北海道の交通関係


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バス運行について開示されない日高線と、通学バスを運行する留萌線と、いまだ赤字を被り続ける深名線

2021/02/08

今日は2021年2月8日。日高線鵡川-様似の廃止まで2ヶ月を切りました。しかし、いまだにバスの運行に関しての最低限の情報すら地元にも、報道にも開示されていません。

北海道新聞 2021年01月30日
日高線バス転換まで2カ月 車両整備や支援金の議論終わらず
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/506199
>バスの運行ダイヤや運賃は固まり、認可に向けた手続きが進むが、その一方で、日高管内7町は依然として、車両の準備、JR側が拠出する支援金の扱いなどの議論を続けており、「新しい交通体系」の周知は進む気配がない。日常生活に変化が生じる問題だけに地域住民などからは「早く説明するべきだ」との声が上がる。


バスの時刻、運行に関しては昨年の廃線合意のときにJR北海道側から開示され、それを元に廃線に合意したはずですので、そのダイヤや車両の手配、乗務員の手配は一定されているものと認識していますが、この記事を見る限り、車両の発注などは終わっておらず、転換時は寄せ集めの車両で運行が開始されるという前代未聞的な状況になることが確約されたようにも思われます。
ここ最近の廃線では、「転換バス」ではない留萌線留萌-増毛を除けば、石勝線新夕張-夕張も、札沼線北海道医療大学-新十津川(浦臼までのバス新設区間)も新車の投入が行われてテープカットが行われているのですね。

現時点で公表されている日高線転換バス運行系統

・運行事業者
 道南バス・ジェイ・アール北海道バスの2社
・運行系統(はっきりしているもの)
 えりも-苫小牧直通便(1往復新設)
 苫小牧-静内(既存便)
 静内-浦河(既存便)
 浦河-様似(既存便)
 様似-えりも-広尾(既存便)

(北海道新聞の記事内の路線図)
 ここから見る限り
 静内-蓬栄・本桐経由-浦河
 静内-沼ノ端駅経由-苫小牧
 等を想定している模様
・便数
 100便弱(現行の代行バス+路線バスは北海道新聞によると134便)

まだ決まっていないらしいこと

>《1》新規に導入が必要な車両の種類や台数と費用負担
>《2》支援金による車両整備や赤字路線の穴埋め
>《3》2事業者のバスの結節点となるターミナル施設の整備方法

(鵡川駅は現在JRと代行バス、そして旧富内線の転換バスとの乗り継ぎ拠点としてむかわ町が駅施設の支援を行っている)
また、この記事から見る限り、バス乗り継ぎ拠点の整備方法はまだ決まらず、現行のバス運行拠点である静内駅はともかく、富川、浦河に関してはターミナル施設がどうなるのか見えないところでもあります。
さらに、鵡川駅を拠点として使用する観点はなさそうですので、現在の通学便の鵡川接続が今まで通り行われるのかも微妙。そうなると苫小牧-鵡川の輸送密度は大幅に下がりますので、この区間の存廃論議にも影響が現れそうにも見えます。現時点でも道南バスの都市間連絡便は鵡川駅を経由せず、鉄道からの乗り継ぎには配慮されていませんので、同様の運行系統にならないとも限りません。


(富川大町バス停。富川地区にはターミナル的な場所が無く、平取方面から富川南バス停に降り、苫小牧方面へのバス乗り継ぎに1停留所富川大町まで歩くなど不可思議な乗換を放置している実態がある)

(道南バスの一般路線バス)
旅行者にとって、このコロナ渦ではありますが、5月の連休中の移動などを考えた時にこの時期にバスダイヤが一切提供されていないのは、非常に困ることでもあります。そして、JR北海道の企画切符が使用できるジェイ・アール北海道バスの日高管内の扱い、また、その便が苫小牧まで運行されるのか否か、道南バスで使用可能なのか(望みは薄いが)など、今から開示しておくことは重要ではないかとも思うのです。

それは「観光客が日高線で来ていた」と主張し続けていた日高の各首長さんには、その後のバスに乗って地域に来てくれる人を大事にする必要があるはずなのです。バスになったから観光客が来なくなった!とJR叩きの材料にしたところで地域で商売する人は実際に来てくれないと話にならないわけで、今からでも遅くはありませんから早くダイヤと運賃などの情報を出す必要があると思うのです。これは新年度から通学に使用する地元の通学生にも必要なことです。(一足早く地域の学校などに一定の開示がされてると思いたいが)

北海道新聞 苫小牧・日高面 2021年02月05日
<揺れる鉄路>日高線バス転換 7町が協議会 JR拠出金を管理
(WEB配信無し)
> 【浦河】日高管内7町長は4日、町総合文化会館で町長会議を開き「日高地域広域公共交通確保対策協議会」を設立した。JR日高線鵡川―様似間(116キロ)の廃止に伴い4月から運行する転換バスを含む公共交通の維持、JRが運行費用などとして拠出する25億5500万円の管理、運用などを担う。



そして、JR北海道からの拠出金の使い道についていまだに議論している7町ですが、管理用の組織を立ち上げたようです。しかし、それをどう使うかが見えないのがとても辛いことです。本当にこのお金が必要なのは地域でバスを利用する市民そのものです。既存のバスに乗っても、バス停に簡素であっても待合室が設置されているバス停は決して多くは無く、また、駅を待合室代わりに使用できないバス停も多いのですから、特に駅があった地域に関してはそれなりの待合室設備が必要なのは言うまでもありません。しかし、そういう面での話も見えてこないのです。

観光客が、待合室すらないバス停でバスを降りて観光してくれる可能性は皆無です。せめて、各町の代表駅には一定の出迎えスポットを整備する必要がありましょう。

北海道新聞 苫小牧・日高面 2021年02月05日
廃止後の鉄道施設 活用アイデア募集
(WEB配信無し)
>JR北海道から町に譲渡される鉄道関係施設などの活用アイデアを募集している。
 対象は町内にある5カ所の駅舎や駅前広場、線路敷地のほか、駅名板などの備品類。撤去予定の鉄橋や踏切は対象外となる。



なお、駅舎や鉄道施設の活用法に関して日高町は住民向けのアイデア募集を行っているようです。仮に駅舎を残しても、それが意味を持つ施設でなければなりません。

また、JR北海道は地域振興、バス運行費用として拠出する25億円の他に40億円で今後列車の走らない鉄道護岸整備を行う旨の表明を行っています。しかし、これについて記事にしたものは多くはありません。

北海道建設新聞 2019年01月30日
鵡川―様似バス転換なら護岸はJRで 道が検討状況を報告
https://e-kensin.net/news/113397.html
>道の担当者が同席し、JR北海道側の動きとして、鵡川―様似間をバス転換する場合はJRが護岸修繕を検討すると報告。事業費は40億円としている。



廃線後も地域に協力するとしたJR北海道ではありますが、本音としては護岸もやって運行費用も地域振興の経費も負担したからもう関わらないでくれと言ってるように聞こえないでもありません。極端を言えばギャンブルに明け暮れて金を無心してくる親戚に金渡して二度と関わるなと念書押させたような雰囲気に見えないでもありません。(もちろん日高の沿線がギャンブルに明け暮れる親戚とは思いませんが、「JR北海道は、廃線後も地域の交通体系をよりよくするための地域協議に参画する。」なんて怪しげな合意文書ですからね)

ジェイ・アール北海道バス 2021.02.05
今年のダイヤ改正は3月に実施します!
https://www.jrhokkaidobus.com/wp/wp-content/uploads/2021/01/20210129.pdf



ジェイ・アール北海道バスは通常4月に行われるバスダイヤの改正を3月に前倒す発表が行われています。しかも「大幅に運行便数を見直し、一部の路線で最終便が繰り上がります」、これも日高地区への車両、乗務員の転配に関することで札幌圏の一定のリソースを日高に振るという意味にもなります。地方の本数維持のために、利用の比較的多い札幌圏の便数や乗務員を減らすということが行われてしまうということです。現時点でも札幌圏のバスの運転手さんが交代で日高線の代行バスの運転に従事しています。それが広範囲恒久化されるわけですから、札幌圏のダイヤに手を入れざるを得ない。
比較的北海道のバス会社では福利厚生の良いほうのジェイ・アール北海道バスですらこんな状況なのですから、今後の札幌圏の交通の縮減は避けられないということになりそうです。


留萌線の減便対策バス

現状深川-留萌のみが残る留萌線ですが、深川・秩父別・沼田の3自治体が深川-沼田町間の存続を訴え続けている状態です。そんななか、末端部の留萌市は廃線を容認しており、むしろ駅などJR施設跡地の活用法に舵を切っている状況です。

北海道新聞 留萌・宗谷面 2021年02月03日
<揺れる鉄路>留萌線 北空知3市町、JRと協議へ 留萌市はバス転換急ぐ
(WEB配信無し)
>留萌市は大きな地元負担がかかる同線の存続を既に諦めており、廃止後のJR用地の再開発議論に取りかかっている。北空知3市町が、国や道が同線に支援をしない方針を変えない中でも部分存続を求め続け、議論が進まない現状にしびれを切らしたとみられる。
 中西市長は会合後の取材に対し、部分存続については「個人的には難しい」と改めてJR側から受けた感触を示した。留萌市としては、議論が長引くほどに「廃線後の支援策が縮む」ことを懸念。「地元のバス会社に対する国の支援をもらえるようにしたい」と、早期にJRとの協議を開始したい意向を示した。



留萌市にしてみれば、現時点で高校の通学にも通院にも使うことができない留萌線は不要施設であって、むしろ減便が続いている沿線路線バスへの支援で一本化し、増発することでの利便性確保に動きたいという意向であるように思われます。現時点でも留萌-深川-旭川の路線バスは地域間幹線系統確保維持費国庫補助金対象路線で、現実に補助を受けた運行ではあるのですが、これも足切りがありますので、本数が増えた場合に最低限の利用数を維持できるかという問題もあります。
留萌市にしてみますと市が単独で補助するものも含めて、将来的にも移動が可能な状態にすることが最優先であると判断したことになりましょう。

北海道新聞 留萌・宗谷面 2021年01月28日
留萌市公共施設「駅周辺に」 検討会議で市民から多くの声 廃止後も「にぎわい創出」見据え 「国道沿いに集積」の意見も
(WEB配信無し)
>市が「たたき台」として会合で示した都市計画では、駅周辺に商業施設やバスターミナルを集積させたエリアを整備し、「新施設を『まちの顔』となる中核施設にしたい」と説明。深川留萌道の留萌インターチェンジに近く、国道沿いにある道の駅るもいを含めたJR留萌駅敷地に文化活動や運動ができる公共施設を新設することで「にぎわい創出」を図るとしている。



留萌線の利用促進のために駅付近に公共施設を作る話なのかと思ったら、既に廃止後の跡地活用法として協議されているということですので。もはや「早く廃止してくれ」状態であることになりましょう。

北海道新聞 中・北空知面 2021年02月03日
<揺れる鉄路>深川―沼田部分存続 JR再び「厳しい」 協議 停滞感強まる 留萌市離脱 北空知側立場苦しく
(WEB配信無し)
>国からJRに行う1302億円の支援の対象から留萌線が外れている上、新型コロナウイルス禍でJRの経営悪化が続く現状での存続への道筋は、一層厳しいものとなっている。



以前の記事にも書いていますが、国からJRに支援されるものにJRが単独維持できないとされる「黄色線区」すら含まれていない状態で、留萌線が含まれるわけもなく、むしろ200人という基準を悪目立ちさせて存続を言うなど恥ずかしくないのかねという話ではあるのですが、その路線の利用方法も、マトモな支援策もなくただ理想を言ったところで存続はできません。地域が支援金負担を出せるのか?というのにすら答えていない以上、路線を残せる可能性はかなり低いと言わざるを得ません。

北海道新聞 2021年02月03日
廃止予定の深川発列車、JRが代替バス運行検討 部活帰りの高校生に配慮
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/507932
>JR北海道が留萌線で3月に廃止予定の深川午後7時22分発留萌行き普通列車について、代替バスの運行を検討していることを明らかにした。沿線の高校生の利用が多く、沿線自治体などが存続を求めていた。道は、JRに対し「利用者の目線に立った事業運営を進めるよう求めた」と述べた。



そんななかで、3月のダイヤ改正から減便を予定している深川発19時台の列車に代わりJRが代替バスを出すことが報道されました。現時点でも深川発の滝川方面通学列車への定期券利用者専用接続バスをJR負担で出しており、これと同様の形になろうかと思われます。このバスに関しては北海道の強い働きかけがあったように伺えますが、裏を返せば沼田までの通学生以外の利用は無い、彼らにとってもバスでも困らないということを道として裏付けているという意味でもありましょう。


(JRが滝川方面への列車接続のために運行している通学バス。定期券所持者のみが利用可能で、現在は事業者が変わっている)
以前も書きましたが、深川-沼田に関しては19時台の路線バスが廃止になり、実質的に路線バスでの通学はできない現状があります。駅から離れた地域の生徒が現実に通学できない状況を放置して、ことさらJRの減便だけを問題視したわけで、本当に利用者に寄り添っていないのは誰なのですか?という疑念は覚えるところです。

北海道新聞 2021年02月02日
留萌線減便反対 札幌で署名活動 鉄路存続を求める会
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/507175
>札幌駅前では同会のメンバー約40人が「公共交通機関としての責務を果たせ」などと声を上げ、署名を集めた。



また、市民団体と言いながら政党や労働組合を隠さずパフォーマンスとしてこのようなことを行う「市民団体」にも嫌悪感があります。現実に利用があれば廃止の話にはならないのです。


とはいえ、空知、留萌の道路は地吹雪に見舞われ、冬期は非常に厳しい道であることも考慮の必要があります。しかしながら留萌線並行バスは大きな問題も無く運行しているのも事実です。


深名線バスに見る鉄道廃線後の街

さて、深川市にとって、鉄道廃線は深名線の時にも協議してきていますので、その頃にどう話を進めて、どうJRから支援を受けたのか?というのをもう一度紐解いてみます。ソースになるのは北海道新聞の過去記事をデータベース検索してのものですので、若干視点のずれも感じますが。

(深名線バス)

北海道新聞 空知面1995/12/11
<95空知この1年 記者ノートから>2 消えた鉄路 住民論議詰められず バス転換にも不安残る
(WEB配信無し)
>特に深川では、沿線の多度志地区だけの問題と見られがちで、「地域の足」をどう守るかという観点での市民の広い論議が欠けていた。
>転換の「見返り」として一キロ換算で約九百万円の振興寄付金がJRから沿線各自治体に贈られることにはなったが、結局、「廃止交渉はJR側のペース」(深川市関係者)で終始した。



深名線はJR化後の転換ということもあり、非常に同意を得るのに難航した路線。1km900万円という「振興寄付金」は国鉄時代の転換交付金である1kmあたり3,000万円より大幅に減額されたものの、深川市には約3億円が交付されたことになります。しかし、この金額ではこれを担保にバスの赤字補助を行うことは不可能であり、深名線の交渉ではJR北海道がそのまま深名線バスを運行することにし、バスの年間赤字額1億円を負担し続けるという形での廃止となりました。

ちなみに1994年の函館線上砂川支線のときは7.3kmほどの路線に1億円ほどの振興支援金を支出しているようですが、ここは並行バス路線が充実しており、改めてのバス転換ではなかったということがあります。ですのでJR北海道はバス転換に関する支援を行っていないことになります。

深名線のバスは転換初年度こそ鉄道時代と変わらぬ利用客となり、便数増や停留所の増加で利便は高まったものの、多度志付近で競合する北空知バス(現空知中央バス)との関係で深川市内のバス停が制限されたことについても批判が噴出。交付金を支出した以上バス停の待合室や暖房に関しては当然運行事業者ではなく地元自治体が負担しなければならないことでもあるのですが、それを知ってか知らずか批判するような記事になっています。


(JR北海道からの地域振興支援金で建てられた深名線バス多度志停留所。暖房とトイレの設備がある)

北海道新聞 1995/12/02
<波動>深名線バス初の冬 過疎…客足伸びず 停留所の位置、暖房設置 届かぬ利用者の声
(WEB配信無し)
>「停留所などの問題は、バスが実際に運行するまで行政まかせだった。それというのも、バスなら(運行に関して)もっと簡単に地域の声を吸い上げてもらえると思っていたから」と話すのに対し、市幹部からは「バス転換にあたって、各地域とは(鉄道廃止に伴うJRの寄付金などを使って)コミュニティー施設を整備するなどの合意をしており、こうした方面に力を入れるのが筋だ」との声も聞かれる。
 だが、一日当たりのバスの総利用者は、鉄道時代とほとんど変わらない三百人台。便数が増えただけに、一本当たりの乗客数は当然減り、次に待ち構えるのは「乗客が極端に少なければ減便もやむを得ない」(別の市幹部)とする、いつか来た“縮小の道”だ。
 住民側は「鉄道廃止の方便としてのバスではなかったはず。地域の足としての位置付けを真剣に考えてほしい。便数減の論議より前に、利用者を増やす努力が先だ」と危機感を訴え、河野順吉・深川市長は「確かに施設や道路整備、それに跡地問題に気をとられ過ぎ、利用者の細かな要望を吸い上げてこなかった」と反省する。
 峰岸政義・幌加内町長も「旧駅舎の暖房方法は検討中。細かい要望もできるだけすくい上げるように努め、(名寄市を含めた)三市町で構成する深名線バス連絡協議会に図りたい」と話すが、バス減便による「地域の足」切り捨てを繰り返さないために、何より求められるのは地元自治体の真剣な取り組みだ。



2001年には、バスの赤字額が想定より大幅に上がったこともあり、減便と地元バス会社委託を行うという報道がされました。

北海道新聞 2001/11/27
代替バス3割減便へ 旧JR深名線 北空知バスに委託
(WEB配信無し)
>JR深名線代替バス(深川-名寄)を約三割減便し、運行を北空知バス(本社・深川)に委託する方針を固め、沿線三市町でつくるJR北海道バス深名線連絡協議会(会長・河野順吉深川市長)に受け入れを要請した。空知管内幌加内町は同日、受け入れを表明。深川、名寄両市も同調する考えで、同協議会は今月末までに最終結論をまとめ回答する。減便は早ければ二月にも実施される。
 同線の減便は一九九五年の転換以来初めてで、鉄道の代替バスが一度に約三割減便するのは「道内では例がない」(道運輸局)という。また、ジェイ・アール北海道バスが地元のバス会社に運行を委託するのも初めて。
 同線は現在、深川-幌加内間を十往復、幌加内-名寄間を六往復、幌加内-朱鞠内間を二往復運行している。乗客は減少傾向にあり、二〇〇〇年の一日平均乗客数は二百四十八人、営業赤字は二億三百万円に上る。
 このため、ジェイ・アール北海道バスは深川-幌加内間を七往復、幌加内-名寄間を四往復、幌加内-朱鞠内間を上り一便とする計画を提示。幌加内町などは、幌加内-名寄間の休日を三往復とする代わりに、幌加内-朱鞠内の平日を一往復と上り一便とするよう提案する。



しかし、結局この案はうまくいかなかったようで、名寄に営業拠点がある道北バス委託となりました。北空知バス(空知中央バス)なら、少なくとも多度志地区のバスに関しての統合ができ、深川市内の営業所やターミナル設備の共用化ができたろうとも思うのですが、補助のある路線と、JR単独で赤字を見ている深名線の区分けが難しいなどの問題があったのかもしれません。


(空知中央バス多度志バス停。決してこちらの本数も多くはない。)

北海道新聞 2002/09/12
JRバス 旧深名線の代替路線運行 道北バスに委託
(WEB配信無し)
 【旭川】ジェイ・アール北海道バス(本社・札幌)は十一日、旧JR深名線の代替バス(深川-名寄間)の運行管理を道北バス(同・旭川)に委託することで合意し、旭川市内のホテルで調印式を行った。
 JRバスが他のバス会社に運行管理を委託するのは初めて。
 合意によると、代替バスはJRバスの車両を使い、道北バスが運転、運行管理、車両整備などの委託を受ける。平日二十六便の便数やダイヤ、料金は変わらない。十二月から運行予定だ。JRバスの小森宏明社長は「今後も地域の足を守っていく」と路線存続の方針を強調した。
 代替バスは、一九九五年のJR深名線廃止に伴い、JR北海道が運行を始め、二〇〇〇年に分社化したJRバスが引き継いだ。
 一日当たりの利用者数は、沿線人口の減少とともに減り続け、八月の乗降客は二百十六人で列車を運行していた時の六割。
 JRバス側は不採算路線の経費削減と経営効率化のため、名寄市に営業拠点を持つ道北バスに委託を持ち掛けていた。



JR北海道の深名線バスの赤字負担は当初1億円を目安だったものが、最大では2億円以上、2005年には8000万円まで圧縮できたと。しかしながら、転換から25年以上経った現在も年間1億円程度の赤字を負担しながら運行を続けているのです。今までの赤字負担額は30億円を下ることはないでしょう。

北海道新聞 旭川・上川面 2016/11/15
幌加内―旭川間 無料送迎車「ほろみん号」 町、有料化移行を検討 来年度から 「接続便」新設も JRバスと競合課題
(WEB配信無し)
> 【幌加内】幌加内―旭川間の公共交通路線の開設を目指す町は、町民を対象に同区間で試験運行している無料送迎車「ほろみん号」について、2017年度から有料の本格運行に移行し、町内全域の住民が利用できるよう、新たな接続便を無料で運行する検討を始めた。接続便の運行は、旧JR深名線廃止に伴いジェイ・アール北海道バス(札幌)が名寄―幌加内―深川間で運行する代替バス路線と重なることから、実現に向けた今後の協議は曲折も考えられる。
> これに対しジェイ・アール北海道バスは、深名線上下26便(土日祝日は21便)について、1日平均乗車人員は1996年度の302人から年々減少し、02年の減便後も年間1億円前後の営業赤字が続く厳しい経営状況を説明。ダイヤの見直しも人員体制などから難色を示した。会合後、同社は「深名線の現状を説明した。接続便案は初めて聞いた」と述べるにとどまった。



幌加内町は住民から要望が多かった幌加内-旭川の無料送迎を有料化、さらに深名線バスが運行される区間にも接続便を無料運行することとなります。この運行は道の補助金でのもの。年間の経費は1千万円ほど。
幌加内町にとって深名線バスは町が一銭も負担すること無くJR北海道が赤字を負担して「将来も運行をし続けてくれるもの」という意識があるものと思われます。その中で、バスと並行して走る無料接続便(その後直行便化)などというものを設定すればどうなるのかは火を見るより明らかなことです。もちろん、この幌加内町の施策は、2010年より幌加内町が上川振興局管内に編入されたことで空知振興局である深川よりも旭川への需要が高まったことに関することであって、必ずしも町のやり方を批判できるものではありません。

北海道新聞 旭川・上川面 2020/08/05
深名線バスを支援 幌加内町 回数券購入に補助
(WEB配信無し)
 【幌加内】町は、新型コロナウイルスの影響で収入が落ち込んでいるジェイ・アール北海道バス「深名(しんめい)線」(深川駅前―幌加内―名寄駅前)の利用促進を図るため、町民と幌加内高生を対象に回数券購入費として、1冊当たり500円を補助する。
 回数券は1冊千円で1100円分乗車できる。補助は3千冊分で、町が通常価格で買い取った上で、1日から500円で販売を開始した。



やっと始まった自治体からのバス支援ですが、正直遅すぎる感もあって、地元のこのような形が続くなら、転換30年の2025年度あたりにはさらなる減便、もしくは撤退を申し入れる形にはならざるを得ないものと思われます。

深川市 地域公共交通網形成計画(平成28年・2016年)
https://www.city.fukagawa.lg.jp/cms/section/kikaku/uo2pli000000xxrr-att/uo2pli000000xyhz.pdf
平成17年-幌加内から深川への通学23人
平成22年-その他としてまとめられる
平成25年の深名線利用者数3万5000人(1日95人)



深川市の資料ですが、この時期より朝3台で運行していたバスが2台になるなど現れない減便も行われています。多度志地区に関してはいつまでも2社のバスが運行可能であるか、また、経由違いの複数便を維持できるかというのも考えなければならなさそうに思われます。

JR北海道が、深名線転換後の支援年数をどの程度で予定していたのかは私に知る由もありませんが、札沼線や日高線、留萌線の転換バス支援金を18年程度で見繕ってる理由は深名線の転換を急ぐあまり毎年の負担が重いことについて、内部的に限度を決めるべきと認識したものと思われます。
ただ、無人地帯を走るわけではない日高線、人口は少なくなったとはいえ拠点地域である留萌を結ぶ留萌線はまだバス運行に関してマシという形でもありましょう。

地域に住まない私としては、各地域がどのような結論を出したとしても、興味を持って乗りに行く位しかできないのですが、最も大事な地域の人が便利を感じることができ、将来孫の代でも通学ができる交通網を残していくこと。これがとても大事なことと思います。そしてそのためには「オレは乗らないけど誰か乗るんでしょ」ではダメで、住民一人一人が我が事として交通網を考える必要があるのだと思います。最もダメなことは誰かが負担してくれて客が0でも走るべきだ!という感覚です。今後運輸従事者が少なくなる中、バスの運転手も取り合いになる。積雪寒冷地のバス自動運転なんて数年では無理で、それができたところで客が0の路線に公的私的な支援が集まることは「あり得ない」ことから考えなければならないのだと思うのです。

北海道の交通関係 JR北海道 日高線 留萌線 深名線 路線維持問題

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