北海道の交通関係

映画「日高線と生きる」を鑑賞しました

2021/11/02

一時期は1月に1本は映画を見る!と豪語していた時期がありましたが、最近はとんとご無沙汰。昨年に至ってはついに1本も見ること無く終わってしまったほどであります。

換気基準が非常に厳密である映画館は、昨今の指定席制導入などもあって、ほぼ「密」になることなく安心して利用できるものでしたが、それ以前に都市部を避けるような生活が続いていたのもあります。今回久々に映画館のサイトにアクセスしました。

「日高線に生きる」のコンセプト

事前にある程度情報を入れておきましょう。当サイトでも何度か取り上げ、残すことが場合によっては可能だったと思われる日高線の鵡川-様似間。結果的に「バス転換を地元が選んだ」形になり、2021年4月1日付けで廃線となりました。日高線に関しての映画の撮影が行われていることは2019年12月の報道から知ることになります。

日高線問題 映画で問う 苫小牧出身・稲塚監督が撮影開始
2019年12月11日 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/373681
> 苫小牧市出身の映画監督稲塚秀孝さん(69)=東京在住=が、災害復旧がなされないまま大部分の廃止が検討されているJR日高線をテーマとした映画撮影を始めた。
>「日高線は生存権に関わる憲法問題として捉えるべきで、JRの経営問題に封じ込めてはいけない」と、映画で世に問うことを思い立った。
 今月から取材に入り、5日には日高管内を訪れ、全線復旧を訴え続けた池田拓浦河町長や守る会の会員にインタビューをした。


とのことで、かなり社会派な映画となっている予想です。ただ、撮影開始が2019年ですから、日高線の列車としての運行時の映像は新たに撮ることはできません。

山線の映像を新たに発見 「支笏湖畔・停車中の列車・笑顔見せる少年」
2021年06月08日 苫小牧民報
http://www.hokkaido-nl.jp/article/21946
>  苫小牧市勇払出身で東京都在住の映画監督稲塚秀孝さん(70)が、今秋の公開を目指して制作している記録映画「日高線を生きる」の中で山線を扱う計画があり、資料映像を探していた。


日高線の前身となる王子製紙専用鉄道・苫小牧軽便鉄道・日高拓殖鉄道ですが、直接的な王子軽便鉄道とは(王子製紙の出資という以外は)無関係とも言えます。資料映像はほぼ「山線」と言われる支笏湖側への路線の映像と思われます。

記録映画「日高線と生きる」 苫小牧出身稲塚監督が無事撮影を完了、来月23日公開
2021年09月10日 苫小牧民報
http://www.hokkaido-nl.jp/article/23023
>苫小牧市出身の映画監督稲塚秀孝さん(71)が、2019年12月から続けてきた記録映画「日高線と生きる」の撮影が完了した。現在は編集作業中で、10月上旬にも完成する見通しだ。
 映画は3月末に廃止されたJR日高線鵡川―様似間(116キロ)の沿線で暮らすコンブ漁師やイチゴ農家、種馬の牧場主、高校生らを取材。同線と地域住民の関わりや同区間廃止をめぐる議論などを約90分にまとめる。  公開日は昨年、同区間の廃止方針が決まった10月23日に決定。


私個人はその映画のタイトルから、日高線そのものの廃線協議、その後の代替交通にスポットを当てたものと認識していたのですが、もう少し違った視点、そこに暮らす住民の姿、関わりが表現されるようで、逆に俄然興味を持ちました。
私個人は趣味的に廃線までのプロセスと代行輸送、そして鉄道としての廃止後の代替輸送を取り上げていますが、実際にそれを利用する人の話というのは残念ながらなかなか聞くことができないものであります。その面を補完する意味でも稲塚監督の取材対象が非常に幅広いのは気になったのですね。
そして映画は封切りを迎えます。

「廃線は残念」と入場者【浦河】
2021年10月26日 日高報知新聞
http://www.hokkaido-nl.jp/article/23507
> 今年4月1日に廃線となったJR日高線を題材にした映画「日高線と生きる」(稲塚秀孝監督)が24日、浦河町大通3の映画館「大黒座」で上映され、午後1時半の1回目に約40人が入場し、日高線へ思いを馳せた。
上映後、稲塚監督(71)は「取材は2年前から行ってきたが、新型コロナの影響で半年間来ることができなかった。自分が思っていたよりも早く廃線が決まったが、まだ“途上”で、これからJRの呪縛が解け、残された鉄路をどう活用していくかが大事だと思う。今日はたくさんの人に見てもらいうれしい」と感謝した。


映画というのは、やっぱりその先を、希望を描きたいものではないかと思いますので、監督が「その後」を見据えて作ったことがわかっただけでも収穫です。

映画「日高線と生きる」、劇場公開始まる
2021年10月30日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASPBY6QYYPBTIIPE00Y.html
>【北海道】4月1日に廃線になったJR日高線の鵡川―様似間(116キロ)をテーマにしたドキュメンタリー映画「日高線と生きる」の劇場公開が札幌市と苫小牧市、浦河町で始まった。存続を求めながらも、廃線を受け入れていく沿線町長の葛藤や住民の生活を描き、公共交通のあり方を問いかける内容になっている。
> 映画では復旧を求めながらも高額な負担金に悩み廃線容認に傾いていった沿線の7人の町長や、沿線に住む昆布漁師、イチゴ農家、高校生らの思いを描いた。


ドキュメンタリーとして、この時期に映像に残すということ自体が、今を伝えるという意味で必要ということでもあります。


「サツゲキ」の割引制度

今回この「日高線と生きる」は札幌市内の狸小路5丁目にある「サツゲキ」と苫小牧市の苫小牧中央ボウル内「シネマ・トーラス」そして浦河町の「大黒座」の3館での上映になります。本来で言えば大黒座に行くのが筋ではありましょうが、日程的に今回は札幌での観劇とします。

この「サツゲキ」でありますが、スガイディノスが「ディノスシネマズ札幌劇場」を2019年に閉館したあと、後継施設としてオープンしています。札幌は人口規模の割に映画館が少なく、一般向けの映画鑑賞が可能な施設は札幌駅ステラプレイスの「札幌シネマフロンティア」とサッポロファクトリーの「ユナイテッド・シネマ札幌」そして単館の「シアターキノ」のあわせて25スクリーンにまで減ってしまいました。周辺市でも小樽、江別のイオンシネマ、千歳の新千歳空港シアターくらいで、中小の配給会社の作品がなかなか上映できない環境になっている問題がありました。この改善が期待さています。「サツゲキ」は2020年7月にオープンします。

「サツゲキ」来月22日開館 前身「札幌劇場」移転改築
2020/06/16 北海道新聞
> 道内で映画館などを運営するスガイディノス(札幌)が、移転改築中の映画館「サツゲキ」(中央区南2西5)を7月22日にオープンさせることが分かった。
 前身の「ディノスシネマズ札幌劇場」は昨年6月2日に閉館しており、約1年ぶりの「復活」となる。
> 建設費の一部をインターネット上で募るクラウドファンディング(CF)も6月末まで実施する。


先ほども触れていますが、映画館は換気基準などが非常に厳しく定義されています。どこでも映画館にできるわけではありません。そして映画館を維持すること自体も非常に大変なことであります。

さて、サツゲキを運営するスガイディノスには会員カード「バリューカード」がありまして、入会金は100円ですが、特典が素晴らしく豪華でありますので、お勧めします。

スガイディノスの会員カード バリューカード
https://www.sugai-dinos.jp/valuecard/
>シネマ
一般封切料金より300円引き(特別興行・特別料金を除きます)
毎週月曜日は各劇場1,100円(特別興行・特別料金を除きます)


通常の封切り料金1,900円がいつでも300円引き、そしてなにより月曜日は1,100円で見ることができます。なお、WEBから会員価格でチケット購入も可能で決済はクレジットカードが使えますから、映画館ではスマホのバーコードを表示させて鑑賞券と交換、そして鑑賞券のバーコードを入場時にタッチするだけという、非常に手軽な形になっています。

今回、個人的にも月曜日しか時間が取れなかったので、ポイントカード会員割引で非常にお得に鑑賞できます。
なお、サツゲキにはレディースデーはありますがメンズデーはございません。

余談ですがシネマフロンティアは水曜日をメンズデー、木曜日をレディースデーとしていましたが12月からは木曜日は1,200円で誰でも割引される制度に変わります。


「日高線と生きる」の感想

実際は是非とも映画館に足を運んでもらい、見ていただくのが一番ではあります。サツゲキには日高線沿線の写真などの展示もありました。

予告編




廃線に関する関係者への取材が丹念

まず、廃線までの流れが説明されます。そして沿線7町の町長、自民党の地元選出国会議員である堀井学氏、道議会議員氏(金岩氏だったと思う、藤沢氏ではない)のインタビューとなります。これは貴重です。
道議氏は分割民営化の前提内容を全く理解していないで話しているのが見え見えでありますが、一般的な理解という意味では仕方ないところなのでしょう。堀井氏は復旧費用について国、JR、道の1/3での負担についてを説明しています。当サイトでも何度か記載していますが、被災当初国、JRは復旧費用負担を表明していますので、では、誰が負担をしないとしたのか?というのが、映画内では触れていませんが復旧しなかった最大の理由です。結果的に廃線となった事実としてここまで触れます。特に廃止に最後まで反対した浦河町池田町長には大きく時間を割いています。

沿線の産業と人々

日高線の話は一旦終わり、沿線のコンブ漁師と干し場を仕切るその妻の物語です。札幌にいる息子は年間1週間程度の漁しか行えないコンブ漁師を継ぐ形にはならないだろうと見えます。肉厚で非常に質のいいコンブの漁師側からの目というのはあまり見ませんので新鮮です。

牧場経営、道外からの移住した牧場従業員を取り上げます。若者が少ない地域の現状ではあっても、成果が見え、給与が一定保証されるなら当然に定住できるということが言えましょう。

授業内で競走馬を育てる静内農業高校の生産馬が落札される様、馬産地である日高を象徴する「馬」に関する内容はかなり時間を割いています。馬の母子の別れは日高線とは無関係に感情をゆさぶります。館内ではすすり泣く方もおられたように見えます。

道外から浦河町新規就農者移住制度を使ったイチゴ農家、そしてそのイチゴやコンブを加工する社会福祉法人の作業所も紹介します。

廃線跡ウォークとその後

浦河町で「旧・日高線を歩く会」がイベントを企画する様子。残念ながら5月16日予定のイベントは新型コロナウイルス蔓延のために中止を余儀なくされました。

日高線歩こう 来月16日催し 日高幌別―東町
2021/04/20 北海道新聞 苫小牧・日高面
> 【浦河】町民有志でつくる旧・日高線を歩く会(加藤広明代表)は5月16日、町内の日高幌別駅から東町駅まで約4・5キロの線路上を歩くイベント「廃線ウォーク 旧・日高線を歩くin浦河」を開く。


旧・日高線を歩く会 廃線ウォークを延期
2021/05/14 北海道新聞 苫小牧・日高面
> 【浦河】町民有志でつくる旧・日高線を歩く会(加藤広明代表)は13日、全道的に新型コロナウイルスの感染が拡大していることを受け、16日に予定していた「廃線ウォーク 旧・日高線を歩くin浦河」の秋以降への延期を決めた。


しかし、このときのメンバーが、その後の跡地有効活用について検討をはじめ、陸別町の「ふるさと銀河線りくべつ鉄道」への視察を行う様子も含まれます。

日高線跡地利用策提案へ 有志が新組織で検討 浦河
2021/07/28 北海道新聞 苫小牧・日高面
> 【浦河】JR日高線の跡地利用について町に提案するため、「廃線ウォーク 旧・日高線を歩くin浦河」を企画した町民有志が中心になって新たなプロジェクトを立ち上げ、検討を進めている。
>企画した旧・日高線を歩く会のメンバーらが新たに「鉄路活用プロジェクト・イチョウの会」として議論を開始。廃線後の施設で車両運転体験を行う十勝管内陸別町の視察も行い、12日に開いた2回目の会合では、10人が参加して意見を交わした。
 旧浦河駅周辺については「町の玄関の役割が期待される」「外部に向けた顔になる、浦河に来たと分かるような施設が必要」との指摘があった。また、旧日高幌別駅で行っている写真展を例に、他の駅は「常設の展示スペースにしてはどうか」などの案が出ていた。



浦河駅の壁画と新たな作品

浦河駅の駅舎、ホーム側に飾られていた壁画の制作者である浦河高校美術部OBにもインタビューがされています。

そして、新たに制作された後輩たちの作品の制作を追います。

日高線の思い出 絵画に 浦河高美術部が制作 13日まで 町総合文化会館に展示
2021/05/01 北海道新聞 苫小牧・日高面
> 【浦河】4月1日に鵡川―様似間(116キロ)が廃止されたJR日高線の思い出を形にして残そうと、浦河高美術部の生徒が昨年12月から制作に取り組んでいた絵画作品が完成し、町総合文化会館3階ふれあいホール前で展示が始まった。
 絵は縦90センチ、横180センチで、現在の2、3年生部員8人が共同で制作した。タイトルは「思い出」で、海岸に敷かれたレールを日高線の列車が水しぶきを上げながら走る姿を描き、浦河らしさを表現しようと桜の花もあしらった。




実際に見た感想

実のところ、日高線の廃線、その後に向けた内容に関しては内容の1/3もありません。多くの時間を日高線沿線の「産業」の紹介に裂いています。町民へのインタビューの中でも日高線を「使っていた」としているのは浦河の映画館大黒座の女将のみで、日高線とは無関係に日高に生きている。いわば「日高線と生きていない」ことが色濃くわかる内容になってしまっています。
浦河高校の多くの生徒はJRでの通学を行っておらず(ダイヤ的に以前から路線バス通学がメイン)それは静内農業高校でもあまり変わりません。もとより域外からの入学用に寮も持つ高校であります。

また、廃線までの経緯と、廃線に関わる町長の言葉には「その後」のバス転換内容について多く触れられていません。JR北海道も協力という形で名前は入っていますが、代行バスについても転換バスについても一切出てきていませんので、それが住民利便の向上になったかどうか?そこは触れません。

いずれにしても、制作側は時間が限られる中、コロナ禍で取材ができない、映像的にも流用したもの、画質の大幅に落ちる箇所があるなど、準備不足が否めません。
列車の走行シーンはほとんど出てきませんから、それを目当てに行くと、がっかりが強いかもしれません。

ただ、今の時点で、日高線を失った今を切り取ったドキュメンタリーであるので、そこに住む人々であったり、今後の生き方だったりを映像に残すということには意味があると思います。また、事実関係のみで国やJRを単に糾弾する形になっていない(これは見ている人がそう思うかどうかという話)のは好感です。

地域にテレビが入ることはあまりないわけですし、漁師、農家とあまり取り上げられない内容でもありますので、やはり「今を残す」ことに主眼のあるドキュメンタリーであります。何かに環境移入するような映画ではありませんので、是非気楽に見ていただければなと思います。


別件でありますが、日高管内では襟裳岬の緑化事業を題材にした映画「北の流氷」(仮題)の撮影が今後行われます。浦河出身の田中光敏監督の元、浦河、様似、広尾でのロケが敢行される予定で、個人的には気になっている映画であります。

北海道の交通関係 JR北海道 日高線

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