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北海道の交通関係
2021年末現在の北海道新幹線並行在来線各自治体の対応
2021/12/10
北海道新幹線札幌開業に伴う動きが活発になってきています。
そのなかでもJR北海道からの分離を承認している(だからこそ北海道新幹線の建設が行われている)函館線長万部-小樽に関しては新幹線開業後の運行方法、代替方法が北海道と各自治体で協議されています。
当サイトでは過去にも平行在来線問題についていくつか記事を書いておりますので、よろしければご確認ください。
余市駅の朝時間帯の利用を見てきました。そして函館線余市-小樽の未来(2021年5月)
https://traffic.north-tt.com/09_article.php?article=1046
北海道新幹線延伸区間の並行在来線問題経緯を改めて振り返ってみる(2021年5月)
https://traffic.north-tt.com/09_article.php?article=1043
今から考えておきたい北海道新幹線並行在来線問題(2019年8月)
https://traffic.north-tt.com/09_article.php?article=887
新幹線の工事は2031年の開業をめどに進んでおり、開業と同時に並行在来線区間を維持するにしても廃止するにしても今年度、遅くとも2023年にはおおよその目処を立て、それに進んでいかなければならないと思われます。鉄道を残すにしても車両をどうするのか、設備をどうするのか、また、人員をどうするのかを考えていかなければなりません。
今回は年内の決着を求められている後志ブロック(長万部-小樽)に関して取り上げます。
北海道新聞の特集記事「有識者に聞く」
北海道新聞は小樽・後志面の特集記事として、識者4人にインタビューを行った記事を掲載しました。一部分を引用しますが、是非本文全てを読んでいただきたいところです。なお、北海道新聞の無料会員でも月10本までの記事を閲覧可能です。リンクも併せて掲示します。<並行在来線 迫る存廃 有識者に聞く>1 新ひだか町長 大野克之さん(62) 次世代考え 沿線連携密に
2021年12月01日 北海道新聞 小樽・後志面
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/617401
> ――今年4月にJR日高線鵡川―様似間(116キロ)が廃止され、バス転換しました。町長は日高管内7町の地域交通をつくる協議会の会長として、自治体間の調整に当たりましたね。どのような観点からバス転換を決断したのですか。
「日高線は2015年に高波被害で不通になり、JR北海道が『運行を再開するなら地元負担で』と求めたため、復旧するだけで87億円が必要でした。沿線では人口減少が進み、鉄道を使う人も少ない。そうした中、ただでさえ困窮している町の財源を使い、鉄路を維持するのは到底無理でした」
> ――山線の自治体や住民は鉄路の存廃をどう考えたらいいのでしょうか。
「現状を維持しようとするのでなく、将来、町に住む自分の子どもや孫のことを考えて判断したらいいと思います。『自分の町だけよければいい』という考えでは、持続可能な地域交通はつくれません。交通網は地域全体のためにつくり、維持するものです。自治体間で密に連携を取ることも求められるでしょう」
<並行在来線 迫る存廃 有識者に聞く>2 鉄道系ユーチューバー 鐵坊主さん(53) 鉄路とまちづくり 一体で
2021年12月02日 北海道新聞 小樽・後志面
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/617924
> ――余市―小樽間の鉄道運営に必要な条件とは。
「この間の鉄道を残すだけでは、鉄道維持の根拠となる2千人の輸送密度を維持することは不可能だと思う。行政主導のまちづくりや鉄道を中心に据えた地方交通計画など抜本的な改善が必要になる」
> ――鉄路を残すための方策はありますか。
「鉄路を本当に残したいなら、まちづくりに着手すること。駅から10分圏内に買い物や託児、役場等の施設を集めて全てまかなえるようにし、人を集約する。20~30年の長期的ビジョンで考える課題です。町として地域公共交通計画とまちづくりをリンクさせること、町長が変わってもぶれずに計画を進めていけること。そこまで考えないと効果は限定的になる。いまに、人が住む場所をシビアに選ぶ時代になります」
<並行在来線 迫る存廃 有識者に聞く>3 関西大教授 宇都宮浄人さん(61) 「赤字だから廃線」脱却を
2021年12月03日 北海道新聞 小樽・後志面
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/618376
> ――地域住民は鉄道の維持に向けて、どのように国や道に訴えるべきなのでしょうか。
「まず沿線の方々は、地域の何を守りたいのか、なぜ鉄道が必要かを真剣に考え、議論すべきです。余市―小樽間については輸送密度が高く、圧倒的に鉄道の有効性があると思います。ただ鉄道に固執するのではなく、各地域にはそれぞれ地域に合った足があるはずです。バスやタクシーなどについても併せて検討するべきです」
――鉄道の利用者を増やす方策はありますか。
「欧州の事例では、まず鉄道を決まった間隔で運行するダイヤにします。例えば30分に1本などの、パターンダイヤにするのです。オーストリアのローカル線や、近年ではJR四国でも導入しています。駅から出発するバスとの接続も考慮するべきです。函館線でもさまざまな工夫が可能なはずです」
<並行在来線 迫る存廃 有識者に聞く>4 いすみ鉄道元社長 鳥塚亮さん(61) 試される住民の本気度
2021年12月04日 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/618848
> ――もし鳥塚さんが、JR函館線小樽―長万部間(通称・山線)を経営するなら、何をしますか。
「山線は世界のニセコを抱えています。外国人向けにワインを飲みながら景色を楽しむ観光列車を走らせたり、海外から鉄路に投資を呼び込みたいですね」
――鉄路存廃の判断のポイントはどこでしょうか。
「住民がなにを望んでいるかに尽きると思います。鉄路を残そうと思うのなら戦略が必要です。地域住民の『なにがなんでも残すんだ』という本気度も試されます。目に見える形で鉄路の利用を増やすアクションを起こす必要があるでしょう。最後に決断をし、地域交通の長期的なビジョンを描くのは沿線首長の仕事です。柔軟な思考と強いリーダーシップで地域の将来を描いてほしいですね」
識者として選んだ方が若干恣意的ではありますが、どなたの意見も実に厳しいことを言っていることがわかります。
鉄道を利用している人は少なくないと言い続けた日高がここでは「鉄道を使う人も少ない。」と言い切っちゃうあたりも含め、もはや鉄道は終わったことで、町長が途中で替わったことを考慮しても、今後の交通網の維持のほうがずっと大きい課題であったともいえましょう。
過去にあまり類を見ないユーチューバーによる情報発信を行っている余市町、その鉄道系ユーチューバー鐵坊主氏はあくまで「識者」ではないことを割り引いても、彼自身も鉄道を残すために必要なのはあくまで地域の「金」の問題、そして現時点の余市の町の中が、あまりにも鉄道では不便であることを示唆しています。
タイトルは北海道新聞側で考えたのでしょうが、JR北海道も自社で維持困難である路線の話で「赤字だから」とは一切言っていないんですね。赤字でも運行しなければならない地域があるが、現実は「利用がバスで充分な程度の数」だから廃止が検討されていることに留意する必要があるわけです。
鉄道を公共インフラというのは正しいのですが、公共インフラが「鉄道である」必要もまたないのです。今でも一部政党がよく言う「民間にできることは民間に」の真逆な考え方ですね。利用が縮小した区間を「公共」として赤字黒字関係なく維持している「道路」を使うことで足を維持しようというのがバス転換の考え方ですから、よほど「公共」なのではないかとも思うのです。
ただ、宇都宮氏にしても鉄道だけが解ではないことは断言しているのですね。
現時点でえちごトキめき鉄道社長である鳥塚氏を今も「いすみ鉄道を存続させた」とするのがいいのかはわかりませんし、現実にいすみ鉄道の社長を退任した理由も彼がここで言うような「次の挑戦」というようなものではないようには外部からは聞こえますが、それはさておき、現にいすみ鉄道は千葉県と沿線自治体が赤字補填してきた鉄道であるという原則を記載しただけマシなのですね。騙されたとまではいいませんが、観光列車など鉄道会社の努力だけで維持されているような幻想を抱いているような報道が過去には多くありました。ここでも結局は地元が金を出せるか、それを決断できるかを問うています。
4人の識者とも、根底には鉄道として残すのはきびしく、他のモードも検討しなければならないのではないか、ということを隠しません。彼らは責任を負えませんし、まかり間違って社長に抜擢される可能性があろう鳥塚氏は特に夢物語を言えない立場でしょう。厳しい言葉で「本気度」を言うのは現時点で「本気度」が感じられないことの裏返しではないかとも思うのです。
並行在来線にはどれだけ金がかかるのか
北海道が計算した並行在来線を維持するための試算はサイト内に掲載されています。北海道 函館線(函館・小樽間)について(北海道新幹線並行在来線対策協議会)
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/heizai.html
第10回後志ブロック会議(令和3年11月1日)
参考資料(3)
なお、このサイト内に最近の渡島ブロックの資料、議事録がないので、報道で
函館―長万部 存廃論議加速も 20年で維持費57億円 新幹線延伸で並行在来線に
2019年08月07日 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/332795
> JR北海道は、2030年度末の北海道新幹線札幌延伸時に同社から経営分離される並行在来線の函館線函館―長万部間(総延長147・6キロ)について、2018年度~37年度の20年間で橋や車両などの大規模修繕・更新に計57億円かかるとの試算を示した。
JR函館―長万部間、赤字57億円 特急分除く18年度
2020年08月26日 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/453748
> 【函館】2030年度末の北海道新幹線札幌延伸時にJR北海道から経営分離される並行在来線の函館線函館―長万部間(147・6キロ)について、JRは25日、特急分を除いた18年度収支は約57億円の赤字だったと公表した。
全パターンで赤字予測 新幹線並行在来線問題
2021年09月16日 函館新聞
https://digital.hakoshin.jp/news/politics/78748
>函館―長万部間を全線第三セクター鉄道とした場合、初期投資に317億円、開業後30年の累計で944億円の赤字。全線バス転換した場合は初期投資に37億円、同130億円の赤字。
函館―新函館北斗間を第三セクター鉄道とし、残りの区間をバス転換した場合は初期投資161億円、同565億円の赤字になることを示した。
なお、この額が妥当かどうかという意味で2024年に開業する北陸新幹線敦賀-大聖寺(石川県との県境)84.3kmの第3セクター化を行う福井県の例を見てみます。
福井県並行在来線対策協議会
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/012965/heikouzairai/kyougikai05.html
初期投資額は110億円で福井県が支援を予定しています。設立される会社の資本金は7割を県、2割を沿線市町、1割を民間企業が持ちます。列車本数は1日126本、特急が走らなくなることを考慮しパターンダイヤ(毎時○分発のようなわかりやすいダイヤ)とするとしています。そして輸送密度が5,600あります。
現行の福井駅の時刻表です。ここから大阪方面、名古屋方面の特急がなくなり、敦賀への普通、快速列車が増発されることになります。ただ、見ての通り、現行でも地方としては本数が多い(これは都市間特急の本数の問題でもある)利用の多い区間であること、そして大阪から日本海側を走る貨物列車が33本運行されていることも、当然に鉄道を維持しなければならないと福井県が判断した理由になりましょう。
単純に北海道新幹線の並行在来線と比較してみますと
函館-長万部147.6km、長万部-小樽140.2kmに対して距離は6割、輸送密度は1.5倍(函館方)という環境になります。初期投資額をある程度抑制することを考えても、厳しい現実というのがわかろうものです。
<社説>並行在来線存廃 年内決着は急ぎすぎだ
2021/08/19 北海道新聞
> 全線で152億円に上る初期費用も三セク化を阻む。うち補修費は53億円、車両費37億円、JR北海道からの資産購入は24億円だ。
JRは自社運行しないことを既に決めた立場上、存廃を協議する場には直接関わっていない。
だが、九州新幹線の並行在来線ではJR九州が三セクに対し、資産を簿価より安値で売り、乗務員給与も一部負担した例がある。線路などは補修後に引き渡した。
道や沿線自治体はJR北海道に減額を求め、車両も提供するよう交渉すべきだ。廃線となればJR側にも処理費用がかかるだろう。
北海道新聞は社説でJR北海道に負担させよとぶちあげることになります。JR九州は経営安定基金を上場時に鉄道の資産償却に使用し、ほぼ簿価を0にしたということを知ってか知らずか、そして、並行在来線区間の一部区間の電化設備を撤去し非電化にすることも発表されていることを認識しているのか疑念があります。鹿児島ルートの話としても、貨物列車しか電化設備を使用しないことに対する減額もあり、また、JR九州は上場前であり、株主である鉄道・運輸機構の意向があったことも見逃せません。JR北海道にそれをさせるためには「JRそのもの」にそれを行わなければならないメリットが必要です。既に最小限の設備で運営している函館線でできる減額は大きくないでしょう。そして、それを納得させる相手はJRではないのでは?と思われるのです。
その九州新幹線の長崎ルートですが、2022年の開業を前に並行在来線についても動きがあります。
<新幹線長崎ルート>並行在来線の電化区間を1駅分延伸 「肥前鹿島まで」から「肥前浜まで」へ
2021/06/17 佐賀新聞
> 肥前山口-諫早は両県が鉄道施設を維持管理し、JR九州が運行を担う上下分離方式を採用する。肥前鹿島-諫早は非電化とすることが決まっていた。
JR九州や佐賀県によると、長崎県を含む3者で6月7日に申し合わせた。肥前鹿島には上下2本の線路しかなく、特急列車とディーゼル、電車の3種類の車両の往来に対応するのは困難だった。隣の肥前浜には線路が3本あるため、列車を待機させることができ、肥前山口-肥前浜は電車の運行が可能になるという。
(別記事の地図)
肥前山口-諫早は60.8km、このうち42.8kmを非電化にします。その上で上下分離し気動車で走ることになりますが、JR九州は本数は維持するが佐賀への乗り入れはディーゼル車では不可能としています。
九州新幹線長崎ルートは新幹線の恩恵を受けない鹿島市が強硬に反対、結果上下分離で設備部分を自治体が、運行部分をJR九州という上下分離方式を行うことで決定した区間です。鹿島市の中心駅である肥前鹿島駅と博多駅を直通する特急列車の運行も継続されること、そして、この駅が非常に設備的に狭く、折り返し運行などに問題があることで1つ先の肥前浜までの電化が継続されることになります。
電化区間が長くなれば、当然それだけ「下」部分の設備が大きくのしかかることになるという面があります。
また、逆に長崎-諫早のJR九州による運営が続く区間についても電化設備を撤去し、全ての列車を気動車で運行することが決まっています。なお、長崎線は貨物列車の運行は佐賀県内の鍋島までしか行っておらず、並行在来線区間に貨物列車の運行はありません。
九州新幹線長崎ルートに関しては、特に北海道から見るとあまり情報も入らないし報道もされませんので、基本的なところを書き出しますと、2022年に開業するのは武雄温泉-長崎の66kmです。既存の九州新幹線鹿児島ルートである博多-新鳥栖-熊本-西鹿児島には接続しません。
このため、博多-武雄温泉を在来線特急が残ることになり、武雄温泉駅で対面乗換となります。残る新鳥栖-武雄温泉51kmは佐賀県がフル規格新幹線の建設を要望せず、建設の目処は立っていません。
整備新幹線建設に関して「5項目」を北海道新幹線の時にも地元自治体は飲んでいます。
国土交通省 新幹線鉄道について◆整備新幹線について
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr1_000041.html
>整備新幹線の基本条件
1.安定的な財源見通しの確保
2.収支採算性
3.投資効果
4.営業主体であるJRの同意
5.並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意
この5番目、並行在来線の経営分離を佐賀県は飲めないために建設が進まないということになります。根元部分が運行できませんからJR九州は大村に新幹線車両基地を置き、鹿児島ルートとは別に新幹線車両を保有しなければなりません。
佐賀県にしてみれば現状の在来線でも佐賀-博多は40分程度で結ばれており、全く不便がない。その上で新幹線の建設費の一部を負担し、さらに並行在来線を維持するための拠出を迫られることに抵抗感があるのも事実です。そして、今回の開業区間に関しても一切新幹線の恩恵を受けない鹿島市も含め佐賀県に利点はほとんど無いなか、受け入れたという面があります。
また、新幹線と在来線を乗り入れ可能にするフリーゲージトレインの技術が頓挫し不採用となったことも大きく、当初予定していた佐賀県内のフリーゲージトレインによる直通がされなくなったことも、この区間の問題としています。
2021年7月には当時の赤羽国土交通相がJR九州を説得し並行在来線をJRにて維持させる方向を示唆します。
赤羽大臣会見要旨 2021年7月30日
https://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin210730.html
>与党のPTの中でも非常に重要な点というように議論されていると承知をしておりますが、通勤通学の足でもありますので、ここに新幹線が通るから並行在来線を廃止するといったことは、なかなか佐賀県では承知できないだろうと。
そうしたことは地元の御意向としてあるだろうということで、こうした事を進めていく以上、与党のPTの中でも議論されてそうした方向だと承知をしておりますが、国土交通省としてもそれは在来線は残すということで、極力JR九州を説得させていただきたいというお話をさせていただきました。
とはいえ、これは上場し民間会社となったJR九州が簡単に飲めないのも事実でしょう、また北海道の並行在来線沿線である函館市や余市町など北海道新幹線の延伸開業のメリットを直接受けない自治体にとっても見逃せない話であります。
結果的に北海道も並行在来線の維持を考えるならば「政治」を動かす必要があるように思うのです。「国が」と言ってるだけでは国は動かないように思います。北海道庁も含めた政治的な判断が必要ではないでしょうか。ただ、それも、佐賀のように国交相が納得できるだけのネタをそろえられるか?という面があるようにも思います。
後志地方各自治体の動き
2021年11月から後志地方各自治体では住民への説明会を開いています。それを受けた報道がなされています。小樽市
鉄路維持「慎重に判断」 並行在来線問題で市長
2021年12月08日 北海道新聞 小樽・後志面
(WEB配信無し)
>迫俊哉市長は、北海道新幹線札幌延伸に伴いJR北海道から経営分離される並行在来線函館線小樽―長万部間の鉄路維持の可能性について「現時点で明確には申し上げられないが、大きな財政負担が生じると見込まれるため、慎重に判断すべきだ」との認識を示した。
> 鉄路を維持した場合について、迫市長は「負担割合の協議は行っていないため、市の負担額は示せない」と説明。市の方針決定の時期についても「さらに議論を深める必要があり、まだ示すことはできない」と述べ、改めて道が目指す年内での判断は難しいとの考えを示した。
小樽市長定例記者会見 観光入込数依然低迷
2021年11月28日 小樽ジャーナル
https://www.otaru-journal.com/2021/11/post-76663/
>意見交換会を実施し、方向性についてどう考えているかについては、「沿線市町村と道による協議会で、年内に1案に絞りこむ予定とあるが、鉄路に対する思いが強く、小樽市としては年内での方向性を示すのは難しい。市民の話を聞き丁寧に行いたい。方針は現時点では決まっていない」と回答。
さらに、「バスより鉄路の方が環境への負担が少ないと聞くと納得するが、総合的に考えなければならない。現実的には財政負担が柱となる」と述べた。
小樽市は新幹線の駅ができること、そして既に高速道路整備が完了しており、また、急勾配、急カーブが続く小樽環状線の最上―塩谷間が2023年度に開通することが予定されており、代替バスのルートに制約がないという観点もあろうかと思われます。市内全域の説明会(11月19日)参加者は報道によると40名とのことです。ここで配付された資料を添付します。
小樽市 「並行在来線のあり方についての市民意見交換会」について
https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2021102500050/
(資料を読めない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20211210_01.pdf
https://traffic.north-tt.com/txt/20211210_02.pdf
余市町
並行在来線 小樽―長万部間 「拙速な議論避けたい」 存廃方針決定時期で市長 余市町内でも説明会
2021年11月21日 北海道新聞 小樽・後志面
(WEB配信無し)
>余市町も同日夜、町中央公民館(大川町4)で住民説明会を開き、町民ら約40人が出席した。斉藤啓輔町長は、余市―小樽間については利用客が多いことなどを理由に、鉄路の存続が必要との考えを改めて強調。12月の道と沿線自治体の並行在来線対策協議会ブロック会議で「余市―小樽間を残したいという風に(話を)持って行きたい。確実にそうなると確約はできないが、できる限り力を尽くす」と述べた。
参加者からは「ニッカウヰスキー余市蒸溜所が重要文化財に指定される見通しとなり、観光で利用客が増える可能性もある」「町民の負担をできるだけ減らす方向で鉄路を残してほしい」などの声が上がった。
余市町は説明会に関してのWEB資料は確認できませんでした。ただ、住民団体「JR余市駅を存続する会」が結成されており、自民党の中村裕之衆院議員も参加した意見交換会が行われています。
余市―小樽間の並行在来線 「観光振興、通学で必要」 沿線住民ら意見交換
2021年12月06日 北海道新聞 小樽・後志面
(WEB配信無し)
> 余市町内の住民団体「JR余市駅を存続する会」の笹浪淳史代表が呼びかけ、同町と小樽市の計約20人が出席した。自民党の中村裕之衆院議員(同町出身)も参加した。
会合では参加者から「観光振興や通勤通学で、鉄路は必要だ」との声が上がったほか、道が示した鉄路を存続させた場合の赤字想定額に対し「沿線住民を諦めさせようとしている」との批判も出た。
中村氏は「私自身も余市―小樽間を残してほしいと思っている。みなさんの話を参考にさせてもらいたい」と述べ、今後も関係機関に鉄路存続を求める考えを示した。
中村議員がどのような意図で、本人が路線存続に動く意思があり、それに向けて党や政府を動かす気があるのかによって変わりそうです。逆を言えば、ここまで言っておいて結果によっては本人の政治生命に影響が出ます。
<アングル>道新幹線札幌延伸で経営分離の在来線 余市―小樽 存廃で意識差 通勤や通学に不可欠/影響限定的 関心低く
2021年11月21日 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/614006
>隣接する後志管内余市町と小樽市の意識の違いが表面化している。
余市は小樽への通勤や通学で使う町民が多く存続を求める声が強い一方、小樽では沿線住民の少なさもあって関心が低く、存続に伴う地元負担への懸念もくすぶる。
> 先の衆院選で道4区(札幌市手稲区、西区の一部、後志管内)で4選した自民党の中村裕之氏(余市町出身)も「鉄路をJRの経営のままで残すべきだ」と主張。ある余市町議は「政府・与党主導で、地元負担を抑えた形で鉄路を残す動きが新たに出るのではないか」と期待する。
別記事でも中村議員の発言で「地元が負担少なく維持される方法」を模索する動きが出ていることを踏まえた対応が求められることになります。
衆議院議員選挙では野党統一候補の大築氏と自民党中村氏では受ける印象が違います。
余市―長万部間 議論を 並行在来線 12月にも存廃の結論 両候補、維持強く訴えず 沿線住民に不満
2021年10月30日 北海道新聞 小樽・後志面
(WEB配信無し)
>道4区から立候補する立憲民主党新人の大築紅葉氏(38)は「高規格道路の整備も進んでおり、現実的にはバス転換などになるかもしれない」とみている。
自民党前職の中村裕之氏(60)も「新幹線倶知安駅を起点としたバス路線を充実させ、地域の足を守る」との考えだ。
<候補に聞く 衆院選北海道4区>上 大築紅葉氏(38)=立憲新 地域再生へICT活用
2021年10月29日 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/605351
>――札幌に延伸する北海道新幹線の並行在来線のあり方について、鉄路維持やバス転換など、どのような方向性が望ましいですか。
「余市―小樽間は輸送密度が比較的高いので、鉄路の存続の可能性はあると思います。維持には国の支援が必要で、企業版ふるさと納税などを利用し、不足分を補う方法も考えられます。長万部―余市間は輸送密度が低く、高規格道路の整備も進んでいることから、現実的にはバス転換などになるかもしれません」
<候補に聞く 衆院選北海道4区>下 中村裕之氏(60)=自民前 地域の足守る予算充実
2021年10月29日 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/605361
> ――札幌に延伸する北海道新幹線の並行在来線のあり方について、鉄路維持やバス転換など、どのような方向性が望ましいですか。
「小樽―余市間は、鉄路をJRの経営で残すべきだと思います。小樽―余市間の輸送密度は2千人で、路線としての利用度は全道7番目です。残せるよう精いっぱい努力していきます。長万部―余市間はバス転換した上で、新幹線倶知安駅を起点としたバス路線を充実させ、地域の足を守っていきたいと思います。地域の足を守る予算が不足したのは反省点ですので、当選すれば予算の充実も図っていく決意です」
結果的に選挙区で当選したのは中村氏で、それだけが要因ではないとはいえ、このような形で出てきている以上それに向かった形になることが望まれているというのが有権者の認識であろうかと思われます。しかし惜敗率が99.36%という僅差での当選であり、大築氏は比例での復活当選となっています。中村氏にしてみると、4連続当選とはいえ次回の選挙はわからないぞという危機感はあるものと思われます。地域に対しての実績として目に見えるものがインフラ投資でありますので、中村氏が鉄道を守ったという形が作れるのが本人の理想ともいえるのかもしれません。
なお、ユーチューバーとの動画での発信などは、発信力の弱い町から、鉄道ファンだけでなく様々な方に発信するという意味がありますし、ここで出てくる内容を町が「参考にする」のはリップサービスで、それに気がついていない程度に町役場職員が利用していない裏返しであるので、これ自体が何か方向性を決めたりすることは報道で持ち上げるほどには無いと思われます。(もちろん発信しないよりずっとマシなので今後も続けた方がいいと思われます)
仁木町
長万部―小樽 並行在来線問題 全線バス転換 仁木町長支持 「現実的」管内首長初の判断
2021年11月30日 北海道新聞 小樽・後志面
(WEB配信無し)
>佐藤聖一郎町長は29日、町議会全員協議会で「全区間を民間バス事業者によるバス運行とすることが現実的だ」と述べ、道が示した3案のうち全線をバス転換する案を支持すると表明した。沿線9自治体のうち、首長が全線バス転換の意向を示すのは後志管内では初めて。
>議員からの「町民の意見を反映したか」との質問に対し、9月に4回開催した意見交換会への参加者が少なかったことを挙げ「参加者数がひとつの町民の意思の表れ」と説明した。
>町内には「仁木駅」「然別駅」「銀山駅」の3駅がある一方、北海道横断自動車道の「仁木」「仁木南」(いずれも仮称)の二つのインターチェンジ(IC)が整備される予定で、鉄路への負担より、IC周辺整備を優先した。
町議会全員協議会後、佐藤町長は「住民感情を考えれば苦渋の決断」と答えた。町は12月6日から町内4会場で開く意見交換会でも、全線バス転換案を町の判断として説明する。
仁木町は町内にできる高速道路への期待が大きいこと、町内には既に高校がない(通信制高校である芸術高等学校があるが、基本的に通学はいない)ことから、町外への通学、通院の足を高速道路をつかったバスを使うことを考えているように思われます。隣町の余市よりも小樽に高速に出られることを優先する考え方とも言えます。
記事の中でもバス車両や赤字補填の国の交付税措置を期待することも触れられており、鉄道に固執することでの町財政からの出費を考えればバス化が得策という意識と思われます。
共和町
小樽―長万部 並行在来線説明会 黒松内、存続求める声 共和はバス転換に異論出ず
2021年12月02日 北海道新聞 小樽・後志面
(WEB配信無し)
> 共和町は11月27、28日に開き、合わせて約100人が参加した。
成田慎一町長は今月の道と沿線自治体の並行在来線対策協議会ブロック会議で「長万部から小樽までのバス転換を(受け入れる考えを)伝えたい」とした上で、余市町が存続を訴えていることを考慮し「最低でも長万部から余市はバス転換がやむなしと考えている」と述べた。
参加者からは「小沢駅は思い出の場所であり、小沢(地区の)のシンボル。駅舎を後世に伝えたい」との意見が上がったが、鉄路の存続を求める声はなかったという。
岩内線の分岐駅だった小沢町をもつ共和町ですが、記事にはないにせよ共和町内にも高速道路ICが計画されており工事が進む中、札幌への移動は高速道路を使うこと、また、現時点で共和-倶知安の岩内線転換バスの維持も重要であるという意識もあろうと思われます。共和町の中心部は小沢ではないということも、小沢駅は郷愁の対象以外の意見は少ないとも思われます。
倶知安町
長万部―小樽 並行在来線問題 鉄路存廃 意見交わす 倶知安町 住民と協議開始
2021年11月30日 北海道新聞 小樽・後志面
(WEB配信無し)
>倶知安新駅周辺の整備に触れ、「まちづくりへの影響も大きく、一日も早い判断が必要だ」と訴えた。
参加者からは「今後沿線の人口が減っていく中、三セクでの維持は難しいのではないか」「外国人観光客にとって在来線は(乗り換えなどが)複雑で、あまり利用されていないのが実情」など、バス転換に理解を示す意見が相次いだ。 町は12月3日まで、さらに町内6カ所で意見交換会を開催する。
新幹線駅が現駅に設置される倶知安町は新幹線への期待が大きいとも言えます。倶知安から余市など沿線町への「用事」そのものが少ないこと、そして30分もかからず札幌駅まで連れて行ってくれる中、在来線で小樽まで1時間以上、バスでも1時間半ほどかかることを考えると小樽への用事すらあまり見込めなくなることは想定されようと思われます。
また、新幹線が高架駅に設計変更されたこともあり、在来線が地平のままで残ると高速道路の倶知安ICからの町内への導線に踏切が残ること、また、駅コンコースから東側出口への旅客導線に階段やエレベータを必要とする面も消極的になる理由と思われます。
ニセコ町
住民「山線活用策考えて」 町長とまちづくり懇談 ニセコ
2021年11月26日 北海道新聞 小樽・後志面
(WEB配信無し)
> 【ニセコ】町は25日、福井地区コミュニティセンターで、片山健也町長と住民が対話する「まちづくり懇談会」を開いた。町民6人が参加し、北海道新幹線札幌延伸に伴いJR北海道から経営分離される並行在来線の函館線小樽―長万部間(通称・山線)の存廃などについて話し合った。
今年計8回開く懇談会のうちの4回目。山線について町は、道がつくった資料を元に収支や利用者の状況などを説明した。
> 片山町長は「鉄路維持は赤字額を見れば厳しいが、議論を重ねたい」と話した。
懇談会の参加者(あくまで4回目だけだが)が少ないのは最初から絞っているのかもしれませんが意識の表れでもあります。もちろんこの懇談会は並行在来線問題だけのものではないのですが、住民意識の中ではあまりこの問題のウエイトは高くないということではないかとも思われるのです。
これはニセコ地区が比較的倶知安に近く、観光に関しては倶知安駅利用メイン、住民の通学、通院なども倶知安に向けていますので、病院や学校に近いところに停留所を設置できるバスの利便を享受できるという面もありそうです。
ニセコ町 まちづくり懇談会
https://www.town.niseko.lg.jp/chosei/keikaku/machizukuri_jorei/kyoyu/kondan/
蘭越町
長万部―小樽 並行在来線問題 来月中の判断無理 蘭越・金町長
2021年11月30日 北海道新聞 小樽・後志面
(WEB配信無し)
> 【蘭越】北海道新幹線の札幌延伸に伴い、JR北海道から経営分離される並行在来線の函館線長万部―小樽間のあり方を巡り、町は29日夜、町民センターで初の住民説明会を開いた。
住民13人が参加。金秀行町長は経営分離後、鉄路を維持する場合、国が線路を保有し沿線自治体の負担を減らす「上下分離方式」の可能性について今月、国土交通省から否定されたことを明らかにした。一方、鉄路維持かバス転換かは「12月中に決めるのは無理。住民の意見を聞き、議会と協議して決める」と述べた。
蘭越は現時点でニセコからの路線バスの終点、平日のみ1日朝晩2往復という便ですが、蘭越高校への通学便という意味合いになります。鉄道での通学はニセコ・倶知安方面ということにもなり、蘭越高校の登校はバスということです。
鉄道の方が所要時間を短縮できる面はあり、難しい判断ではありますし、蘭越-ニセコで40人以上、ニセコ-倶知安で70人以上の通学需要があるので、無視できないという面もありそうです。ただ、バス2台とも言えてしまうので、そのあたりの納得感の話でもあります。
黒松内町
小樽―長万部 並行在来線説明会 黒松内、存続求める声 共和はバス転換に異論出ず
2021年12月02日 北海道新聞 小樽・後志面
(WEB配信無し)
>黒松内町は11月24、25日に開き、計20人が参加。住民から「通学や生活に欠かせない」と存続を求める声のほか「早急に決めないで」「具体的な資料がほしい」といった意見も出た。存続した場合に町の負担が増え「住民サービスに影響するのか」という懸念や、仮にバス転換した際には「利便性だけは確保して」との要望もあったという。
町は「今の町の財政状況では鉄路を残すことは難しいと考えている」との認識を示したが「バス転換や存続した際の各自治体の負担額がはっきりしておらず、12月に結論というのは難しい」との考えを示した。
後志に属する黒松内ですが、通学は主に長万部でもあります。蘭越へは一般路線バスはありませんが、町スクールバスが1往復しており通学が可能です。
長万部方面への通学は約20人で、4.5往復という便数を考えても鉄道のまま残すのはかなり難しいという印象は持ちます。
ただ、新幹線の直接の恩恵は受けませんので、通学の選択として(一応は)倶知安まで通学可能な現状を残して欲しいという意味はわからないでもありません。
長万部町
バス転換「利便性向上を」 並行在来線 長万部町が住民説明会
2021年11月19日 北海道新聞 渡島・檜山面
(WEB配信無し)
> 【長万部】北海道新幹線札幌延伸に伴いJR北海道から経営分離される並行在来線の存廃について、町は18日、住民説明会を始めた。初日は二股駅周辺地区と町中心部の2カ所で開催。住民計20人が参加し、バス転換への考えや要望を述べた。
>後志側は、年内の存廃判断を道から求められている。
>参加者からは「バスの方が年寄りには便利」「マチ中で用を済ませて帰れる時間設定で運行してほしい」など、バス転換を容認した上で利便性向上を求める声が相次いだ。 出席した木幡正志町長は「町民の思いを聞き取り、現実をしっかり捉えて決断したい」と話していた。
現実に新幹線の駅が現駅にできる長万部町は二股駅だけを対象とする以上、鉄道を残す判断はできないだろうなぁという印象があります。
資料を見てみる
北海道の第10回後志ブロック会議(令和3年11月1日)にはいくつかの添付書類があります。この「参考資料(2)」にかなり詳しいバス運行についての資料があります。北海道 函館線(函館・小樽間)について(北海道新幹線並行在来線対策協議会)
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/heizai.html
参考資料(2)
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20211210_03.pdf
資料2-1
https://traffic.north-tt.com/txt/20211210_04.pdf
資料2-2
https://traffic.north-tt.com/txt/20211210_05.pdf
時刻だけでなく、運行区間についてもかなり細かく想定していることがわかります。極端言えば、事業者と人員、バス台数の確保さえできれば、これでいいのかなぁって思わせてしまうだけの資料とはなっています。
また、余市-小樽3セクに関して、19.9km車両6両社員80名という想定としています。
資料2-1では三セク路線を「多駅・多頻度」で運行した場合の試算です。余市と小樽に新駅設置で1.2億円の初期投資、収入は約1億円増えることを想定し986人増加することを試算しています。
また、28分間隔39往復で運行した場合の増加数は推計できないとして1割増し、3割増し、5割増しを想定した試算を行いますが、いずれも現行より収支が悪化するとの試算であります。
(このあたりは駅を作り便数を増やせばとする宇都宮氏の考えを否定するものになってしまっています)
また、利便を高めることで現在は補助の入っていない平行バスに補助金を拠出する必要性なども示唆されています。
資料2-2ではBRTの想定をしていますが、多くの場所でトンネルや国道よりも距離が長いなどBRTの利点をあまり感じられない試算となっています。
その試算が恣意的かどうかはわかりませんが、北海道は全線バス転換を「目指している」と言われても仕方が無い中身かなとも思われます。
これは個人的に直接発言を聞いたわけではありませんが、余市町と行った鐵坊主氏のyoutubeでの発言が記事になっています。
函館線存続へユーチューバーとタッグ 北海道余市町
2021年12月08日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASPD76QW6PCYIIPE014.html
>道の資料では、30年度に1493人、40年度に1194人、60年度には811人になるという厳しい数字が示されている。 3本目の動画で鐵坊主さんは、現行の余市―小樽間のバス客が鉄道を利用するようになれば「2千人を維持できるのではないか」と提案。
視聴者の「札幌から余市まで乗り換えなしの列車を運行させる」「ICカード乗車券を余市駅でも使えるようにする」などのアイデアも紹介された。 動画3本の再生回数はこれまでに計約10万回。計1600以上のコメントが寄せられた。
余市-小樽のバスに関しては、駅から離れた余市紅志高校の学生利用、また大きく町が広がる余市町の市街地規模を考えても、鉄道だけが「足」となった場合、非常に困る住民が多く出るだろうという想定はできると思います。また、古平や仁木方面からバスと鉄道を必ず乗り換えなければならないという形も、それぞれの町の利用者が喜ぶようなことはないでしょう。
もちろん意図していることはよくわかります。しかし、私も何度か書いているかと思いますが「鉄道を残す」ことが大事なのか、住民が通学なり通院なり、また、余市の場合通勤もあるわけで、その人たちが本当に駅まで来て鉄道に乗るのがいいのか?という面は気にしなければならないところかとも思います。
そして、鉄道が今の運賃を維持できないのであれば、運賃の安さだけで多少の不便を我慢して乗っている層を失うことも検討しなければなりません。国交相が否定したとしていますが、もし鉄道として余市-小樽を残すならば上下分離でJR北海道として残す方が、確実に地元利便が高く、そうでないのならばバスの方がよっぽど利便が高いのではないか?そうも思います。
ちなみに、現在の輸送密度1400程度は、旧国鉄の第二次対象路線でも松前線あたりがその数字でありましたので、代替が本当に不可なのですか?と言われてしまうと厳しいのかもしれません。松前線も通学時間帯は3両で走っていました、その数本だけがその両数が必要だっただけで、あとは2両、1両で済む。現在の函館線後志ブロックはこの状態に非常に似ています。
だからバスがいいのだとは私は言いませんけど、鉄道が必要なだけの利用がある!と声高に言ったところで、残すための方策を考えなければなりません。地元が負担できるのか、また、議員が口利きして国が動くのか、そして何よりまずいのは一旦三セクで鉄道を残した後、再度廃止の話が出てしまうことです。住民の数は減っていきます。減れば、公共交通の利用も減る。残すのなら最低でも20年は残す策を考えなければならないでしょう。