北海道の交通関係


北海道の交通関係サイト終了のお知らせ

当サイトは終了することといたしました。本件に関しましては以下をご確認ください。
当サイトは2023年12月末で閉鎖することといたしました


路線バスの維持をどのように考えるか

2021/11/24

この時期になると北海道は冬の便りが各地から届きます。夏と冬でダイヤが変わらないのが鉄道の利点(これも過去から鉄道会社が頑張ってきた結果である)ではありますが、多くのバス会社は夏ダイヤと冬ダイヤを切り替えて、11月中旬から12月頃に変更します。

「ダイヤ改正」が12月と4月という形で年2回ありますので、この時期バスダイヤの変更とともに、路線の廃止や減便の話も伝わってきます。しかし、その多くは「その地域だけ」の問題ですから報道されることも少なく、特に本州におられる方には多分伝わっていないのではないでしょうか。


鉄道の廃止「だけ」が問題なのか?

鉄道というのはどういう交通機関でしょうか?自前で土地を所有し、そこに線路を敷くことで独占的に事業を行うことができるのが鉄道の最大の利点です。その線路敷地には関係者以外立ち入ることができません。
鉄道事業者の鉄道用地内への無許可の立入は「鉄道営業法第37条」により「鉄道地内立入罪」として摘発されることになります。勝手踏切とされる無許可場所での線路横断や写真撮影でのちょっとの線路敷地立入を「おおげさ」と軽視する方はおられますが、安定した運行を行うためには決して行ってはならないことになります。
(線路敷きも)
(一部を除く駅舎も)
(橋梁も)
(踏切も)
(トンネルも鉄道会社の持ち物であり、自社で管理が必要なものです)
逆な言い方をすれば、それだけ往来に関して優遇されるのは「利用が多く」「影響人数が大きい」ということの裏返しでもあります。国も鉄道会社に対しても往来安全のための策を講じるよう様々な法令、省令にて鉄道会社に要求します。ですから仮に1日1本しか走らない鉄道であっても、首都圏の多数の運行がされる路線であっても根底の安全対策に差はありません。当然利用が少ない路線はその得られる収入に対して設備が過大であることが路線の維持ができない問題になっていくことになるわけです。

バスに転換されればバスも廃止されてしまうから鉄道が必要という意見は、申し訳ありませんが鉄道の設備面、人員面負担について全く現実を見ていない浅い考えでは無いかと思うのです。また、利用の少ない鉄道は国が維持すべきだという報道も、本当にその設備を使わない都市部の人や鉄道のない地域の人が負担(国が負担するということは、国民の支払う税金で負担することだ)することを納得させられるのか?という問題になります。

どちらかといえば企業規模が大きく、過去には全国組織であった国鉄から分割された旅客鉄道会社の廃止路線だから騒ぐだけで、本当にその地域のことを思っていないのではないか、その地域で起きている「公共交通」という問題が目に入らず、鉄道がなくなるということ「だけ」しか見えていないことで、それだけを問題にしているのではないか?と見えてしまうのです。

もっと言えば、鉄道が残れば、駅が残れば他の公共交通の問題は考えなくてもいいと思っているのなら、恐ろしく短絡的で、その地方をバカにした話ではないかとも思うのです。


「バス」の前に道路の維持の話

バスが走るためには道路が必要です。その道路は誰が維持しているのでしょうか。

国交省/直轄国道20年間の修繕費を初試算/予防保全4・9兆円、事後保全5・5兆円
https://www.decn.co.jp/?p=93920
>国土交通省は、今後20年で必要になる直轄管理国道の修繕費を初めて試算した結果をまとめた。損傷などの被害が出る前に修繕しておく「予防保全」と、損傷などが起きた後に修繕する「事後保全」の手法を採用する2パターンで試算し、今後20年の累計で予防保全なら最大約4・9兆円、事後保全なら同約5・5兆円と算出した。試算結果を踏まえ、予防保全による修繕の重点化を目指す。


2017年に国土交通省は今後20年で必要になる直轄国道の修繕費を初めて試算しています。直轄国道ですから国土交通省地方整備局、北海道開発局、内閣府沖縄総合事務局が管理している国道ということになります。国から補助金を受けて各都府県と政令市が管理する国道は含まれません。

北海道の国道の多くは国土交通省の下部組織になる北海道開発局が管理を行い、10カ所の開発建設部(札幌・函館・小樽・旭川・室蘭・釧路・帯広・網走・留萌・稚内)、34カ所の道路事務所(函館・八雲・江差・苫小牧・室蘭・有珠・日高・浦河・札幌・岩見沢・千歳・滝川・深川・小樽・倶知安・岩内・帯広・広尾・足寄・旭川・士別・富良野・留萌・羽幌・稚内・浜頓別・北見・網走・遠軽・興部・釧路・根室・弟子屈・中標津)が管理を行います。

北海道開発局 予算
https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/ki/keikaku/u23dsn0000000hh4.html



令和3年度の北海道開発局の道路予算は189,577百万円。約1900億円です。もちろん多くはこれから建設される道路のものではありますが、道路維持費用もここに含まれます。


「国道」であっても、国が全て維持管理をしていないという面があります。国道の維持負担金は地方も負担しています。

<真相深層>国道維持 道に重い負担金 財政難に追い打ち 道道は除雪経費削減
2009/05/08 北海道新聞朝刊
> 道内の道路延長は国道六千五百キロに対し道道は約二倍の一万一千七百キロ。除雪費は昨年度当初、国道は七十五億四千万円、道道は八十一億五千九百万円。単純計算で一キロ当たり、国道は道道の二倍の経費をかけている。
 分かりやすい違いは、除雪車の出動基準にある。道は従来、降雪量五-一〇センチ以上としていたのを、〇四年度から一〇センチ以上へと見直し。これで、道道の除雪費は下がり続ける。一方、国道は道の従来基準のままだ。


国道の維持には地方も出す、もちろん交付税交付金での補填があるとはいえ、自分たちが必要であるという観点から負担してでも維持したいのです。

その上に「道道」があります。都道府県道でありますので、本州の方なら「県道」という言い方の方がピンとくるかと思いますが、道道の維持管理は北海道の管轄となります。
道道は北海道の10の建設管理部(札幌・函館・小樽・旭川・室蘭・釧路・帯広・網走・留萌・稚内)、52の事業所・出張所(函館・江差・八雲・松前・今金・知内・奥尻・洞爺・登別・苫小牧・門別・浦河・札幌・岩見沢・滝川・深川・長沼・当別・千歳・小樽・余市・共和・蘭越・真狩・黒松内・鹿追・浦幌・大樹・足寄・旭川・士別・美深・富良野・留萌・羽幌・遠別・稚内・歌登・頓別・利尻・礼文・網走・北見・紋別・斜里・遠軽・興部・釧路・弟子屈・中標津・根室・厚岸)が管理を行います。
道道は比較的人口の少ない地域間を結びますので、国道ほどの規格ではないとはいえ、やはり場所によっては24時間除雪を行います。逆に人口希薄地の夜間除雪を行わないような場所もあります。規模に対する予算に限りがあることもあります。

高速道路は道路会社が管理しますので、単に「除雪」という面でも高速道路会社が除雪する区間から国道としての自動車道である日高道や留萌道になると除雪の様式が変わり、その自動車道を降りた後、道道に入れば北海道の除雪となります。基準が変わりますので、同じような道路環境であると思ったら大間違いとなるわけですね。


> 国道の維持管理にあたって、都道府県が支払いを求められる直轄事業負担金は、都府県が事業費の45%、北海道が特例で三分の一(除雪分は15%)。一方、都道府県道の維持管理費への国の補助はない。
 〇八年度当初で、国道の維持管理費の道の負担金は九十二億円。これを道道用に回せば、除雪だけでも国道並みが可能となる。全国知事会は国道関連の直轄負担金全廃を求める大都市圏と、地元負担をしてでも整備は進めたい地方とで足並みはそろわない。


記事はこのように「直轄事業負担金」さえなければ道道も同じような道路維持(除雪)が行われると結論づけました。
なお、直轄負担金は北海道に関しては「北海道特例」として優遇措置がされています。国道整備では他府県の負担が1/3に対し道は1/5となります。

直轄事業負担金制度は事業が多い大都市が廃止を声高に表明しましたが、自前で一部負担してでもインフラを作りたい地方部との軋轢があり、費用負担は軽減されたものの、今も残る制度となっています。

令和3年度直轄事業の事業計画
https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/ki/keikaku/slo5pa0000003e0j-att/slo5pa0000005ln8.pdf



この費用に関する項目(費目)は維持のみでは無く、新規道路建設に関わるものであることに留意が必要ではありますが、このような形で現在も地方負担は残っているのが現状ではあります。

民主党政権下での事業仕分けで一部が中止になった公共事業で北海道の「直轄事業負担金」は軽減されたものの、作らなければならない、改良しなければならないインフラが後回しにされ、それで生きている地域の建設事業者を疲弊させてしまったという面もあります。
特に除雪作業は北海道開発局や北海道が直接行うだけでは無理で地域の建設事業者の協力によって成り立っているのが現実となります。

北海道内高速道路・国道・道道道路管理事務所等


北海道内の道路維持を行う道路管理事務所だけでもこれだけの規模になります。さらに市町村道は各自治体が別に除雪を行います。また、道路事務所だけでなく、峠など個々にさらに除雪センターが運営され、主要国道は24時間除雪の体制が取られます。冬期通行止めや夜間除雪を行わないとする路線もありますが、除雪を行われない路線の沿線は「生活ができない」地域になります。道路の維持こそが生活の命綱なのです。

では、無人地帯は除雪しなくていいか?というと、また別な問題があります。夕張市の例です。

空き家地区の市道 負担大 除雪1キロ年58万円に 廃屋も財産「閉鎖できず」 夕張
2020/04/25 北海道新聞
>市によると、市道1キロ当たりの年間除雪費用は、その年の降雪量によって異なるが、今冬の場合は58万円。1・2キロは70万円ほどの除雪費用がかかっている計算となる。
> このため市は、居住者がいない市道を閉鎖させたいが、空き家といえども財産権があるため難しい。市の担当者は「市道を閉鎖した後に空き家が雪の重みで倒壊した場合、持ち主が現れて『市が市道を閉鎖したから、自分たちは空き家を管理できず、結果的に倒壊した』と訴えられる可能性がある」と話す。
 市は空き家の除去に最大20万円を補助する制度を設け、空き家の解消に力を入れている。昨年度は20軒が除去された。しかし、所有者が不明な空き家も多く、まずは除雪などの管理を続けざるを得ないのが現状となっている。


無人地帯の除雪は無駄と切り捨てるのは簡単なことですが、別に法律面の問題も考えなければならないのです。


路線バスが冬期も運行するためには除雪などの道路維持は不可欠。しかし、道路除雪により乗用車移動が簡便になればなるほど路線バスも含めた公共交通の利用も減るという面を考慮しなければならないのです。


バスを残すための方策

赤字バス路線に16億4600万円補助 前年度比3.8億円減
2021/11/06 北海道新聞
> 札幌市は5日、市内の赤字バス路線を維持するために市が支出する補助金について、2021年度は180路線計16億4600万円を見込む路線維持計画を公表した。


路線バスの運賃収入と運行費用が合わず赤字となる場合に、路線を維持するための方策として大きいものは補助金になります。札幌市内の比較的よく乗っているといわれている路線でも補助金が拠出され維持されているのが現状です。

市内バス路線の維持について
https://www.city.sapporo.jp/sogokotsu/index/bushojo.html


基本的に市営バス委譲路線についての補助金になりますが、系統毎の額が表示されます。

くしろ、阿寒バス路線維持へ 補助金早期支給を 市に要望
2021/08/17 北海道新聞
> 釧路市のくしろバスと阿寒バスは、バス路線の運行を継続するため、市の補助金の早期支給を求める要望書を蝦名大也市長に提出した。補助金は例年、年度末に支給されているが、新型コロナウイルスの影響で乗客が大幅に減っているため、昨年度に続いて支給の前倒しを要望した。


釧路市からの約2億円の支給が年度末まで待てないとした釧路市内の2社、もちろんコロナ渦であることを差し引いても、もはや運賃収入で路線を運行するという前提が崩れていることがわかろうものです。

路線バスの補助金は、自治体単独のものだけでなく、国によるものもあります。しかし、基準が定められていますので、利用数がそれを割り込めば補助は受けられなくなります。

旧JR代替バス 天北宗谷岬線 国補助金 除外見通し 2便廃止 経費節減図る
2018/09/29 北海道新聞
 【浜頓別】旧JR天北線代替バスの天北宗谷岬線(稚内―音威子府)を運営する宗谷バスが国の補助要件の変更で、年間約1億円の補助金を来秋以降受けられなくなる見通しであることが分かった。
> 同協議会などによると、17年度の路線の維持経費は約2億1千万円。運賃などの収入は6千万円程度にとどまり、国が補助金約9200万円、沿線4市町が約5900万円を支出して収支を合わせた。
 国は補助基準として輸送密度(1キロ当たりの1日平均輸送人員)を5人以上としており、現状は見込み数を認めているが、来年10月から実績数に変更する。これに伴い、補助要件を満たせない見通しになった。


輸送密度5(人)を満たせないというのは、正直どうしようもないという言い方しかできません。バスの場合の輸送密度は1便平均旅客輸送人員ですので、単純に言えば本数を掛ければその区間を利用する人の数です。多くの路線はいままで「みなし」で不正な補助を受けていたという言い方さえできるということです。

さて、「国の補助要件」が変わるから減便になるのだと暗に国を批判した北海道新聞ですが、実際はもう少しおおごとでした。

<フォーカス>旧JR代替バス 存続危機 天北宗谷岬線 輸送量満たさず 補助対象外に 沿線の大幅負担増必至
2019/10/24 北海道新聞
>輸送量が国と道の補助要件を満たしていないことが会計検査院の指摘で発覚。9月分で補助を打ち切られ、今月1日のダイヤ改正で減便に追い込まれた。
> 打ち切られた補助は、複数の市町村を通る交通ネットワーク維持を目的とし、対象となる路線の1日の輸送量は15人以上150人以下。2年前の輸送量をもとに申請する。地方自治体が住民に配布するため購入した回数券も輸送量への反映が認められている。このため沿線市町村は00年度から、補助の要件を満たす輸送量の不足分をあらかじめ計算し、年3900万円~4700万円を回数券で購入する「買い支え」という形をとってきた。
 ただ、回数券の利用が進むと、その分、有料乗車が減る可能性がある。このため各市町村は、購入代金だけ宗谷バスに支払い、実際には回数券の発券を受けてこなかった。
 会計検査院は17年10月、宗谷バスの14、15年度の回数券販売額計9千万円について、発券すらされていないのは運輸実績として認められないと指摘し、国土交通省に改善を指示。回数券購入分が輸送量から除かれ、補助対象から外れることになった。同協議会会長の菅原信男浜頓別町長は、「『買い支え』自体は制度上問題なかったため、特に意識せずに続けてしまった。会計検査院の指摘はもっともだ」と複雑な表情を見せる。


(天北線バス)
回数券の発券すらされていないという、ザルな補助を行えば、そりゃ実際全く乗ってないじゃないかって話で、仮に回数券の発券を受けていてもその回数券を配布しないのだから同じことです。網走バスの路線に対して会計検査院が補助要件を満たさないとした事例もあります。同じ記事からです。


 このうち網走バスは、網走―斜里、網走―美幌など5路線の運行のため、国から年約2300万円の補助を得ていた。会計検査院の指摘では、北見、網走両市と美幌、大空、斜里、小清水の各町が「買い支え」していた回数券は、発券されていたものの、各市町が配らず保管しており、補助要件を満たしていないと指摘。今年9月末で補助対象から外れた。


これ、暗に国の体制を批判しますが、逆にこんな方法で国民の税金を「使われていないバス」に不正につぎ込まれているのは非常に困惑であります。

鉄道代替バスを5年は完全国負担、その後は転換交付金を積み立て、運用益でバス路線を維持するというのはJR北海道の経営安定基金の考え方と非常に近い状態です。現実にはまともな運用益は得られず30年近く経って元本も食い潰してしまったというのが現状です。しかもその間沿線人口の減少、道路事情の改善で自家用車利用も増えており、バス利用者は減少。この結果は致し方ない面でしょう。


さて、バスは運行費用のなかに除雪などの費用はありません。燃料費用に税金が含まれますので、これにより負担していると言えましょう。車両費、人件費、燃料費という代表的な費用分であっても、路線の運行を黒字にできないというのが現実となります。

そして、長く人件費が安い状態が続いたこともあり、バス運転手の数も減少の一途。結果バスの運行も行えないという状況になっています。いまや北海道の多くのバス会社は「補助金」がなければ会社の維持すらできない、もはや民間会社として維持できているのか?という問題すらあるのが現状ではないでしょうか。


鉄道からバスに代替すると収支はどう変わるかという一例があります。

旧広尾線代替バス 9年ぶり赤字、90万円 利用低迷と車両更新で
2010/12/02 北海道新聞
> 【広尾】旧国鉄広尾線の代替交通手段として運行されている帯広-広尾間(88・7キロ)の路線バスの2010年度(09年10月~10年9月)の収支が約90万円の赤字になることが1日分かった。
> バスの1キロ当たりの1日輸送人員を表す平均乗車密度も前年度比0・5人悪化の5・0人に低下。5・0人を下回った場合、国や道の補助金が減額されるため、来年度以降、市町村の財政負担が拡大する恐れもある。沿線自治体による協議会の事務局を担当する広尾町は「バス利用のPRに力を入れたい」としている。


広尾線転換バスは比較的利用が多く、国と道による地域間幹線系統確保維持費を得て黒字を維持していたものの、2010年に赤字転落します。(それ以前も車両代替などの時点で赤字があった)

赤字バス路線補助金減額方針 「どう維持すれば…」 管内2社、不安強める
2016/06/10 北海道新聞
> 補助金は「地域間幹線系統確保維持費」で、複数の市町村にまたがって運行するバスの赤字を国と道が2分の1ずつ負担する制度。
>路線名     経路                運行距離(キロ) 赤字額(千円) 補助金額(千円)
>広尾線     帯広駅―更別―広尾営業所         91.1 135,229   92,067


(広尾線バス)
2010年度に90万円の赤字(沿線自治体補助金額)としていた広尾線はその後も毎年赤字が続きます。もちろん地域間幹線系統確保維持費を得た上での赤字額でありましたが、2012年には1846万円、2014年には4285万円そして、2016年度ついにその額は5000万円を突破します。
その、国と道からの地域間幹線系統確保維持費は2012年は約9,500万円、2014年以降は8,500万円と減額されていますが、その差額以上に赤字額が増えている。つまりは利用が大幅に落ち込んでいるという面を考えなければなりません。

多くのバス路線は補助金で生きながらえているだけで、国が道がと言ったところで無尽蔵に補助金が下りてくることはありません。既に道路維持で国は地域の利便に応えている状況で、バス路線を残すためにも国が出すべきだという考え方では、もはやバスは維持できない状況になります。国の補助制度が悪い!と叫んでも、補助制度の足切りがあることは地元自治体は知っていますが住民は知る由もありません。あと何人乗ってください!という公表も行っていない以上住民が「じゃあ使おうか」にもなりませんし、使わない理由を事業者の問題にすり替え、役場職員の出張すら「バスなんか使わないよ」と言う以上補助金制度がと叫んだところでバスの維持はできません。

そして、先に書いたとおり、これを「鉄道」として行うならば設備の維持、除雪にも経費がそのままかかります。バスですら維持できない状況で鉄道の維持は難しいことはわかろうというものです。


でもバスは無くしたくないよね

鉄道に比較してバスの最大の利点は、実際に使うときの利便が高いことです。特に「駅」「停留所」の問題が大きい。鉄道は駅の維持にも多大な非常がかかります。ホームの除雪、駅舎の管理も含めてです。また、有人駅ならば人件費もかかりましょう。
バスは停留所にポールをもつだけで基本的には問題が無いというのがあります。わずかな土地とポールの維持費は駅とは比較になりません。また、除雪に関しても歩道除雪がある地域ならほぼ考えなくてもいいでしょう。(もちろんバス停も除雪車が寄せた雪を除去するためにバス会社職員などが除雪をする姿も見ていますので、そういう観点は必要です)
これにより、ほぼ利用がない停留所も維持が可能で、停留所の数を増やすことも可能です。また、国道などを除けば停留所以外での乗車も可能という策をとることができます。バス路線上ならばドアtoドア的な利用が可能です。

鉄道の最大の欠点は「駅」そのものに用事が無いことです。自宅から駅、駅から学校や職場、買い物先に歩く必要があります。歩けない距離ならばさらにバスに乗るなどを考えなければなりません。その不便さがとくに地方では敬遠されています。街にとって必要な「行き先」は多くは駅とは別の場所ですから、駅から病院、駅から役場、駅からスーパー。それしか選択肢がない時代だったらともかく、現実はとても歩いて回れない。

とはいえ、バスであっても以前の利用が多かった時代に設定された路線ではやはり停留所が必要な施設を経由していない路線も少なくありません。あと数百メートル、総合病院までの路線延長はできないの?という町は少なくありません。
しかし、鉄道に比較すれば路線の変更は簡便でありますので、必要な場所に、必要な時刻に路線を作るのだという自治体および事業者の努力が可能ということもいえます。

また、駅など市街地にバスターミナルがない、会社によってバス停留所が分かれ乗り換えられないというのもバスだから発生します。地域に複数のバス会社があり客の取り合いをしていた過去もあり、なかなかバス会社間が手を結ぶことができていない。そこを仲立ちするのが自治体の役割とも言えましょう。

もっとも大事なのは、地域の住民が何をするためにどこに行きたいのかを掌握し、その利便に沿う路線なりダイヤを組めるか?です。そして、それが実現したときに、最も便利なのはクルマだというのをわかった上で地域住民に利用を促せるかということになります。そこではじめて回数券の配布などの利用促進策が生きてきます。


当サイトで何度も書いていますが、鉄道の存廃にこだわった結果、本当に必要なバスが減便され、廃止されていることにあまりに無頓着ではないかと思う自治体が散見されます。そうこうしている間にバスは減便、廃止の一途をたどるのです。


例えば2021年12月改正の北海道中央バスの岩見沢-月形路線です。


改正前と比較すれば平日6往復が5往復に、休日に至っては4往復が2.5往復です。月形地域から岩見沢への通学、逆の岩見沢地域から月形への通学がある程度メインとわかっていながらも、土曜休日に「部活すらまともにできない」ダイヤになってしまったということです。
もちろん、これは自治体としてこれでも路線が維持される方がいいという協議の結果と思いたいですが、本当に利用する人の意見を聞いたのか?という面はあります。札沼線の廃止でJRからの補助を受けられる鉄道代行バスに比較して「本当は必要な」既存バスの本数が減便されるという意味は非常に大きいことです。鉄道だからバスだからではなく、本当に必要だった、通学客が多く、また、総合病院への通院に必要だった岩見沢への路線を減便されてしまう。そして、それが「実際には車使うから困らないよ」というのが見えてしまっている。個人の移動の自由は守られるべきですが、車を持たないと現実に生活できないような町にしてはならない、そして、子や孫が「別の地域の上位校に通学できない」ような町にしてはならないのです。

町としては、自分の町の高校を維持するためには他の地域への通学を不便にした方がいいという考えがもしかすると根底にあるかもしれない。しかし、それを行うのはもう「その町に住めない」ことになります。子供を育てられない町は消滅するしかないのです。

また、札沼線の1往復運行区間で特段に代替バスとしてではなく、既存のバス路線が代替している滝川-新十津川-浦臼については中央バスが撤退を発表しています。跡を継ぐのは町営バスとなりますが、浦臼-滝川の代替の他、浦臼-奈井江の町営バスを美唄自動車学校の運営に変更し砂川市立病院に延伸することも発表されます。

浦臼町、滝川線を公営に 来秋 バス廃止受け公共交通案 奈井江間の町営バスは民間に転換 砂川市立病院まで延伸
2021/11/19 北海道新聞
> 【浦臼】町内と新十津川、滝川を結ぶ路線バス「滝川浦臼線」が来年9月で廃止されるのを受け、町は同10月に導入する地域公共交通案をまとめた。同線は町営バスとなるほか、現在浦臼―奈井江間で運行中の町営バスの運営主体は民間事業者に変わり、町民の要望を受けて行き先を砂川市立病院まで延ばすなど拡充する。


(滝川-浦臼の中央バス)
これは、町民が行きたい場所はどこなのか?というのを熟慮した結果とも言えましょう。鉄道でつながっていた(が鉄道で通学できなかった)新十津川町の新十津川農業高校のほか、滝川市内への通学の他、今まで鉄道への乗り換えが必要だった砂川への利便を提供するということは、かなり細かく利用動向を見たことによって路線を再編したと言えるかと思います。
(浦臼町営バス)
なので、鉄道が無くなった、バスもなくなったじゃないか!ではなく、もはや民間路線バスでは無理な地域の継続性を考えた形になったという言い方もできるかとも思うのです。ただ、滝川-浦臼の便は来年10月の町営バス化を待たず、来年4月に減便するとしていて、このあたりの調整ができていない(バス会社側も背に腹は代えられない事情があろうが)問題があります。


では、どうすればバスを維持できるのでしょうか。地域の住民の意識を変えていく必要があります。自分たちが少しでも不便なバスを使うことで、子や孫の通学ができるバス路線を残せる。そう考えて行動できるかです。当然旗振りは自治体になりましょう。これは札幌など都市部も同じです。住民が年に数回バスに乗るだけで大きく収支が改善します。今「年に1度も乗らない」を「年に6回」2ヶ月に1回も乗れば月形町のレベルでもざっと年に2500万円ですよ。先の広尾線でいえば広尾町6000人の人口が帯広に年1回使うだけで2400万円ですよ。地域全員と言わないまでも、その町の中心部、バス停の近くに住む住民が年に数回使うだけでバス路線を維持できる可能性のある運賃収入が得られるじゃないですか。その意識に変えていく、バスの維持に特別な方法はないんです。

これは札幌でも同じです。通勤を地下鉄、バス、市電に変える。それが今一切公共交通を使わない市民の1割でも移転するだけで大きく変わる。バスの補助金をほぼ使わなくて済むようになるんです。赤字補助に使わなければ別な用途に予算を転用できます。そこまで考えて自治体は公共交通の維持に動かなければならないでしょう。むしろ、路線維持だけに予算をつぎ込んでいる、他の予算を削るしかなくなるという悪循環になっているのです。


インセンティブとペナルティ

とはいえ、今、一番便利な交通機関として「自家用車」を持つ人が簡単に公共交通を年に1度たりとも使わせることができるとは思っていません。
今まで、公共交通を使うインセンティブを「運賃割引」として提示することは多かったと思います。札幌市が過去に行っていた自家用車から公共交通への転移のための施策だった「さわやかノーカーデー」では毎月5日と20日に一日乗車券の割引を行っていました。しかし、これは実際自家用車から転移したというより、最初から日常公共交通を使う人の単なる割引チケットにしかならなかった面があります。結局この施策は2006年に終了しています。

公共交通は自家用車より便利にならない。だからこそ、利便を改善したという形でアピールしても全く伝わらない。1時間1本の路線を30分に1本にしました!といくら言っても「クルマだったら今出られる」で終わりです。まして高齢者や一部の信者は「自分は環境に優しいハイブリッドカーに乗ってる!」と自負していますから、環境面でのアピールも無駄です(もちろん真実を伝える努力は必要です。きちんと乗るならば公共交通は環境に優しいですが、1台に数人しか乗っていないような列車・バスは環境面ではクルマに劣るのです)

ならば、公共交通を利用して移動したら「得をした」と利用者に伝えられる施策が必要と思うのです。札幌都心部にクルマで買い物に行き、駐車場の車列に1時間も並んで、でも、買い物すれば駐車場はタダだから得をしたと思ってるわけです。公共交通で移動して買い物をすれば運賃はタダになるような施策、また、都心内のバスや地下鉄は何度乗っても無償のような大胆な形でも、やっとクルマと同等です。過去には札幌駅のパセオで利用客へのJR券の配布が行われていましたが終了しています。

そして、もっといえばクルマを使用したペナルティな形にするしか方法はないのですが、まぁ、これは今の制度上は難しいでしょうか。

「自動車が乗り入れない都市」を模索する世界の潮流、その成果は
2020年1月15日
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/01/1-112_1.php
>環境意識の高いオスロでさえも、自動車の乗り入れ制限には、市民の間で多くの議論がなされたという。米ニューヨーク・タイムズ紙によると、制限にもっとも反対したのは、地元で商業を営む事業者たちだった。車が減るということは、買い物客が減ることにつながると懸念したのだ。

そのため市側では、完全な乗り入れ禁止ではなく、「出来る限り減らす」という方向で対応した。つまり、自動車の乗り入れを全面的に禁止とするのは一部の道路とし、住民の車や事業で必要な車両は禁止の対象から除外した。また、市民の便宜を図るため、トラムや地下鉄の本数を増やし、運賃を下げた。このような対策のおかげか、オスロでは、蓋を開けてみたら新たに歩行者用となった通りでは、乗り入れ制限前と比べ、買い物客はむしろ増加したという。


ニューズウイークの記事ですし、数字的な裏付けがない記事ですので全面的に同意できない面はありますが、実際にこの形に動いている国や地域があるのも事実でしょう。
地方都市であっても都心部へのクルマ流入を禁止すれば、単純に郊外の店舗が充実し都心部が寂れるという意識がありましょう。しかし、現実に今でも郊外店は乱立しているわけで、元都心部と言われる場所がシャッター街になってるのであれば同じこととも言えます。ならば、試してみる価値はあろうかとも思うのです。

その前にやらなければならないのは都市部内の人が集まる、人が行きたい場所へのバスの巡回、そして、広い駐車スペースがある郊外の「クルマ-バス」乗り換え拠点の整備です。一つの例が旭川市です。

<アングル>コロナ 旭川のバス苦境 新拠点や合理化 企業努力吹き飛ぶ 専門家「国の支援必要」
2021/09/05 北海道新聞
> 「いったん中心部まで出なくても乗り継げる。通勤が30分くらい楽になった」。旭川市街地の南東部にある旭川電気軌道(旭川)の共栄バスセンター。上川管内東川町行きに乗り換える市内の会社員井森俊実さん(42)はセンターの新設を歓迎する。
 同センターは昨年12月、新たな乗り換え拠点として開設。各系統の経路を延ばして終点をセンターに集約し、利便性を高めた。発着は1日345便に上る。
 待合所はプレハブ造りながら冷暖房付き。東川高に通う市内の女子生徒(17)は「以前は寒い屋外で待ったが、待合所がきれいで快適」と喜ぶ。合わせて同社は2カ所に分かれていた営業所も共栄に集約。今年6月には市街地北部に春光バスセンターも設け、同じく乗り換え拠点とした。


(郊外と住宅地のくっきりしている境目付近にある旭川市の共栄バスセンター)


バス車庫とバス乗り換え拠点としてだけでなく、70台以上駐車可能な一般駐車場が完備されているので、ここにクルマを停めて都心部にバスで移動するという用途にも使えます。
また、住宅地の春光バスセンターも駐車場は設けられていないようですが、冷暖房のある待合室を用意しています。

(春光バスセンター)
(旭川駅に集まる路線バス)


また、都市部のクルマ流入を制限する考え方を釧路市は釧路駅の高架化のなかで考えている節があります。

<なぜなに釧根>釧路駅高架化 津波防災の観点から検討再開 「バス専用道で接続」案に賛否
2021/04/03 北海道新聞
> Q 最近出てきた「L字形」案とは何かな。
 A 市は従来直結するとしていた駅南側の北大通と北側の共栄新橋大通を、L字形のバス専用道で接続する案に変更しました。駅前スペースの確保に加え、中心部を通る一般車両を減らすとともに、北大通の歩道を広げて歩きやすくし、中心部のにぎわいにつなげる狙いがあります。
 Q 事業構想編の素案に対する市民の意見公募では、賛否が分かれたよね。
 A 賛成でも、北大通を4車線から2車線に減らすことや、L字形でつなぐ案に反対という人もいました。市は6月ごろから市民との意見交換会を複数回開き、事業への理解を求める考えです。


(釧路駅前バスターミナル)
都心部を歩きやすくすることでの回遊効果をかんがえるときに、クルマが少し利用しにくくなるような設計というのは批判を浴びやすいことであろうかと思います。しかし、今のまま単に駅の下を通りやすくするのは、いたずらに不必要な車の流入を増やすという意味でも避けたいというのもわかります。
釧路の駅付近の再開発がどのようになっていくかは興味深いところです。また、2社のバス会社と維持問題がある鉄道をどのように結びつけていくかによっても、その路線問題が変わってくるだろうなとも思うのです。


都市部に車の流入が減れば、当然事故が減る。渋滞が減る。公共交通が維持できれば免許を持たず車を持たない人も移動ができる。子や孫が通学できる。年齢を重ねてもいつでも車を手放せる。

夢物語です。でも、目指していかなければならないのではないでしょうか。

使おう公共交通、減らそうCO₂
https://ryobi.gr.jp/publictransportation/



岡山の両備グループのサイト。このくらいの「正直さ」が発信されていないから、まだ大丈夫という誤った意識が植え付けられているのかもしれません。

北海道の交通関係 路線バス

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