北海道の交通関係

沼田町「鉄道ルネサンス構想」とはどのようなものか

2021/11/15

沼田町は「北空知JR留萌本線問題検討会議」のなかで「鉄道ルネサンス構想」というものをJR北海道に提案したことを明らかにしました。

<揺れる鉄路>留萌線の部分存続協議 1年ぶりに北空知検討会議
2021/10/20 北海道新聞 空知面
> 【深川】JR北海道が廃止・バス転換を求めるJR留萌線について、深川市と4町でつくる「北空知JR留萌本線問題検討会議」(会長・山下貴史市長)は19日、第7回会合を市役所で開いた。
> 約1年ぶりの検討会議では、2月に開かれた深川、秩父別、沼田の1市2町による「JR留萌本線沿線自治体会議」の経過などについて情報を共有。7月に根室線沿線7市町村が滝川―新得間の「廃止・バス転換」を含めJR北海道と協議入りを決めたことなどを確認した。沼田町は、町がJR北海道に提案した全路線を一定額で乗り放題にする「鉄道ルネサンス構想」について説明した。


その「鉄道ルネサンス構想」とはどのようなものなのか、沼田町のホームページを探してみましょう。

沼田町 鉄道ルネサンス構想について
https://www.town.numata.hokkaido.jp/section/sangyou/jr/h0opp2000000ffk4.html
沼田町「鉄道ルネサンス構想」とはどのようなものか
沼田町「鉄道ルネサンス構想」とはどのようなものか
https://www.town.numata.hokkaido.jp/section/sangyou/jr/h0opp2000000ffk4-att/h0opp2000000ffr5.pdf
沼田町「鉄道ルネサンス構想」とはどのようなものか



沼田町はルネサンスをどういう意味で使っているか?

あくまで辞書には

Renaissance
>【名】ルネサンス、文芸復興◆14世紀イタリアに端を発し全ヨーロッパに広まった、美術、建築、文学における古典様式の復興運動。


としています。沼田町が思う鉄道に関するルネサンスは「昔ながらの鉄道」を復興する意味と捉えるならば、それは無理なことです。運ぶべき貨物もありませんし、高速道路のない、国道ですら砂砂利の時代に戻すとまで言い切れるわけではないでしょう。
「鉄道だけが」元に戻ることは決してありません。

あくまで沼田町のWEBサイトの内容は「既存の制度にとらわれない新しい取組み」ですからこれはイノベーションの話であってルネサンスとは最も遠いところにあるように思わないでもありません。

とはいえ、古い鉄道に新しい価値を見いだして「昔の」利用客数に戻すというなら、まだ考えもありましょう。そのまま昔ながらの恐ろしく不便な鉄道のままで利用者を増やすのは困難です。もっと言えば沼田町自体が「昔ながら」の人口ですらありません。


鉄道会員制度フリーダムパスポートとは

ルネサンスについて何も語られていないままに「鉄道会員制度フリーダムパスポート」というワードが出てきました。「鉄道を利用する際の運賃を定額制とすることで、鉄道を使えば使うほど、お得に北海道全体を移動できるようになる」というものですが、要は「全線定期券」を作れってことでいいのでしょうか?会費と言っていますので、年間固定額を払えば全線が乗れる「年度内全線定期券」というイメージで考えられそうです。その使用の権利を「会員」として売るということに見えます。

ちなみに、上記資料には2020年度のJR北海道の営業収入420億円(これもどこから出てきた数字かわからない。ちなみにJR北海道の2020年度の鉄道運輸収入は354億円、2019年度は706億円)を単純に人口割りして8000円、世帯割りして15,500円としていますが全道民が「税金」として支払う状況は考えられないので、この金額は考えませんし、この金額で考えているなら、さすがに現実性を一切感じませんので、最初からこんな案を提案しないとも思います。どこまで本気なのかは若干疑われます。

・利用者の利点
上げられている利用者の利点のうち「本当に利用者が得られる利点」は固定額で全線乗れることによる割安感となりましょう。ただ、これは金額によることになります。ただ、これも企業が購入する場合は実質的に「交通費」なのに「会費」や「雑費」、使わないけれど会員となったのなら「寄付金」になってしまい、特に会計的にしっかりした会社なら、この「会員制度」を運用するのは非常に困るようにも思われます。
税務的に会費を「課税仕入」として計上できるか、「明らかな対価関係」(鉄道利用が可能な対価である)と考える場合「使わない区間」の支出はどう考えるか?なのです。そして普段鉄道を使わない企業ならばやはり「寄付金」的に税法上も扱われるような気もします。

また、個人会員以外は認めない場合も出張などにこの「会員乗車特典」を使用する場合に非常に困るということもありましょう。全道どこでも乗れるような「会員」を税法上どのように運用するか?というのは非常に難しいようにも思います。

むしろ、自治体会計で全職員にこのような「会員パス」を使用させる場合、沼田町は交通費の運用をどうするか?というのが興味があります。

・JR北海道の利点
これは「乗っても乗らなくても」固定金額収入が得られるという意味になります。しかし、JR北海道が「会費」として集めるならば鉄道運輸収入として計上できません。会費収入は「預り金」になるのではないかと思います。1年後にその会員権の効力が無くなってはじめて「売上」となりそうです。もちろん現金が入ってくることには変わりませんが、それまでは経理的には手元に残しておかなければならない現金となるのでは無いかと思います。
やはり「会費」として処理するくらいなら、最初から「全線定期券」として販売しないと短期的なJR北海道としての「収入」として会計処理しにくいような気がいたします。

・自治体の利点
いろいろ書いていますが、自分の町に来る人が増えるか?というところになります。大事なのはJRだけ全線にしても「JRが走っていない地域」は無関係ということです。JRが走っている地域を既得権としてさらに人流を活発にしたいが、それ以外の町は知らんというふうに取られかねません。

・会員制度のイメージ
「通勤・通学者向け」とする7日全線全区間プランで考えますと、特急の利用有無の記載が無いのですが、出張の話も書いてあるので全線特急込みプランとしましょう。現在JR北海道の在来線を7日間特急も含めて乗り放題となる「北海道フリーパス」が7日間27,430円となります。ざっと1日3,900円ですね。単純に年額1,423,500円で現在も「乗り放題」を楽しめます。(利用制限期間はある)
なお、札幌-旭川の特急定期券「かよエール」は6ヶ月523,670ですから1年で104万7340円。毎日乗るとすれば片道1430円ほどとなります。ここから考えても年間100万円を割り込む値付けは難しいようにも感じますね。

利用曜日を限定するプランであっても、現実的には定期券を実日数にするような形ですので若干の割引が可能かどうか?ということになりそうです。

シルバープランに関しては現在JR東日本と共同で行っている「大人の休日倶楽部」の北海道内乗り放題券「大人の休日倶楽部パス」の北海道内5日フリー券が17,400円、1日3480円ですので、先の北海道フリーパスから引いても127万円程度でフリーにできるかどうか。(大人の休日倶楽部パスは利用期間が限定されるので)ということになります。

沼田町の提案に無い普通列車のみ使用可能なプランはどうでしょうか。JR北海道とJR東日本が学生の長期休み期間に発売する「北海道&東日本パス」は7日間で11,330円。1日1600円ほどになります。ここから計算すれば1年間58万5000円程度で年間パスを出せるかもしれません。
なお、札幌-白老の6ヶ月通勤定期が320,540円です。

そう思うと、ざっとですが、全道普通列車用年パスを50万円、特急列車利用可能な年パスを100万円で発売してみる。思い切ったサブスクリプションを考えてみるのも悪くはないのかもしれません。既存定期との兼ね合いもありましょうが、本当にそれで鉄道利用が復権するのか、JR北海道の減収にはならないのかも含めて考えるのは私個人としてはそれほど酷いアイデアだとは思ってはいません。大人の休日倶楽部並みに会費として先にいくらかを入金させることで割引切符を使用可能というあたりが落としどころでしょうが、過去に行っていたJR北海道の若年割引(ヤングゴーゴークラブ)なども、それほどうまくいったようには思えないのが厳しいところではあります。

とはいえ使うか?

年間かなり「鉄道を使っている」ほうの私でも、「年パス」が発売されて飛びつくか。個人的にJR北海道の定期を年間8万円程度払ってはいますが、会社の経理的に全道フリーを購入した社員にどう出張費などを精算させるかなどもありそうですし、やはり悩ましい。多分使わないだろうなというのが印象です。均せば50万円使っていても・・・って感じですね。

同様の事例

ジェイ・アール北海道バスは65歳以上の高齢者を対象に札幌周辺の路線バスを乗り放題にする「おでかけパス」を発売しています。最大6ヶ月24,000円(暦月発行)となります。

ジェイ・アール北海道バス おでかけパス
https://www.jrhokkaidobus.com/ticket/ticket/
沼田町「鉄道ルネサンス構想」とはどのようなものか


札幌市内の特殊区間210円区間ですら1ヶ月9,070円、6ヶ月48,980円ですので、大幅に割り引いていることがわかります。このような地域内で大幅に割り引くことは、対象者を制限することではできそうです。

そう思うと、せっかく年齢を限定した会員組織として「大人の休日倶楽部」「ジパング倶楽部」を持っているJR北海道としては、年会費を既にいただいている状態から発行可能な、この会員組織を使用した方法を考える方が理にかなっているかもしれません。

さいごに

沼田町は「マニア」から20代から40代男性マニアが利用可能なフリー切符などの少なさを聞き、このような奇抜な案を出しているのでしょうが、対象者を闇雲に広げること、そしてジェンダーに配慮する女性の割引などを行わないことを鑑みた上で、現実的な提案を行う方が、話には乗ってくれそうに思います。

まず最初に「留萌線フリー切符」を安価にはじめるところから考えるのはいいことかもしれません。自治体支援も含めて道南いさりび鉄道のフリー切符なみの1000円程度(割引されて700円程度)というのは、非常に魅力的に見えます。まさか自前では一切負担しないで「全線会員」なんて言っていませんでしょうから。

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