内6:14(音別始発に変更)
・宗谷線2本旭川10:33・比布11:52
・石北線1本遠軽16:04

概ね減便列車は利用が少ない列車に限定しているように見えますし、札幌圏に関しては一定の代替も可能かと思いますが、今回特に北海道を鉄道で旅する場合に非常に大きな問題になりそうなのが根室線富良野-新得の減便です。
滝川発釧路行きの長距離普通だった滝川9:42発。現在も富良野で代行バスへ乗り換えることで新得で釧路行きに接続しており、釧路までの普通列車の旅を楽しめました。これが無くなることで、現実的な札幌-釧路の普通列車ルートが消滅と言えます。
逆方向も釧路5時台発で乗り継ぐことができなくなりまして、まぁ、そのような特殊な需要に応える必要はあまりないとは言いながらも厳しい改正内容だなと思っています。

なお当サイト時刻表表示にて、減便、臨時化対象列車を表示していますのでご参照ください
https://timetable.north-tt.com/

駅の廃止と無人化・自治体による管理への移行

■廃止駅
今回18駅を廃止するとしています。
・函館線 1駅
 伊納
・宗谷線 12駅
 南比布
 北比布
 東六線
 北剣淵
 下士別
 北星
 南美深
 紋穂内
 豊清水
 安牛
 上幌延
 徳満
・石北線
 北日ノ出
 将軍山
 東雲
 生野
・釧網線 1駅
 南斜里

多くの駅は本当に利用が無く、影響が少ないことに違いはありません。また、今回は残すメニューもありましたので、残す必要性も沿線自治体も感じていない駅が廃止になったのだという言い方は出来ます。(もちろん予算の問題はあれど、本当に必要なら予算は出せるはずです。必要ないから予算が出せないのです)

■自治体管理に移行する駅
以下の18駅は沿線自治体が駅管理の費用・人的な提供がある形で存続されます。
・宗谷線 17駅
 蘭留
 塩狩
 日進
 智北
 恩根内
 天塩川温泉
 咲来
 筬島
 佐久
 歌内
 問寒別
 糠南
 雄信内
 南幌延
 下沼
 兜沼
 抜海
・石北線 1駅
 瀬戸瀬

逆に言えばこれらの駅は「残った」駅ではありません。利用が少なく、駅の維持ができないとした駅を地元自治体が金を出しても維持したいと考えた駅です。しかし、地域の住民が乗らない、観光客が利用すると言いながら、駅そのものにしか用事が無い、まして車でやって来て写真だけ撮りますでは将来に渡って残すことは難しい。
駅は使う人がいてこそ意味がありますので、これを単に無人の秘境駅が残りましたとその費用を出す自治体、JRにおんぶに抱っこではならない。この駅を残してよかったと思わせる必要があるのだと思うのです。

■駅の無人化
・根室線 1駅
 音別

音別駅は貨物列車の発着があったものの現在は休止となっていて、構内の入替作業もなくなったことで無人化されたものと思われます。


報道

今回は比較的センセーショナルな中身になりましたが、各報道は淡々と事実を書いた感じに見えます。

朝日新聞 2020年12月10日
JR北海道、来春18駅を廃止 18駅は自治体管理へ
https://digital.asahi.com/articles/ASND974K5ND9IIPE00R.html
>島田社長は、新型コロナ収束後も鉄道需要が以前の水準に戻らない可能性があるとして、「『アフターコロナ』も想定し、需要変化に合わせて柔軟に対応できる輸送体制にしたい」と説明した。
 また、この日発表した11月の運輸収入(速報値)は30億1900万円で、前年比49・1%減だった。国の観光支援策「Go To トラベル」などの影響で10月の収入は前年比25・5%減の水準まで回復していたが、新型コロナの感染拡大で減収幅が広がっている。
>駅近くで唯一の宿泊施設「利尻の見える小さなお宿 ばっかす」の宿主、伊東幸(みゆき)さん(53)は「涙が出るくらいうれしい」と喜んだ。駅を利用する宿泊客も多く、廃止が検討されている現状をインターネットで発信。全国の幅広い世代から存続を願う声が市に寄せられた。「地元が試されるのはこれから。地域と行政と一緒に観光を柱とした利活用策を考えていきたい」



この、地域と行政(とJR)が一緒に利用していく、活用していくという形を考えられるならば、残してよかったと誰もが思える時が来ると私も信じています。こういう形の記事になってるのは、批判が多い中でとてもよいと思うのです。

北海道新聞 2020年12月09日
JR北海道、無人18駅廃止 来春、過去最多 特急、4区間で臨時列車化
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/490083
>駅の廃止などで5千万円、減便などで5億7千万円の計約6億2千万円のコスト削減を見込む。島田社長は「コロナ禍で利用が大きく減っており、事業を継続するため固定費の削減は避けられない状況」と理解を求めた。


北海道新聞 2020年12月10日
JR18駅廃止 細る鉄路に不安と諦め 「廃線へ下準備」反発も
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/490100
>JR幹部は今回のダイヤ改正について事前に各自治体に説明。地域によっては減便や臨時列車化に「廃線への下準備ではないか」などの反発もあったが、緊急事態と言える状況だけに「仕方ない」との反応が多かったという。
 ただ、「コロナ収束後には元に戻してもらえるのか」との各地の疑問について、島田社長は会見で「コロナ後の利用状況を見定めながら個別に判断していく」と明言を避けた。「鉄道利用の需要は完全には戻らないことも想定している」とも述べており、減便した列車を元に戻すことは難しいというのが本音だ。



深名線の場合道路代替の難しい駅を先に廃止してからバス転換した経緯もあるので「廃線への下準備」という言われ方も仕方ない面はありますが、廃線をしたくない(先送りする)ためには、とかく毎日出ていく費用を減らす必要はあろうかと思いますので、地元の協力が一定得られた、そういうJRと地元自治体の話し合いが行われる状況までになったということが大事なのかなと思うところです。
利用が多ければ当然列車の本数を戻さざるを得ないので、本当に必要なら利用しなければならないのですね。(そういう意味で、宗谷線の大きな需要段差になる名寄を大幅に改善するのは特急からの乗客転移をある程度見込んでる面もあるかもしれません)

HTBニュース 2020年12月09日
JR北海道ダイヤ改正最終列車繰り上げや減便相次ぐ
https://www.htb.co.jp/news/archives_9567.html



タイトルに「相次ぐ」という言葉を使う意図はわかりませんが、記事中にはそのような表現はありません。

NHK 2020年12月09日
JR北海道が特急減便の内容発表
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20201209/7000027895.html
>すでに地元に説明していた南比布駅など宗谷線や石北線などの18駅の廃止も発表しました。
新型コロナウイルスの感染拡大で経営が厳しさを増しているJRでは、これらの見直しで合わせておよそ6億2000万円の経費を削減できるとしています。
島田社長は「事業の継続のためには固定費を含む経費の削減は避けられず、地域やご利用の皆様にはご理解をいただきたい」と述べました。



今回は各報道も極端に煽った記事は今のところ見ていません。今回の減便改正の理由が「コロナ」であることはわかりきった話ですので、事実を淡々と書くような形にならざるを得ないとも言えそうです。


北海道の交通関係 JR北海道 ダイヤ改正

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