北海道の交通関係

日高線・日高線代替バスを見てきました(その2)

2021/06/18

日高線の鵡川-様似がバス転換されて約2ヶ月半が経ち、前回の記事では日高線の早朝通学対応バスと日高線残存区間の通学列車を見てまいりました。
この日高線の「残った区間」である苫小牧-鵡川は、わずか30キロほどの区間ではありますが、何故残った?と思う方も少なくないと思いますし、日中や休日だけしか見ていなければ、なかなか想像するのが難しいのが、通学対応輸送と言えるのかもしれません。

North-tt
日高線・日高線代替バスを見てきました(その1)
https://traffic.north-tt.com/09_article.php?article=1050


もうひとつ気になっていたのが、今回新設された苫小牧-えりもを直通する高速道路経由の「特急とまも号」です。

苫小牧から日高線沿線への直行バス新設の経緯

2018年8月に、それまで浦河-苫小牧を直通していた「特急うらかわ号」を地元自治体の新千歳空港への時間短縮の要望を受けてJR北海道・道南バスが協議のうえで廃止し「特急ひだか優駿号」として苫小牧市内を通過しない便に改められました。

(当時の「特急ひだか優駿号」告知)
これについては利用客や地元議員から不満の声が上がり、北海道新聞でも批判の記事が出ます。

北海道新聞 2018/06/30
浦河―新千歳「特急うらかわ号」 苫小牧中心部経由せず 8月から 「通院の足なくなる」懸念も
> 【浦河】浦河―新千歳空港間を結ぶ都市間バス「特急うらかわ号」について、運行する道南バス(室蘭)は8月から苫小牧市中心部を経由しないルートに変更することを決めた。空港利用者にとって時間短縮になる半面、市中心部の病院などに乗り換えなしで行くことのできる唯一の公共交通手段がなくなるとして、懸念の声も上がる。
 うらかわ号は1日1往復。浦河発の便は浦河ターミナルを午前6時50分に出発し、苫小牧の王子総合病院や苫小牧駅前を経由し11時に新千歳に到着する。
 同社が現行ルートを変更するのは「早い時間帯の飛行機に間に合うようにしてほしい」などの要望があったためで北海道運輸局に申請している。市中心部まで行かず、市内東部から北上することで、所要時間は現在の約4時間から約1時間短縮される見込み。新たにJR南千歳駅を経由する計画で、同駅で函館や釧路方面への列車に乗り継ぐこともできる。
 一方、8月以降は、うらかわ号の乗客が市中心部に行く場合、ウトナイ湖の停留所で降りてバスに乗り換えるか、南千歳駅で列車に乗る必要がある。不通が続くJR日高線の代行バスを利用しても、静内駅前で別の代行バス、鵡川駅で列車に計2回乗り換えなければならない。
 この問題は6月の定例町議会一般質問で荻野節子議員が「高齢者や苫小牧の病院に通う患者にとって乗り換えは大変。命に関わる問題」と町に対応を求めた。町は「バスの乗り換えがスムーズにできるよう事業者に要望し、JRには利用者の立場に立った代行バスの改善を要請する」とした。


なぜか最後にJR北海道の問題に片づけられていますが、現実的に新千歳空港への足を要望したのは地元であって、それに応えたことで批判するのですからどうしようもありません。
当サイトでも何度か指摘していますが、当初ウトナイ湖での乗り継ぎ時間が短く、しかも上下停留所が大きく離れていることもあって非常に不便な、一度利用すればだれもが問題であると認識できるような状況の中で、これが3年近く続けられた。そして、本当に住民が欲しかった便は何なのか?ということに地元自治体が全く無頓着であったことが露呈します。

結果的に日高線鵡川-様似の廃止に合わせて、「特急ひだか優駿号」は道南バスからジェイ・アール北海道バスに移管され、空港アクセスに特化し途中停留所での下車ができなくなり、さらに南千歳停車も無いので千歳市内方面への移動にも使えず、しかも土日祝日のみ運行という、日常的な利用のできないバスになりました。あくまでも地元としてはこのバスを「通院の足」として望んでいなかったということなんですね。

今回、えりも地区、様似地区からも苫小牧直行の需要を考えて新設されたのが「特急とまも号」となります。「とま」こまいとえり「も」で「とまも」と思われますが、最初聞いたときにどういう意味なのか分かりかねました。
この便は停車停留所を大幅に絞り、予約制運行としています。



あくまでも私の個人的な印象ですが、停留所を絞りすぎており、特に浦河は市街地域や東町・浦河赤十字病院付近からの利用もできないので、住民が本当にこれが要望なのか?という疑問は思わないでもありません。
ただ、設定時刻は、苫小牧駅9:20と通院に都合がよく、また、新千歳空港や千歳市内、苫小牧東部市街地へのアクセスが可能な沼ノ端駅北口、そして地域の拠点病院である王子総合病院を経由することは、これが日高の人が求めていた「行先」ということになろうかと思います。


苫小牧駅前14:00発えりも行特急とまも号

予約制である「とまも号」ですので、事前に電話予約をしておきました。対応は非常にスムーズで、個人的には電話予約以外の方法も入れてほしいところではありますが、指定席ではありませんし、多くの乗客で混雑するほどではないと踏んでいるのでしょう。ジェイ・アール北海道バスの単独運行路線である「ひろお号」「高速ひろおサンタ号」も含めて高速バス予約サイトなどの対応が無く、電話予約のみというのは黎明期の高速バスを思い出しますが、今時な感じがしません。

苫小牧駅南口の市営バスターミナルは閉鎖されており、今は市内線も含めた様々なバスがごった煮状態で入ってきます。道南バスの案内所はあるものの、他の会社の案内は乏しく、ここに1往復のみ入ってくるジェイ・アール北海道バスに関してはその会社名を記載したポールも無いので、少しわかりにくく感じます。

苫小牧市
苫小牧駅前バスのり場について
https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/shisei/kokyokotu/bus/ekimaebusunoriba.html


折角の乗り場案内ですが、あつまバスなどの情報も無く、更新されていないのでいまいち信用できません。

実際には道南バス・中央バスの郊外線が使用する1番乗り場からの発車ではあるのですが、もう少し外部の人が、乗り慣れない人がわかりやすい案内を検討してもらいたいところです。





なお、苫小牧駅前の道南バス案内所ではとまも号のことはわからないということで予約なども受け付けないことは注意が必要です。また、運賃の支払いに道南バスのバスカードも使えません。ただ、運賃は道南バスと同じとなっています。苫小牧-静内なら1,500円で鉄道時代の運賃2,100円より大幅に安くなっています。

North-tt
再掲:JRと転換バスの主な区間の運賃比較
https://traffic.north-tt.com/txt/20210403_08.pdf




定刻の5分ほど前に、苫小牧では見慣れない白い車体の観光タイプの車両が入ってきました。



比較的新しい車両ではありますが、まっさらな新車ではなく、ステッカーでナンバープレートの表示をしていますし、この車両では使えませんが札幌圏で使われていた交通系ICカードの設備があります。多分高速おたる号で使用していた車両で、2014年頃の導入車両と思われます。


それでも、安全装備は充実してありますし、液晶運賃表示器は様々な情報を表示しますので、とりあえず情報の不足はありません。
苫小牧駅で乗車したのは私も含めて3名、乗車時に運転手さんが下車位置を聞きます。予約はしていましたが特段予約についての確認はありません。乗車人員的に困らないということなのでしょう。

定刻に出発。ジェイ・アール北海道バスの運転手さんはソフトで丁寧な応対と、一時停止などをきちっと止まる印象があります。(そうではない会社も意外とあるものです)

駅からほど近い王子総合病院で高齢の通院客と思われる方3名が乗車。高速車としては低いとはいえ、座席までは4段のステップがありますので、かなり難儀している方もおられまして、高速道路経由であっても、ステップの低い車両が求められいる感じもします。ノンステップ車は中間ドアから車いすの乗降に利便があるように作られていますので、送迎車など特殊用途以外でのノンステップ1ドア車というのは見かけません。

バスは緑跨線橋で線路を渡り国道36号線に入ります。ロードサイドな郊外店舗が多い道路筋で、次の職訓センター通はイオン苫小牧ショッピングセンターの最寄りバス停です。ここからも1名が乗車します。

苫小牧市内最後の停留所は沼ノ端駅北口で、鉄道からだけではなく新千歳空港からの空港連絡バスからの乗り換えも考慮されています。ここで大きなスーツケースを持った2名が乗車して、私を含めて9名でこの便の乗客は確定です。

運転手さんが全員の下車位置を聞いていましたが、厚賀橋1、新冠1、静内5、浦河1、様似1で三石、えりもの利用はありませんでした。

バスは沼ノ端東インターチェンジから日高自動車道に入ります。

日高道は沼ノ端東インターから先現在の終点日高厚賀インターまで無料区間で、このバスも無料区間だけを使うことになります。厚真インターまでの区間は4車線最高速度100キロ区間ですので、このバスもきっちりその速度で快適に走ります。

ただ、日高道は全体的に凹凸が多く、特に函渠となっている下に道路が走る前後の転圧が足りないのか、ここで大きく跳ねるような衝動があるのは不快です。運転手さんも酷いところは減速していますが、乗用車だと自分だけだとあまり気にしないとはいえ路線バスだとそうはいきません。
対面部は70キロ制限ですが、現実的にそんな速度で走る車は多くなく(決して違反を黙認してるつもりはないが)道路整備ももう少しまめに行ってほしいとも思います。

とはいえ、北海道らしいというか、一直線に伸びる道路は、現実に海沿いを崖に張り付くように走る国道から考えると非常に快適です。

苫小牧東インターから日高厚賀インターまでは約53キロを40分程度で走破し、一般道に入ります。左折の度に歩行者注意と安全装置の声がするのが、新しいバスに乗ってることを感じます。

高速道路から国道に入ってすぐの厚賀橋で1人下車します。自動車道が延伸されたときにこのバス停が残るのかは気になるところです。とまも号の15分後に普通便の静内行がありますので、代替は可能とは思うのですが、その便に乗ると厚賀橋は15:18ですから1時間近く遅くなります。自動車道の恩恵ですね。


節婦付近と新冠インターチェンジの工事現場を横目にバスは新冠に定刻に到着。私はここで下車します。

とまも号は非常に快適で、車内はWi-Fiも使用可能ですが、14時出発という病院関係としても帰宅時間としてはちょっと早いかな?と思わないでもありません。ただ、本数も出せない面はあるでしょうね。また、停留所をもう少し増やしてもいいのでは?という印象は持ちました。


静内からの帰宅バスを見る

早朝に出発した新冠に戻ってきました。一旦静内に行きまして、今度は帰宅バスの利用状況を見たいと思います。

新ひだか町には静内高校・静内農業高校の2校があります。帰宅のバスは旧静内駅の静内バス停から出発しますので、基本的にここで確認することで帰宅の状況がわかるものと思われます。

・16:10発苫小牧行

門別・富川方面の通学便は、16時台・18時台・20時台の3本となります。苫小牧まで行く便はこの16:10が最終で、しかも土曜休日運休となります。これ以降は鵡川止まりです。
この便には7名の乗車がありました。高校生は見た感じ多くなく、日常利用の方もいらっしゃるのはいいことではあります。

・16:15発浦河老人ホーム行

浦河方面への便は約1時間おきに16時台、17時台、18時台、20時台と4本があります。この16:10だけが道南バス運行で土曜休日運休となります。
この便には11名の乗車がありました。こちらも日常利用が多く見られます。代行バスと路線バスの客層が異なっていた状況が、大きく改善されたように感じられます。学生にしてみれば定期は共通ですが、回数券やバスカードが共通ではないのは不便かなと思うところです。

・苫小牧発静内16:55着
全くカラで到着したのは先ほど苫小牧駅を15分後に出る普通便の静内行です。静内バス停の前にイオン近くの末広町などで客を下ろしてることも考えられますが、ここには誰も乗らずにやってきました。

・17:15発様似営業所経由えりも郷土資料館行

通学生の帰宅対応になる急行便です。静内を出ますと市街地での乗降を取り扱わず、東静内市街・春立築港・三石総合町民センター・荻伏市街(以降全停留所停車)国道を直行することもあり浦河まで1時間程度、えりもまで2時間10分程度で結ぶ便です。
なんとこの便、誰も乗りません。

待合室に誰もいないなとは思っていたんですね。まぁ、今日が試験期間とか、緊急事態宣言下での部活中止など様々な理由があるかもしれませんが、乗客0とは思いませんでした。
通学以外の利用を考えないという意味もあるのでしょうが、国道経由で全停留所停車などのほうが、一般利用も期待できるのではないかと思わないでもありません。

今回は時間の都合があり、ここまでしか確認できませんでしたが、次の機会には朝通学時間帯も見たいところですね。



旧静内駅舎

さて、最後に旧静内駅舎です。

JRの駅スペースは廃止直後と大きく変わることなく、そのままです。蕎麦店も通常営業を行っています。(訪問日は休みでした)

観光案内所では道南バスのバスカードと定期券を扱っており、店として開けていない時間帯も17時までは事務所で対応というのはありがたいところです。

バス時刻表は転換当時は全く置かれていませんでしたが、現在は各バス会社のもの(両面印刷になっている)と7町が発行している地域時刻表が置いてあります。これはよかったことです。


ただ、ポケット版の時刻表が置かれているのですが、これが道南バスの時刻しか掲載されておらず、せめて静内-浦河の区間だけでもJRバスの時刻を参考程度でも掲載してほしいと思うところです。これでは使えません。


最後に駅の裏に回ってみましたが、ホームや駅構内、ポイント部の照明が点灯されています。JRとしての機能はもうなくなっており、本来点灯の必要はありません。町の施設としての駅舎の電源と共通なのでしょうか。



さいごに

JRと沿線町の協議がなかなかまとまらない中でバス転換が急遽決まったような印象を行けた日高線の鵡川-様似の廃止ではありますが、今まで鉄道や鉄道転換バスをあまり使っておらず、路線バスを使っていた人たちにとってはバスの増便で利便ができたという言い方もできます。逆に鉄道代行バスを使っていた人にしても、使える時間そのものは拡大していますので全体の本数が減ったとしても利便は高まったようには見えます。

しかし、転換時にノンステップの新車は間に合わず、それは現在も変わっておらず、各社他の地域で使用していた車両を融通して運行しているのが現状です。苫小牧市内の路線バスには苫小牧市営バス時代の塗装を今もまとい、サビが浮いた新製から25年以上経過したような車両も見かけています。

今や事業者には全く余裕が無く、コロナ過での運賃収入の減少もあり、車両を更新することも、新しい誘客の仕掛けも難しい状態が続いています。
その中で、これから減ることのわかっている通学客だけではなく、日常的な利用や観光客も乗せたいと思うならば、もう少しわかりやすい総合時刻表の提供や、運賃支払いの簡素化、フリー切符などの発売に加え(関係する他社でも)案内できる窓口の体制なども求められそうです。
しかし、それを事業者だけに負担させるのは難しい問題でもあります。

今回見ていても、道南バスは若干始発停留所ですら出発時刻に遅れを出すなど、アバウト感がある。これが途中停留所では5分10分といった遅れになる可能性があるわけで、室蘭・苫小牧地区ではバスロケを導入する予定があると聞いていますが、それに日高も乗るような方向性も必要ではないかと思います。そして同時に同じサイト内でジェイ・アール北海道バスの情報も取得できるのが理想です。

また、ジェイ・アール北海道バスは自社サイト内の各停留所時刻表、バスロケーションシステムでは札幌圏と、札幌から直通するバスのみしか対応していないという状況があります。予約制バスのWEB対応も含めて、地方も自分たちの会社で大事なのだという「雰囲気」だけでも出してもらえないかと思うところです。車内のワンマン機器や乗務員の対応は札幌以上に整備している感もあるのに、どこか「片手落ち」(用語的に語弊はあるが)な印象を受けてしまうのですね。

これはできるのかどうかはわかりませんが、将来的には「日高地区共同バス運行会社」的な形になっていくのが理想なのではないかな?そんな印象を持っています。

いずれにしても今後も興味を持って当サイトでは日高地域の公共交通を見ていきたいなと思っています。

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