北海道の交通関係

北広島ボールパークアクセスに関する報道と北広島駅改修(その2)

2021/06/25

前回の記事では、JR北海道が北広島市に建設されているボールパークへのアクセス用新駅の設置を表明した2019年11月以降、また、ボールパークの起工式が行われた2020年4月以降のボールパークの観客アクセス整備の状況、北広島駅の改修の状況を記事にいたしました。

North-tt
北広島ボールパークアクセスに関する報道と北広島駅改修(その1)
https://traffic.north-tt.com/09_article.php?article=1055


今回は「その2」となります、この項ではJR北海道のアクセス輸送に関する問題と、千歳線の輸送力そのものについて、改めて考えてみたいなと思います。


ボールパーク開業時(2023年3月時点)の鉄道での観戦客輸送

前回も貼った資料ではありますが、北広島市が想定するボールパーク観戦客アクセスで、最も比率が高いのがJR北海道による鉄道輸送です。
資料では35,000人の最大観戦者数で39%の13,500人がJRを使い「新駅完成までは鉄道利用者の10割」と追記があるほどに北広島駅の利用者を考えなければならないということになります。
北広島ボールパークアクセスに関する報道と北広島駅改修(その2) (北広島市資料)

2023年3月時点では新駅は開業していませんので、北広島駅の設備だけで満席の客を迎える場合はJRだけで13,500人運ぶ必要があり、そのうち札幌方面からは85%ですので11,475人を、千歳方面からは2,025人を運ぶことになります。

●JR北海道の各列車の定員
JR北海道が札幌圏で導入する普通列車・快速列車用の車両733系で見てみます。

・快速エアポート等の6両編成821人(うち座席288席)
・普通列車等の3両編成439人(うち座席148席)・6両編成878人(うち座席296席)
現時点で札幌圏の普通・快速列車は6両編成以上の連結を行えませんので、1列車1000人程度以上の乗車は難しいと見なければならないでしょう。(首都圏並みの180%、200%といった混雑は短距離でもなかなか許容しないのではないかと考えられますし、ボールパークの理念としても、そこまでの混雑を客に強いることを是とはしないでしょう)

ここで考えなければならないのは、コロナ以前の快速エアポートの利用状況です。特にデーゲーム終了の16時・17時代、また、ナイトゲーム終了の21時代・22時代の新千歳空港からの利用者は決して少なくなく、特に札幌方面で言えば、観戦客輸送と空港利用客輸送は分けたいと考えていると思われます。空港利用客にしても、突然車内が身動きができないほどの観戦客が乗車することは是とは思えませんね。

ですので、特に札幌方面への観戦客輸送は基本的に空っぽの状態で北広島駅から運行される「観戦客専用列車」が必要と考えられるでしょう。


●ボールパークへの観戦客輸送
休日のデーゲーム時はともかく、平日のナイトゲーム時に問題になるのは、確実に通勤客の帰宅ラッシュとボールパーク輸送がかち合うということです。現在でも快速エアポートは帰宅時の便利な快速列車としての一面を持っています。
16時台から18時台にかけ帰宅ラッシュを含めれば、1時間半程度で少なくとも1万5000人以上を北広島に安全に運ぶ方法を考えなければなりません。
既存の快速・普通列車の本数から考えると、普通列車の増結を行ったとしても(ほぼこの時間は6両編成)定員乗車では全く輸送力が足りませんので、少なくとも札幌-北広島の観戦輸送臨時列車を運転しないわけにはいかないことになります。
とはいえ、増発できる余力もそう大きくないのが現状でもあります。エアポート間に普通列車の入っていない時間帯で、貨物も特急も入っていないタイミングは多くありません。

千歳線の沼ノ端方面は札幌を出ますと上野幌まで退避可能な駅はありません。普通列車は北広島駅で快速エアポートを退避するのですから「普通列車の続行」で観戦客輸送列車を出すことはできません(これは上野幌駅の時点で既に普通列車と後続の快速列車の間隔は2分から3分程度となってしまう点もあります)

なので、札幌駅発車基準で快速列車と普通列車の間に観戦客輸送列車を入れる方法くらいしか取れないような現状ではないかと思われます。

もう一つは、千歳線の折り返し可能駅です。千歳線で折り返し可能なのは北広島以遠では、北広島・島松・千歳・南千歳・美々で、いずれも退避などで使用していますので、余裕がありません。北広島も3番線のみが折り返し可能ですし、島松も2番線のみです。このどちらかの駅で折り返して、もう1回札幌発の観戦輸送列車としたいとも思いますので、このあたりも緻密なダイヤ作成が必要でしょう。

なお、観戦客列車を設定しても、多くの観戦客を快速エアポートが運ぶ可能性も高い、そして新札幌あたりでは、通勤の下車客と観戦者の乗車客で停車時間を取られるなどの問題が発生します。観戦輸送列車は北広島まで無停車なんてのも、一つの方策かもしれません。

(現行ダイヤで、素人的に観戦客輸送列車を入れられそうなところを探ってみますが、新札幌駅時点での運転間隔に余裕のある所は決して多くはありません)


●千歳・苫小牧方面への観戦客輸送
1ゲームで2,025人を想定する千歳・苫小牧方面への観戦客輸送は、基本的に定期普通列車と、一部は快速列車による輸送を考えたいところです。現在のダイヤから17時以降の列車は次の通り。

普通列車が1時間に3本程度のペースであり、想定される利用者数からすれば、快速列車の利用も検討できるところではないかと思われます。
なお、18時以降上野幌駅の待避線を使用していませんので、千歳方面への臨時をここに置くことでの増発は可能とは思いますが、電車の編成数も無尽蔵ではありませんので、千歳方面への増便はあまり考えなくていいような気がします。


●札幌方面への観戦客輸送
何より問題なのは、11,475人運ぶ札幌方面になります。北広島駅は快速停車駅ですので、そのままでは好むと好まざると快速エアポートに観客は乗ってしまうという面があります。ボールパークイベント日に北広島を通過扱いにすることも検討できそうですが、指定席の販売される列車ですし、ダイヤパターン的にも避けたいところだと思います。

(現行ダイヤの千歳線札幌方面。北広島17時から19時台は数多くの特急列車・貨物列車が設定されていることがわかる)

さらに問題があります。札幌貨物ターミナル駅を出発する貨物列車です。札幌貨物ターミナルを発車する貨物列車は千歳線の高架まで勾配を上る関係、そして、千歳方面に向かうためには、かならず札幌方面の線路を一時的に支障することから、札幌貨物ターミナルからの列車出発時、新札幌駅から札幌方面は約5分列車が出発できません。

国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス
https://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=1886780&isDetail=true


(千歳線の本線を支障して渡る)


その様子を大谷地流通団地東側緑地で確認してみました。私の立つ場所の真横に札幌貨物ターミナルから本線への合流点があるはずです。
新札幌15:28発の札幌行おおぞら6号が15:29過ぎに通過


ポイントが切り替わり札幌貨物ターミナルから新札幌駅までの進路が構成され、札幌貨物ターミナル駅の出発信号が青になり、15:30発広島貨物ターミナル行8068貨物列車が登って本線に進入する。


貨物列車がこの区間を抜けたのが15:35過ぎ。

新札幌15:35発の快速エアポート151号がこの地点を通過したのは15:37過ぎ。貨物列車の出発が少し遅れたことで、快速エアポートも新札幌で1分程度遅れたものと考えられます。非常にタイトなダイヤが組まれていることを理解しなければなりません。
札幌貨物ターミナル発の貨物列車も、18時台以降に増えてきますので、特にナイトゲームの終了時間後、札幌方面への観戦客輸送列車が必ず制約を受けると考えてよさそうです。

北広島から先、札幌方面での退避可能駅は上野幌・白石となります。また、白石から函館線への転線が可能ですが、札幌駅での折り返しなどの関係もありますし、函館線列車自体の運行もありますので簡単にはいかないのも現状です。

それでも、普通列車・快速列車にも観戦輸送を一定担わせた状態で、北広島始発の観戦客輸送専用列車が必要だということになります。そして、北広島駅では普通列車が快速列車を待合せ、ホームを2本とも塞いでしまうので、北広島始発列車を出すのも相当な困難が考えられます。

先ほども触れましたが、千歳線で折り返し(始発列車の設定)が可能なのは北広島・島松・千歳など限られます。そこで必要なのが島松駅の退避設備です。
島松駅は札幌方面列車の待避線として4番線を使用しており、この4番線が先日廃止されることになりました。もとより札幌方面への退避列車は現在4本しかなく、13:44以降23:07まで使用しないという状態でした。(貨物列車の退避もここでは現在行われていない)


(4番線ホームが使用停止になった島松駅。現在直接4番線へ札幌方から進入はできず、折り返し可能なのは2番線のみ。また、ホームを撤去して側線の新設なども考えられる。別件では跨線橋にエレベータ設置の予定があり、使用頻度の低いホームに対して設置基数を節約したかったのもホーム廃止の理由の一つであろう)

この島松駅の4番線は貨物列車の退避が可能ですので、ざっと400m以上の有効長がありますので、ここに2編成から3編成を置いて、順次北広島駅に回送し、観戦客を快速エアポートにできるだけ乗せない方法が考えられるとも思えます。

普通列車の時刻変更、また、新札幌駅での貨物列車待ちはあれど、快速エアポートと普通列車の接続が北広島駅で行われない時間帯を中心に列車を出すことしか、現状できることはないものと思われます。

なお、ボールパークの開業まであと2年を切っており、現在発注されている札幌圏の電車車両は快速エアポート用の733系電車以外ないと思われますので、観戦輸送に特化した車両の導入は行われないものと思われます。また、現時点では、車両の改造が必要である9両編成など、6両以上の編成での運行も行われないように思われます。(もちろん内部的な検討はあって、外部に知らされない状態で動いている可能性はあると思われます)


●北広島駅からボールパークへの徒歩移動
前回の記事でも記載しましたが、あくまでGoogleなどの道案内ソフトでは約20分と表示される北広島駅からボールパークへの徒歩連絡ですが、混雑時はその倍以上の時間がかかることは想定が必要と思われます。

北広島駅からポールパークへの徒歩連絡は北広島駅東口からエルフィンロード(サイクリングロード)を経由する側が推奨されるものと思われます。この道路は一般道とは立体交差となっており、クルマとの接触の心配がなくボールパークまで行くことができます。エルフィンロードからボールパーク内の周回道路とも立体交差となる(と思われる)「ボールパーク1号緑道」を設置することからも、こちらを通ることが推奨であろうと思われます。

しかし、途中に店などもないことから、北広島駅西口から市道北進通線を経由した徒歩連絡の可能性もあろうかと思いますので、たどってみました。

(北広島駅西口)

(駅から約270m。セイコーマート和美店前からボールパーク方向。歩道は整備されている)

(駅から約700m。緩やかに坂を下りセブンイレブン北広島美沢店から駅方向)

(同様にセブンイレブン北広島美沢店からボールパーク方向。道路は4車線化される予定。現在は歩道は片側にしかついていない)

(駅から約1,300m。北広島高校正門前)

(駅から約1,500m。水道局共栄調整槽前)

(駅から約1,600m。工事中のボールパーク。ここから施設構内までは200mほどか)
結果的に2㎞近く歩きます。30分程度は最低限見た方がいいでしょう。上り坂ですが、高校生が普通に歩いていますので、一般的な脚力なら問題ないと思います。なお、2か所のコンビニを経由できるのはいい面ですね。

エルフィンロードを経由した場合の距離も記載します。

(北広島駅東口)

(駅から約650m。北広島市役所横)

(駅から約850m。美沢跨道橋)

(駅から約1,200m。予想では「ボールパーク1号緑道」分岐点となる3号跨線橋付近)

(駅から約1,400m。広島公園通からエルフィンロードへの階段。駅からボールパークへの観戦客は通らないが、非常に破損著しかったので掲載。このあたりは直すことになるのか)

(駅から約1,600m。現在もっともエルフィンロードからボールパークに近い場所に出られる2号跨線橋付近)

(駅から約1,700m。工事中のボールパーク。ここから施設構内までは100mほどか)



新駅開業時(2027年3月時点)の鉄道での観戦客輸送

ボールパーク新駅開業後、大きく変わるのは、一部報道で発表されている、快速エアポートは不停車とすることが考えられることですね。

本来空港輸送と観戦客輸送は分けてほしいのが正直なところです。しかし、快速停車駅である北広島での乗降を取り扱う以上、観戦客は快速列車に乗らないという選択はありませんので、来た列車に乗るということが考えられます。

新駅はホームにかからず通過列車を設定できますので、快速エアポートを通過させての観戦客輸送の分けに成功できることになります。ただ、北広島市の想定では、鉄道利用客の6割を新駅で、そして4割は現北広島駅を使うことを想定しています。つまり、新駅を利用するか、北広島駅を選ぶかを「選択」させる必要があるということになりますね。

単純に新駅の札幌方面への利用客は6,885人。北広島駅を使用するのは4,590人となります。このより分けを行うには、よほど北広島駅を使用するメリットが無ければなりません。少なくとも徒歩で30分は見なければならないと思われる北広島駅に行くメリットが「快速列車に乗れる」では、ほぼその所要時間の差ではメリットを得られません。

あくまでも、個人的な意見ですが、新駅完成後の北広島駅利用はほぼ無くなるものと思われます。北広島駅からなら必ず座れますというわけではないですし、JR北海道の資料では新駅には折り返し設備を設けていますので、新駅始発の札幌方面列車が出ることも充分想定されます。新駅が観戦者専用列車の数往復しか出ませんとまでは多分ならないだろうと踏んでいます。

また、ホームを10両分で確保していますから、地方からの観戦者を特急などでアクセスさせるなんてことも想定の中にはあるのかもしれません。千歳方面の利用者が大幅に少ないこともありますので、ホームを互い違いに使用して分ける必要はかなり乏しいものと思っています。毎度妄想ですが、むしろ観戦客列車は厳冬期を使用しない前提で通勤型車両の10両編成でもいいともいえるわけですね。

なお、少なくとも札幌貨物ターミナルの出入りに関しての問題が解決しない以上、劇的な増発や劇的な輸送改善は難しいのも事実ですので、運行に関する問題は、新駅が開業しても、折り返し線を使うことができる以外のメリットはあまりないものと思われます。



もう1回だけ、次回はバスアクセス、道路アクセスに関して、少し考えてみたいと思います。

North-tt
北広島ボールパークアクセスに関する報道と北広島駅改修(その3)
https://traffic.north-tt.com/09_article.php?article=1057



北海道の交通関係 北広島球場輸送 JR北海道 路線バス 千歳線

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