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北海道の交通関係
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名寄高校駅新設と若年層人口の大幅減少による生徒「取り合い」
2021/10/28
JR北海道が「当社単独では維持することが困難な線区について」を発表したのは2016年のことです。これから5年を経過して、いくつかの路線を廃止したものの、根本的な解決には至っておらず、コロナ渦もありだらだらと先送りされているのが実情です。
北海道庁は利用促進以外の財政支出には否定的であり、しかも日常利用を増やすような行動にも消極的。鉄道そのものよりも「観光」という比較的批判の少ない部分を使い、観光列車への実質負担という形での支援を進めています。
各自治体も、自治体の経済規模からも鉄道に対する支援は難しいとされ、利用支援に動く一部自治体を除けばなかなか表に出る支援というのはできていないのが実情です。
そんななか、名寄市は名寄市内の名寄高校の近くに「駅」を新設する判断を行いました。実際には東風連駅の「移設」という形になるものの、利用が見込まれる地域への駅設置という「実際に利用を促進する」ことを選択したのはあまり例の無いことであります。
名寄高校駅設置までの経緯
まず、名寄市内には2校の高校が存在します。普通科である旧制名寄中学校からの歴史があり、その後女学校を併合した創立100年近くという名寄高校と工業高校、農業高校から職業系高校として合併した名寄産業高校の2つです。そしてこの2校は2023年春に統合して名寄高校として再スタートされることになっています。名寄市内の公立高校は1校に統合されることになります。使用される校舎は現在の名寄高校となります。
北海道教育委員会 公立高等学校配置計画(令和4年度(2022年度)~6年度(2024年度))の概要
https://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/fs/3/7/5/7/6/1/4/_/R4-R6%E6%A6%82%E8%A6%81.pdf
現在、名寄高校は普通科3学級324名、名寄産業高校は酪農科学、機械・建築システム、生活文化の各1学級229名となっています。これが普通科4学級、情報技術1学級の5学級1学年200人、計600人定員に統合されることになります。農業、工業、商業などの専門課程に関しては、普通科から2年次以降各科の基礎を学ぶ「選択コース」を作るとしています。また、産業高校の校舎、旧農業高校の農業施設などは使用せず、校舎は1つにまとめるとのことになっています。
この統合は名寄市の主導で行われ、道教委に統合を検討することを要望するという異例な形で行われました。地域の少子化が進み、また、他地域の状況から「比較的大規模な高校」を維持することで、その後の高校維持を図ろうと考えたことは想像に難くありません。
道教委は1学年3学級を割り込むと統合を提案しているようで、統合が提案され意に沿わない形での統合をされるくらいなら、地域でまとまっての統合、そしてそれが他の地域からの生徒募集の「強み」であることを考えたものと思われます。
高校の統合とは別に名寄高校近くに駅を新設するという案は、現在の名寄市長加藤氏の公約にあります。なお、市長選は2期連続無投票となりました。
加藤・名寄市長3選 「道北 持続可能な地域に」 名寄高新駅 東風連駅移転を検討
2018/04/10 北海道新聞 名寄・士別面
> JR宗谷線の存続問題では、沿線や道、JR北海道と議論を進めるとともに、安定運行や北海道新幹線の旭川延伸、旭川空港への鉄路延長の実現により、「人や物を運ぶインフラの可能性を高める」と強調した。
公約に盛り込んだ名寄高校前への新駅設置については、高校から約1・4キロ離れた東風連駅を移転させることを基本とし、今後、JR北海道や地域などと、自治体負担も含めて協議を進める考えを明らかにした。
また、駅の設置費用は市が負担することにしていますが、これも市長は別の考え方を持っていました。多くの自治体が行っている通学費補助を行わないという策です。
<七光星に輝きを 新・北海道考>札幌集中のリアル 第5部 地域交通の明日 1(2の2) 財政難 自主運行に活路
2021/06/13 北海道新聞
>大半の自治体が、交通網維持のため、通学費補助や高齢者向け無料乗車券などの利用促進策や事業者への支援を行っているが、財政難でいつまで負担できるか見通せない。
名寄市は、こうした交通政策の限界を見据えて「奇策」を打ち出した。利用客の少ないJR宗谷線の東風連駅を約1・6キロ北の名寄高前に移設し、22年春に「名寄高校駅」とする計画。駅の利用を促進するのではなく、需要のある場所に駅を移す逆転の発想だ。
市は移設費用約6千万円を負担。交通網の持続可能性を踏まえて決断した。加藤剛士市長(50)は「通学費を全額補助している自治体もあるが、うちの規模では無理。他の交通手段で通う生徒に不公平感がないよう、あくまで駅の利用者にお金を負担してもらうことを意識した」と話す。
駅の新設・移設費用としては一度に大きな額が動くとはいえ、この区間はJR北海道が「北海道高速鉄道開発関連線区」として北海道や地元自治体(名寄市も含め)が鉄道高速化に出資を行っている線区。そこに対してさらにJR北海道に「日常的な利用促進」を表したと言えましょう。
JRの赤字路線に「高校駅」 自治体が費用負担のワケ
2021年01月14日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASP1G02DLP1FIIPE01N.html
> 名寄市は、高校の前に駅を移転すれば生徒の利便性が高まり、宗谷線の利用者増にも貢献できると考えた。18年の調査で、JRで通学する生徒は67人(隣の名寄駅の利用者を含む)だったが、学校前に駅ができれば新たに利用したいと答えた生徒が冬季だけの利用も含めると52人いたからだ。
> 名寄市が駅の移転費用を出してまで宗谷線の利用促進をはかるのは、路線自体を存続させるためでもある。 宗谷線全体の7割を占める名寄―稚内間は、多くの赤字路線を抱えるJR北が「単独では維持困難」とする8線区の一つ。利用者を増やさないと、地域に鉄道がなくなってしまうとの危機感がある。
また、「黄色線区」となる名寄-稚内についても通学生の増加があれば、利用促進のキーとなるとも踏んでいるとも思われます。
・高校を統合することによる学校規模・生徒数の維持と進学・就職先の維持
・高校の魅力を高め、周辺地区の中学生の進学先としての魅力を高める駅移転
・駅利用客の増加がJR宗谷線の維持になる可能性の模索「JR北海道との対話チャネルの維持」
この3つをまとめたという意味で、名寄市は高校の維持という面では他の町より一歩進んだ感があります。
風連駅
風連地区は2006年まで独立した風連町でした。風連・東風連の2駅が存在します。市街地にある風連駅は交換可能な快速停車駅となっています。


駅舎は1986年の無人化後に建て替えられたものです。名寄方面が駅舎前の1番線、旭川方面が跨線橋を渡った2番線です。自由通路が駅舎と跨線橋の間に鎮座するのは珍しい形ですね。


ここには後からご紹介する士別翔雲高校のポスターが掲示されています。仕切られた待合室があるのはJR北海道の無人駅では少ないように思います。
東風連駅
2022年春のダイヤ改正で廃止となり名寄高校駅に約1.6km移設されることになりました。風連地区の北東側の農村地帯にあります。近くに風連正麺というラーメン屋さんがあり、いつも混んでいますね(名寄のイオンにも入居している)

駅舎には名寄高校駅として移転する旨の看板が掲げられていました。



ホームは比較的新しいものがついています。1999年にホームを反対側に移設しており、待合室も建て替えられています。ここからは線路が道道538号旭名寄線に沿って名寄市街地へ向かいます。旭川-名寄の路線バスも国道を離れこの道を使いますので駅前に21線バス停があります。

なお、この駅は上下8本のみと停車列車が少ないこともありますが、一部は名寄高校への通学にも使用されているようで、駅移転は生徒にとっても朗報ではあろうと思います。
名寄高校駅(予定地)
その駅移転予定地です。最近まで接続道路となる18線道路にかかる18線踏切、緑丘橋を含めた道路の拡幅工事も行われており通行止めになっていました。この道路工事が終わり、駅予定地近くまで訪問できています。
名寄高校校舎です。校門前には旭川-名寄を運行する路線バスの18線バス停も設置されていますが、士別・剣淵方面からの通学可能なバスは運行されていません。
通学に鉄道利用が必要で、東風連から1.5km以上、または名寄駅から2.2km以上歩かなければならないというのは酷な話です。なお、冬期間は名士バスの通学対応バスが名寄駅から運行されます。
名寄高校の門の前から見る駅予定地です。まさに「目の前」に駅が設置されることがわかります。
駅の構造はホームは片面、2両編成対応と思われます。階段とスロープが設置されるようです。
これと併せて川の護岸が整備されています。H100形車両から見ると、ホームの長さにあまり余裕がありません。現時点で3両で運行されている名寄5:52発旭川への通学対応便320Dも2両に減車されるように見受けられます。また、その必要が無ければ列車は先頭のドア1枚しか取り扱いませんから、特段の問題が無いのかもしれません。
報道によれば名寄高校駅は全普通・快速列車を停車させるとのことですので、現状のダイヤでいえば音威子府始発で名寄から快速となる3320D(当駅7時55分頃と思われる)や旭川発稚内行き321D(当駅7時36分頃と思われる)で通学可能、場合によっては風連で交換することでの列車時刻の変更なども視野に入ってくるものと思われます。また、帰宅時間帯も料金不要列車は全列車停車というのは朗報です。
ただし、地元バス事業者がどのように考えるかというのがあります。バス事業者も人手不足がありますので、通学バスはあまりやりたくないという観点があるならばいいのですが、冬期のみとはいえバス会社の減収を何らかの形で補填するということについて報道などで確認することはできませんでした。
周辺自治体の高校維持の取り組み
宗谷線の沿線高校は上川管内で見ますと名寄の他、北から・おといねっぷ美術工芸(基本的に村外通学者はいない)
・美深高校(普通科1学級 全校79名)
・美深高等養護学校(全校92名)
・名寄高校(普通科3学級 全校324名)
・名寄産業高校(酪農科学、機械・建築システム、生活文化、各1学級全校229名)
・士別翔雲高校(普通科3学級、商業科1学級 全校374名)
・士別東(普通科定時制 全校27名)
となります。(旭川市内を除く)
令和2年5月現在の中学校3年生の生徒数は
・中川町 4
・美深町 43
・名寄市 184
・士別市 143
・剣淵町 35
・和寒町 22
こんな感じです。
北海道教育委員会 令和2年度(2020年度)北海道学校一覧
https://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/ksk/chousatoukei/gakkou-ichiran/2020gakkou-i.html
中川町は日本海側の留萌管内天塩高校がスクールバスを出しており、基本的にはこちらを利用しているようです。それ以外で考えても1学年約400人が地元の高校と旭川市内の高校のいずれかを選択するという際に、どこを選ぶのか?選ぶ際に何を重視するのか?という面があります。
先ほども触れましたが士別翔雲高校は2017年からJRへの感謝を伝えるポスターを沿線の駅に張っています。
<こだま>
2018/02/12 北海道新聞
> ▽…通学の足として利用するJR北海道を応援しようと、士別市の士別翔雲高校が、JRに感謝を伝えるポスターの冬バージョンを作成した=写真=。JR士別駅で1月下旬からお披露目されている。
▽…同校生徒の約3割がJRに乗って登校している。ポスター作りは「通学の足があってこその高校」と、吉野光校長が発案した。昨年夏、士別周辺の駅で撮影した5種類のポスターに続く第2弾となる。
▽…今回は1月20日にラッセル車の線路の除雪風景を撮影。生徒たちは厳寒の中、ラッセル車の到着を待って写真を撮ったといい、吉野校長は「冬の線路維持の厳しさを身をもって知りました」。
=士別=
士別翔雲高校 歴代ポスター
http://www.s-shoun.hokkaido-c.ed.jp/?page_id=120
生徒の3割がJRを使うとしますが、駅から高校は2.5km以上離れて徒歩30分を要します。バスでの利用も可能ですが、当然にバス運賃がかかります。士別市は士別市内在住の生徒に関してはバス運賃の補助を行っていますが、他の自治体からの通学には適用されません。
結果、駅前の自転車置き場には学校の通学自転車登録のステッカーが貼られた多くの自転車が駐輪されることになります。
士別駅は市によるリニューアルの話があったが今のところ現行のまま。駅内には商店とそば店が入居している。
名寄高校が駅を学校隣接地区に持ってきたことは、場合によっては士別翔雲高校に通学するよりも体力的にも金銭的にも楽であるという判断がなされる可能性はあろうかと思うのです。
また、名寄産業高校の統合後は、市内の北側にある産業高校からの通学を考えなくてもいいということになります。この結果名寄高校の通学時間帯に合わせた列車ダイヤの設定が可能になり、さらに名寄高校にインパクトのある形にできてしまう。このような面は捨てきれません。
なお、士別翔雲高校から最も近い場所に新駅を作る場合、約950m、徒歩15分程度の位置になろうかと思います。士別駅から1.5kmほど名寄寄りに仮に駅ができたとしてもインパクトは薄い感じもあります。士別市としては駅周辺へ高校生が利用することも一つの意味を見いだしていますので、必ずしも通学利便の高い場所に駅を設ければいいというわけでもなさそうです。
今後生徒の数は減り続け、倍率が低いことから、学力が無くても入学できること、そうなってしまうと、進学先、就職先に影響し、さらに「選ばれない」学校になってしまうこと。それを避けるためにはある程度の学力維持と、学力の一定以上の生徒を集める「ツール」が必要になる。そういう意味で名寄市は今回思い切ったことを行ったなというのが印象です。また、それは名寄市立大学の維持にもかかってくることとも思うわけです。
2022年7月追記・名寄高校駅開設後の訪問
名寄高校駅は2022年3月改正から設置され、普通列車・快速列車全便が停車するようになりました。










