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北海道の交通関係
北海道の交通関係サイト終了のお知らせ
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コロナ後の地方路線、上下分離で維持できるか、廃線を受け入れるのか
2022/05/24
コロナ渦による移動需要の停滞、そしてテレワークなどによる通勤需要の縮減などを受けて、各鉄道会社、バス会社がこれまでに無い打撃を被っている状況があります。
多くの輸送事業者は、もうけを出せる路線だけを運営しているわけではありません。もうけを出せない路線も運行せざるを得ないという状況があります。もちろん、その路線を廃止することで収支を改善することが可能でしょうが、それを「公共交通機関」として維持していたというのが現状でありましょう。
そかし、その「もうけ」を出せていた路線が利用の縮減でもうけを出せなくなれば、そのもうけの一部で運営していた路線も維持できなくなりましょう。赤字=倒産(会社自体の消滅)とは簡単にはなりませんが、2期、3期と赤字が続くことは事業が継続できなくなることを覚悟しなければならない期間であろうかと思われます。それを避けるために人員の削減を行えば、運行自体ができなくなることにも繋がります。
先日書いたJR西日本の「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」のあと、JR東日本も地方在来線の赤字額を公表すると発表しています。
JR西日本の「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」
https://traffic.north-tt.com/09_article.php?article=1125
JR東、乗客が極めて少ない地方在来線の赤字額を公表へ…維持について自治体と議論
読売新聞 2022年5月10日
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220510-OYT1T50173/
> JR東日本の深沢祐二社長は10日、乗客が極めて少ない地方在来線の区間別収支を年内に公表する方針を明らかにした。これまで公表してきた乗客数に加え、運行に伴う赤字額を新たに示し、ローカル線維持について自治体と議論する。
JR東日本は元々鉄道輸送量の11%を新幹線で、84%を首都圏在来線で、そして新潟や仙台を含めた東北、上信越の在来線各線の輸送量はわずか4%に過ぎません。
鉄道運輸収入で見ても新幹線が23%、首都圏在来線73%、そして東北・上信越では4%でしかありません。
2022年3月期決算短信 参考資料 2021年度期末決算について
https://www.jreast.co.jp/investor/financial/2022/pdf/kessan02.pdf
鉄道輸送量・鉄道運輸収入
路線毎の収支は今まで開示されていませんが廃止提案を行った岩泉線と、只見線に関しては収支を開示しています。
岩泉線(茂市~岩泉)について 2012年7月25日 ご説明資料
https://www.jreast.co.jp/railway/pdf/iwaizumi_course.pdf
岩泉線収支状況
只見線の状況について
https://www.jreast.co.jp/railway/pdf/20160324tadami.pdf
只見線収支状況
JR北海道が開示した各線の収支状況のような形で、今後開示が行われるものと考えられます。
さて、このような地方路線についての情報開示、そして沿線自治体との協議は結果的に「廃止に向けた準備」と言われることは仕方ない面はあろうかと思います。実際これだけの赤字運行を行っている、収入が倍になっても運行赤字が解消されないような「完全に地元に見捨てられた路線」をどう維持するのか、維持しないのかというのは鉄道会社にとっても沿線自治体にとっても悩ましいところではありましょう。
上下分離の例
上下分離は「下」である土地、線路設備などを沿線自治体などが保有・維持・管理を行い、「上」である鉄道事業者が運行を行うという仕掛けになります。バス会社が道路の維持費用を直接的には支出しないのと同じ考えとなりましょう。●只見線
災害による運休からの復旧という面はありますが、只見線は2017年6月にJR東日本と福島県が上下分離方式の導入と、鉄道による復旧で合意し、福島県が土地と鉄道施設を保有、JR東日本が運行を行う形で復旧することが決定しました。「下」の部分で毎年約3億円かかるとされる維持管理費は福島県と沿線自治体が負担し続けることになります。「上」の部分を運営するJR東日本は車両、乗務員そして運行そのものの経費を負担し、減免されるとはいえ線路使用料を支払います。運賃収入が年間500万円、600万円のままであるならば単純に数千万円の赤字は余儀なくされるという意味でもありましょう。ただ、被災前の億単位の赤字からは縮減されます。
《JR只見線・全線開通》赤字路線でも地元からの強い要望で復活へ【上下分離方式】の利点と欠点
福島テレビ 2022年05月19日
https://www.fukushima-tv.co.jp/localnews/2022/05/2022051900000013.html
>今後、【上下分離方式】という方法がとられる。上の部分である列車の安全運行はJRが。下にあたる線路・駅舎などの保有は福島県が行うというもの。
毎年約3億円かかる維持管理費は、福島県と沿線自治体が負担する。
>【上下分離方式】では、下を司る県や沿線の自治体が近くに住宅地や商業施設を建てたり、役所や病院を沿線に集約したり、鉄道を軸としてまちづくりを進める効果が期待されるという。
2014年当時のJR東日本の見解 不通区間の復旧費用と費用分担 只見線の上下分離 ローカル線利用促進イメージ
福島テレビの特集はよくまとまっています。
●長崎線(並行在来線)
2022年秋に開業する西九州新幹線の並行在来線である長崎本線の肥前山口-諫早も上下分離方式を導入することになっています。長崎新聞によれば年間維持費用は約9億円が見込まれ、長崎県2、佐賀県1の割合で負担するとしています。九州新幹線 長崎ルート 並行在来線の維持管理費割合 長崎と佐賀が合意
長崎新聞 2021年2月13日
https://nordot.app/733139739268300800
> 維持管理費を巡っては08年、年間2億3千万円(税抜き)と見込み、両県の負担割合は「長崎2、佐賀1」「災害などで見込み額を超えて増加した費用は折半」と確認。その後人件費や資材費の高騰、保守レベルの向上などで6億6千万円(同)に膨らむ見通しとなり、維持管理を担う一般社団法人の運営費や施設の設備投資費も加わり、約9億円(同)が見込まれるという。
九州新幹線長崎ルート 上下分離区間負担は佐賀1:長崎2で決着
サガテレビ 2021年2月12日
https://www.sagatv.co.jp/news/archives/2021021205036
>鉄道施設の維持管理費が当初の想定から3倍以上となる年間7億3千万円ほどに増えたことから、長崎県側は、2008年に合意していた佐賀1・長崎2とする負担割合を見直すよう求めていましたが、このほど両県は従来通り佐賀1・長崎2とすることで決着しました。
当初想定約2億3000万円->約7億3000万円に増 法人の運営費約2000万円を計上
九州新幹線の並行在来線は通勤・通学利用の観点、第三セクターでは長崎駅等に乗り入れる場合の運賃精算などの問題もありJR九州がそのまま運行を行う方が都合が良いという判断になろうかと思われます。上下分離で「上」の部分が変わりませんから利用者としては変わらないということになります。(もちろん在来線特急がなくなるなどの変化はある)JR九州は上下分離移行後23年間自社にて運行します。その後は再協議となりましょう。
なお、博多からの直通特急は肥前鹿島まで運行され、電化設備を維持するものの、長崎寄りの肥前浜-諫早は電化施設を撤去します。また、JR九州のまま運行される諫早-長崎も電化設備が撤去されることが決まっています。
●肥薩線
肥薩線は国交省から上下分離を提案するような状態も見られます。肥薩線の復旧費用は約235億円、JR九州の負担が38億円とされますが、これをJR九州が飲むか、また、沿線自治体も上下分離となれば年間億単位の支出を余儀なくされ、これを飲めるかが問われています。肥薩線復旧、JRの負担最大9割減に 橋架け替えなど公共事業で 国交省など試算
熊本日日新聞 2022年05月20日
https://kumanichi.com/articles/663000
>国が公共工事の補償事業などと位置付けて総額159億円分を負担するとの支援策を示した。
残るJR九州の負担額76億円については、国と地元自治体が赤字路線の復旧費を4分の1ずつ支援する改正鉄道軌道整備法の適用によって、半分の38億円に減らせると説明した。
加えて、鉄道の運行と所有・管理の主体を分ける「上下分離方式」を導入すれば、国と自治体の補助率がかさ上げされる。最終的に、復旧にかかる同社の負担額を最大9割減らせると試算した。
しかも、200億円以上を公費で負担するということは、これを使う人使わない人全員に負担させるという意味でもあります。現実にどの程度沿線で使っているのか。肥薩線の運休区間は八代-吉松ですが、代行輸送はタクシーで、八代-葉木と人吉-一勝地のみになっています。
第2回 JR肥薩線検討会議
https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001472024.pdf
タクシー輸送量も開示されていますが、少なくとも沿線住民が積極的に利用できるダイヤでも無いですし、現実的に数字は酷いものです。
言い方は悪いのですが、日高線あたりより使われていない、地域利用の少ない場所に対して観光という名目ならばこのような積極的な支援を国が行うということは、少しですがうらやましい(実際に沿線がそれを選択するかはわからないが)とも思ったりもします。
鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会
国土交通省は、鉄道事業に関する国の関与・支援のあり方も含め、具体的方策を検討するための有識者検討会として「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」をこれまでに4回行っています。7月には提言書がまとめられることになっています。鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk5_000011.html
この内容と資料は特に地方の公共交通に興味のある方は是非読んでおきたい内容となっています。
第1回の配付資料は特にコロナ渦を過ごした鉄道会社の現状と問題、そして、過去に行われた特定地方交通線転換、また最近のBRT・バス転換などの事例があります。
参考資料(国土交通省)
活性化方策の事例 鉄道とバスの走行キロあたりの経費比較
JR西日本説明資料
検討会でご議論いただきたいこと
第2回の配付資料は自治体からの提言、議論になります。
滋賀県説明資料
地域公共交通を支えるための税制の導入可能性検討
広島県説明資料
市場原理主義発想に陥ることはあってはならない 鉄道ネットワークをどう考えるかという議論 地方切り捨てにならないような議論 廃止等手続きの見直し
広島県の説明資料に関しては、鉄道でなければならない理由に関して知事がうまく説明できない様子が覗えます。
第3回、第4回は議事録がまだ公開されていません。2回までの内容では基本的に金を出さずに他の路線で稼いだ、他の地域が納めた金でオラの町の路線を残すべきだと考える地方の考え方では路線は残すことはできませんが、その考え方が蔓延し、また国の考え方、本来の利用者の考え方とも乖離し、結局路線も残せない、下手をするとバスすらどうなるかわからないという非常にまずい状態を作り出しているように見えます。
広島県が芸備線の広島市内の一部区間を指して「あんなに乗ってる!儲かってるのに、離れた区間を廃止しようとしている」なんて話は、いやいや広島付近のレベルですら赤黒でいえば怪しいところだよって話でありまして、現状の認識が全くできていないという言い方もできましょう。
第3回の論点整理を見ますと、国交省が今後地方鉄道路線に関してどのような形にしていくのかという方向性が少し見えてきます。
いずれにしても沿線自治体が
・内部補助ができる(はず)のJRへの公費による支援は説明がつかない
・新たに鉄道の維持のために財源を割くことができない
となれば実際にJRの内部補助ができなくなった時点で終わりですよねってことにはなりましょう。
結果
○地方公共団体による支援の一層の推進
○ローカル鉄道の利便性・持続性の向上に向けた鉄道運送の高度化とその支援の必要性
○ローカル鉄道の利便性・持続性の向上に向けた運賃制度の見直しの必要性
○BRT導入の課題、制度的・財政的枠組みの設置の必要性
という地域の支援が必要であるという形、そしてBRTを選択肢としています。つまり、鉄道事業者がBRT事業を行って「鉄道と同等」として運営すればよくないですか?という提案になっています。廃止バス転換では地図に残らない時刻表から漏れるという自治体をある程度納得させられると踏んでいるように見えます。
鉄道輸送の高度化というものも、新線建設や車両投資で高速化とかまでは鉄道会社の負担がどの程度行えるか?という面でしょう。駅の移設などはJR北海道でも例があり、これは意味がある投資ですが、これも地域にある程度の支援が必要なことでもあります。
いずれにしても国がローカル鉄道に関して直接的な赤字補填としての金銭面の支援を行うのは考えられていない、それだけは間違いの無いところでありますので、逆に言えば強行に廃止を行う(国鉄廃線のような転換交付金での支援)ことも無いという言い方もできます。地域と鉄道会社が協議の上で鉄道を残すならば地域が支援し、残さないならば鉄道会社が一定の責任を持ってBRT・バス運行の継続に責任を持てないかという点を考えていそうです。
北海道ではJR北海道が日高線廃止時に一定の都市間輸送等での支援を行ったような内容に近くなる(もちろん金銭面での支援金もある)ように見えます。
ただ、このような議論がされている中で肥薩線に関して200億円以上の復旧費用を拠出できるとする国交省の考え方にもまた疑問があります。先の通りほぼ地元利用が期待できない、本来ならばこういう路線こそ議論の中にあって「どう地域の足として移行していくのか」を考えなければならないようにも見えます。どう考えても観光需要だけで収支は合わないわけですから。
北海道は一足早く2015年にJR北海道が「当社単独では維持することが困難な線区について」を公開、5区間を「鉄道より他の交通機関が適して」「バス等への転換についてのご相談を継続」として既に3区間を廃止しています。そして8区間を「当社単独では維持することが困難」「国の既存の支援制度等を活用」「地域の皆様などにより新たな仕組みを作り」「維持」していくとしています。それに対して7年経った今、8線区に対して直接的な自治体の支援はなく、アリバイ的な「アクションプラン」で濁している状態です。アクションプランの内容を見てわかるとおり、直接的に鉄道会社の支援になっているようなものは少なく、これを見せられている本州自治体が簡単に「自分たちが負担して」の路線維持を望むのは難しいとも思えます。非常に「悪しき例」になっているように私個人は思うのです。
地域で道路は改良され、バスには国や自治体の支援が行われ、鉄道は古いまま、何の改良もされず細々と割り引かれた運賃で高校生を運び、廃止となると大騒ぎされる。これが毎度の現状であります。地域は必要性一つ禄に回答できない状態で(他人の金で)維持を言う状態が続きます。
7月にどのような形でこれが結論となるかはわかりませんが、今後表示上は「鉄道」の形をしたバスなども含めた変化は起きていくでしょう。都市と地方の対決にしてはなりませんが、都市部の懐をアテにされるとそのような反発が出ましょう。新幹線の運賃値上げでで誰も乗らない田舎の鉄道を残すべきだって意見に賛同してくれる可能性は大きくない。
今後JR路線での上下分離の先例が相次いで開業します。その例に乗って行くのか否か、これが全国的に報道されていくと、「金を出さない地域は廃止」という厳しい現実が可視化されます。そのときにどう考えるのかですね。