北海道の交通関係

さようなら日高線(鵡川-様似)その1

2021/04/03

3月31日の夜21:59様似着の9237便の到着をもって、日高線の鵡川-様似間はJR北海道としての営業を終了し、廃止となりました。
日高線に関しては、当サイトでも何度か取り上げて、鉄道としての復旧を結果的に選択できなかったことは本当に残念であり、同じ廃線を迎えることになったとしても、これほどまでに寂しいことにはならなかったのではないかと思うところではありますが、廃線までの経緯は今更ではありますので、ご興味のある方は当サイトの過去記事をお読みいただければなと思います。

(節婦築港踏切を渡る樽前観光バスのJR日高線列車代行バス)

代替バスの告知も地域の想いが見られない

鉄道からバスへの代替交通は、特に4月から新年度ということもありますから、沿線の通学の高校生には大きくかかわることですし、実際に利用する可能性がある通院や所用で訪問する方など、すべての人が興味深く思ったはずです。

特に通学便に関しては、学校に通うために家を出る時間をどう設定するかは大事であって、興味のあるところでしょう。また、定期運賃の鉄道定期との差額補助が既存の生徒には行われることが発表されていますが、新年度の新1年生はどうなのかなど、肝心な部分は見えないままとなっていました。

また、新しいバス路線としてえりもから苫小牧に直通する便が設定されることは発表されていましたが、これが後から完全予約制であることが発表されるのも含めて「使おう」と思っている人が困惑する事態となります。


●バスダイヤの発表
日高管内の各自治体が4月1日以降のバスダイヤを発表したのは3月19日です。最初から2週間前に発表すればそれでいいという考えだったのかはわかりませんが、その後日高管内全世帯にこの時刻表が配布されています。

浦河町
日高地域広域公共バス時刻表を作成しました
https://www.town.urakawa.hokkaido.jp/kurashi/20210401hidakatiikikouikikoukyoubasu.html
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_01.pdf



予約制の便もあり、せめて1か月前には一定の時刻が出てきてほしいと思ったのですが、この詳しい時刻が発表されるまで、沿線自治体からも各バス会社からもはっきりした情報が出てこなかったのです。



2021年2月18日に、まずはバス転換に関して日高の7町とJR北海道の協議がまとまって記者発表となったものが出てきました。

JR北海道
「日高線バス転換後の新たな交通体系案の概要」(2021年2月18日JR日高線バス転換に係る概要についての合同記者発表)
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/region/pdf/20210401_Hidaka_bus_conversion.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_02.pdf



ここでは概略の路線図だけが出てきましたので、系統として詳しいものでななく、既存の路線バスとの関係、高速都市間バスとの関係も全く伺い知ることはできませんでした。えりも-苫小牧の都市間バスが「とまも号」という名称であることはここで初めて発表されましたが、その設定時刻も発表されませんでした。転換バスの新車台数が9台ということも発表されましたが、残念ながらその新車は今発注しても4月1日には間に合わないことははっきりしています。

北海道新聞 2021年02月18日
日高線転換バスの概要発表 日高町村会やJRが合同会見
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/512967
>平日の運行便数は転換バス、路線バスなどを合わせて1日134便から98便に減少する。



北海道新聞報道では本数だけが発表され、減便になることを示唆しています。

日高報知新聞 2021年02月20日
転換バス運行概要発表
http://www.hokkaido-nl.jp/article/20797
>①静内高校や苫小牧市内の高校への登校バス6便新設や既存路線バスの高校乗り入れなど、通学生の利便性の向上
>②停留所の10カ所増設(「新冠農協前」、新ひだか町「西端生活館」「日高東別」「蓬栄」「本桐」、浦河町「常盤通」「浦河小学校」「大通4丁目」「新緑橋」「緑町」)、低床バス化(新車9台予定)により、日常の通院や買い物利用の利便性の向上
>③時間帯により短絡ルート(国道経由)と市街地立ち寄りルートを使い分け、きめ細かなニーズに対応
>④えりも~苫小牧間を、様似で列車に乗り継いでいた時と同等の3時間50分で結ぶ直行の特急バス(特急とまも号・1日1往復・予約制)を新設



日高報知新聞ではもう少し詳しいものが出てきました。新設停留所と、通学時間帯の便に関しての発表がありました。

北海道新聞 2021年02月21日
10停留所新設、利便性に期待 日高線転換バス 通学、通院、買い物配慮
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/513832




北海道新聞の日高面に掲載された記事になります。JR北海道発表資料よりは詳しい概略路線図と系統について掲載されました。ここで、はじめて道南バスの静内-浦河老人ホームの既存路線とジェイ・アール北海道バスが静内-様似・えりもの新設路線が競合することがわかりました。この2路線が定期券などが共通乗車になるのかどうかも記事からはわからないような状況です。

ただし、この時点ではバス路線に関する認可が降りていないので確定的な発表ができないところは考慮する必要があるかもしれません。

また、2月20日ころよりジェイ・アール北海道バスの札幌圏路線図が配布され始めており、そこにえりも-苫小牧の「とまも号」そして浦河-新千歳空港の「ひだか優駿号」の記載があり、この2路線がジェイ・アール北海道バス運行であることがわかりました。「ひだか優駿号」は道南バス運行から移管されます。

浦河町
広報うらかわ3月号
https://www.town.urakawa.hokkaido.jp/kouhou/2021/files/03/P02-04.pdf




2月28日に広報うらかわ3月号が浦河町サイトで公開され、ここで初めて「ひだか優駿号」が土曜・休日のみ運行であることがわかりました。また、「とまも号」の時刻もわかり、えりも発早朝、苫小牧発14時という1往復運行であることがわかりました。

新冠町
広報にいかっぷ3月号
https://www.niikappu.jp/gyose/koho/kohoshi/documents/K653-6.pdf




3月15日に広報にいかっぷ3月号が公開、ここで一部の通学便と、「とまも号」が沼ノ端駅北口に停車し、苫小牧-新千歳空港のバスに接続することも発表されます。「ひだか優駿号」が土曜休日運行になることは、このことが要因であろうとも思われます。

3月16日にやっとジェイ・アール北海道バスが一部の便の時刻を発表します。

ジェイ・アール北海道バス 2021年3月15日
2021年4月1日「高速えりも号」のダイヤを改正します!
https://www.jrhokkaidobus.com/wp/wp-content/uploads/2021/03/20210315-3.pdf



なんと、これは今思えば、4月1日からのダイヤ改正配布時刻表の「裏面」だけを発表したものです。この面に都市間バスの時刻を掲載しているために、なし崩し的に休日の一般路線バスの時刻も発表になりましたが、表面の平日一般路線時刻を「わざと発表しない」という対応になります。ここで初めて「ひだか優駿号」の南千歳駅に経由しないことと乗降制限が行われて鵡川-浦河間の区間乗車ができないことがわかりました。

ジェイ・アール北海道バス 2021年3月16日
2021年4月1日に日勝線のダイヤを改正します
https://www.jrhokkaidobus.com/wp/wp-content/uploads/2021/03/20210316.pdf
https://www.jrhokkaidobus.com/pdf/timetable/2021_spr/nissho.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_03.pdf
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_04.pdf



ジェイ・アール北海道バスの改正の概略が発表されました。この時点では道南バスは公式サイトでは一切の改正時刻を案内していませんでした。

道南バス 2021年3月19日
2021年4月1日 日高管内ダイヤ改正について
(短縮URL)
http://u0u1.net/vn2O
https://www.donanbus.co.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/%E2%91%AB%E6%97%A5%E9%AB%98.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_06.pdf




道南バスは結局7町の時刻表と同時の3月19日に発表されました。これが、一応は各町とのお約束だったのだとは思います。しかし、「ひだか優駿号」に関しては移管ではなく「廃止」と明言するあたり、他社との協力あっての地域輸送と思うのですが、他社のことは全く無視ですよという形なのは、正直あまりいい印象は持ちません。また、ジェイ・アール北海道バスが公式サイトでも「日高地域広域公共バス時刻表」へのリンクを行っているのに対し。道南バスは行っておらず、特に静内以南は「知ってる人だけ」がわかる時刻表になっているのは非常に問題だと思います。


これで時刻表は終わりかと思いましたら、さらに出てきました

ジェイ・アール北海道バス 2021年3月23日
特急ひだか優駿号のりばお知らせ
https://www.jrhokkaidobus.com/wp/wp-content/uploads/2021/03/210322.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_05.pdf



道南バスが高速ペガサス号とひだか優駿号だけで使用していた「浦河ターミナル」について、ジェイ・アール北海道バスは使用せずに、浦河高校前バス停からの発車(案内上は浦河ターミナル)となることが、このタイミングで発表されるって、一体どうなってるんだろう?


さて、その「日高地域広域公共バス時刻表」ですが、全停留所の時刻を掲載しているのは非常に良いとは思うのですが、各社、各系統ごとの表示になっており、全体的にこの地域にどのようばバスがあって、どう乗り継げるのか、とてもわかりにくいものになりました。
当サイトでは、当初これをまとめた時刻表を作成しようと思いました。また、ネット上では有志による時刻表作成を試みた方が多数おられました。



しかし、草の根の活動、ネットでの活動は、それを見ている人だけにしか伝わりません。今回JR北海道は公式サイトでこのようなものを出してきました。

JR北海道
日高線 鵡川~様似間 廃止に伴う新しい広域公共交通について
日高地域の新しい広域公共交通の概要および時刻表
https://www.jrhokkaido.co.jp/hidakasen/index.html
https://www.jrhokkaido.co.jp/hidakasen/pdf/20210401_Hidaka_Overview.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_07.pdf




これは非常に素晴らしいものです。このような総合的な時刻表は、ネット上の草の根活動ではよく見かけますし、実際このような時刻表が最も使いやすいのはわかっているはずです。この時刻表の発表がJR北海道の好意なのか、自治体の要望なのかはわかりませんが、特に外部から日高を訪問する目的がある場合、自治体の発行した時刻表は概略がつかみにくく、土地勘が無い場合どう利用していいか分からない面があります。しかし、この時刻表なら、なんとか使えると思うのです。惜しむならばペガサス号がコロナ過で減便しているのは触れられていませんので、必ずそれを確認する必要があることです。また、JR北海道としての運行が残る苫小牧-鵡川間の鉄道時刻も掲載されません。今回、静内方面から鵡川止まりのバスがあり、苫小牧方面へは必ず鉄道への乗り継ぎが必要です。鉄道も含めた時刻表ではないと不便この上ないのです。

4月24日追記:
JR北海道は4月20日ころから上記サイト内で
日高地域の新しい広域公共交通と列車との接続時刻表
https://www.jrhokkaido.co.jp/hidakasen/pdf/20210416_Hidaka_Connection_Timetable.pdf
を公開しました。各方面への鉄道接続時刻も掲載した意欲的なものです。
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_11.pdf


また、日高地域の新しい広域公共交通の概要および時刻表もペガサス号の運休を記載したものに更新されています。
https://www.jrhokkaido.co.jp/hidakasen/pdf/20210416_Hidaka_Overview.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_12.pdf

今後もこの体裁の時刻表を発行し続けるのか?という面は気になるところです。




運賃差と定期運賃の補償

JR日高線から代替バスへの移行時に問題になりそうなのが運賃面です。
当サイトが独自に作成した旧JR日高線区間の鉄道とバスの運賃比較表を掲載します。
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_08.pdf
残念ながら、ジェイ・アール北海道バスも道南バスも細かい運賃については掲載が無く、ジェイ・アール北海道バスは運賃検索機能をWEBに用意していますが、道南バスに関してはサイト内にその情報はなさそうです。

おおむね鉄道時代より運賃が安い地域が多くなっています。これは道南バスの賃率が北海道内の各バス会社の中でも安く、たとえば苫小牧-静内(約83㎞)のバス運賃1,500円はJR東日本の幹線運賃とほぼ同額となります。しかし、定期運賃に関しては、JRの高校生通学定期の割引率が非常に高いこともあって、その差が出ます。
荻伏-静内で見ますと、バス運賃はJR時代より70円安い900円ですが、高校生の定期運賃は1か月26,640円で、JR時代の12,630円の倍以上となります。

この運賃差をバス転換の合意事項としてJR北海道が補償することを発表しています。

日高町
広報日高3月号
JR北海道からのご案内
http://www.town.hidaka.hokkaido.jp/uploaded/attachment/10080.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_09.pdf



しかし補償が受けられるのは現在就学している生徒の在学期間のみ(3月31日現在現在高校1年生なら3年生までの2年間分)の補償となり、新1年生は適用されません。

なお、旧国鉄の廃止路線などでも、同様の補償が行われており、今回もそれに倣ったものです。しかし、国鉄時代の多くの廃線路線はその後も地域の自治体独自の補助制度で運賃を割り引いていることがほとんどです。
また、新ひだか町は2018年から町内の高校生58人にJR定期券を6か月×2枚を全額補助し現物で支給しています。バスでも同様の給付事業が行われることを広報誌で発表しています。

新ひだか町
広報新ひだか3月号
JR日高線
https://www.shinhidaka-hokkaido.jp/koho/pdf/1084_69283417.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_10.pdf



ここではじめて道南バスとジェイ・アール北海道バスの並行区間のバス定期券が共通化されることが発表されています。バス会社の発表内容でも「日高地域広域公共バス時刻表」でも、そのことは記載がありません。2社が並行して走るバス路線の定期券や乗車券類がどう扱われるかはとても大事な項目です。本来は公式的に発表されるべきことでしょう。


ここまでに、かなり紙面を割いてしまいました。次回、廃止直前に沿線を訪問し、また4月1日に代替バスに実際に乗車してみましたので紹介したいと思います。
https://traffic.north-tt.com/09_article.php?article=1034

北海道の交通関係 JR北海道 日高線

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