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北海道の交通関係
さようならキハ283系「スーパーおおぞら」
2022/03/07
今は無い列車名を書いてしまいました。でも、キハ283系気動車はわたしにとっては「スーパーおおぞら」です。
2022年3月のダイヤ改正、JR北海道の最近の改正では新型車両の導入と車両の引退が進んでいくという状態になっています。今回の改正では札幌-釧路に1997年に「スーパーおおぞら」としてデビューしたキハ283系気動車の定期運用が終了。そして根室線新得-釧路の普通・快速列車用のキハ40形気動車の定期運用も終了します。
根室線特急列車の歴史
根室線釧路にはじめて「特急」が運行されたのは1962年(昭和37年)のことになります。昭和36年をもじったサンロクトオダイヤ改正で北海道にはじめてキハ82系による「特急列車」が運行され、1年後に釧路まで到達したことになります。食堂車を連結し冷房も完備した長編成の特急列車はまだSLも走っていた釧路に新しい時代を運んできたと思われます。1960年代の北海道内の道路はまだ幹線道路も整備が遅れており、特に冬期は鉄道だけが頼りという時代でもあります。1981年に石勝線が開通し、それまで富良野周りだった特急列車が大幅に走行距離を短縮します。なお、当時は従来の富良野周りの急行が残されています。

そしてキハ82系の引退とキハ183系従来車の最高速度110km/h改造、さらに民営化を前にキハ183系の後期増備車が導入された1986年のダイヤでは最速4時間43分を達成しています。札幌-帯広の2往復を含め特急6往復体制となります。


その1991年当時の時刻を見てみましょう。まだキハ183系での運転を行っていたなか、現在と同じ11往復の特急列車が運転されています。1990年の札幌-帯広間特急増発でこの区間の特急を「とかち」と命名して独立させました。この時期札幌-釧路の最速は4時間25分、札幌-帯広の最速は2時間37分となっています。
よく確認したいのは1986年ダイヤとの比較でも車両の大幅な改善が無く札幌-釧路間最速で18分短縮しているということです。これはJR北海道が単独でも軌道側の改良を行い、最高速度で走れる区間を伸ばすこと、そして、運転余裕時間を切り詰めていったことがわかります。しかし、その多くは新しく開業した石勝線区間でのもので、カーブが多い帯広-釧路ではあまり短縮できていないこともわかります。
道路の方はその後1995年に道東道の十勝清水IC-池田IC間が開通、1999年に道央道と接続する千歳恵庭JCT-夕張IC間開通でこの2区間が開業することで道路での札幌-釧路の所要時間が約5時間20分となります。
道路の改良が進むことがわかっていますから、JR北海道としてもこの区間を維持発展させるためにはさらなる高速化を図らなければならないと考えたことは想像に難くありません。
1988年に自社による札幌-旭川の高速化を行い、1992年には札幌-函館の高速化に制御つき振り子機能を導入したキハ281系を導入し試験を開始し1994年からスーパー北斗としてデビューさせます。

北海道高速鉄道開発(道東高速鉄道開発)とキハ283系
北海道内の各地域、旭川や函館の例を見て鉄道の高速化が「可能」であることを知ったことになります。しかし、これに対しては批判も多く「札幌まで早く行けるようになったら客が減る」という投書やら特集記事は90年代初めに何度も登場することになります。JR高速化で地元反響 おおむね歓迎意向 大型店は客流出警戒も
1994/02/18 北海道新聞
> JR釧路-札幌間を四十五分程度短縮し、三時間四十分代で結ぶ石勝線、根室本線高速化事業が十七日、起工したことについて、関係業界はおおむね歓迎している。しかし流通業界の一部には高速化により釧路市内の消費者が逆に札幌や帯広に出向く傾向が強まると心配する声もくすぶっている。
> しかし、大型店のなかには「高速化により札幌との往来が気軽になると、逆に札幌に客が流れる。また、今でも帯広に買い物客が流出しているが、その傾向が強まる」という見方も出ている。
1992年政府の運輸政策審議会の鉄道部会は「21世紀に向けての中長期の鉄道整備に関する基本的考え方」を答申。この中に「幹線鉄道を高速化し、都市部から人口二十万人以上の地方中核都市まで三時間台で結ぶ」いう鉄道高速化を提言、そして、地方の路線は「自治体など地元負担の増加」「バス転換」を求めるというものです。要は鉄道の利点がある路線には高速化などの設備改良を、そうでない路線は廃線も辞さず、そして都市近郊路線のラッシュ改善も行うというものです。この範疇に入るのが札幌-釧路の高速化となります。
この答申を受けてJR北海道も札幌-釧路の高速化に対しての検討を開始、自主財源ではなく国の補助が前提という態度となります。
その間に都市間バスは1990年から札幌-帯広のポテトライナー開設、1992年から札幌-釧路のスターライト釧路号が開設されることになり、将来の高速道路の延伸、時間がかかっても安く行きたい需要に応える状況が発生しています。
JR北海道としては鉄道の特性を発揮できる高速化を(できるだけ自前の資金を拠出せずに)行いたいという焦りがあったとも思われるのです。そして、政府自民党も「幹線活性化補助金」として本件を引き出そうとしましたが、これには「新幹線に直接または間接に結びついた路線」という条件がついています。釧路はそれには合致しないため、当時の大蔵省が難色を示し一度は「棚上げ」になったという状態でした。結局は「経済対策」として復活します。
札幌~釧路の高速化事業、年度内着工の運び-総合景気対策に盛り込む
1993/04/13 北海道新聞
> JR北海道が計画している石勝・根室本線(札幌-釧路間)の高速化事業に対する鉄道整備基金からの助成が、十三日に発表される自民党の総合景気対策に盛り込まれる。
> JR北海道は当初、学園都市線については総事業費百五十億円の四割、札幌-釧路間は同百十億円の五割を鉄道整備基金からの無利子融資でまかなうことを要望したが、札幌-釧路間については大蔵省が難色を示し、本年度予算への計上が見送られた。
自民党総合景気対策本部は通勤対策、地方活性化のための鉄道整備を今回の対策の最重要課題の一つに位置付け、大蔵省と折衝。難航したものの、同基金から札幌-釧路間について総事業費の二○-二五%の補助金が交付される見通しとなった。
JR北海道の誤算は無利子貸し付けや補助ではなく「助成」となったことで、単独事業では無く官民共同出資、つまり三セク設立が前提となったことになります。ここで大事なのが釧路市・帯広市も各単独で出資しているということです。自分の地域の鉄道をよくするために地域自らが出資する。これが行われたのは北海道では初めてのケースになります。
「短縮時間に応じた配分」 JR高速化 釧路と帯広の負担
1993/12/08 北海道新聞
>JR札幌-釧路高速化事業費
(単位・千円)
区分 平成5年度 平成6-8年度
国 502,800 1,502,000
道 452,500 1,351,800
釧路市 32,300 96,600
帯広市 18,000 53,600
JR 502,800 1,502,000
第三セクタ 1,184,600 3,528,000
ー借り入れ
合計 2,693,000 8,034,000
区分 合 計
国 2,004,800
道 1,804,300
釧路市 128,900
帯広市 71,600
JR 2,004,800
第三セクタ 4,712,600
ー借り入れ
合計 10,727,000
JR石勝線・根室本線高速化 三セク設立正式決定 道など4者
1993/12/22 北海道新聞
> 総事業費約百億円のうち、国が二十億円、JR二十億円、道十八億円、釧路市一億三千万円、帯広市七千万円をそれぞれ負担、工事の完成時までに道東高速鉄道開発の資本金として順次出資する。残る四十億円は金融機関から借り入れる。
工事は本年度中に札幌側から着手し、帯広までは九六年春、釧路までは九七年春に終了する見込み。完成後は振り子式特急の導入により最高時速一三○キロの運行が可能となり、札幌-帯広間は二時間十二分、札幌-釧路間は三時間四十分と、現行に比べそれぞれ二十五分、四十五分程度短縮される。道東高速鉄道開発の役員は一月十七日の取締役会で選任される。
工事は石勝線・根室線各駅のポイント部の高速通行を可能にするための一線スルー化、カーブのカント拡大と重軌条化がメインになります。
そしてJR北海道は単独でこの区間を高速走行できる車両の開発に着手します。
ツル頂き大地疾走 新振り子式特急が完成
1995/10/28 北海道新聞
> JR北海道が札幌-釧路間に一九九七年春に導入する新振り子式特急「スーパーおおぞら」(仮称)の試作先頭車二両が、二十七日までに宇都宮市の富士重工宇都宮車両工場で完成した。
記事には富士重工宇都宮車両工場で出場を待つキハ283系の姿を捉えています。キハ281系の前例があるとはいえ、より過酷な区間を走行するキハ283系はそれに合わせた特殊な装備も多く、保守に苦労したことは否めません。しかし、それだけ地域に熱望されたという車両でもあるのですね。
スーパーおおぞらデビュー
JR北海道は石勝線・根室線高速化工事の完成を1997年3月として従来の「おおぞら」から札幌-釧路で45分短縮する「スーパーおおぞら」3往復をデビューさせることにします。札幌-釧路間3時間台に JRダイヤ来年3月改正
1996/12/07 北海道新聞
> JR北海道は六日、新型振り子式特急「スーパーおおぞら」運転による札幌-釧路間のスピードアップなどを柱にした来年三月二十二日からの改正ダイヤを発表した。札幌-釧路間は最高時速百三十キロの「スーパーおおぞら」により三時間四十分-五十六分で結ばれ、三時間台に突入する。
札幌-釧路は、昼間時間帯に六往復している特急「おおぞら」のうち三往復を「スーパーおおぞら」に切り替える。所要時間を現行より四十五分短縮し、最も速い三時間四十分で走る釧路発札幌行き「スーパーおおぞら2号」(午前七時四十六分発)の途中停車駅は池田、帯広、新得、南千歳の四駅。帯広-札幌は同号で二時間十二分となる。
「スーパーおおぞら」は指定席三両、グリーン席一両、自由席二両の六両編成で定員三百一人。
札幌-帯広は特急「スーパーとかち」が一往復増えて四往復に。同「とかち」の二往復と合わせて特急六往復になり、来年十二月中旬-三月の冬季には「スーパーとかち」をさらに一往復増発する。
スーパーおおぞらの運行開始で、鉄道が高速化で乗客を得ることができることが明らかになります。当初基本編成6両、300人程度の定員での運行を基本に多客期に3両の増結を行う運行を想定していたようですが、開業3ヶ月後にはこのような記事になります。
「長大列車」は人気のしるし スーパーおおぞら 基本の6両を9両編成に 連日、車両を増結 札幌-釧路
1997/06/21 北海道新聞
> 札幌-釧路間の所要時間を四十五分短縮したJR北海道の特急「スーパーおおぞら」(一日三往復)は二十一日で運行開始から三カ月となるが、九両編成での運行を続けている。道内では五両前後で走る特急が普通となる中、国鉄時代以来の「長大列車」。人気の高さを反映している。
JR北海道によると、「スーパーおおぞら」の基本編成は六両だが、予約が相次ぐことから、車両を増結して対応している。三月二十二日のデビュー以来、基本編成で走ったのは、四月十四日の二往復半のみ。あとは「九両で走る日がほとんど」という。
> 「スーパーおおぞら」の定員は基本の六両で三百一人だが、三両増結で百七十二人増える。昨年までの特急「おおぞら」と比べると、三〇%の利用客増という人気で、「やっぱり特急の長編成は壮観」とJRの鉄道マンたちも気を良くしている。
キハ283系は当初6両固定編成と増結3両編成という電車的な運用方法を検討していたようです。1997年までに導入された車両は23両で、スーパー北斗として函館方面の特急に導入されたキハ281系の27両より少なくなっています。当初利用数が限られ、6両編成300人程度の定員で問題ないと予想されていたことになります。
増結3両の7号車となる中間車両は運転台を設置しており、運転所からの回送運行ができるようにしました(本式の運転台でありますが、回送を目的としており、本線上で特急運行としては使用していないので、この項では回送運転台と称す)
1号車 キハ283-0(1/2/3)(釧路方先頭車)
2号車 キハ282-0(1/2/3)
3号車 キロ283-0(1/2/3)(グリーン車)
4号車 キハ283-200(201/202/203)(多目的室つき中間車)
5号車 キハ282-100/1000(101/102/---)
6号車 キハ283-100(101/102/103)(札幌方先頭車)
キハ283増結2編成(スーパーおおぞら運行開始当時)
7号車 キハ282-2000(2001/2002)(回送運転台つき中間車)
8号車 キハ282-1000(1001/1002)
9号車 キハ283-900(901/902)(札幌方先頭車)
通常2編成稼働で1日1.5往復し1編成予備という状態でスタートしていますが、キハ282-100は2両しか製造されていませんから9両編成を2本作ってしまうと基本1編成は5両しか無いという状態で、当初から車両が不足する状態で運行しなければならないということになります。
結局故障などが発生すると車両をやりくりすることになり、基本編成と増結編成で固定的に運用するという目論見は最初から破綻したと言えるでしょう。
1998年にスーパーおおぞら用としては4両が増備されます。
キハ283-106(先頭車)
キハ282-2005/2006(回送運転台つき中間車)
キロ283-5(グリーン車)
これにより計27両、3編成稼働させても(一応)予備車が確保できたという状態にはなりますが、中間車キハ282-100番台と1000番台は定員64名、2000番台(3000番台)は60名と異なり、2000番台を組み込むと定員が変わるという非常に面倒な状態になったとも言えそうです。また、多目的トイレや多目的室があるキハ283-200は増備されていませんので、結果基本編成は3編成しか組むことができないことになります。
1999年にはさらに4両を増備します。
キハ283-107/108/109(先頭車)
キハ283-205(多目的室つき中間車)
これにより基本編成は4編成を組むことができ、常時3編成稼働、1編成予備という形にできることになります。1998年12月改正でスーパーおおぞらを4往復に拡大、またスーパー北斗の1往復にもキハ283を投入したため、1999年の春にこの増備車が到着するまでは予備車のない運用を行っていたことがわかります。
キハ283系は当初9両編成までの連結しか行えない設計ではありましたが、11両編成まで連結できるよう設備の改良が急遽行われます。そして、ここまで見てきた通り、車両の運用は綱渡りで、現場の苦労は大きかったと思われます。しかし、当初あまり運休などの話は(あくまで報道されていなかったからかもしれませんが)見聞きしていません。
「スーパーおおぞら」ぐーんと乗りやすくなります 札幌-釧路間 年末から11両編成も登場 JR 混雑解消の切り札に
1998/02/21 北海道新聞
>10両以上は旧国鉄以来
> JR北海道は二十日までに、三月で運行開始から一年になる札幌-釧路間の特急「スーパーおおぞら」の車両(二八三系)を四両新造し、最大十一両編成で運行する計画をまとめた。道内で昼間の特急が十両以上で運行するのは旧国鉄時代以来で、人気の高さを反映している。
> このため、新たに四両を新造し、今年十二月にも最大十一両編成での運行を始める。十一両編成の場合、座席数は九両編成より百十席多い五百八十席になる。
また、スーパーおおぞらは女性客室乗務員の配置などでグリーン車の利用率も高いことから、新車両のうちの一両をグリーン車とし、一列車にグリーン車二両の連結も可能にする。
ソフト面でも客室乗務員によるグリーン車サービスが開始されるなど、JR北海道のフラッグシップトレインとしての本領を発揮します。新聞によればグリーン車から埋まる、グリーン車2両連結を行うなど、かなり景気のいい話が聞こえていたのがこの頃です。反面釧路空港の利用者数は減少することになります。
釧路空港「100万人」悲願厳しく 1-10月の利用者 昨年比微増 81万5000人
1999/11/22 北海道新聞
> 釧路空港の利用者数は一九九七年に過去最高の九十五万二千人を記録したが、昨年はJRの特急スーパーおおぞらに乗客を奪われたことなどで九十一万七千人まで低下。
航空の方が全体所要時間が早くても、適切な運賃と適切な所要時間によって鉄道が見直されるという意味がありましょう。また、安価でも所要時間に差がある高速バスとの競争にもはやり「早さ」がものをいうことになります。
都市間バス 集客の決め手は速さ 札幌-釧路 JR相手に減 札幌-旭川など 「高速」使い増
1997/09/25 北海道新聞
>「釧路号」は一九八七年八月、北海道中央バスが運行を始め、その後、くしろバス、阿寒バスと共同運行している。札幌-釧路間約三百九十キロを一日四往復、片道六時間十五分で結ぶ。年間の乗客数は初年度約三万五千人だったが、増便もあって徐々に増え、昨年度は過去最多の約七万七千人に達した。
ところが本年度に入ると、JR北海道が三月に札幌-釧路間に導入した新型振り子式特急「スーパーおおぞら」の影響を受けて、一気に減少に転じた。四月から八月末までの乗客は約二万七千人と前年同期比約二〇%ダウン。
運賃では片道九千百二十円のJRに比べバスの五千六百十円が圧倒的に安いが、運行時間ではJRが最も速い列車で三時間四十分とバスより二時間三十五分も短く、スピード差が乗客獲得競争でJRに軍配を上げた。
2000年には「とかち」1往復を283系で運行開始、車両運用が潤沢ではないなか、早さへの要望はこのような形で行わなければならないということなのでしょう。
そしてやっと2001年には「おおぞら」残り2往復をキハ283系で「スーパー」化するためにキハ283系を増備します。ここで増備された20両がキハ283系の最終増備になります。これと合わせて、仕様の同じ車両の番台区分を統合、また先頭車をキハ283、中間車をキハ282とするための改番が行われています。キハ283系は結構複雑な改番遍歴を行っています。この後の石勝線火災事故でスーパー北斗用に増備されたキハ282-3001がいたことでわかるとおり、当初の目論見とは別にスーパー北斗用を含めて1両単位で車両を繋ぐしかなかった。そのような運用を末期まで行っていたことがわかるのです。
キハ283系の63両をまとめてみます。
事故と衰退
最高速度130キロという高速運行が冬季も行われるようになり、車体や床下についた雪が落下し、トンネル内でのバラスト(敷石)を巻き上げ、窓を破損させることが度々起こります。JRはトンネル内の減速と敷石にネットを張ることで対策を行います。JR窓ガラスひび割れ事故 対策奏功 今年まだ2件 道内 昨年11-12月は15件 本格解明へ下旬に実験
2000/02/15 北海道新聞
> JR北海道は十二月十五日の事故後、《1》特急が走るトンネル内のレール周辺に小石巻き上げ防止用のネットを敷く《2》全車両のガラスに飛散防止用の特殊フィルムを張る《3》車両底部に付く氷雪を走行前に落とす-などの緊急対策を実施。さらに最高時速百三十キロの特急をトンネル通過時だけ百キロ以下に制限する応急措置も取り、再発防止を徹底した。
最終的には窓にポリカーボネート製の外窓を貼ることで破損を防ぐという策になります。外観も少し変わったのがわかりますね。
2001年7月からは札幌-釧路の昼行特急すべてがキハ283系の「スーパーおおぞら」となり全列車を3時間台で運行。しかし、車両増備がこれ以降行えなくなるという状況にも陥ります。
鉄道車両事業から撤退 富士重工 振り子特急で実績
2002/05/16 北海道新聞
> 富士重工業(本社・東京)が赤字が続いている鉄道車両の生産事業から撤退する方針を固めたことが十五日、明らかになった。十七日に正式発表する。同社はJR北海道向けに振り子式特急「スーパーおおぞら」など数多くのディーゼル式気動車を納入してきた実績があり、今後、JR北海道は発注先の変更を余儀なくされそうだ。
2001年増備の5次車を持ってキハ283系の製造は終了することになります。車両メーカーとの協力で設計、製造してきたキハ283系は他の車両メーカーで製造することはできず、また、振り子機能をつけた車両を今後どう製造するのかJR北海道は頭を悩ますことになります。
2007年にスーパーおおぞらを7往復化するダイヤ改正を行います。この改正ではスーパーとかち用に空気バネによる車体傾斜機能を備えたキハ261系1000番台を導入、振り子車を導入できないことから苦肉の策となる宗谷線特急と同様のシステムでの導入となり、本来でいえば振り子車を導入したかったのがJR北海道としての考えであったと思われます。しかし、比較的距離の短い札幌-帯広の体質改善も急務であり「早い」スーパーおおぞらに帯広までの客が多く乗るという状況から、こちらに新型を投入するという判断になったとも言えます。
また、キハ283系は6両編成を基本に増結を抑え車両を増やさずに「やりくり」することで増発にこぎ着けたということになります。しかし、利便が高くなれば利用が多くなる。増結をしないという選択はありませんでした。そんななか多少の不具合は後回しにしても車両を運用しなければならなかったのではないかという疑念が見え隠れします。
気になるのは車輌製造から10年を経過したキハ283系に不具合の報道が何度かなされたことです。また、整備職員のミスも報道されていたのも気になるところではありました。
特急のブレーキ 部品一部が脱落 JR北海道
2009/02/25 北海道新聞
> 同社によると、十六日午後八時十五分ごろ、釧路発札幌行きの「スーパーおおぞら12号」(九両編成)が札幌駅に到着後、社員が三両目の車両下部から煙が上がっているのを発見。その後の調査で、ブレーキ装置部品の一部が脱落し、車輪とこすれて過熱したことが原因と分かった。前日の車両の点検では異常はなかったという。
特急部品脱落 車輪、車軸も損傷 JR北海道 トラブル続発、陳謝
2009/03/10 北海道新聞
> トラブルは二月十六日午後八時十五分ごろ、釧路発札幌行きの「スーパーおおぞら12号」(九両編成)が札幌駅に到着した際、三両目の車両下部から煙と異臭が発生、車輪を挟むブレーキ部品一個が脱落していた。
その後、同社が車体を検査したところ、別のブレーキ部品も半分が脱落、車輪表面に数センチの傷が無数にあったほか、車輪の振動を抑える車軸のふたがなくなり、車軸の一部に衝突痕も見つかった。車輪の傷はトラブル発生の二日前に発見されており、車両からの異音も確認されていたが、基準を超えておらず、そのまま運行したという。
特急列車で不具合3件 JR北海道 点検作業ミスも
2009/04/11 北海道新聞
>同社によると、十日午前九時五分ごろ、JR函館線の札幌-苗穂間で、札幌発釧路行き特急「スーパーおおぞら3号」が走行中、運転士がブレーキ圧力の上昇を計器で確認したため、緊急停止。札幌駅に引き返し、点検後に運転を再開したが、同じ現象が起きたため運休した。
その後の調べで、四日に列車を点検した際、担当社員が一号車のブレーキ関連機器二カ所について、一カ所を閉め忘れ、逆に片方は緩めるのを忘れていたことが分かった。
午後一時四十分には、JR石勝線の南千歳-追分間で、札幌発帯広行き特急「スーパーとかち5号」が走行中に自動列車停止装置が作動。その後、運転を再開したが、再び装置が作動し、新夕張駅まで徐行運転した後、運休した。同社は装置の故障が原因とみている。列車の乗客はいずれも、後続列車で目的地に向かった。
午前十一時三十五分にも釧路発札幌行き特急「スーパーおおぞら6号」の車内で白煙が発生、東追分駅で緊急停車。点検後に運転を再開したが、空調機器の不調が原因という。
<ニュースファイル>特急の燃料タンク破損 占冠
2009/07/28 北海道新聞
> 【占冠】27日午前10時40分ごろ、上川管内占冠村のJR石勝線で、占冠駅付近を走行中の札幌発釧路行きの特急スーパーおおぞら3号(7両編成、乗客298人)から油が漏れているのを同駅の職員が発見した。
JR北海道が点検したところ、4号車の燃料タンクが破損し、約1000リットルの軽油が漏れていた。
>同列車の自動列車停止装置(ATS)の部品が落下し、タンクが破損したとみている。
特急、不具合で遅れ JR千歳線
2010/01/05 北海道新聞
> 4日午後4時ごろ、札幌市厚別区のJR千歳線新札幌駅構内で、札幌発釧路行き特急スーパーおおぞら9号(10両編成、乗客383人)が電気系統の不具合によって走行不能となり、点検後、約30分遅れで運転を再開した。
9両、7両、10両と2010年の時点でも列車の乗客は多く、増結を頻繁に行って車両のやりくりをしていたことがわかります。乗客数も6両編成の300人定員では捌けないほどの利用があったこともわかります。
そして、致命的な事故が発生します。
石勝線特急事故 トンネル直前で脱線 6両全焼 けが39人 乗客「誘導なかった」
2011/05/28 北海道新聞
> 【占冠】JR石勝線の上川管内占冠村の第1ニニウトンネルで27日夜、釧路発札幌行き特急スーパーおおぞら14号(乗員乗客245人)の列車内に白煙が充満して緊急停止した事故は、列車がトンネル直前で脱線して、そのまま走行し、火災が起きた可能性が高いことが28日、道警やJR北海道への取材で分かった。
> スーパーおおぞら14号はディーゼル車で、各車両の下部には燃料の軽油を積んでいた。脱線した2号車は98年製。カーブを高速で走行できる「振り子式」と呼ばれる特殊な台車を使っており、道内では90両が札幌-函館、札幌-釧路間で使用されている。
脱線事故を受け、北海道運輸局は28日、JR北海道の中島尚俊社長に原因究明や再発防止策の提出を求める警告書を手渡した。
事故については詳しい記事は調べられると思いますので言及は避けますが、不適切な整備、そして車輪のフラット放置などJR北海道内部の非常に大きな問題がここにあったことがわかります。
2011.05.28 石勝線で発生した列車脱線事故について
https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2011/110528-1.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20220307_01.pdf
2011.05.31 石勝線 清風山信号場構内で発生した列車脱線事故について
https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2011/110531-1.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20220307_02.pdf
同じ時期にHAC(北海道エアシステム)も機体の不具合での道内便の欠航が相次ぎ、また高速道路の料金無料化実験と休日上限1000円実験も終了。札幌と道東地区の移動が非常に行いにくい状況に陥ります。
JR特急 事故後 乗客離れ 安全運行の信頼揺らぐ
2011/06/09 北海道新聞
>事故までの1週間(5月21~27日)と、スーパーおおぞらが通常運行を再開した後の1週間(5月30日~6月5日)を、特急が走る3区間で比較した。
事故発生地点を含む南千歳-トマムの特急旅客収入は、事故前の前年同期比97・5%から、事故後は同90・3%と7・2ポイントも下落した。
スーパー北斗などが走る苫小牧-東室蘭は、事故後の収入が前年同期比80・8%で事故前より4・1ポイントダウン。スーパーカムイなどが走る札幌-岩見沢も、事故後は同93・1%で、事故前より3・3ポイント下がった。
6日には、スーパーおおぞらと同型のスーパー北斗でも、床下から白煙が出るトラブルが起き、一層の利用減も予想される。
この頃から乗客のJR忌憚は始まったと見ることができましょう。燃え落ちたキハ283の姿をテレビは繰り返し報道します。
運輸安全委員会 事故調査報告書 説明資料
https://www.mlit.go.jp/jtsb/railway/p-pdf/RA2013-4-1-p.pdf
事故調査報告書 説明資料から
高速化の期待の星だった青い特急は、いつのまにか「乗るのも怖い特急」になってしまったのです。そして同型車の白煙事故、追分駅の信号設備不具合など、鉄道の安全自体が怪しいと思われる状況になっている。そんなこの時期です。
札幌-帯広3時間に 道東道 夕張-占冠開通 車200台通り初め
2011/10/29 北海道新聞
> 【夕張、帯広】道東道の夕張インターチェンジ(IC)-占冠IC間(34・5キロ)が29日午後3時、開通する。十勝管内と札幌が高速道路で結ばれ、帯広-札幌間の所要時間は開通前より約30分短い約3時間となる。開通に先立ち、夕張IC付近や十勝管内では車列パレードなどの記念イベントが開かれ、長年の悲願実現を祝った。
この年道東道は残されていた夕張IC-占冠ICが開通。札幌から浦幌ICまでが高速道路で直結されました。その後2015年に白糠IC、2016年に阿寒ICまで延伸開通します。阿寒はもう釧路のすぐ手前。高速道路経由で車を走らせればざっと4時間半程度で札幌と釧路を結ぶことでしょう。高速バスも5時間15分ほどです。
スーパーおおぞらのキハ283系は2013年11月から最高運転速度を110キロに減速することを発表。釧路-札幌の最速は4時間2分と30分以上遅くなり、さすがにキハ283系導入前とまではいいませんが、大幅な所要時間増加となりました。帯広-札幌も2時間半、これも高速道路の車と大きくは所要時間がかわらないとも言えそうです。
「おおぞら」としてのキハ283系最後の乗車
機会をいただき、在宅勤務のなか、最後にキハ283系に乗ってきました。思えばスーパーおおぞら開業時にグリーン車に乗ったこと、妻や子供と釧路に観光に行ったこと、最近でも釧路に行くときは距離的に車を使わず鉄道を使ったことをよく覚えております。
とはいえ乗ったら寝ちゃうし、そこまで感慨深いものでもないのですけどね。





床面が低く、ステップを廃した出入り台も含め、乗りやすいことを実感できると思われます。
ただ、走行中の揺れは新しいキハ261に軍配が上がりそうです。空席の椅子がカタカタ振動しているのがわかります。この共振のような揺れがキハ283系を極端な減速を行うよう設定せざるを得ない、車両としての剛性などに問題があったのではないかと疑わせるものになっています。




大好きな車両とは言いませんが、本当にデビュー当時に歓迎されていたということの片鱗だけでも伝えられたらいいな、そう思います。
最後に、ファンは転用などの話をよくしますが、個人的には現状のキハ283をどこかで定期運用することは無いだろうと思っています。ホームの低い駅でのステップ高さ、振り子機能を停止したとしてもこれまでその整備を行ってきていない区所での使用は「今」のJR北海道にとってリスクではないかとも思います。
最後まで「スーパーおおぞら」いえ、「おおぞら」として釧路まで羽ばたいて引退するのが幸せなのではないかな。私はそう思っています。

追記
2023年3月改正よりキハ283系気動車が石北線特急オホーツク・大雪で使用されることが発表になりました。
キハ283系のうち1998年から2001年に製造された最終期の車両、計25両が残り苗穂運転所で整備されています。