北海道の交通関係

旭川近郊駅と路線バスを見てきました

2021/12/02

先日用事があって旭川に行って参りました。往復は高速バスあさひかわ号を使用し、市内は路線バスを使用しています。正直を言いますと私個人は旭川の路線バスは恐ろしくわかりにくく、うまく利用できたためしがないという過去であります。今回はIT化が進み、それが改善されているのかを実践してみます。

一日乗車券

旭川では観光客向けの1日乗車券、2日乗車券を発売しています。名称は「あさくるパス」で、市内路線バスを走らせる旭川電気軌道、道北バス2社の旭川市内路線に乗り放題になります。

旭川電気軌道 あさくるパスのご案内
http://www.asahikawa-denkikidou.jp/regular-route/asakuru-pass/



当初は夏期のみ利用できた記憶がありますが、現在は通年販売となっています。
大人1,200円、子供600円は、他地域に比較すると若干高めな印象ではありますが、旭川市内のバスが2社にまたがっていること、その2社それぞれへのメリットを考えると致し方ないのかもしれません。
なお、旭川市内のバスの初乗りは特殊区間である中心部で180円、郊外部で160円となっており、10.9kmの旭川駅-旭山動物園は450円、特殊区間内の東光16条5-近文25は11.5kmで260円となります。概ね6回乗車で元が取れそうです。

あさくるパスの発売は旭川駅構内の旭川観光物産情報センターか駅付近の旭川電気軌道、道北バスの案内所、市内ホテルになりますが、スマートフォン完結による発売も行われています。

ジョルダン あさくるパス
https://ticket.jorudan.co.jp/asahikawa/ja/


1990年代から「乗換案内」ブランドで鉄道やバスなどの案内ソフトやサイトを運営してきたジョルダンのモバイルチケットサービスを使用したサービスで、チケットを発券すること無く購入、使用が可能です。今回、旭川駅まで行かずに利用を開始したいので、この方式はありがたく、早速スマートフォンに「乗換案内」アプリをダウンロードし、購入してみます。


全国の様々なチケットがありますので、間違えないよう「あさくるパス」をタップします。

説明をよく読みチケットを購入します。

支払い方法はクレジットカード、PayPay、銀聯カード、Alipay、ジョルダンチケットコードが使用できます。今回はクレジットカードを使用します。

実際に運転手さんに提示する券面のスクリーンショットは取得できないようになっているほか、偽造対策は取られているようです。

なお、何度か利用したうち1名の運転手さんが、このチケットの存在を理解していなかったようで、利用が少ないのはわからないでもありませんが、不正乗車を疑われるのはあまり気分のいいものではありません。


バスキタ!によるバス時刻検索、位置情報の提供

旭川市は2015年11月から札幌のメディア・マジック社の「バスキタ!」のシステムを利用したバス位置情報、接近情報、時刻検索の試行提供を始めました。2016年からは本稼働し、冬期間のバスの遅れに対する問い合わせが少なくなり、バスの利用も伸びたと報道されています。

路線バス走行 リアルタイム確認サービス 「バスキタ!」利用好調 旭川で乗客増 2社が提供継続
2016/04/02 北海道新聞
> 旭川市が昨年11月から試験運用してきた路線バスの走行状況をスマートフォンやパソコンでリアルタイムで確認できる「バスキタ!」の利用が好調だ。旭川電気軌道と道北バスが運行する市内と近郊の全130路線(高速バスを除く)が対象で、乗客の増加にもつながった。市の実験は3月末で終わったが、1日以降も2社が引き続きサービスを提供している。
> 昨年のサービス提供後、旭川電気軌道は、2月までの乗客数が前年同期比で約1・4%増加。道北バスは、バスの本数が減っているにもかかわらず、乗客数はほぼ横ばいで推移した。人口減が進む中、両社ともバスの乗客が前年度より減らないのは珍しく、さらに真冬に多い「バスはいつ来るのか」などの問い合わせもほとんどなかったという。
 また、旭川市の調査ではバスキタ利用者の3割以上が「バスの利用が増えた」と回答しており、増客効果があったとみられる。


現在「バスキタ!旭川」では旭川電気軌道・道北バス・ふらのバスの3社の市内近郊路線が網羅されており、市内だけでなく、名寄や上川などの地方部を走るバスも提供されるのは非常に利便が高いものです。
また、札幌でもジェイ・アール北海道バスとじょうてつが同社のシステムを導入していますが、各バス会社が別々に提供している上、最大手中央バスは別システムを導入し、並行路線で別々のサイトを開かなければならない面があります。旭川は3社が同じ画面に表示されますので、同じ方向で他社系統がある場合も確認できるのは非常に利便が高く感じます。
さらに、スマートフォンだけでなく、パソコンのブラウザからもアクセスが可能であることで、事前にある程度利用シーンを確認できるのもスマートフォンオンリーでしか提供しない他社に対する利点です。

バスキタ!旭川
https://asa.buskita.com/#/map



予想だにしない系統を見つける

旭川のバスは都心部の旭川駅周辺と郊外を結ぶ便が多く、都心部を経由して郊外から郊外に向かう便があるために、同じ系統番号でどこに行くのかわかりにくかったり、系統番号がインフレ化していたり、一つの系統の便数が少なく、結局どれに乗っていいのかわかりにくいという面がありました。
バスキタ!では旭川駅近郊の複数のバス停をまとめて郊外への系統を検索できることでそれを解決しています。

今回、近文駅に寄った後、本来の目的地である旭川医大病院に行こうと思います。近文駅近くの緑町20丁目バス停からだと、一旦旭川駅経由して医大病院行きのバスかなぁ・・・と思っていましたら、なんとこの2点を直通する系統がありました。ただ、医大病院の最寄りバス停が「緑が丘3条4丁目」と知ってるから見つけられたというのはありますが。実験運行している旭川環状通り循環線で、本数は限られますが、意外な系統を見つけられるのがサイトの利点でもあります。

スマートフォンの位置情報を使えば、最寄りのバス停が表示されるというのも便利で、バス利用を検討するなら、あと10分も待てばバスが来るという情報が得られるだけでも利便が高いことです。

なお、旭川市はこのバス運行情報をGoogleMapにも対応させましたので、GoogleMapでもバス停を選択することで時刻がわかるようになっています。


バスの前に近文駅を見てみる

旭川近郊であり近隣にイオンや運転免許試験場もある近文駅ですが、駅自体はひっそりしています。開業は1911年(明治44年)と古く、駅前は住宅街が広がっています。2006年までは簡易委託の職員氏がおられたはずですが、現在は無人駅です。


窓口跡は埋められ、現金専用の券売機が設置されています。



ホーム上の待合室はかなりの年代物で明治時代の建造物とされています。ただ、あまりにも古く、隙間風も多いので待っているのに困るかもしれません。

運転免許試験情報面への自由通路も兼ねている跨線橋は屋根も無い鉄階段。雪が積もったこの日は足下が滑る上に階段の幅が狭く危険を感じるほどでした。駅を維持するならば、この状態は改善することが求められます。

この日は美唄市付近の大雪で列車が遅れており、予想しない時間に特急がやってきました。カメラ任せでしたがそれなりの写真に。

近文は駅と路線バスが結合されておらず、利便も高くありません。緑町20丁目バス停に副表示として近文駅前を表示することや、駅にバスについての案内を掲示するのも必要なことに感じます。
それ以前に普通列車しか停車しない近文駅は列車本数的に必要な駅であるという認識がされていない、そういう面があります。


実際にバスに乗ってみる 921-旭川環状通り循環線


この日は11月ではありますが、旭川市内は雪が断続的に降る悪天候でした。旭川はバス停への「バスシェルター」(屋根付きの案内)などの設置は進んでおらず、ふきっさらしのバス停は使いにくい面があります。
先ほど検索した921系統旭川環状通り循環線に乗ります。すぐ近くにある旭川運転免許試験場が始発で、道北バスの営業所が隣接しています。

お客さんは0、旭川はノンステップバスが当たり前という感じになっていますね。ただ、車両はそれほど新しくなく、多分名古屋市営バスからの移籍車で、後部に向かい合わせの座席があるのは2000年頃の車両と思われます。

旭川新道近文大橋を渡る路線バスも珍しく、路線名の元になっている道道90号旭川環状線に入ります。途中の停留所は待っている人はいますが、なかなか乗ってきません。ある停留所では乗ってきた方が「街にいきますか?」と聞いてきます。札幌でも中心部に行くことは今でも「街に行く」という言い方をしますので、若そうな方がこれを言うのは新鮮です。
区間乗車で2名ほどの乗車がありましたが、ほぼカラのまま平成大橋に左折します。旭川環状線もこの先はあまり民家が無く、市街地が形成されている富良野線神楽岡駅を経由します。私もここで下車します。

運賃は460円で、なかなか高額です。


旭川近郊駅である神楽岡駅

神楽岡駅は1958年に開業した比較的新しい駅になります。国鉄が都市近郊列車の近代化、貨客分離、気動車化などを行った結果、駅間を詰めることが可能になったことが新設の理由と思われます。
近隣は住宅地が広がっており、待合室とホームだけという簡素な駅ではありますが利用客の少なくない駅です。
JR北海道も富良野線の体質改善を行い、1992年からワンマン運転化、1993年からはキハ150投入によりほぼ全ての列車が冷房車となるなど大幅に改善されています。

話は少し逸れますが、旭川市は北海道でも夏の気温の高いところで35度以上となる日も少なくありません。1990年代当時、北海道では公共交通機関の冷房化も進んでおらず、JR北海道でも民営化直後に導入した721系電車で札幌圏の電車列車にやっと冷房を設置し始めたなか、富良野線の普通列車を冷房車で新製するのは、沿線のバスの冷房化の進捗を無視できなかったこともあったであろうと思われます。
旭川電気軌道は北海道の路線バス事業者では非常に早く1987年から冷房車の導入を開始、また、既存車両を置き換えることもあり本州事業者から大量の中古バスを導入することであっという間に冷房化率を高めたという面があります。同様に道北バスも中古車導入も含め冷房化が進みました。



ホームへはスロープでアクセス可能で、比較的広い待合室には現金専用ですが自動券売機も設置されています。

ちょうど旭川行きの列車が到着しましたが、平日の昼間に利用があるもので心強い。

そして駅の管理は近隣の町内会で行っています。

JR北海道は民営化直後に札幌圏の増発、駅設置を行う中、旭川圏の富良野線でも増便を行います。

国鉄末期1985年の時刻表。1986年3月に札幌-旭川に途中無停車の特急ホワイトアロー号新設の直前のダイヤです。α列車は増便実験が行われた列車で、それを含め15往復が運行されています。

JR化後1991年の時刻表。まだ緑が丘駅は開業していませんが、美瑛までの列車を増発し、また、等間隔運行を考えたダイヤになります。

その後列車の発車時刻を毎時30分などきっかりにすることでわかりやすいダイヤをつくる実験も行っています。ただ、1時間に1本ですと学校の終わり時間などの関係でもう少しずらして欲しいなどの要望により現状では「まぁまぁ1時間に1本」のような感じになっています。

1990年当時神楽岡駅近くの道北バスの神楽岡15条4丁目を始発とする便も含めた旭川駅付近とを結ぶバスは、日中10分から20分間隔を維持しており、バスの利便も高いことがわかります。

それが、30年経って現状ではこれだけ。富良野線とどっこいどっこいの本数しか無くなってしまっています。(これに美瑛方面からの便も使えるが、7往復である)

旭川電気軌道の80・81も使用できるが、このあたりのバスの本数、大幅に縮減してしまっていることもわかります。JRが列車本数を維持している中、バスの本数がそれ以上に減便されてしまっているのです。


JR化後に新設された緑が丘駅

ちょうど列車がない時間帯でしたので、バスで進みます。神楽岡から緑が丘はバスもJRも200円になります。先ほども紹介したとおりバスの本数も限られますが、スマートフォンからすぐに調べられるのはやはり便利です。


緑が丘駅はJR北海道が1996年に開設した駅です。付近には旭川南高校、旭川工業高校、旭川医大病院などの施設があり、地元請願での駅設置と思われますが、この駅があることで富良野線は「北の学園都市線」的な利用を得られているといえましょう。


駅舎は大きくはありませんが、現金専用の券売機も設置されています。余談ですが、JR北海道の旭川付近の無人駅で券売機を設置しているのは上記で記載した近文、神楽岡と当駅のほか、西神楽駅のみとなっています。宗谷線、石北線では無人駅の券売機設置はありません。

当駅は残念ながらホームへのアクセスは階段のみとなっています。

駅から旭川医大へ徒歩で向かいます。建物入り口まで約1.8kmある上、坂を上る形になりますので、思ったより遠く感じます。


平日の昼ですが学生が多く歩いているのは試験期間なのでしょうか。病院はひっきりなしに車でのアクセスがあり混み合っています。駐車場が少ないこともありますし、現実に体の悪い状態で駅から歩いてくるのは難しいとも思われます。
駐車場の整理員がいるにもかかわらず、バス停前に駐車して高齢男性が病院に行ってしまいました。モラルもなにもありません。



71医大病院・緑が丘線

旭川医大病院は旭川に限らず周辺どころか留萌・宗谷地域の拠点病院でもあります。大きな病気をすれば旭川医大という信頼があるといってもいいでしょう。学長解任問題や道新記者逮捕問題はあれど、地域としては大きな病院は信頼されるべきものであります。
この71番という系統は1976年の医大病院開設時から運行している系統になります。今は1時間に1本程度、旭川駅に直接乗り入れるのも含めて、若干他の系統とは毛色が違う系統になります。

旭川医大では通院者と思われる方10名程度が乗りますが、次の緑が丘3条4丁目で高校生が多数待っています。あっというまに座席どころか通路までいっぱいになってしまいました。

バスは、その後も乗ってくるばかりでほぼ降りる方がいません。旭川四条駅最寄りの4条18丁目バス停での下車を検討していましたが、後ろの方に乗ってしまい、通路までいっぱいの状態ですので、降りるのを遠慮しました。結局高校生はほぼ全員が旭川駅まで乗り通しました。運賃は310円でした。


旭川電気軌道市内路線バスの通学定期券

普通に考えますと、学生が工業高校最寄りの緑が丘3条4丁目から旭川駅まで乗るというのはあまり考えにくいことです。多くの都市ではバス定期券よりJRの通学定期券の方が安価であり、多少本数が少なく不便でもJRを使うというのが定説になっています。

旭川電気軌道では新型通学定期券「マルパス」が発行されています。この定期券には他とは大きく異なる特徴を持っています。
・乗り放題(全線形)定期券であること
・平日限定定期券であること
・旭川市内限定「マルパス」と、旭川市内・東川町・東神楽町まで乗れる「マルパスワイド」を発行していること
・土日祝祭日もほぼ全ての市内路線で1乗車150円でバスの利用が可能であること

新型通学定期券「マルパス」
http://www.asahikawa-denkikidou.jp/ic-card/mulpass/



旭川市内限定で1ヶ月5,500円という金額は驚異的です。JR北海道の旭川-緑が丘の高校生通学定期が1ヶ月4,170 円で、その差はわずかであります。また、駅から歩ける場所以外に住む学生を考えると、バス定期とJR定期の併用が必要だった方も多かったと思いますが、バス定期が「全線」でありますので、バス定期だけで通学が可能です。全線定期なのでバスを何度乗り換えても運賃は変わりません。
ちなみに特殊区間180円区間の通学定期運賃は1ヶ月6,480円ですから、土日使えないことを差し引いても安価で、例えば旭川駅-医大病院(工業高校)なら1ヶ月11,160円ですから、半額以下です。

この定期は、小学生は半額ですが、中学・高校・大学・短大・専門学校まで同一運賃であることも大きいところです。

1カ月5000円で平日乗り放題 旭川電気軌道 ユニーク通学定期 来月21日から販売
2004/09/30 北海道新聞
> 【旭川】一カ月五千円で平日、旭川市内のバス乗り放題-。同市内で路線バスを運行する旭川電気軌道(旭川)は、割安感をアピールしたユニークな通学定期券を十月二十一日に発売する。中学生から大学生までが対象で、小学生の場合は半額の二千五百円で購入できる。同社によると、一定地域を平日乗り放題にする通学定期は道内で初めてという。
 名称は「マルパス」。学生のための「マルチ定期券」から名付けた。乗り放題となるのは、同社と傘下のバス会社「あさでん」(旭川)の市内全路線で、市外へ運行する一部の路線は除く。土、日曜日と祝日は定期券所有者本人に限り、全区間を初乗り料金(百六十円)より安い百五十円で利用できる。
 同社によると、旭川市内の高校や大学は郊外に点在しており、通学時は乗り継ぎすることも多く、高い運賃を負担している学生にとっては朗報。同社は「通学だけでなく、塾通いやアルバイトにも使っていただければ、お得になります」と話している。
 これまで同社の通学定期券の料金は、土、日曜日も使用可能なもので、中・高校生の場合は一カ月五千四百円からだった。


なお、道北バスは同様の定期券を発売していないので、現状では鉄道定期の方が安い場合がほとんどとなります。結果道北バスのエリアである旭川農業高校は北永山駅を、旭川永嶺高校は南永山駅を使う生徒が多いということにもなりそうです。旭川永嶺高校は個人的に聞き慣れませんが、旭川東栄高校と、旭川凌雲高校が併合した学校で、旭川凌雲高校の校舎を旭川永嶺高校が使っているようです。
以前は旭川発近文行き、近文発旭川行きの朝時間帯の通学列車が運行されていたことを覚えている方も多いかと思います。2016年改正で無くなっています。これも近文付近の高校生、そして近文駅に比較的近い旭川電気軌道バスエリアの旭川明成高校の通学生がバスに移行したと見ることができそうです。

ともかく、旭川は駅と学校が必ずしも近くはないということを考えても、バス定期の割引は実際に通学する生徒にとっても朗報であり、本来ですと並行区間も含めて道北バスも歩調を合わせる必要があるような気もします。


旭川電気軌道共栄バスセンターを見てみる

旭川電気軌道は2020年12月6日のバスダイヤ改正から旭川市東旭川の旭川東郵便付近の共栄営業所に隣接し共栄バスセンターを開設します。

共栄にバスセンター新設 旭川電気軌道が12月 中心部通らず乗り換えも
2020/10/24 北海道新聞
> 旭川のバス事業者旭川電気軌道が、12月6日のダイヤ改正に合わせ、市内の東旭川町共栄に「共栄バスセンター」を新設する。同社が運行する路線バス68系統61路線のうち、22系統17路線が発着または通過するようになる予定。乗り換えのために市内中心部まで出る必要がなくなる路線もあり、同社は「新たな交通網の結節点として活用してもらいたい」と期待する。
 共栄バスセンターは、同社の既存施設「共栄営業所」に隣接して建設中。敷地面積は約3万4千平方メートルで、同社のバス駐車場や職員駐車場、バス乗り場を設ける。待合所は約100平方メートルで、スロープや手すりが付いたバリアフリー仕様。バス利用者のための駐車場72台分と駐輪場も整備し、車や自転車を置いてバスに乗り換えられるようにする。建設事業費は非公表。


春光営業所の集約もあるようですが、このような郊外型バスセンターの新設はあまり他の地域で聞かないような気がします。多くの便をこのバスセンターに集めることでバスからバスへの乗り継ぎをできるようにすること、また、駐車場を設置することで、車からバスへの利用を喚起する意味もあろうかと思います。
バスの行き先が「共栄バスセンター」ばかりになり、どこを経由するのかが重要になりわかりにくくなる面はデメリットではありますが、先の学生定期が全線であるならば、どのルートで帰っても、どのルートから乗り継いでもいいわけで、実質的な利用可能本数が増えるという言い方もできましょう。

旭川駅から少し離れた4条7丁目からたまたまやってきた19番のバスで共栄バスセンターまで行きます。都心から離れていくバスですが、しばらくは降りるより乗る人が多く盛況です。住宅地の東光地区でほぼ降りてしまって、最後の区間は私一人。運賃は320円で、やはり特殊区間を越えるので少しお高めです。



なお、このバスでは運賃表がスクロールして全体を表示しないのがあまり他の地域で見ない方法で面白いですね。

共栄バスセンターにつきますと、ターミナルの建物内では2名ほどバスを待っている状態でした。プレハブの工事事務所等に使われるような建物ではありますが、目につくのは男女別に車椅子対応のトイレまであるところで、現在では必須の設備と言えましょう。また、サイネージ形の発車案内と時刻表があります。若干時刻表はわかりにくさがあります。元々「1の9」とか書かれてもそれがどこなのか?というのは部外者にはわかりにくいのです。




トイレ部分、サイネージ表示部分には冷暖房がないものの、区切られた待合室が用意されており、ここには冷暖房と時計が表示されています。窓が大きく取られており、乗り場が1カ所ということもありますので、必ずバスが目の前を通って着車することで目でわかるようになっているようです。


外観はあまり目立たないこともあって、大きな看板が取り付けられています。駐車場があることもよくわかりますので、アピールポイントなのですが、面している道路はあまり交通量が多くないというのがありますね。


自転車の駐輪場とクルマの駐車場が備えてあるのは、郊外型のバスセンターとしては必須の設備とも思います。ここでバスに乗り換えて都心へ行くと駐車場の心配がいらないなとは思うのですが、旭川のまちづくり的には駅直結のイオンも駐車場列が平日でも見られるというのが現状ではあります。

バスを待ちながら外がよく見えてバスの着車がわかりやすいのが、よく考えられています。

なお、共栄バスセンターからほど近い旭川東栄高校の校舎を居抜きで使う形で旭川龍谷高校が移転することが発表されています。

旭龍谷高 22年夏移転予定 耐震化済みの旧東栄高へ
2020/11/10 北海道新聞
> 旭川龍谷高(旭川市豊岡)を運営する学校法人旭川龍谷学園は、旧旭川東栄高(同市東旭川町共栄)への移転時期を2022年夏とする方向で調整している。旭川龍谷高は11月~翌年3月の冬期間、スクールバスを運行しており、移転後も生徒の通学に支障が出ないよう配慮する。


旭川駅方面だけでなく、広範囲にバスが運行される拠点である共栄バスセンターが隣接することでスクールバス運行の必要が無くなることも考えているのではないかとも思われます。


旭川電気軌道春光バスセンターを見てみる

最後に今年6月に開設された春光バスセンターを見てみます。共栄バスセンターから直通のバスもありますが、とりあえず都心に戻ってみましょう。ちょうど94番の赤十字病院行きが来ましたので乗ります。旭川赤十字病院も地域の拠点病院の一つです。運賃は350円。


ちょっと戻って5番の循環線に乗りまして220円、春光バスセンターです。もう真っ暗になっています。

春光バスセンターは春光営業所の敷地に建てられましたが、営業所機能は廃止となりました。春光営業所は1999年に旭川電気軌道から「あさでん」として分離子会社化されましたが、2007年に再統合。今回、営業所を廃止し、全ての営業所機能を共栄営業所に集約しています。とはいえ「春光車庫」として車両は配置しないながらも車庫機能としては残している形になります。

この春光車庫に使われている建物の一部は旧第七師団覆馬場跡地。1912年(明治45年)の建設とされ、この辺り一帯が陸軍の練兵場であり、跡地の一部が現在の陸上自衛隊旭川駐屯地となります。

北海道文化資源データベース あさでん春光整備工場(旧陸軍第七師団騎兵第七連隊覆馬場)
https://www.northerncross.co.jp/bunkashigen/parts/10438.html
>旧陸軍第七師団の大規模施設の一つで、明治末期につくられた積雪時に軍馬を訓練するための施設です。各連隊に一つずつ配置されていましたが、現存するのはこの1棟のみで、現在はバス会社の整備工場として利用されています。れんが造り平屋建、鉄板葺です。


自衛隊員の官舎なども近隣にあり、春光地域はその住宅地として栄えた場所でもあります。


旧第七師団覆馬場の碑がある後方に春光バスセンターがあります。

春光バスセンターの建物自体は春光営業所の建物そのものを使用しており、現在は営業所機能が無くなり事務所等も縮小されたことでの待合室新設と思われます。

バス停自体は事務所前に設置され、少し待合室からは見えにくく感じます。当方も待合室を見ている間にバスが到着しましたが気がつきませんでした。


営業所自体は昨年に閉鎖されており、定期券などの発券機能は持たせていません。これは共栄バスセンターでも待合室には案内窓口は無く、営業所または、旭川駅近くの案内所で行うことにしているようです。


待合室は小さめで、冷暖房の設備はありますが、サイネージによる発車案内は設置されていません。これは少し残念なことです。

春光バスセンターからの発車路線は、循環路線である5・6番のほか12番など1時間に1本の路線が複数あり、おおむね15分から30分間隔で都心部への便があるのは利便が高いと思ってもらえそうな気がします。

ただし、住宅地の中であることもあって一般の駐車場は無いようですが、こちらは住宅地に近いことを生かせる立地と言えましょう。


最後に

今回、多くない本数ではありますが、旭川市内を廻ってきました。そこで感じたことがいくつかあります。

運賃が複雑

一日乗車券であるからあまり考えないで乗れるという意味がありますが、市内中心部から10km程度の場所への移動でも300円を超えてくる区間があり、また、特殊区間が設定されているものの、区分が多く運賃が次々上がるような印象を持ちます。特殊区間初乗り180円、2km程度で200円、その後20円づつ上がるようですが、3区程度にまとめたいところです。
特に循環系統はどちらを廻っても同じ運賃なら、利用できる便数が倍になるという利点があります。運賃制度をそのままでもICカードを利用する場合に最短運賃で精算するような仕掛けがあってもいいような気がします。これは定期券の設定でも同様かと思います。学生用に全線パスである「マルパス」を設定したのは、家から何本か乗り継いで高校まで発行するのが「わかりにくい」とバス会社も認識していると思われるからです。

なお、最初に乗った旭川環状通り循環線は一周すると1000円を超える路線になります。これは極端ですけどね。


サイネージの設置箇所の不足

旭川市や国の採択で補助されたことがあり、サイネージ形のバス運行情報表示が各所に設置されました。しかし、春光バスセンターのような本来必要な場所に設置されていないのは、補助の関係上それにあふれたカ所はバス会社が独自に設置しなければならず、その費用をバス会社が捻出できないという意味になりましょう。

北海道運輸局管内における他業種と連携した公共交通の活性化⼿法の調査等業務
https://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/content/000184098.pdf


安価に設置できる方法が確立できれば、特に都心のバス停なら各バス停に設置できるのが理想です。


特に残念に感じたのは旭川医大や赤十字病院のような病院に設置されていないことです。医大病院の風除室の壁にバス時刻表やJR時刻表が貼られていますが、全ての系統ではないのも含めて、これではわかりません。


バスシェルターの設置

こちらもバス会社が単独では難しいことは非常によくわかりますが、都心部のバス停にもほぼ屋根がついたものがみえません。バスシェルターの利点は時刻表だけでなく路線図やサイネージも設置できることですね。それにより「バス停」であることを市民に認識させる意味もあります。そのバス停からどこに行けるかがわからない以上バスを使うことができないのです。


でも、いっぱい乗ってるよ

旭川で感じたのは、札幌でいえば地下鉄に乗るような感覚で幹線筋に関しては利用客がたくさんいました。細かい区間で乗り降りがあり、ちゃんと本数が確保できている路線には利便を感じてもらえていること、そして、多くのバスが「街」に行くというのは逆に安心感を持って使われている面があることもわかります。
だからこそ、「どこへ行くのか」がわかりやすい状態なら、バスはもっと使いやすくなるとも思えるのです。

「バスキタ!」はすごくいいシステムです。バスの走行位置がわかります。しかし、サイトに表示している「行先」と実際にバスに表示されている行き先が違う例がいくつかありました。特に循環系統です。誤って逆方向に乗ってしまいそうな場面がありました。
これはバス側の表示にも言えますが「共栄バスセンター」に行くのはわかりますが、一周していくものなど、そのあたりを経由地などをメインに表示するように改めるだけでもわかりやすくなるのでは?と思うところです。

旭川市も高齢者への「料金助成事業(寿バスカード)」ではコロナ渦の支援として本来カード提示以外に100円を徴収するところをカード提示で無料で乗車できるようにしています。
「バスキタ!」やサイネージなども含めて旭川市がある程度頑張ってバスの維持を考えていることはわかります。だからこそ、もう一歩「使いやすいバス」になって欲しいとも思います。


きっとこれを言ってしまうといけないのかもだが

旭川のバスの歴史では、2社のバスが客を取り合う、並行路線を運行することで客を取り合っていたという歴史がありましょう。その2社が現在ICカード事業では相互利用が可能な状態になっています。しかし、定期券はそうはなっていません。

独占禁止法の問題があることはわかりますが、最終的には2社が共通な形で市内でどちらかのバス路線があれば共通に利便を享受できる形になるのが理想です。先に触れているマルパスなどの定期券も、2社で使えれば利便は大幅に高まります。

ゆくゆくは旭川のバス事業者が一本化されるのが、市民にとっては良いのではないかとは思いますが、これは簡単なことではありませんし、各企業の企業努力の話でもありますが、相互の乗り入れなどは岡山などで前例がありますし、人口減少の将来を考えると今のままにもできないとも思われます。

旭川市がある程度の音頭を取って、バス再編を行えるか。このあたりも問われているように思われます。そして更にはJR北海道の路線維持問題にも関連してくることでもあるのだと思います。
比較的利用の多い富良野線でも維持は簡単なことではない上に、平行バス路線は便数を減らし、また、安価な定期券で鉄道利用者が移転している現実も考えなければならないのです。

北海道の交通関係 JR北海道 路線バス

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