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JR北海道のホーム高さと、列車のステップ

2022/07/21

普段何気なく列車の乗り降りをするホーム。
この「何気なく」と思っているのは、多分その段差にあまり固執する必要のない健康な方と言えましょう。
幼い子供を連れていてホームと列車の隙間に怖がられ泣かれた経験とか、ホームと列車の段差が膝にくるという方もおられましょう。


旧国鉄はレール面からのホームの高さを規定していました。
首都圏や関西圏の通勤電車が発着するホームは1,100mm
地方部の一般的なホームは920mm
そして、1966年にこの規定が改正される前。多くの地方路線では760mmという低いホームが原則的であったという時代を経ています。
この760mmという高さのホーム。現在でも数こそは少なくなりましたがJR北海道だけでなく、全国の地方路線でまだ見ることができます。

JR北海道では、基本的に920mmのホーム高を採用しています。しかし、最近であっても760mmのホームは珍しくなく、主要駅でもその高さで残る駅があります。

 札幌駅11番ホーム工事現場。線路面から920mmの高さのホームが設置される
札幌駅11番ホーム工事現場。線路面から920mmの高さのホームが設置される
 幕別駅のホームは線路面から760mmの高さのまま残る
幕別駅のホームは線路面から760mmの高さのまま残る
ホームの高さは、列車そのものの床の高さに対しての意味を持ちます。つまり、列車の床面まで登るためのステップを車両に装備しなければ列車に乗るための段差が非常に高くなり、運動能力に障害がある方だけでなく、一般の旅客でも乗り降りが難しいということになってしまうわけですね。


JR北海道で運行されている列車の床面高さを列挙しましょう。
まず、札幌圏で使用されている電車です。

●711系

 岩見沢市に保存されている711系電車
岩見沢市に保存されている711系電車
以前札幌圏で走っていた711系電車は断熱問題や特殊な構造により一般的な本州向け車両や気動車列車より床面を高くしていました。このためステップから床面までの高さが33cmと非常に高く、混雑が激しい列車ですとデッキで踏み外さないかヒヤヒヤした車両でもあります。
・床面高さ 1,300mm(ステップ面との差330mm)
・ステップ面高さ 970mm(ホーム面との差50mm)
711系は2015年に全ての運用を終了し、その後はステップ高が30cmを越える車両は北海道では運用されていません。

●721系

 721系電車
721系電車
 ホームからの段差(小樽駅)
ホームからの段差(小樽駅)
民営化直後に導入された721系は床面を711系より低くすることでステップの段差を低くしました。また、ホーム面が920mmである路線以外での使用がほぼありませんのでステップ面を高くし、ホーム面から2段で乗降する形としました。
・床面高さ 1,200mm(ステップ面との差180mm)
・ステップ面高さ 1,020mm(ホーム面との差100mm)

●731系

 731系ホームからの段差(札幌駅)
731系ホームからの段差(札幌駅)
 731系のドア部分(札幌駅)
731系のドア部分(札幌駅)
JR北海道が1996年から導入したオールロングシートの731系はさらに低床化を行うために車輪経を810mm(従来車は860mm)とし、721系と同様のステップ高としながらステップ面を下げることに成功しています。
・床面高さ 1,150mm(ステップ面との差180mm)
・ステップ面高さ 970mm(ホーム面との差50mm)

●733系・735系

 733系ホームからの段差(小樽駅)
733系ホームからの段差(小樽駅)
 733系ホームからの段差(新千歳空港駅)
733系ホームからの段差(新千歳空港駅)
 735系(左)と733系(右)
735系(左)と733系(右)
JR北海道が2010年に導入した735系は試作要素の大きい車両で、2編成しか作られませんでしたが、その中でも従来車との大きな変更は床面高さのさらなる低床化でした。731系に続き810mmの小径車輪を採用した上でさらに台車にも低床化の加工を施しています。
床面高さは1,050mmとなり、ホームとの段差が13cmまで縮まったこともありステップを廃止しています。2012年から導入を始めた733系でもこれが踏襲されています。
・床面高さ 1,050mm(ホーム面との差130mm)


地方で使用される気動車です。

●キハ40・キハ54・キハ150

 キハ54形ホームからの段差(釧路駅)
キハ54形ホームからの段差(釧路駅)
 キハ40形ホームからの段差(網走駅)
キハ40形ホームからの段差(網走駅)
数は少なくなりましたが、今も地方の普通列車でよく見かけるキハ40形をはじめとする従来型気動車です。
ホームが920mmである札幌圏の駅などならステップまでの段差は5cm、しかし、そこから床面までは27cmの段差を越える必要があります。(これでも以前の急行形気動車などよりは少し床面が低い)
なお、ホームが760mmの場合、ステップ面まで21cmの段差を越えて、さらに床面まで2段で登る形になります。昇る時は手すりをつかめますが、降りる際は手すりが体の後ろの車体部になるわけですから、ちょっと怖いと思う方もおられましょう。
・床面高さ 1,240mm(ステップ面との差270mm)
・ステップ面高さ 970mm(ホーム面との差50mm)

●H100

 H100形ホームからの段差(釧路駅)
H100形ホームからの段差(釧路駅)
 H100形ホームからの段差(倶知安駅旧ホーム)
H100形ホームからの段差(倶知安駅旧ホーム)
北海道で導入が進む新型電気式気動車です。車内には車いすスペースや車いす対応のトイレも完備しておりこれからのスタンダードとなりそうです。
車両の床下はエンジンや変速機などの重要な機器があり低床化が難しい要因でありました。エンジンの小型化と電車同様のモーターで走行するシステムを導入し低床化を実現しています。
・床面高さ 1,150mm(ステップ面との差180mm)
・ステップ面高さ 970mm(ホーム面との差50mm)
ステップの段差が低くなり、乗り降りしやすくなりました。ステップから床面が18cmなのは最近のJR北海道の車両では標準的です。また、760mmのホームからでも乗降が可能となっています。床面高さが従来車より9cm引き下げられています。


気動車特急車両を見てみます

●キハ183系

 キハ183形ホームからの段差(網走駅)
キハ183形ホームからの段差(網走駅)
すでに石北線の特急オホーツク・大雪で運行され、来年3月改正での引退が発表になっているキハ183系です。ちなみにグリーン車はハイデッカーですので、ドア部分も少し高くなっておりステップが2段になっています。
・床面高さ 1,250mm(ステップ面との差280mm)
・ステップ面高さ 970mm(ホーム面との差50mm)

●キハ281系・キハ283系

 キハ283形ホームからの段差(札幌駅)
キハ283形ホームからの段差(札幌駅)
 キハ283形ホームからの段差(函館駅)
キハ283形ホームからの段差(函館駅)
1992年から導入され、特急北斗で運行されている振り子気動車キハ281と、特急おおぞらで使われていたキハ283です。低重心を実現するために車輪径を810mmとし、床面を1,150mmとしています。ステップを排しましたので若干ホーム面との高さの差はあるものの、ステップがない分デッキが広く乗り降りしやすいともいえます。
・床面高さ 1,150mm(ホーム面との差230mm)

●キハ261系

 キハ261形ホームからの段差(帯広駅)
キハ261形ホームからの段差(帯広駅)
 キハ261形ホームからの段差(新夕張駅)
キハ261形ホームからの段差(新夕張駅)
ワタシの調べる限りキハ261の図面が見当たらないので、731系・キハ201系と同じであるとして記載します。(見た目や利用感では多分この寸法で間違いないように思う)
・床面高さ 1,150mm(ステップ面との差180mm)
・ステップ面高さ 970mm(ホーム面との差50mm)


駅ホームのかさ上げ

さて、これらの車両、ホームとの差を920mmの高さのホームと想定していますが、現実には760mmのホームを持つ駅は今も少なくありません。仮にですがステップのない733系ですと29cm、キハ281・283系ですと39cmと、ちょっと簡単に乗降できないほどの差になってしまいます。
JR北海道は国鉄時代から主要駅のホームのかさ上げを行ってきています。しかし、今のところ全駅とまでは完了していません。

乗降客に優しい駅へ ホーム改修で段差解消 富良野駅
1995/06/12 北海道新聞夕刊 富良野面
> 【富良野】JR富良野駅で、列車の乗降を容易にするホームのかさ上げ改修工事が行われている。
 近年の車両は乗降口のステップが高くホームとの段差が大きいため、お年寄りや子どもにとっては乗り降りが大変だった。
 JR北海道では五月上旬から、同駅の富良野線と根室線の二つのホームの改修に着手。完成すると約百三十メートル、百十メートルの二つのホームのほぼ全体が約二十五センチ高くなり、一番下のステップとの段差はほぼ解消されるという。


富良野線が改良されたのは1995年のことです。それまでは低いホームでありました。今ノロッコ号などで見る限りホームの段差はかなり解消されていますが、根室線ホームは少し段差が大きく見えます。

 富良野駅2番ホーム
富良野駅2番ホーム
 富良野駅5番ホーム
富良野駅5番ホーム


乗り降りしやすい構内に 改良工事に着手 JR根室駅
1997/10/22 北海道新聞 釧路・根室面
> 【根室】人に優しい駅を目指します-。JR根室駅(島純一駅長)は列車とホームの段差を解消するなど駅舎改良に着手した。同駅の乗降客は近年、都市間バスや乗用車に押され気味だが、改良で乗降客減少に歯止めをかけたいと意気込んでいる。
 同駅では現在、列車とホームの段差が二十六センチもあり、高齢者などから「怖くて乗り降りしにくい」という指摘が強くあった。このため、ホーム五十メートル分(列車二両分)のかさ上げ工事を始めた。
> 同駅乗降客数は昨年で約十八万二千人。JR移行後のピークだった一九八八年の二十二万四千人から減少の一途。島駅長は「当駅の乗降客規模でこれだけの改良に取り掛かるのはJR北海道として例がない。工事で不便をかけるが、お客に喜んでもらえる駅になります」と話している。


ローカル駅でも改良工事を進めていることも新聞は伝えます。ただし地方面ですから札幌圏の方や道新の上層部の方は読まないのでしょう。

 根室駅ホーム
根室駅ホーム


池田駅ホーム段差改善 乗客「乗り降りしやすい」
2016/11/07 北海道新聞 帯広・十勝面
> 【池田】JR北海道は、池田駅の1番線の改良工事を終え、6日からホームの利用を再開した。車両の床と1番線ホームとの大きな段差は改善され、乗客からも好評だ。
 同駅の1番線は駅舎に面しており、ホームの長さは205メートル。普通列車数本を除く全列車が発着していたが、特に特急車両の床とホームとの段差が大きく、冬は乗降の際に段差で転倒する人も多かった。
 10月から始まった改良工事は、同社が枕木をコンクリート製に取り換えるのに合わせて実施。段差は最大37センチあったが、線路の路盤を約20センチ掘り下げた。またホームのかさ上げ部分もなだらかに改良した。


そして、個人的にもいつまでも低いホームのままだったなぁと早期改善を思っていたのですが、池田駅のホーム改良は2016年まで待たなければなりませんでした。
そして、この駅を発着する特急列車は特急おおぞら(当時のスーパーおおぞら)で、キハ283系で運行されていました。先ほども触れていましたが低床化されている車両とはいえステップを排していますので、最大で39cm(新聞記事では37cmとしている)の段差が発生していました。

 池田駅ホーム
池田駅ホーム
 池田駅ホーム
池田駅ホーム
現在は特急車両がキハ261に変更されましたし、普通列車車両もH100形になっています。車両のステップはほぼホーム面と変わらず、乗降はかなり楽になったと思われます。

JR北海道は2023年3月改正から石北線特急へのキハ283系導入を発表しました。主に特急が利用する網走駅1番ホーム、北見駅1番ホームなどはホームのかさ上げ工事が終了しておりますが、遠軽駅、上川駅などは低いままです。今のところ工事は行われていませんが、特急が発着する1番ホームのみかさ上げ工事が行われるのではないかと予想いたします。
 上川駅1番ホーム
上川駅1番ホーム
 遠軽駅1番ホーム
遠軽駅1番ホーム

普通列車しか発着しないホームに関しては車両側がステップがあることもあり、早急な対処は必要ではないという判断もあろうかと思いますが、移動制約者を考えると少しづつでも対処して欲しいなと思うところです。電化区間で現状はステップありの721系が運行される区間でも低いホームの駅があり、将来的に733系などが運行される場合に段差が大きくなります(積雪時の臨時運行は行われたことがあるはずです)
 奈井江駅3番ホームと、対向の1,2番ホーム
奈井江駅3番ホームと、対向の1,2番ホーム
 奈井江駅3番ホーム
奈井江駅3番ホーム
とはいえ、ホームのかさ上げも既存の駅舎との間に段差を設けては本末転倒ですので、約16cmとはいえ簡単なものではないのでしょう。こういう面に何らかのバリアフリー的施策が入るといいなと思うのです。

北海道の交通関係 JR北海道 バリアフリー

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