北海道の交通関係

JR北海道札幌圏列車大雪による全列車運行不可。そのとき何が起こった?

2022/02/13

2月6日の札幌圏大雪の前に、まず、個人的には今シーズンずっと「雪かき」で体を酷使(その割に痩せないが)しており、あちこち筋肉痛なのかどこかにぶつけた打ち身の痛みなのか全身が痛いという状態であります。
3連休となったこの週末も家の前の雪の片付けに難儀しており、また、庭も既に2m以上の雪が堆積している状態で「捨て場」がないという現状です。当方は軽トラックを所有していますので、この週末だけで家の前の雪を積み込み堆積場とを何往復もしているという作業も行っています。

今シーズンの札幌の積雪

今シーズン札幌は11月19日に初雪を観測、これは気象庁のデータによると過去3番目に「遅い」記録となります。積雪こそありませんでしたが、このペースで「雪が少なければいいなぁ」と思っておりました。この雪の遅さでオープンを延期するスキー場が相次ぎスキー場経営者からの嘆きの声が報道される11月でした。

札幌市は毎年11月1日に除雪事業実施計画を発表します。
また、これは「2年前から」行われていますが一部の地域に限定して「生活道路の新たな除雪方法」を試行している件も改めて発表されています。この新たな除雪方法をからめて批判している声がありますが、見ての通り大雪の場合の除雪とは全く関係がありません。

札幌市 「生活道路の新たな除雪方法」を試行します。
https://www.city.sapporo.jp/kensetsu/yuki/new/torikumi01.html


とはいえ、北国に住むものとして除雪の内容は生活と直結しますので、この内容が重要になってくる部分でもあります。札幌市は今シーズン予算を減らしていますが、それでも札幌市だけで214億円もの金額が「雪」に消えていくことになります。シーズンが終われば溶けてなくなるものにこれだけの予算をかけなければ札幌市民は生活することもできないのです。

バス路線 除排雪強化 市が事業計画 朝の渋滞緩和へ
2021/11/02 北海道新聞 札幌面
> 札幌市は1日、今冬の除雪事業実施計画を公表した。バス路線の除排雪を強化して朝のラッシュ時の渋滞を防ぐほか、生活道路の一部で試験導入している新しい除排雪方法の対象地域を広げる。高齢化などによる除雪作業員の不足が想定され、市民生活に支障が出ない範囲で事業者の負担を平準化する体制を整える。
> 市の本年度当初予算の除雪費は、前年度当初比3%減の214億円。市雪対策室は「ここ数年は少雪傾向が続いたことから作業量を縮減したためで、予算不足の場合は柔軟に対応する」としている。


なお、大事なことなので改めて記載しますが、道路によって「誰が除雪をするのか」は異なります。北海道の場合は
●国道
 北海道開発局
●道道
 ・札幌市内
  札幌市建設局土木部維持管理課内各区土木センターが所管する「除雪センター」
 ・札幌市外
  北海道建設政策局維持管理防災課内各建設管理部
●市道
 各自治体
となります。札幌市は北海道が所管する道路「道道」も管理していますので、この道路も札幌市の予算で除雪することになります。

11月27日には札幌は少なかったものの道北で大雪になり朱鞠内では24時間降雪量が77cmと観測史上最大の積雪を記録します。しかし、札幌は12月に入っても雪が少ない状態が続きます。

 12月14日の札幌駅北口、ほぼ雪がない
12月14日の札幌駅北口、ほぼ雪がない
12月17日は札幌も大雪になりました。朝の段階ではさらっと積もっているくらいだったものが日中にかけて降り続け、夜になっても勢いが衰えず翌18日朝まで降り続けました。一晩で積雪は50cmを突破、また、気温が高めで重い雪だったこともあり除雪に難儀しました。24時間降雪量は札幌市55センチと観測史上最多(1999年以降)という大雪となりました。JR北海道はこの2日で95本を運休しましたが、全面的な運休は避けられました。
 12月19日の札幌市中心部4丁目交差点
12月19日の札幌市中心部4丁目交差点
12月はこの17日からの大雪で「根雪」となります。春まで雪が溶けきることがない状態を根雪といいますが、このあとも12月23日には17cm、26日に6cmと雪かきが必要で、しかも比較的重い雪が度々降り続け、出勤前、帰宅後、そして毎週末に雪かきを行うという12月後半となりました。

年が明けた1月1日雪かきから始まる新年でした。新年3日で20cm程度の降雪がありましたので仕事始めは雪かきからスタートという企業も多かったことでしょう。1月11日から15日にかけては湿った重い雪が降り続け、JR北海道も白石駅で夜を明かした列車があったなど市民生活は大きく乱れます。
 1月13日の札幌市電東本願寺前電停付近。道路が凍った雪でぼこぼこになっている
1月13日の札幌市電東本願寺前電停付近。道路が凍った雪でぼこぼこになっている
札幌市内は冬休み明けを前に小中学校付近の排雪作業に取りかかりますが、幹線道路の除雪が進まずバスの遅延もピーク、そしてJRの運行も乱れがちとなり不満は除雪事業者も含め各現場に向けられます。大学入学共通テストを控えた14日、JR北海道は21時以降の運行を休止し除雪を行い、15日に列車を動かすことを決定します。

JR 今冬最多750本運休 札幌駅 発着止め構内除雪
2022/01/15 北海道新聞
> 道内は14日、発達した低気圧が上空に停滞した影響で、日本海側を中心に暴風雪が続いた。JR北海道は全列車の約6割にあたる750本が運休した。札幌駅では大雪の影響で午後9時以降、同駅発着の全列車を順次運休し、構内の除雪を始めた。15日の始発からの運転再開を目指す。空の便は新千歳空港発着の92便が欠航するなど、交通機関が大幅に乱れた。暴風雪は15日朝まで続く見通し。


連日での列車運行の不安定さにクレームも多かったと見えて、JR北海道は線路状況などを発信します。

JR北海道
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/unkou/pdf/3ca00776f3348e56f829a17682c32b70.pdf
(リンク切れ)
https://traffic.north-tt.com/txt/20220213_02.pdf

 大雪の影響による列車の運休について
大雪の影響による列車の運休について


そもそも札幌は1月1日から18日まで連日積雪があり、やっと雪掻きしなくてもいいと思ったら21日から22日にかけても30cm近く降られ、25日からも連日雪かきが必要なほど降り続けるという異例の事態となっています。積雪も1m近くになっています。

 1月30日の札幌駅前バス停。道路脇には雪の山ができている
1月30日の札幌駅前バス停。道路脇には雪の山ができている
 桑園駅に近い桑園発寒通りはバスと乗用車ですらすれ違うのが困難なほど狭くなっていた
桑園駅に近い桑園発寒通りはバスと乗用車ですらすれ違うのが困難なほど狭くなっていた

Googleマップのこの付近、4車線道路である
札幌市中央区北11条西20丁目付近
https://goo.gl/maps/yHCxhVwXkZXutf3L7


50cm積もった12月と比較して、降雪が20cm程度でも道路交通やJR運行が麻痺するのは、堆積している雪の量に原因があります。降った雪をすぐに寄せる場所があれば若干多めの積雪でも除雪にはあまり困りません。しかし「雪の捨て場」を確保していない住宅ではその雪は道路との間に積まれるしかありません。それが2mを越えるような状況になればもう除雪は無理で道路上の雪をダンプトラックで堆積場に移動させる「排雪」が必要になります。しかし、通常排雪は住宅地の場合2月中旬まで行われませんので、雪は「溜まるばかり」で道路を狭くしていくしかないという悪循環になっていきます。

幹線道路でも2車線や3車線ある道路が1車線しかない、バス停部分にも雪が溜まるのでバスの追越もできず、右折で1台が信号を待つだけで後ろには長蛇の列ができる(直進車が抜けられない)という状態で、幹線道路が機能しなくなる状態が1月末の段階であちこちで見られる状態になっていたのです。

そして、2月に入って以降は4日まではほぼ雪が降らず、こんなもんで収まればいいなぁと思っていた直後の大雪であります。

気象庁 過去の気象データ(札幌1月)
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/daily_s1.php?prec_no=14&block_no=47412&year=2022&month=01&day=05&view=p1


気象庁 過去の気象データ(札幌2月)
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/daily_s1.php?prec_no=14&block_no=47412&year=2022&month=02&day=05&view=p1




2月5日-6日の大雪

さて2月4日、2月に入ってから気温こそ低いものの日中は日が差しておりました。この日の夕方の天気予報です。
星井さき気象予報士が悪いわけではないのですが、天気予報を毎日掲載しているHBC(北海道放送)のTwitterが多分2月5日、6日の天気予報に関するツイートを削除しているようですので、こちらを紹介します。
大雪にはならない予報としていますが、実際は5日15時頃から雪が断続的に降り始め、深夜のうちに約30cmの積雪を記録しました。
JR北海道は5日は間引き運転にて運行し98本を運休しました。

札幌8季ぶり 積雪100センチ超え
2022/02/06 北海道新聞
> 道内は5日、冬型の気圧配置が続き、日本海側を中心にまとまった降雪となった。札幌市の積雪は午後11時に106センチとなり、2014年3月10日以来8シーズンぶりに100センチを超えた。
> JR北海道は、降雪の影響で5日、快速エアポート29本など列車98本が運休し、約6500人に影響が出た。6日も積雪などのため、快速エアポート22本など列車87本の運休を決めた。気象台によると、6日も冬型の気圧配置が続くものの、寒気が抜けるため降雪は弱まる見通しだという。


北海道新聞も6日は雪は弱まるという予想をしています。

これまた近藤肇気象予報士のTwitterを紹介しますが、5日夜の段階ではSNET(札幌総合情報センター)が発表する翌日の「雪かき予報」ではあまり雪が多くないという予報をしています。
 2月6日8時頃の家の前の様子
2月6日8時頃の家の前の様子
 2月6日8時頃の家の前の様子
2月6日8時頃の家の前の様子
 2月6日10時頃の札幌市中心部
2月6日10時頃の札幌市中心部
6日朝、覚悟して家を出ます。一歩家を出ると長靴が完全に埋まるほどの積雪ですので40cmは積もっていることになります。車の上もこの通りで、道路も酷い状態ですが朝7時くらいの段階では雪はほぼ止んでおり、用事があって都心まで車を走らせますが日曜日とはいえ酷い渋滞になっています。
昼前に家に帰り着きましたが、今度は駐車場に車を入れることすらできません。家の近くの道では各所で埋まった車があり、1台ずつ救出。その間も雪は降り続きます。雪をとりあえず庭の2mを越える雪山にさらにのせるしか方法はありません。車を駐車スペースに入れるのも降り積もった雪で難儀します。
 2月6日14時頃には雪は止む。前夜からこれだけの雪が積もっている。
2月6日14時頃には雪は止む。前夜からこれだけの雪が積もっている。
14時頃から雪は止み、そこから3時間ほどで雪を片づけるもまた雪が降ってきます。
 2月6日20時頃の札幌市中心部
2月6日20時頃の札幌市中心部
 2月6日20時頃の札幌市中心部
2月6日20時頃の札幌市中心部
JRの運休はラジオなどで知ってはいましたが、とてもそんなことにかまっている暇もなく、自宅と職場の雪対策に明け暮れていました。道路はこれ以上酷い状況があるか?というほどガタガタで、どうしようもありませんでした。

気象庁が石狩北部に大雪注意報を発令したのは6日10時過ぎ、そしてそれを警報に切り替えたのは12時近くになってからでした。15時過ぎに解除になりましたが、実際に大雪が降ったピークは10時台と思われ、ある程度仕方がない面ではありますが、警報発令が実際に雪が降り交通傷害が起こり始めてからとなってしまったのは残念であり、気象の予測というのは難しいというのも感じます。

気象庁 過去の気象データ(札幌2月5日)
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/hourly_s1.php?prec_no=14&block_no=47412&year=2022&month=02&day=05&view=p1

 過去の気象データ(2月5日)
過去の気象データ(2月5日)


気象庁 過去の気象データ(札幌2月6日)
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/hourly_s1.php?prec_no=14&block_no=47412&year=2022&month=02&day=06&view=p1

 過去の気象データ(2月6日)
過去の気象データ(2月6日)




2月5日-6日の公共交通機関の運行

JR北海道

まず、当サイトで公開しているJR北海道札幌圏列車位置の当日の取得情報を見ることができるようにしました。

North-tt 札幌圏列車位置(2月6日午前中のログ)
https://app.north-tt.com/jrh_trainnow_20220206.php?line=11109


2月5日夜の段階では雪の降り続く中、間引き運転を行い終電まで運行を行いました。そして2月6日も間引き運転の中始発列車が動き始めます。
2月6日
・6時台 この時点で40本以上の列車を運休し、札幌-岩見沢、手稲-小樽は列車の運行を中止。
 朝の時点で千歳線と特急列車を優先で運行を継続しようと判断したことが覗えます。
・7時台 この時点で60本以上の列車を運休。岩見沢方面は再開しライラック2号・4号は札幌到着。
 雪が強くなってきていますが、運行はできている模様です。雪が小康状態になるという前提で、各路線の列車を復旧させるべく動いていたことが覗えます。しかし、小樽方面は運休を継続する予定だったと思われます。
・8時台 札幌駅でポイント不転換の発生、千歳線列車、岩見沢方面からの列車が苗穂駅付近で立ち往生する。
・9時台 苗穂駅に停車している列車を先頭に、各駅で列車を待機させ、駅間に停車させない運用を開始、ただ、雪は小康状態だが降り続いている。
・10時台 急激に雪の降りが激しくなり、抑止されている列車は動いていない。しかし、旭川方面からオホーツク2号などを発車させており、抑止は解消されるという予想がこの時点でもあったと思われる。
 札幌駅で抑止されていた苫小牧行き2732Mを2時間以上遅れのまま出発させる。
・11時台 札幌中心部を激しい雪が降り続き2732Mは平和駅で打ち切り。
 学園都市線の終日運休が決定、ほどなく12時前に札幌駅を発車する全ての列車の運休を決定。

このような順番です。札幌駅終日運休と気象庁の大雪警報はほぼ同時刻で、大雪警報が出て、今後もしばらく雪が続くことで列車の運行を安全に行えないと判断したということになります。

JR北海道の公式Twitterは最小眼の情報しか発信しませんが、この日は絶望的な写真とともに翌7日の全面運休を報じます。
警報が解除になっても夜には雪が降り続いたこともあり、各駅で停車している車両をまず掘り起こし、車両基地に収容する必要があります。これには1日では終わらないと判断されたものと思われます。
 2月7日8時頃の札幌駅
2月7日8時頃の札幌駅
 2月7日8時頃の札幌駅
2月7日8時頃の札幌駅
 2月7日8時頃の札幌駅
2月7日8時頃の札幌駅
 2月7日8時頃の札幌駅
2月7日8時頃の札幌駅
通勤で経由した札幌駅西改札付近です。人通りも少なく、列車の表示も無く係員が振り替え乗車の案内を行っていました。

鉄道の運休が月曜日に重なったこともあり、多数のクレームがあったことが容易に想像できます。JR北海道は公式サイト内に復旧が遅れる理由を掲載しました

JR北海道
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/unkou/pdf/afa4e95b0bd1fa2f5c080ce4b98bfa70.pdf
(リンク切れ)
https://traffic.north-tt.com/txt/20220213_01.pdf

 お詫び
お詫び
(札幌圏大雪の影響により、2月5~6日は多くの列車に運休・遅延が発生、2月7日には札幌圏の列車を全日運休させることとなり、ご利用のお客様にご迷惑をおかけしました。お詫び申し上げます。)


悲壮感のあふれる内容で、列車が止まっていることに対する辛辣な言葉が投げかけられていたことがよくわかります。
北海道のテレビ局HTBは札幌駅上空のライブ映像を流します。

 2月7日15時頃の札幌駅
2月7日15時頃の札幌駅
15時の段階で札幌駅の線路を作業員が除雪中という状態で、この状態から運行再開はまだかかると考えざるを得ません。
NHKは18時台のローカルニュース内で上野幌駅付近で作業員が一人黙々雪と格闘している状況を空撮映像で捉えます。

NHK 札幌駅発着の列車 8日も始発から運転見合わせ

 2月7日18時台NHKニュースでの上野幌駅
2月7日18時台NHKニュースでの上野幌駅
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20220207/7000043127.html


大量の雪に為す術がない状況がありありです。

結果、2月8日も始発から列車を運休することを発表せざるを得ないことになります。
そして、運休が続くJRに対して報道も「見通しを示さず」と批判します。

交通網 爪痕深く 札幌圏JR終日運休・道路渋滞 「復旧いつ」嘆く市民
2022/02/08 北海道新聞
> 記録的な大雪でJR札幌駅発着の列車が終日運休となった7日、札幌市内や近郊は路線バスも運休が相次ぎ、極端に道幅が狭まった幹線道路で渋滞が発生するなど大きな混乱が続いた。JR北海道は再開の見通しを示さず、8日も札幌駅発着の始発からの運休を決定。利用客からは「いつになったら復旧するのか」と怒りの声も上がった。



線路上の除雪が続く中、8日10時半頃雪害後初となる回送列車が札幌駅に入ってきます。手稲-札幌をまず復旧させて、各車両を車両基地に取り込むことからはじめていくことになります。

 2月8日10時半頃の札幌駅
2月8日10時半頃の札幌駅
 2月8日14時半頃の札幌駅
2月8日14時半頃の札幌駅
歩みは遅いと言われそうですが、千歳線で取り残された編成を中心に移動してきています。直接的にわかるのは新札幌で抑止されていたすずらん3号の編成ですが、屋根の上の雪の量だけでもその悲痛さを感じます。
そしてついに8日19時過ぎから札幌-小樽の運行を再開します。
 2月8日18時頃の札幌駅
2月8日18時頃の札幌駅
8日の再開では列車の運転時刻を公表していなかったJR北海道ですが、9日朝から新千歳空港方面復旧とともに列車の運行時刻を公表しました。

JR北海道
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/news/pdf/20220209_KO_extratrain2.pdf
(リンク切れ)
https://traffic.north-tt.com/txt/20220213_03.pdf


 2月9日19時頃の札幌駅
2月9日19時頃の札幌駅
 2月9日19時頃の札幌駅
2月9日19時頃の札幌駅
ただ、本来の便数にはほど遠い上に、学園都市線が運休したままなので、報道は良くは書きません。

「JRやっと動いた」 札幌発着 3日ぶり一部再開 学園都市線「一日でも早く」
2022/02/10 北海道新聞
> 大雪に伴う除雪作業のため運休していたJR北海道の札幌―新千歳空港間などが3日ぶりに運行再開した9日、利用客には「やっと動いた」と安堵(あんど)の表情が広がった。8日夜には札幌―小樽間も再開したが、学園都市線は依然終日運休となり、通勤・通学客らから「早く何とかして」との声が上がった。


 2月10日8時頃の札幌駅
2月10日8時頃の札幌駅
 2月10日8時頃の札幌駅
2月10日8時頃の札幌駅
2月10日からは学園都市線が運行を再開、2月11日からは運休区間の解消と特急列車の一部も再開し徐々に列車は復旧し、2月14日からは通常通りの運行に戻るという計画になります。


高速バス

高速道路の通行止めとJR運休の関係で高速バスは混雑と大幅遅延、そして札幌市内の渋滞が酷くなるにつれて運行できなくなります。
 2月6日12時現在の高速道路の通行止め区間
2月6日12時現在の高速道路の通行止め区間
このように平常運行であることを強調した北都交通ですが、実際にはまともな運行はできていませんでした。
14時以降の発着便は福住発着とし、一般道経由で運行されました。新千歳空港発着の航空便に乱れは少なく、出発客は空港につけず、到着客は空港を出られないという状態になっています。

この福住発着への変更が伝わっておらず、寒い中札幌駅前で待ち続けた客もいたようで、情報提供の問題も大きいと痛感します。頼れるのが個人のtweetだけというのはいかがなものでしょうか。

 2月6日17時現在の高速道路の通行止め区間
2月6日17時現在の高速道路の通行止め区間
17時頃に高速道路は岩見沢方面と札幌市内特殊区間以外は開通、しかし、札幌市内の渋滞が酷く高速バスの多くは運行が行えない状態になっています。

札幌豪雪 交通障害続く JRは計704本運休
2022/02/07 北海道新聞夕刊
> 北海道中央バス(小樽)は、雪で道路が狭くなった影響で始発から札幌市内の路線バスの多くを運休または一部運休とし、札幌と新千歳空港を結ぶ路線も一部で運休が発生した。
 道警によると、午前11時現在、吹雪などのため、道央道の江別東IC(インターチェンジ)―美唄ICなど2路線2区間が通行止めになっている。この影響などで同11時現在、北海道中央バスは都市間高速バス20路線を運休した。
 新千歳空港では大雪による欠航やJRの運休のため、宿泊先が確保できなかった観光客やビジネス客ら約70人が国内線ターミナルビル4階で一夜を明かした。


結果的には新千歳空港では取り残された客がいた模様で、簡単に書くけど中央バスの高速バス20路線って8割以上の路線で運行できなかったって事なので、JRが運休ばかり書かないで北海道新聞はちゃんと伝える努力をしてほしいと思う。

 2月9日札幌駅の新千歳空港連絡バスの案内
2月9日札幌駅の新千歳空港連絡バスの案内
札幌-旭川の高速あさひかわ号など、空知、上川方面の高速バスの復旧は9日午後までもつれ込み、運行されても札幌市内の渋滞で大幅遅延する異常事態となりました。
大谷地ターミナルや福住ターミナルまでの短縮が可能だった苫小牧・千歳方面からの便と違い、空知方面からの便は認可上経由地として地下鉄駅までの短縮が行えず、札幌都心部まで運行せざるを得なかったこと、そして札幌ICからの米里通の排雪は進まず多くの車が流入する道路の構造上の問題もあり、どうにもできなかったのが要因のようです。かといって他の地下鉄駅といっても難しく、また、札幌市内の高速道路は均一料金区間で通行止めが続き国道274号線札幌新道も酷い渋滞になり迂回路として機能しなかったと思われます。


路線バス

6日・7日はほぼ札幌市内全路線で運休、8日から幹線道路のバスのみを運行する形で徐々に復旧しています。ここまでバスが動かなかったことは過去を振り返っても非常に少なく感じます。
ジェイ・アール北海道バスはホームページが閲覧できず、バスロケサイトだけが頼り、中央バスもほぼ運休という状態で、地下鉄駅とあまり関わらないじょうてつバスはどうしても動かさなければならないという状態があると思われますが、大幅遅延状態でした。

JR運休もありますが、バスも動かないために狭くなっている幹線道路に次々自家用車を出して、渋滞に拍車がかかるという、どうしようもない状態が続いていきます。
 2月7日札幌駅に近い北大正門前の掲示
2月7日札幌駅に近い北大正門前の掲示
 2月7日札幌駅北口バスターミナルの掲示
2月7日札幌駅北口バスターミナルの掲示


札幌市営地下鉄・札幌市電

この雪の中で真価を発揮したのは札幌市営地下鉄です。特に7日はほぼバスも動かない中平常運行を行い通勤客を運び続けました。私の乗った時間帯いつもより空いていたのはバス運休で接続バスからの乗り継ぎが無かったというのがありそうです。
JRの運休による振り替え輸送も行われ、新札幌・琴似・新琴似(麻生)などでも代替乗車票を使うことができました。定期券などを提示し駅係員から発券を受けます。
 代替乗車票
代替乗車票
 地下鉄さっぽろ駅の表示
地下鉄さっぽろ駅の表示

札幌市電は1996年豪雪時など全面運休となりましたが、今回は運休を行わずに済みました。これは環状運行を行うことでポイントの転換が最小限になるのも要因ではないかと思いますが、今まですすきの、西4丁目で環状運行化以前同様折り返ししていたササラ電車をそのまま環状部も運行しているのも良い面かもしれません(新設部はロードヒーティング区間であり雪を跳ね飛ばす必要が無い)また、市電運行について道路除雪との調整も行われたものと思われます。(以前は道路の雪を軌道上に残すなどでの運行障害があった)


大雪に関する反応

報道はどうしても運休本数が提供され数字的な記事を書きやすいJR北海道の運休を大きく取り上げます。そして、JRの運休が問題であるという論調で記事を作ることになります。

<社説>JR札幌圏運休 再発防ぐ検証が必要だ
2022年02月10日 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/643961
> 最大の原因は、前日6日に突然の風雪で17駅に停止した29本の列車の存在だ。掘り出して車両基地に移動させるのに手間取った。
 昨年冬も岩見沢付近の函館線で普通列車が立ち往生し、乗客11人が7時間半閉じ込められた。これを受け、天候急変が予測される場合は始発運休する計画となった。
 その教訓が生かせなかった。JRは「朝から運転を止めるほどとは認識していなかった」と言うが、当初から駅でなく車両基地に待避できなかったのか。想定外を強調しても改善につながらない。


気持ち良さそうに講釈をたれる道新論説だが、時系列見ての通り車両基地への待避などできなかった。朝から運休していたら別の言い方で批判してただろう。

JR北海道 2022.02.09 【社長会見】2022年2月6日 札幌地区大雪による列車への影響
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/220209_KO_Snow.pdf
(リンク切れの場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20220213_04.pdf

 2022年2月6日 札幌地区大雪による列車への影響
2022年2月6日 札幌地区大雪による列車への影響


JR北海道は島田社長の陳謝という形で今回の雪害について説明しています。

JR 雪対策「改善図る」 島田社長 運休長期化を陳謝
2022年02月10日 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/643959
>同様の事態を避けるため、降雪量に応じた運休などの判断をより柔軟に実施していく考えを示した。
 除雪設備については、今回の大雪では雪を巻き上げて飛ばす除雪車両9台が札幌圏で稼働してきたが「結果的には対応しきれなかった」と釈明。
新年度以降、除雪設備を増強する必要性を示唆したが、具体的な内容には言及しなかった。


これに対し具体的な内容が無いと批判します。

ところでJR北海道は具体的にどう冬期の対応を行っているのでしょうか?

JR北海道 2021.12.03 JR北海道における冬期の取り組みについて
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/211203_KO_Winter.pdf
(リンク切れの場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20220213_05.pdf
(リンク内の公式Youtube動画)


このような内容は北海道メディアもたまには紹介しているのですが、なかなか伝わらないもののようです。道路除雪ほどではありませんが例年60億円程度の経費を雪対策につぎ込んでいます。

鉄路の除雪、欠かせぬ人の手 JR岩見沢駅で作業公開
2021年02月17日 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/512191
>【岩見沢】JR北海道は16日未明、岩見沢駅構内の除雪作業を報道陣に公開した。
>列車の運休が相次ぐ中、同駅では道内のJR駅では2カ所しかないという流雪溝や、除雪車両のラッセルモーターカーなどで鉄路の確保に苦心するものの、分岐器(ポイント)や駅ホームの下などの除雪は人の手が欠かせない。


わずか600文字程度の記事で、WEBでは動画もついているものです。ただし有料読者以外には公開しません。

北海道の鈴木知事は今回のJR運休に的を絞ってコメントを発表しました

札幌圏の大雪による鉄道運休に関する知事コメント
2022年02月08日 北海道庁
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tkk/hodo/gcomment/r3/100066.html
> 2月5日から6日にかけての大雪の影響により、今なお札幌圏を中心とする公共交通機関の一部に運休やダイヤの乱れが生じているなど、道民の皆様の日常生活などに多大な影響が及んでおります。
 特に、2月6日以降、運行の見合わせが続いているJR北海道においては、運行再開に向け、昼夜を問わず、除排雪作業をはじめとする対応に懸命な努力を尽くされておりますが、現時点においては、多くの列車の運行再開が見通せず、道民をはじめとする多くの利用者が不安を抱えております。
 このため、私としては、JR北海道はもとより関係機関との協力を図りながら、代替輸送の確保や早期の運行再開に向け、可能な限りの協力を行う所存でありますので、JR北海道におかれては、安全運行に万全を期するとともに、公共交通機関としての責務を十分に果たされることをお願いいたします。
令和4年2月8日
北海道知事 鈴木 直道


このコメントに関してはTwitterなどでは他人事過ぎるのではないかと炎上気味になりました。ただ、知事にとっては「道都」の札幌で鉄道が一切動かなくなるなんて「信じられない失態」と認識している、相当怒りを込めたコメントであろう事は理解します。10日に行われた会見では、除雪のための職員派遣を検討していたものの、JR北海道としては線路内に研修も受けていない素人を作業させるわけにもいかず、これを断っています。ただ、その真意が伝わらず、JRは支援を断ったと伝えられることにもなります。

NHKは大雪の検証番組緊急特番「ドカ雪襲来 除雪できない」を放送しJR北海道の対応を批判しました。しかし、札幌市の対応に関しては除雪費の削減も「新たな除雪方法が要因」というネットの話もデマであると一蹴します。

NHK 緊急特番「ドカ雪襲来 除雪できない」
https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-n85276164e8f2


しかし、ここで触れている札幌市長会見は大雪前の1月20日のもので「大雪後」であるように誤認させて放送しているのは、正確な放送をしなければならないNHKとしては非常に「雑」であったと言わざるを得ません。

NHK 除雪が追いつかない そのワケは?
https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-nd12c58c8743e


このローカルニュース内で放送したものと同じ内容を繰り返しました。これが放送されたのは2月2日で「大昔」の話です。これを11日の放送で再度秋元市長の「除雪用の機材や人員を減らしたということはありません」と放送し、さも大雪に対応したかのような形にしていますが、これはどう考えてもその時点の話ですから「今」とは異なります。再度言いますがNHKあまりにも「雑」です。要は放送枠だけ決まって取材できず、JRの会見でJR側の話だけが「最新」となっているという状態はあまりにも視聴者をバカにしています。


とはいえ、JR北海道を擁護するわけでは無く、JR北海道の運休に関する情報提供体制があまりにも杜撰であるというのは以前から指摘し続けているとおりです。今回2月8日の小樽方面臨時便時刻は一切ホームページに掲載されず、駅に行ってはじめて運行時刻がわかるという状態は、散々Twitterで「詳しくはホームページを」と言いながらホームページに碌な情報が無いという大問題です。

北海道の運輸事業者はどこも揃いも揃って、この「利用者に伝える」のを疎かにするのは何故なのでしょうか?Twitter担当を置けとはいいませんし、ホームページを見せるのはかまいませんが、ならばホームページに運行列車運休列車、臨時列車が出るのならその時刻を掲載すればいい話です。

そしてなおかつ、上記で紹介しているJR北海道からの「告知」をすぐにWEBから消し去る。そんな対応をしていれば「たまたま見れた人」にしか伝わらないのです。

会見にしても、資料以外に記者からの質問に社長氏が回答しています。しかし、それは全く記事にならないか脚色、歪曲されて書かれるのが常で、また、リリース内容もほとんど記事になっていないのに、何故会見を公開するという基本的なことを行わないのでしょうか。

もはや報道は信用できない、みな一次情報がほしいのです。JR北海道が運行情報を出さず、真偽の乏しい個人が発出するTwitterの内容に一喜一憂しながら列車を待つ人の気持ちにもう少し寄り添って、まともに情報を扱って発出できる体制を構築しなければなりません。

そして、過去をちゃんと「記録」しておくことも重要なことです。

北海道の交通関係 JR北海道 札幌市交通局 路線バス 高速バス 輸送障害

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