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北海道の交通関係
北海道の交通関係サイト終了のお知らせ
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北海道新幹線延伸区間の並行在来線問題経緯を改めて振り返ってみる
2021/05/02
北海道新幹線の延伸区間である新函館北斗-札幌は約211kmと長大で、完成した暁には沿線を走る在来線の函館本線はJR北海道の経営から切り離されます。この事実は今わかったことではなく、これを飲んで、調印しているからこそ北海道新幹線は建設されているのですね。(なお、過去の状況を説明するにあたって、当時時点で新青森・新函館北斗駅等の駅名は決まっていなかったが、この項では各現在の名称で記載する)
整備新幹線の建設条件
北海道新幹線も含まれる「整備新幹線」についておさらいしておきましょう。東海道・山陽新幹線の整備は当時も不要論が渦巻く中、作られてしまえば利便は高く、その高速性が認められることになります。掌を返したように新幹線を全国に波及させるべく考え出されたのが「全国新幹線鉄道整備法」であり「整備新幹線」という仕組みになります。まだ、東北新幹線・上越新幹線ですら開業前の1970年に作られたこの法律は、首都圏に近く、在来線の運行が逼迫しており「在来線の線増」というその当時作られていた新幹線の観点から離れ、地方の輸送力的には逼迫していないが、遅く、災害の多い鉄道を「敷き直す」観点があったとも言えます。もう一つは陰謀論的な公共事業の確保という意味も出てきましょうが、専門性が求められ、地場の建設業者が加わることの難しい新幹線事業は、地方の公共事業投資としてはそれほど旨みはありません。
整備新幹線として整備計画が決定した路線は
・東北新幹線 盛岡-青森(新青森) 開通済
・北海道新幹線 青森(新青森)-札幌 新函館北斗まで開通済
・北陸新幹線 東京-大阪(長野・富山・金沢経由) 金沢まで開通済
・九州新幹線 博多-鹿児島(鹿児島中央) 開通済
・九州新幹線 博多-長崎 武雄温泉-長崎が2022年開通予定
であります。あくまで個人的に、時間短縮効果が限られ、乗換を要し、博多方の整備方法もろくに決められていない長崎新幹線が国土基幹となる北海道より優先的に整備されたことは、地域エゴを取り除いたとしても若干の疑問がありますが、ともかく、地域が熱望して、建設されたことは喜ばしいことであります。
また、ここでは触れませんが、東京-大阪の中央リニア新幹線も法律的には「全国新幹線鉄道整備法」に基づく路線になります。
この整備新幹線事業、1970年に施行されて既に50年も経過するのに、まだここで設定された路線が完成していないということは、この事業に反対する意見が多く、建設認可されるのが遅かったということが上げられます。
さらに国は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」で当時の運輸大臣が公示した区間があり、新幹線建設が進めばさらに「北海道南回り新幹線(室蘭・苫小牧経由)」「羽越新幹線(富山-青森)」「奥羽新幹線(福島-山形-秋田)」などが開通していた可能性がありましょう。一部は在来線改良のミニ新幹線として走っていますが、峠越えに踏切まで残り、法律的に新幹線ではありませんので、時短効果が無い、単に乗換を廃した形になっています。(もちろんこれは次善の策として仕方なかったとも言えましょう)
整備新幹線が進まなかった最も大きな理由は建設財源と採算性の問題です。
北海道新聞 1988/07/15
運輸省が整備新幹線の収支試算 北陸新幹線の採算性が優位
>東北新幹線の「盛岡-八戸」間、北陸新幹線の「高崎-長野」間、九州新幹線の「博多-熊本」間のうち、六年後に収支が好転するのは北陸だけであることがわかった。
国鉄が分割民営化された直後の運輸省の試算でも収支が合わないとされていたわけです。これは北海道どころか、盛岡-八戸といったレベルでそうだったということで、整備新幹線専門委員会でも、協議されることになります。
ただ、この時点では整備費用の全額を国が拠出する(この部分が国鉄時代に国鉄が整備した既存新幹線とは大きく異なる)前提によるもので、国の負担額を抑えた「公共事業方式」による建設も検討、これに地元自治体が反対するのは言うまでもありません。
また、90年代に入ると上場を控えたJR本州3社の一部負担も示唆され、結局は財源問題と収益問題で整備新幹線計画が動かなかったと言えるかと思います。
1991/08/23 北海道新聞
新幹線3線の着工認可-軽井沢~長野、97年完成へ
村岡運輸相は二十二日、日本鉄道建設公団が申請していた東北新幹線盛岡-青森間、北陸新幹線軽井沢-長野間、九州新幹線鹿児島ルート八代(熊本)-西鹿児島間の整備新幹線三線の工事実施計画を認め、岡田宏鉄建公団総裁に認可証を手渡した。
北陸新幹線は1998年の長野冬期オリンピックに間に合わせるという判断が大きく、当時から採算面で有利とされていた北陸だけを工事する事の理解を得にくいことから東北新幹線はミニ新幹線も視野に、九州はスーパー特急区間として工事を開始するという一種玉虫色的な決着で工事が開始されます。
このあとは北海道・東北新幹線について言及しますが、1995年にはミニ新幹線として建設が開始された東北新幹線盛岡-八戸をフル規格新幹線に格上げ、一旦着工した(ほとんど工事は行っていない)区間を未着工にしてでもフル規格に拘ったことがわかります。ここをミニ規格にされると、現在の新幹線規格の車両が入れず、速度も在来線並に制約されますので、北海道への延伸の可能性はゼロとなります。つまり政治的には整備費用などの面で「着工」を勝ち取り、あとから変更することでなんとか「新幹線」のままに北へ向かわせるんだという強い意志を感じますし、ここで着工を勝ち取らなければ北陸のみに財源を充てられ、建設できないというギリギリを攻めた形になります。
さて、新青森以北の北海道新幹線の建設は、2002年に東北新幹線が八戸まで開業した中でも、まだ必要性の議論を行っている状況で着工には至っていませんでした。
2003/02/21 北海道新聞
<国会から>道新幹線実現の見通しは 鉢呂吉雄衆院議員(北海道8区、民主党)
> ◇鉢呂吉雄衆院議員(北海道8区、民主党)
「新幹線は無駄な公共事業のように言われますが、道内の主要都市間の移動には鉄道が適しています。他の交通機関に比べ環境に優しいなど利点は多く、世界各国で新幹線は注目されてます」
このほど衆院国土交通委員会の筆頭理事に就任。北海道新幹線の実現に向け意欲を燃やしている。
「これまで国の新幹線整備は計画性がなく政治の思惑に左右されてきましたが、今国会に提出される社会資本整備重点計画法が成立すれば、長期計画に沿って整備されることになります。事業が認められるよう必要性を訴えていきたい」
2004/04/29 北海道新聞
整備新幹線推進へ民主議員の会発足 50人が参加
> 金田誠一衆院議員ら民主党の有志でつくる「整備新幹線を推進する議員の会」が二十八日、国会内で設立総会を開いた。北海道新幹線・新函館-新青森などの二○○五年度着工方針を固めた与党に対し、民主党内には「新幹線=ムダな公共事業」との見方がなお強く、党内の「誤解を解く」(金田氏)ことも大きな課題となる。
当時の政権与党自民党がある程度整備に積極的になるのは当然として、野党民主党ですら道内選出議員が整備新幹線推進の声を上げる状況になります。
また、札幌までの一括開業や、新青森・新函館北斗の一括開業を目指すものの、結局は区間を分けての着工となり、2005年に新青森-函館区間の北海道新幹線は着工を迎ることになります。
そしてさまざまな政治判断の中2009年度から新函館北斗以北も着工も決まっていた中、政権交代で暗雲が漂うことになります。先の通り民主党議員の中でも整備新幹線に推進を叫ぶ議員はいつつも、残念ながら当時の民主党上層部はそうはおもっていなかったわけですね。
2009/10/17 北海道新聞
新幹線札幌延伸「白紙」 前原国交相が明言
> 前原誠司国土交通相は16日の記者会見で、前政権下で本年度中の着工が決まっていた北海道新幹線・札幌-長万部など整備新幹線の未着工3区間について「全くの白紙」とした上で、「自公政権の合意にとらわれない」と述べ、新政権として今後の方針を再検討する考えを示した。
もう一つの問題は、新幹線開業後経営分離される在来線の問題。逆にいうとこれが解決しなければ、着工できないということになります。財源や採算性が厳しく議論され、民主党政権下でも結果的に新幹線の必要性が認識され、最終的には予算確保がされ、着工できる条件が整いつつあった2011年、最後に残っていた条件が在来線分離問題でした。
2011/12/21 北海道新聞 号外
北海道新幹線 札幌延伸着工へ 在来線分離 函館市長が同意
> 北海道新幹線の札幌延伸に伴い、JR北海道が並行在来線として函館-小樽間(253キロ)を経営分離する問題で、沿線15市町のうち唯一、判断を保留していた函館市の工藤寿樹市長は21日、函館-新函館(仮称)間の経営分離に同意する考えを表明した。これにより政府が掲げる着工条件が整ったため、同新幹線新函館-札幌間は来年度に着工される見通しとなった。政府は近く北海道新幹線を含む整備新幹線で未整備の3区間の着工を決定する。札幌延伸の工期は20~25年程度。
さて、改めて整備新幹線の整備要件を見てみましょう。
整備新幹線は「鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下鉄道・運輸機構)」が新幹線施設を建設、保有します。その設備をJRに貸し付けて運行します。この方法は俗に「上下分離方式」と言われるものと同じです。
建設財源については、国が3分の2、地方自治体が3分の1を負担します。この負担も条件の一つです。これは整備新幹線が少なくとも「国の借金」で建設されていないということです。ただ、国債としての借金ではないものの、鉄道・運輸機構が将来JR各社から受け取る貸付料も前倒して建設費としている面は理解する必要があります。ですので、言い方を変えればJRも建設費を負担している(将来も負担する)とも言い換えることもできましょう。
国土交通省
新幹線鉄道について◆整備新幹線について
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr1_000041.html
>整備新幹線の基本条件
1.安定的な財源見通しの確保
2.収支採算性
3.投資効果
4.営業主体であるJRの同意
5.並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意
この5項目は新幹線が無駄な公共事業の批判に晒された中、建設の財源がない、収支が合わない、投資したメリットが得られないという批判をひとつひとつクリアした要件です。JRとしても、将来的に儲からないのなら新幹線の運行を拒否できます。今新幹線工事を行っているということは、将来的にはJRそのものも利益を得ることができると試算できるから同意していると言えます。
また、収支採算性ならJRの30年平均が黒字であるとか、投資効果はB/C値1以上など、かなり厳しい算定基準となっています。現在運行している北海道新幹線が赤字というのは、乗客の数そのものよりも特殊な構造を余儀なくされ、青函トンネルの維持管理費用も含まれる上、新青森以北という短い区間だけで収支を出す以上、ある程度当然で、東北新幹線が八戸以北だけを取り上げて黒字か?といえば公表こそされていませんが黒字では無いと思われます。ある程度全線を見て考えなければならないところです。
また、JR北海道の収支では減価償却費用が負担になっている(新幹線で設備投資したものが大きい)ことも理由の一つですので、単純な赤黒の話ではありません。30年平均というのを入れてあるのは、このような短期的なものを考えなくて済むという意味では、まだ救いがあるとも言えます。
そして、最後が並行在来線の経営分離です。単純に、新幹線に利用客が移転すれば並行路線の利用客は大幅に減りますので、JRが両方を運営するのは避けたいことです。ここでは合法的に経営を分離できる方策を考えたわけですね。
これを在来線切り捨てというのは簡単ですが、逆な言い方をすれば、今まで走っていた特急列車等でダイヤが自由にならなかったものに対し、増発や時刻変更が簡便に行える「地域の鉄道」として利便を上げることも可能という言い方も出来ます。
ただ、ここで問題になるのが貨物列車の話になります。貨物列車は全国が線路として繋がっていて初めてネットワークを構築できますので、経営分離で廃線になってしまうと貨物をトラックなどに積み替える必要があります。なので「鉄道」として維持されることを求めます。
現在整備新幹線により「鉄道として廃止」になった区間は北陸新幹線並行の横川-軽井沢のみで、ここは急勾配のため廃止時に貨物列車が走っておらず、バスによる転換となりました。
2000/08/03 北海道新聞
新幹線は公共事業じゃない? 道議会特別委 共産が推進姿勢 自民からは異例の声援
> 道議会の新幹線・総合交通対策特別委員会で二日、共産党の大橋晃氏(札幌市東区)が「環境保護のうえで、鉄道の優位性は高い」などと道新幹線建設推進の立場から、財源問題などへの道の取り組み強化を要望。いつもなら、大企業優先を理由に巨大公共事業に批判的な同党の変身ぶりに、自民党議員から「その通り」と異例の声援が飛んだ。
なお、大型公共事業に消極的で批判を行っている共産党も道議会では新幹線への期待や環境面の優位は理解されているということで、少なくとも北海道内の各自治体においては北海道新幹線への反対の声というのは低いものだったと言えそうです。
(赤井川村にある新幹線工事杭)
北海道新幹線並行在来線(木古内-五稜郭)の経営分離
北海道新幹線で並行在来線の経営分離の話が最初に出てきたのは1996年の関係各社ヒアリングの時です。このときはJR東日本も津軽線の青森-中小国の経営分離の意向を示しています。1996/04/04 北海道新聞
江差線の経営分離 JR北海道 道新幹線の開通後に
> JR北海道の大森義弘社長は四日、連立与党の整備新幹線検討委員会での関係各社のヒアリングで、同社が北海道新幹線の優先着工区間に挙げている函館-青森間が開通した場合、一部区間が並行するJR江差線(五稜郭-江差)全線の経営を分離したいとの意向を表明した。
同社が線名を具体的に挙げて並行在来線の取り扱いに言及したのは初めて。貨物輸送は「(青函トンネルを除いて)貨物列車は在来線を走ってほしい」と述べた。経営分離後も第三セクター化などでの存続を想定しているとみられる。
また、優先着工区間について「フル規格で整備し、青函トンネルを最大限活用されたい」と要請、建設費分担では「健全経営を確保するため、受益の範囲で応分の負担をしたい」との考えをあらためて示した。
JR東日本は、北海道新幹線関連で津軽海峡線の一部に含まれる津軽線(青森-中小国)の経営を分離する意向を示した。
2005/04/08 北海道新聞
江差線の経営分離 国交省に同意伝達 函館など1市2町
> 【函館、上磯、木古内】函館市と渡島管内上磯、木古内両町は、北海道新幹線と並行する在来線のJR江差線・五稜郭-木古内間の経営分離について同意するとの文書を八日までに国土交通省に送った。
新函館北斗までの着工を前に沿線3市町は経営分離に同意し結果着工となります。これが解決しなければ着工できないということですので、かなり重みのある判断になります。
2009年には木古内町は第三セクター鉄道に出資しないと発言し、第三セクター化そのものも暗礁に乗り上げる事態となります。
北海道新聞 2009/04/26
<鉄道かバスか 平行在来線の行方>下 それぞれの事情 需要、財政…迫る決断
>存続望む北斗市
だが、沿線三市町の行政、議会関係者の反応は、少しずつ違っている。
今月まとまった将来収支予測の調査では、江差線利用者の八割以上が、北斗市の上磯-七重浜の各駅と函館市の五稜郭駅か函館駅で乗り降りしていた。多くは北斗市民。沿線の上磯中では、今春の卒業生の58%に当たる百二十八人が函館市内の学校に進学した。
こうした状況から、北斗市の海老沢順三市長は取材に対し「鉄道を残したい」とあらためて言明。同市議会の小泉征男議長も「赤字が少ない方をという短絡的な選択ではなく、住民の利便性を考えたい」と、残す道を探る立場だ。
>「参加は難しい」
一方、木古内町の大森伊佐緒町長は「町財政に大きく負担がかかる事業になるとするならば、三セク鉄道への参加は難しい」と述べ、鉄道運営に消極的な姿勢を見せる。
2010/11/29 北海道新聞
<社説>並行在来線 もう後回しにはできぬ
>道がこれまで誘致活動を優先して後回しにしてきた並行在来線の問題に真剣に向き合う時ではないか。
新幹線建設により並行在来線がJRの重荷となる場合、経営から分離するのがルールとなっている。問題は、並行在来線の定義自体があいまいなことだ。
> 函館市は、新幹線の新函館駅が北斗市にできることを了承し、新幹線乗り入れも断念した。函館駅開発に巨額の市費を投じたのに、この上、新幹線へのアクセスまで不確かになるのでは怒るのも無理はない。
道は函館市に、函館-新函館のアクセス拡充に努めると表明した責任がある。
> 待ったなしの課題もある。新函館駅開業に伴い、JRから経営分離される江差線木古内-五稜郭(函館市)間は、分離後の運行形態が決まらないままだ。
道は第三セクターによる鉄道経営など数パターンの収支予測を示した。赤字が最も少ないのはバス転換だが、その場合でも貨物専用に鉄路を存続させる必要があるだろう。
全国で並行在来線を経営する第三セクターは、いずれも累積赤字に苦しんでいる。北海道にとって一層不利なのは、長大な路線の沿線人口が少ないのに、物流の動脈としての鉄道を廃止できない点だ。
この当時の道新社説は非常にキレがよいし、論説委員氏も非常によく勉強していると思う。道民が思う、マニアが思う疑念がこの社説に凝縮されていて、今ネットで読めないのが残念。また、当時の世論醸成にもこのような社説や記事は当時の環境下ではかなり重要な役割を果たしていました。
2011/10/27 北海道新聞
木古内-五稜郭バス転換 並行在来線旅客 道、地元提案へ
>並行在来線の江差線木古内-五稜郭間(38キロ)の旅客輸送について、道はバス路線への転換を沿線自治体に提案することが26日、分かった。収支予測を踏まえ、バス転換が道と沿線市町による公共負担がもっとも少ないことから最善と判断したとみられる。
> 道はこれまでの協議で、第三セクター方式による鉄道維持やバス転換など5方式の収支予測を提示。鉄道の場合、初期投資も含めた30年間の公共負担額は69億5千万円、毎年の赤字額の累積が40億6千万円となるとし、バス転換の場合はそれぞれ15億9千万円、1億7千万円との試算を示している。
そして北海道は江差線木古内-五稜郭間もバス転換の提案を行うことになります。路線としては残るものの貨物専用線とし、地元は負担しないという形です。現実的に並行バス路線が存在することもそれを後押ししたと言えましょう。
2011/12/07 北海道新聞
並行在来線 木古内-五稜郭 三セクで路線保有 道、鉄路維持を検討
> 2015年度の北海道新幹線新青森-新函館(仮称)開業に伴い、JR北海道から経営分離される江差線木古内-五稜郭間(38キロ)について、道は6日、道を主体とする第三セクターを設立し、JR撤退後の線路などの鉄道設備を保有する方針を明らかにした。また、分離後の旅客事業の形態については「鉄道方式」とすることを示唆。これにより、道が当初提案した「バス転換」は撤回される可能性が濃厚になった。
結果的には現状の第三セクター鉄道道南いさりび鉄道として存続することになりますが、木古内-五稜郭という決して長くなく、沿線自治体数も少ない中ですら、そこに至るまでに相当な紆余曲折があったことは理解する必要がありましょう。
2012/02/15 北海道新聞
<北海道新幹線>JR江差線存続 道が8割負担 バス転換一転 鉄道維持へ 地元反発で道譲歩
>JR江差線の木古内-五稜郭間(並行在来線)をめぐる動き
2002年 8月 道が並行在来線を三セク鉄道とする方針と、九州新幹線で負担割合を県など85%、市町村15%とした例を示す
04年 9月 並行在来線を三セク鉄道として維持する方向性を道が沿線自治体に再度示す
05年 4月 沿線自治体がJRからの経営分離への同意を国土交通省に文書で伝える
5月 北海道新幹線が着工
7月 道と函館市、旧上磯町(現北斗市)、木古内町が並行在来線対策協議会を設置
10年 5月 道が経営分離後の交通確保策として鉄道からバスまで五つの選択肢を示す
11年10月 道が、旅客輸送をバスに全面転換し、費用負担を道と2市1町で1対1とすることを提案
12年 1月 道がバス転換案を撤回し、あらためて鉄道存続方針を打ち出す
15年度末 北海道新幹線が新函館まで開業予定
ちなみにこの第三セクター合意も2012年5月まで先送りされ、かなり薄氷の妥結となった形になります。なお、2005年にはJR東日本は津軽線の分離は別会社であり行わないと表明しています。
2012/05/02 北海道新聞
<北海道新幹線>22%負担受諾へ JR江差線 木古内町長が表明
>JR江差線五稜郭―木古内間を鉄道方式とする場合の沿線自治体の負担割合について、大森伊佐緒町長が「これ以上、町の負担割合を下げるのは厳しいと判断、22%負担で鉄路を存続し、住民の足を確保する腹構えをした」と述べ、道が示した22%を受け入れる考えを示し、特別委も了承した。
結果的に江差線の第三セクター転換は負担額を北海道8割、市町村2割とし、うち、函館・木古内22%、北斗市56%として決定します。
(木古内駅に停車する道南いさりび鉄道の車両。JR北海道から譲り受けたキハ40型は製造から40年近く経過)
また、江差線の木古内-五稜郭の経営分離後に「飛び地」となる木古内-江差はJR北海道の支援金も得られることから大きな反発も無く2013年3月に廃止に調印、2014年5月に廃線となりました。この区間は並行バス路線が無く、新規のバス運行になりましたが、停留所の増設、高校までの路線延伸等の改善もあり、鉄道より利用を伸ばしたという報道もありました(これに関しては江差町内区間など、鉄道代替部分以外の利用客の数が入っているのでは?という疑念を持っている)
北海道新幹線並行在来線(函館-長万部)の経営分離
新函館北斗-札幌の建設に関しては、その当時、まだ江差線区間の経営分離問題が解決しない中、当時の政権与党である民主党が着工を認める方針になったことを受けて、先の整備新幹線推進基本条件5条件のうち、並行在来線の分離問題だけが残ってしまったことになります。五稜郭-長万部は東室蘭周りでの札幌方面への貨物列車が数多く運行されてる区間であり、貨物列車運行問題と、北海道新幹線へのアクセス問題が切り離せない路線になります。
(八雲駅に到着する特急北斗)
2011/12/16 北海道新聞
在来線経営分離 国、道を敵に回せぬ 同意か否か 函館苦悩 「たった2日で決定無理」
> 北海道新幹線の札幌延伸について、民主党が15日、来年度着工を認める方針を固めたことで、着工条件の一つである並行在来線の経営分離に関する沿線自治体の同意が焦点になっている。態度を表明していない函館市は、経済団体などが反対を表明し調整はなお難航。これに対し、札幌の経済界や経営分離に同意した沿線自治体は民主党の方針を歓迎し、政府の正式決定への期待感が広がった。
函館市と地元経済界は函館-新函館北斗は「並行在来線」ではないとしてJR北海道による運行を求め、既に経営分離に同意している近隣自治体との軋轢も高まっているという報道です。函館市は函館市内の経済団体11団体に急遽意見を求めたが結局意見を一本化できず、また、北海道内の経済界からは「民主党の気が変わる前に決めないと、また建設認可が先送りされる」という懸念があったのも実態と思われます。
2011/12/21 北海道新聞
函館市 分離同意 並行在来線 道新幹線 札幌延伸へ 沿線15市町そろう
>函館市の工藤寿樹市長は21日午前、函館市役所で記者会見し、函館-新函館(仮称)間(18キロ)の分離について「熟慮に熟慮を重ねた上で同意するという判断に至った」との考えを表明した。沿線全自治体が同意したことで政府の求める着工5条件が整い、北海道新幹線の新函館-札幌間は来年度までに着工される見通しとなった。
>工藤市長は会見で「道が第三セクターの設立や負担について最大限努力するとしており、高橋はるみ知事の決意も直接聞いた。JRも電化するほか、経営分離前と同等のサービスを維持するとしており、これ以上の支援協力は難しい」などと、同意の理由を語った。
>経営分離問題をめぐって道とJR北海道は13日、函館-新函館間で分離後に第三セクター鉄道を設立し、支援策としてJRが列車の運行を受託し、道は三セクを主体的に運営することなどを函館市に提案。
さて、ここで重要な文言が出てきました。北海道の提案では函館-新函館北斗の運行は「JR北海道」が行うということです。実質的な上下分離ですね。現実的にJR北海道としても使用者にとっても東京・札幌-新函館北斗-函館の運賃通算ができないのは不利でありますし、多少の加算運賃などの制度があっても全国のJRの発券システムで購入できる方が良いと考えるのは自然だとも思います。
その函館市は、並行在来線第三セクター鉄道に関して、函館市が関わらない区間の経営に参画しないという表明を行いました。JRからの分離、第三セクターへの同意はするが、他の町の鉄道は知らんという表明と受け取られちょっとした騒ぎになります。
2012/02/21 北海道新聞
分離の並行在来線 新函館―小樽 函館市 経営参画せず 沿線自治体ではない 多額の費用負担懸念
>並行在来線の函館―小樽間(253キロ)のうち新函館(北斗市、仮称)―小樽間(235キロ)について、函館市は20日の市議会総務委員会で「当市は沿線自治体ではないので、経営に参画することにならない」として、この区間で鉄道を残す場合の第三セクターの経営には関与しない意向を明らかにした。経営参加は函館―新函館間(18キロ)の第三セクターに限定する。
>同区間を道が1994年に函館市内への新幹線乗り入れを約束した「特別な区間」として、「並行在来線」との言葉は避け、新函館以北との違いを強調。工藤寿樹市長も同月の市議会で函館―新函館間を「新幹線利用者を市内に運ぶアクセス路線」と説明していた。
これに関しては、函館-新函館北斗の利用が見込め、運営もJR北海道が行うことを半ば飲ませたこの区間以外は、利用も少なく、しかも貨物列車の多い区間であることも考えると「関わりたくない」と考えたと言えましょう。もちろんこれに関しては他の自治体から猛反発が出ます。特に江差線3セクでも沿線となり、新函館北斗駅の存在する北斗市との軋轢が非常に大きくなるという状況が現れます。
2012/06/29 北海道新聞
道新幹線札幌延伸 認可 国交相 35年度開業予定 来月にも起工式
>着工認可へ向けては昨年末の政府与党合意を受け、国交省設置の有識者会議が収支採算性と投資効果をあらためて確認。並行在来線分離の地元合意など、5月末には事務手続きを終えるめどがついていたが、参院問責決議を受けた前田武志・前国交相が6月初めに退任。認可のタイミングについて、消費税増税関連法案の衆院採決をめぐり緊迫する国会情勢を注視する状態が続いていた。
とはいえ、当時の政権与党である民主党のごたごたもありつつも、なんとか2012年度内に起工式を行うこととなります。
函館市が、ここまで調印に渋った理由は、北海道と函館市が1994年に交わした「新幹線車両の現函館駅乗り入れ」についての覚書があります。
これは、北海道新幹線のルートについて、1994年に函館市が現駅停車を市議会で決議、もともとの計画であった当時の大野町(渡島大野駅)案に反対し、これは当時「新幹線建設促進道南地方期成会」で基本的に北海道庁に白紙委任した経緯を無視した地域エゴと周辺町の反発となります。もちろん、この状況では「地元意見がそろっていない」となりますので、国の工事認可を得られない、当然その結果北海道新幹線は遠のくという道の危機感がありました。
最終的に北海道は渡島大野案を採用。しかし、このときに玉虫色的に「新幹線車両の現函館駅乗り入れ」の覚書をかわすことになります。
1994/10/28 北海道新聞
道新幹線 現函館駅乗り入れ 地元の責任で検討
>新駅のJR渡島大野駅と現函館駅とのアクセスについては、地元の責任において在来線の三線化、電化を図り、新幹線車両の現駅乗り入れを検討していくことで一致した、と述べた。
(2003年に開業した現函館駅)
しかし、この時は、函館への建設を与党内ですら得ることはできませんでした。
1994/12/15 北海道新聞
新幹線検討委最終報告書 「青森-函館間」盛り込まず 地元調整難航が原因
>自民党がまとめた「申し合わせ案」では、ル-ト公表のための調査や環境影響評価実施に加えて、さらに次の段階として「当面、青森-函館間の工事計画を策定する」という内容が盛り込まれていた。
これに対して社会、さきがけの両党が異論をはさんだ。道の地元調整が完了したとはいえ、函館市付近の駅位置について函館市議会が今年七月、現函館駅を新幹線駅とするよう求める決議を行い、地元調整が難航したことなどがその理由だ。
函館市は「地元調整が完了したことは与党にも説明し、理解を得ているはず」として「函館市議会の決議などよりも財源問題ではないか」と強弁したようですが、札幌への延伸を考えると函館現駅への乗り入れは難しく、ここまでのごたごたを見せつけられては、有力な政治家を輩出していない状況でのパワーバランスでは函館開業すら棚上げ(しかもスーパー特急案までこの当時出ていて、函館市は現駅に停車することになるならスーパー特急も容認と発言するなど、札幌延伸を悲願とする北海道とも、周辺自治体とも軋轢を強めることになります。
また、2003年の函館駅新築に際しても、暫定的な新幹線ホームが盛り込まれたとされていますが、結果的に新函館北斗駅アクセスは在来線車両によるアクセス列車となりました。
(函館駅に停車する「はこだてライナー」。新幹線開業を前にJR北海道は函館(五稜郭)-新函館北斗を電化し、電車にて運行される)
話は前後しますが、また、北海道庁としても函館-新函館北斗のJR北海道からの経営分離を再考するようJRに要請しています。
2010/11/13 北海道新聞
函館-新函館の経営分離 高橋知事、JRに再考要請 道新幹線
> 北海道新幹線の札幌延伸に伴う並行在来線の函館-新函館(北斗市)間の経営分離問題で、高橋はるみ知事がJR北海道に対し、同区間の分離方針を再考するよう要請したことが、12日分かった。沿線自治体による経営分離への同意は着工の条件で、「分離不同意」を表明している函館市とJRの対立が続く限り、着工は実現しない。道はこれまで、JRと函館市の「調整役」に徹してきたが、事態打開に向け、中立的立場を転換した。
これもあって、函館市は道庁も経営分離に反対であるという確証を得たことが、いざ札幌延伸工事の前提になる2012年の並行在来線分離問題で函館市が強気に出ていた要因の一つではありましょう。結果的に函館駅への新幹線乗り入れは道庁により反故にされ、期限が迫ってお尻に火が付いた状態で道庁は「おわび」せざるを得なくなります。
2011/12/19 北海道新聞
在来線分離 函館市長、週内にも判断 高橋知事、会談で同意要請
> 会談は非公開で行われた。知事は会談で、道が新幹線の函館駅乗り入れに関する1994年の函館市との覚書を2005年に撤回したことを「心からおわび申し上げる」と述べた。道が13日に提示した分離後の三セクに関しては、道が「設立に向けての手続きを主体的に行う」「負担割合についても主体的な役割を果たす」とし、「責任を持ってやる」と明言した。
その上で、知事は「道南各町は延伸を切望している。函館の判断を、ぜひお願いできれば」と述べ、今週中にも政府が延伸着工を判断することを踏まえ、早期の回答を要請した。三セク運営などで、道から具体的な提案はなかったもようだ。
さて、2016年に北海道新幹線新函館北斗開業、そして札幌への建設が進む中、並行在来線問題は解決していない状態のままであります。
2019/08/07 北海道新聞
<北海道新幹線>並行在来線函館―長万部間 今後20年で 修繕・更新に57億円必要 JR、対策協渡島会議で公表*存廃論議が加速も
>JRが示した函館線函館―長万部駅間の現状と今後の見通し
収支 2017年度の赤字は約62億円。前年度比で6億円以上悪化
トンネルなどの修繕 20年間で25億円必要
車両の更新 20年間で32億円必要
駅別乗車人員 平均10人以下が16駅
運行本数 17年4月で1日141本
輸送密度 17年度で3712人
北海道と沿線自治体は2011年から北海道新幹線並行在来線対策協議会を開いており、函館-長万部の渡島ブロックは令和3年4月21日までに8回開催されています。形的には今年9月の10回会議で方向性の決定という形までは決まっているようですが、あくまで議事録を見る限り、そのあたりの醸成が進んでいる感じが全く見られません。
北海道
函館線(函館・小樽間)について(北海道新幹線並行在来線対策協議会)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/skt/heizai.htm (リンク切れ)
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/heizai.html
ただ、江差線のようにここでも、なんとなく流れて、なんとなく三セクが立ち上がるのかなぁと見えないでもありません。仮にこの区間、バス転換となりますと(函館市だけが新函館北斗-函館の三セクを持ったとして)なって、JR貨物がこの区間を自社で線路を維持してまで貨物列車を残すという仕掛けには多分しないだろうとも思うところであります。これは、江差線区間がそうならなかったという意味でもあります。
現在の国交省の方策としても、貨物会社が路線を持つことをあまり考えていない。地域が自前三セクを立ち上げて、それに補填していく方向を模索するだろうとも思います。
ただし、長万部町など函館近郊以外の町にしてみれば、町内の行き来に鉄道の必要性は現状ほとんどなく、不要であるという言い方をするのは仕方のない部分でしょう。
2021/04/27 北海道新聞
並行在来線 大幅赤字予測 輸送密度 廃線基準200人以下 沿線協議会 「単独では維持困難」に 各自治体 「具体的負担額提示を」
>道が示した2060年度までの将来需要予測によると、函館―新函館北斗間の輸送密度は、2030年度の5592人から、30年後には2963人に減少。新函館北斗―長万部間は30年度が195人で、30年後には半減以下の81人になるとした。200人以下は、JRが「単独では維持困難」と位置づけ、そもそもバス転換を検討するレベル。収支予測でも、函館―長万部間を《1》第三セクター方式で維持《2》全線バス転換《3》函館―新函館北斗は三セクで維持し、それ以外はバス転換―のいずれの場合でも大幅な赤字が続くとした。
この項では何度も書いているように、JRからの在来線経営分離が新幹線建設の要件の一つでありますので、どのような結果になろうとも、JR北海道はこの区間の運営からは手を引くこと、その時に函館-新函館北斗だけは上下分離の形で運営にはかかわる可能性があること。この部分は今後もいろいろな記事、いろいろな意見が出ることでしょうが押さえておきたいものです。(そういう意味では現在の道南いさりび鉄道との一体経営が難しいとも言えるかもしれません)
北海道新幹線並行在来線(長万部-小樽)の経営分離
現状で貨物列車の走らない長万部-小樽の並行在来線問題に関しては、最も早く「JR北海道による経営存続」を要望していたのが余市町でした。並行在来線経営分離では、小樽-札幌がJR北海道の運営のまま変わらないというのが、長万部以南地域と違うところです。並行在来線は必ずJRの運営から切り離さなければならないわけではなく、鹿児島線の博多-八代154.1㎞、川内-鹿児島中央46.1㎞、信越線の高崎-横川29.7㎞、篠ノ井-長野9.3㎞がJR運営のまま残されています。また、開業前ですが西九州新幹線並行在来線の肥前山口-諫早60.8㎞は地元が設備を保有し、新幹線開業後23年間はJR九州が運営するという上下分離方式を導入することが決まっています。この問題については報道もかなり詳しく取り上げています。
2011/12/20 北海道新聞(札幌地方面)
<現代かわら版>新幹線並行在来線 経営分離の謎 札幌-小樽は特別?
>北海道新幹線の札幌延伸後も、札幌-小樽間の運行を引き続き自社で担う理由についてJR北海道は、「札幌圏での一体的な輸送体系」-を挙げる。
札幌を挟んで小樽、岩見沢、新千歳空港方面に多数の旅客が移動していることに加え、「札幌と道内各地を結ぶ特急列車などの車両基地が手稲にあることも理由」(広報部)と説明する。
>ただ、札幌圏は鉄道利用者も多く、別の見方も成り立つ。北海道教育大札幌校の武田泉准教授(環境・交通政策論)は「並行在来線を運行する第三セクター会社の収入確保を最大の目標にするのなら、利益が出る札幌-小樽間は三セクが持つことが望ましい」と指摘。
「手稲の車両基地に加え、桑園からは学園都市線もあり、三セクが札幌-小樽間を持つことで、JR北海道から線路の使用料を得られる」とみる。
>仮に札幌-小樽間を三セクが運営すれば、黒字区間の利益で赤字路線を維持する経営手法も可能となる。
ただ、この記事でいう、札幌-小樽の在来線利益で、他の区間の赤字補填ができるほどの収益は得られないのは今となっては「常識」で、記事としては「大ウソ」となります。現実的に札幌圏の運行を三セクが、無関係の札沼線からの乗り入れ、新千歳空港からの乗り入れや手稲の車両基地への入出庫まで管制する状況を想像すれば、この区間を三セク化することは北海道の鉄道網をずたずたにしてしまう危険があり、識者として登場する北海道教育大札幌校の武田泉准教授は正直この程度の認識で答えないでほしいなとも思います。
2011/11/23 北海道新聞
経営分離同意 月末までに 道新幹線並行在来線 道、15市町村に要求
> 【仁木】北海道新幹線札幌延伸に伴い、JR北海道が経営分離する方針を決めている並行在来線の函館線(函館-小樽間)について、道が後志管内8市町村を含む沿線15市町村に、今月末までに経営分離に同意するよう求めていることが22日、分かった。同日開かれた仁木町議会全員協議会で、道新幹線対策室が明らかにした。
北海道は同様に在来線の経営分離について沿線自治体の同意を求めます。12月には小樽市が早々に同意を表明、根元部分で分離に同意されてしまっては、戦うのは難しいのも現状ではあります。
また、余市商工会議所も同意に賛成をと迫ることになります。「札幌延伸は地域の活性化、経済発展に大きく寄与する。経営分離への同意について早急な判断をお願いしたい」
2011/12/16 北海道新聞(小樽・後志)
並行在来線の経営分離 町議に同意論広がる 余市
>15日に開かれた町議会議員協議会では、「ここまで来て、新幹線に反対できない」と、同意もやむを得ないとの意見が複数の議員から上がった。反対一色だった前回の協議会に比べ、同意に理解を示すムードが広がった。
2011/12/17 北海道新聞
在来線分離 回答先送り 余市 経済団体 同意後押し 高橋知事、水面下で協力要請
>後志管内余市町の嶋保町長が16日、道に同意を伝えた。町内の反対論が強く、町長選のしこりも残る中、高橋はるみ知事が水面下で動き、町内の経済団体や区会役員らが賛成にかじを切り、同意にこぎつけた。
> 町内にはそのころ、沿線自治体が相次いで同意する中、着工条件の経営分離に余市が反対して札幌延伸が不可能になれば、「余市が悪者になる」「道内経済への影響も大きい」との声も出始めた。
北海道庁にとって新幹線札幌延伸は悲願であり、ここを逃せばさらに先送り、もしくは、もう二度とこんな機運はないかもしれないと焦る気持ちがあったのは否めません。自民党推薦で当選している当時の高橋知事から見ても、民主党政権下で、彼らが必要性を理解し、予算の確保はできると判断されたものを反故にした場合のことを考えた時に、余市や函館の反対で延伸できなかったという形はどうしても避けたかった。直接各地へ乗り込んでの「説得工作」は功を奏したと言えましょう。ただ、大事なのは並行在来線問題を完全に解決したうえで押印させたわけではないということです。
さて、長万部-小樽に関しても、このあとも在来線維持に向けた署名活動もされていきますが、結局
2012/09/08 北海道新聞(小樽・後志)
開業5年前に方向性 並行在来線対策協が確認
>協議会には沿線15市町が参加し、後志管内から8市町の首長らが出席。開業5年前をめどに鉄道存続やバス転換などの方向性を決める方針を確認した。
要は先送りしたということになります。そして、当初2035年開業に向けていた札幌開業は5年程度の前倒しとなっていますので、2025年には決定していなければならないことになります。
2019/09/05 北海道新聞(小樽・後志)
老朽化の橋、トンネル集中 長万部―小樽 在来線修繕に64億円 JR試算 貨物運行なく更新進まず
>長万部―小樽間は函館―長万部間と異なりJR貨物の線路使用料が見込めず、収入はより限定的となる。このため後志管内の沿線自治体の中には鉄路維持を求める声の一方、バス転換の容認論もあり、足並みは必ずしもそろっていない。
>築100年以上の鉄道施設(長万部―小樽間)
余市―小樽 橋9カ所 トンネル7カ所
倶知安―余市 橋25カ所 トンネル2カ所
蘭越―倶知安 橋7カ所 トンネル2カ所
長万部―蘭越 橋16カ所 トンネル2カ所
長万部-小樽は特急も、貨物列車も走りません。
また、室蘭本線周りのう回路としての機能を声高に言う方はおられますが、実際には線路容量も、牽引定数的にも足りないのは明白です(2000年の有珠山噴火時も有効長10両編成程度で、1列車に50個程度のコンテナしか積めず5往復が限度と、輸送量が1/10となった。結果、長万部にトラック積み替え基地、また船舶輸送で7割程度まで回復させることになる)
「災害時」用に輸送力を維持するならば、そのために長大な設備を平時も維持する必要があります。それがすべて第三セクター会社に付け変わることになります。
(長万部駅に入ってきた貨物列車。機関車1両で20両以上の貨車、100個以上のコンテナを運ぶ)
2021/04/21 北海道新聞
新幹線延伸時 在来線存続なら約28億円の赤字 長万部―小樽 道が試算
>道は、北海道新幹線札幌延伸時にJR北海道から経営分離される並行在来線の函館線函館―小樽間(287・8キロ)のうち、長万部―小樽間(140・2キロ)について第三セクターによる運営で鉄道を存続した場合、毎年27億~28億円程度の赤字となるとの試算をまとめた。現状より約4億円の赤字拡大となる。道は21日に開く後志管内の沿線自治体との協議会で公表する。
赤字額について私が何ともいう事はないのですが、その中で必要ならば負担してでも維持できるだろうし、必要ないと思えば別な手段の方が利便が高いということで、理解できるところです。元幹線であり駅の数が少ないこともあって、必ずしも地域の人が使いやすい路線ではないという面は考慮する必要はありましょう。
2021/04/22 北海道新聞(小樽・後志)
<北海道新幹線>「輸送多く 維持が適切」 小樽―余市 余市町長、存続へ意欲
>――余市町としての理想的な結論は。
「輸送人員の観点からは鉄路を維持するのが適切ではないか。人口(減少の)予測もあるので、総合的に議論を深めるべきだ」
――JR線としての存続も模索するのか。
「(新幹線着工時に)経営分離を認めるサインはしているが、JRとも話をすべきだと思っている。コストだけを考えたらJR単独で維持できる可能性もあるのでは」
ただ、現町長は調印した当時の町長ではないことを百歩譲っても、サインはしているが、その内容に意味はない、今からでも引っ繰り返せるといういう意識があるならば、余市町と仕事をしようと今後思う会社は無いだろうし、そんな無責任な町長を選んでしまった町民はかわいそうな気もします。せめて、調印した内容を精査して、それが対相手との約束であることを正しく理解したうえで、その中で未来に向けた話をしなければなりません。
(バリアフリーとも無縁な蘭島駅と車両側はその設備を有するH100型)
これは道知事も一緒です。現知事が並行在来線問題に対してどのような意見をもっているのかは残念ながら伝わってきません。
前知事が、「悪いようにしないからとりあえずサインして」と各自治体を動かした内容をまた反故にするならば、函館も、余市も不満が吹き上がることがわかりきったことです。
工事が進む北海道新幹線が各地域に最大に利点があるように調整することが必要ですし、地域に住む人が移動することが継続できるようにする必要もあります。
在来線存廃は遅くとも2025年、そして、少しでも前倒して2023年頃にはおおまかな決着がされることが求められます。現状では一部区間の廃線は避けられない、場合によっては多くの区間が廃線になる可能性もある。その中で、移動することが難しいという状態だけは避けなければなりません。
また、跡地利用や路線が残った場合の設備の安全性確保、施設のバリアフリー化なども待ったなしです。早く決めればそれをJRからの移管時の手土産として一定の工事を要望することも可能でしょう。しかし、ギリギリまで決まらないでは、車両も設備も、何も決まらずに運行開始ともなりかねません。
日高線で醜態をさらした、新車のバスさえ届かない状態での代替輸送開始。これだけは避けなければなりません。新幹線で到着した人に、お古のバスや、階段しかない駅を見せるような恥ずかしい真似だけはしてはならないのです。
(奥津軽いまべつ駅に停車するH5系新幹線車両)
2021年5月20日追記
北海道は並行在来線対策協議会第8回ブロック会議の議事録を公開しました。北海道
函館線(函館・小樽間)について(北海道新幹線並行在来線対策協議会)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/skt/heizai.htm (リンク切れ)
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/heizai.html
第8回ブロック会議(令和3年4月)
後志ブロック会議(令和3年4月21日)
次第・出席者・資料1・資料2・資料3・資料4・参考資料・議事録
渡島ブロック会議(令和3年4月26日)
次第・出席者・資料1・資料2・資料3・資料4・参考資料・議事録
ここでは余市町長の報道発言と少しニュアンスが違う面がありますので、ご確認いただければと思います。分離自体は認識していても、利用数が少なくない小樽-余市については、JRでの維持は難しくても、上下分離的な方法は考えられないでもありません。また、BRTなどの手段の問題点は理解しているようにも思われます。