北海道の交通関係


北海道の交通関係サイト終了のお知らせ

当サイトは終了することといたしました。本件に関しましては以下をご確認ください。
当サイトは2023年12月末で閉鎖することといたしました


「第4次廃止対象路線」ではないが、1000人だけが一人歩きする「地方鉄道のあり方」

2022/07/26

ここ数日ニュースや新聞報道で「1000人」という言葉をよく見かけたと思います。
NHKの7月25日ニュース7ではかなり多くの時間を割いてこの報道を行いました。

NHK 地方鉄道“JR輸送密度1000人未満区間バス転換含め協議を”
2022年07月25日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220725/k10013734501000.html


この記事が非常にボリュームがあり良くまとまっていると思いますので紹介しますが、その前に実際に国土交通省で行われたこの「検討会」が何か?というのをはっきりさせておかなければなりません。当サイトでも以前に紹介しており、「7月には提言書がまとめられることになっています。」と書いております、この検討会が第5回まで行われ、とりまとめた提言書が報告されたのですね。

2022/05/24 コロナ後の地方路線、上下分離で維持できるか、廃線を受け入れるのか
https://traffic.north-tt.com/09_article.php?article=1138



では、国土交通省サイトを見てみましょう。検討会については以下のサイトで議事録などが公開されています。

国土交通省 鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会について
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk5_000011.html


第1回、第2回は以前サイトでも紹介していますが再度簡単におさらいしておきます。
●第1回(2022年2月14日)
まず、開催趣旨としてローカル鉄道の危機的な状況と、それに対する国の政策を検討するとしています。第1回はまず鉄道事業者からのヒアリングが行われました。
・ローカル鉄道を取り巻く状況
・鉄道と沿線自治体の協力・協働による取組例(成功事例の紹介)
・鉄道事業者よりヒアリングを実施
JR東日本、JR西日本、近江鉄道が説明を行っています。

●第2回(2022年3月3日)
第2回では自治体のヒアリングとして
滋賀県、広島県の説明と都道府県に対するアンケート調査についての資料が公開されています。

●第3回(2022年4月18日)
第3回では事業者、自治体へのヒアリングを踏まえた論点の整理が行われています。
ここまでは当サイトの前の記事の中で触れています。

●第4回(2022年5月13日)
さて、第4回は資料がほぼなく、議事概要です。もうある程度委員やオブザーバから意見は聞いたからまとめますねという段階です。その中で何度も「廃止前提ではない」という表現が出てきます。廃止を議論するのではなく、本当に鉄道が利便が高いのであれば鉄道をより利便の高い状態にすることを考える。しかし、鉄道が駅位置は走行経路も含めて不便なのだったら思い切って利便の高い他の手段に変えていくのだということをとかく強調します。
当たり前ですが、廃線前提会議となれば結局自治体は限界まで協議に参加しない「逃げ得」になってしまうからです。

●第5回(2022年7月25日)
まだ議事要旨が公開されていませんが提言書が公開されました。かなりボリュームがありますので、これを一つ一つ見ていきましょう。

鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会の提言
・要旨
https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001492228.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20220726_01.pdf
・提言本文
https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001492230.pdf
(見ることができない場合)
https://traffic.north-tt.com/txt/20220726_02.pdf



鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会の提言

概要から見てみましょう。
まず大事なのは、国鉄改革から35年が経過して状況が変わっていることの確認です。国鉄改革以降航空、新幹線鉄道、高速道路などのインフラ投資が進んでおり、過去の設備のままで運行されている鉄道が相対的に競争力を失ったこと。そしてコロナ渦でのパーソナルな移動により公共交通機関が忌憚され、今まで都市部の収入で地方の路線維持を行っていた内部的な融通が難しくなったことが背景にあります。
そして、「特急・貨物列車の走行線区」はJRによる維持を強く期待と輸送密度だけにとらわれずに安易な廃線協議を行うことに釘を刺しています。
 状況の変化・今後の方向性
状況の変化・今後の方向性
そして「鉄道を維持する場合」は「徹底的な活用」を求めます。残ったからこれでいいのだと沿線が何もしないことを牽制します。

そして協議自体を否定しているわけではありませんから特急・貨物運行線区も「沿線とJRの協議による活性化」は進める形になります。
 線区の分類、協議入りの基準に係る基本的な考え方
線区の分類、協議入りの基準に係る基本的な考え方
そして「発議」するのは「沿線自治体(特に都道府県)」としています。こちらが大事で、鉄道事業者や国が「特定線区再協議協議会」を設置するというのはむしろ「異例」ということがわかります。
この「特定線区再協議協議会」は「対策を講じることが必要」という
・輸送密度1000人未満
・ピーク時の1時間あたり輸送人員500人未満
という目安が決められます。この1000人未満を報道は大きく報じたわけです。



それでは、詳しい中身を見ていきましょう。
「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言 ~地域戦略の中でどう活かし、どう刷新するか~」
と銘打った69ページにもわたるものです。表紙はJR九州の観光列車などのデザインをされるドーンデザイン研究所のものです。
まずジャブを打ったなと思うのが


「特にJR旅客各社のローカル線区については、1987 年の国鉄の分割民営化以降、新幹線や都市部の路線、関連事業等で得た利益からの内部補助により支えられてきており、国鉄改革から35 年間もの月日を経た今まで、利用者の減少を主たる理由として廃止に至ることは、比較的抑えられてきたと言える。他方で、結果的に、国や地方自治体は、この間の各線区の利用状況や経営状況の変化について「自分ごと」として強い危機感を抱くことなく、有効な手立てを打ってこなかったのではないか。」


です。国鉄廃止線以下の状況になっていても、全くそれを無視して、廃止にならないと高をくくっていた、自分たちのことと理解していなかった沿線に辛らつな言葉として投げかけます。

前段の説明内に、国鉄改革法における「幹線・地方交通線の線区区分の考え方」があります。

 幹線・地方交通線の線区区分の考え方
幹線・地方交通線の線区区分の考え方
当時の国鉄路線のうち、廃止対象となったのは輸送密度4000未満であり83線が廃止されています。そして、このときに4000未満でありながら
・最混雑時片道1000人以上
・代替輸送道路未整備(積雪などの不通含む)
・平均乗車距離30キロ以上、かつ、輸送密度1000以上
は対象とはなりませんでした。実際の所北海道内の多くの路線はこの考え方で生き残ってしまいました。もちろん生き残ったのは喜ばしいことですが、現実に非常に閑散な路線が「路線名称」の綾で生き残ったのです。
JR化後の廃線路線は輸送密度の非常に低い、当時の基準ならば廃線を余儀なくされる路線であったということです。
このあたりも含め、基本的な内容なので、前段の部分は文章が多いとは思いますが、興味をもつならば抑えておきたいものです。

また、交通政策基本法及び地域公共交通活性化再生法の制定・改正として、国と自治体、交通事業者の役割を制定したのもそれほど昔のことではありません。令和2年以降は地域公共交通網形成計画を「努力義務」としていますので、今の段階でそんなもの知らないという自治体は本来いないはずです。網計画は残念ながら北海道内ではあまり積極的ではなく令和3年5月の時点で46自治体に留まります。
 地域公共交通計画の作成状況一覧(令和3年5月末時点)
地域公共交通計画の作成状況一覧(令和3年5月末時点)
さらに、その計画内にJRが関わったことについて


「ただし、JR各社については、これまで247 件の地域公共交通計画に係る協議会に参画しているが、ローカル線区の在り方について正面から取り上げられた事例は一件もなく、あくまで当該線区の存在を前提に、その利用促進に関する取組みや、駅に接続するバス等の交通の在り方について検討しているという実態がみられる」


としています。


この提言の肝になるのが28ページからの「今後取り組むべき方向性」です。

今後取り組むべき方向性

改めて「交通政策基本法」から各立場がやらなければならないことを列挙します。


① 国・地方自治体・鉄道事業者の責務
交通政策に関する関係者の責務については、交通政策基本法において、
・ 国は、国民生活の確保、活発な交流等の交通施策の基本理念にのっとり、交通施策を総合的に策定、実施する。
・ 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえ、区域内の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定、実施する。
・ 交通事業者は、業務を適切に行うとともに、国・地方自治体が実施する交通施策に協力するよう努める。また、その業務の正確かつ適切な情報の提供に努める。
とされている(交通政策基本法第8条~第10 条)。


そして、本来はそのような協議は「都道府県が中心」となって設置するべきとします。

しかし、都道府県、沿線自治体がそれを丸無視したならば、


 そのため、ローカル鉄道については、地域公共交通活性化再生法の既存のスキームに加え、新たに、国の主体的な関与により、都道府県を含む沿線自治体、鉄道事業者等の関係者からなる協議会(特定線区再構築協議会(仮称))を設置し、「廃止ありき」「存続ありき」といった前提を置かずに協議する枠組みを創設することが適当で
ある。
具体的には、以下のa)及びb)の要件を満たす線区(=「特定線区」)について、鉄道事業者又は沿線自治体の要請を受けて、新たに協議会を設置するというものである(自治体との連携が比較的取りやすい第三セクター鉄道線区は除く。)。

a) 利用者の著しい減少等を背景に、利便性及び持続可能性が損なわれている、又は損なわれるおそれがあり、対策を講じることが必要(JR各社のローカル線区については、当面は、対象線区における平常時の輸送密度が1,000 人(国鉄再建特措法に基づく旧国鉄のバス転換の基準4,000 人の4分の1の水準)を下回っていること
(ただし、利用状況を精査した結果、隣接する駅の間のいずれかの区間において一方向に係る1時間当たりの最大旅客輸送人員が500 人(大型バス(50 人乗り)10台以上の需要に相当)以上の場合を除く。)を一つの目安としつつ、より厳しい状況にある線区から優先順位を付けながら総合的に判断。)と認められること

b) 複数の自治体や経済圏・生活圏に跨る等の事情から、関係者の合意形成にあたって広域的な調整が必要(そうした事情の有無については関係自治体及び鉄道事業者の意見を聞いて総合的に判断。)と認められること

なお、対象線区の設定にあたっては、旅客の利用実態、輸送の実態等に基づき、当該区間を他の区間から独立して協議の対象とすることについて合理的な理由があることを確認することとする。


国の主体的な関与により「特定線区再構築協議会(仮称)」を設置し「存続ありき」を前提にせずに協議すべしとします。

そして「特定線区再構築協議会」は先行事例を参考としながら


・ 地域戦略と利用者の視点に立った鉄道の徹底的な活用と競争力の回復(運営経費の削減を図りつつ、利便性を向上)に向け、鉄道輸送の高度化に取り組んでいく
・ BRT・バス等を導入し、運営経費を削減しつつ、増便、ルート変更、バス停の新設等により、鉄道と同等又はそれ以上の利便性を実現していく


実質的な廃線協議を行いなさいなというふうに読めるわけです。むしろ、鉄道のままでは維持し続けられないのだから他の方法に切り替えて、事例見てちゃんと考えなさいなということを隠さないということです。

そして、その設置に「期限」を儲けました。


④ 特定線区再構築協議会等の設置期限
特定線区再構築協議会における検討には、地域公共交通としての利便性と持続可能性を早急に改善する観点から、合理的な期限を設けるべきである。
具体的には、実証事業を行う場合も含めて、協議開始後、最長でも3年以内に、沿線自治体と鉄道事業者が合意の上、対策を決定すべきである。なお、対策を決定した後も、これを引き継ぐ法定協議会等において、当該対策が具体化され、速やかに実現されるよう、関係者の連携を継続すべきである。
沿線自治体が法定協議会又は任意の協議会を立ち上げる場合も、これに準じた合理的な検討期限を設定することが望ましい。


最長でも3年。要は、4年の自治体首長任期のうちに、また、遅くとも次の自治体首長が必ず関与しなければならないということです。逃げ得は許さないということですね。

さて、当然にこれを行うメリットが鉄道会社側にも自治体側にも必要です。国は支援として増便実験などへの必要経費、また、BRT、バス転換などにおける「頑張っている地域」に支援することを考えていると。そして、BRTには「特定BRT」という新たな要件を定義しています。


※「特定BRT」の要件例:
・鉄道事業者が自ら運行するか、運行に対して同様の強い関与を行うこと
・鉄道乗り継ぎ駅における乗り継ぎの利便性が確保されていること
(駅構内乗り入れによるホームでの対面乗換の実現など)
・鉄道と同等の運賃水準、鉄道との通し運賃が設定されていること
・デジタル技術等の新技術を活用して定時性・速達性が確保されていること
・鉄道と同等又はそれ以上の便数の実現や、バス停の新設、高校・病院等への立ち寄りなどにより、総合的に鉄道が運行していた時と比較して利便性が向上していること
・時刻表に引き続き鉄道路線に準じる形で掲載されること
・社会環境の変化等がない限り、長期にわたる運行が行われること
・法定協議会で地域公共交通計画を作成し、本事業が位置づけられていること


つまり「モニュメントとしての鉄道」という意味での廃線拒否はできないってことです。時刻表などに「鉄道路線に準じる」形で掲載されるならば使わないけど旗竿印が必要なんだという自治体を黙らせたいという意識が非常に強く見えます。

さて、事例集として、北海道では北海道高速鉄道開発による観光列車用車両の無償貸与と日高線・石勝線夕張支線バス化の例を「良い例」として取り上げていることになります。

 鉄道車両の購入支援:JR北海道の例
鉄道車両の購入支援:JR北海道の例
 日高線・石勝線夕張支線バス化の例
日高線・石勝線夕張支線バス化の例
特にバス転換例は地元メディアが評価しない形での報道を行いますが、逆を言えば国からは非常に評価が高い事業であったと思われている(そういう事例を今後も増やしたい)と思われているわけです。
また、駅の活性化事例として川湯温泉、栗山、日高門別を取り上げます。
 外部資源を活用した駅の活性化の事例
外部資源を活用した駅の活性化の事例

少し長いものですし、これが決定して今後行われるわけではないとはいえ、国土交通省はとかく危機感が高くこれを実現しなければならないと思っていることに間違いはありません。

特に第3回で名古屋大学加藤教授の発言


「自治体さんには、協議会を開くと廃線への道ができるから開かないようにしているところがあります。それは非常にバカで、そうじゃなくて、自分たちからこの鉄道を良くしていくために協議会を開いて、もう非常に大っぴらに活発に議論したらいいじゃないですか。」


加藤教授にバカ呼ばわりされている、結果的にゴネ得した自治体が北海道でも目立った。そこには実際の地域の住民の足なんかどうでも良くて、自分たちが考えるのが面倒、人材もいない、金もリソースも出す気がないと結局バスについてまでJRが考え、ダイヤがどうのと文句だけ一人前だった路線を見てますから、後に続く自治体も面倒なことは自分たちが一切やらず、金も出さないで立派なバス路線にして「バスで不便になりました!」ってマスコミに言い続けるのが楽という考えを、とかくやめさせたい。そういう想いがありそうです。

実際はこれから先地域に住み続け、子供が通学し、親も通院に使うであろう住民が結果不便なままで、そんな町にいつまで住んで貰えるんでしょうかと言う話です。自治体が目先の金が出て行かないことが大事というのは承知しますが、自分の任期中なんとか逃げられればいいという考え方を根底から崩すように逃げ道を塞いだ感があります。

これは、JR東日本が


「平均通過人員や、路線別の収入については、だいぶ前から年度ごとに細かく開示をさせていただいているのですが、自治体の方々も含めて、なかなか見ていただく機会が少ないというところもあります。そういった意味では、収支を出すと一気にインパクトが出てくる」


こう言わしめるって事です。自分の自治体について自治体そのものが興味がなさ過ぎる。だからこそ何らか工場が撤退するとか言われても突然とか言っちゃうわけです。鉄道だけでなく、自治体内の全体に興味がないでしょ?って話です。これでは、本当に地方の自治体が生き残れない。


報道

余談が過ぎました。もう一度先頭のNHK記事に戻って報道の中身を見てみましょう。あくまで私が見たニュースでは最もまとまっています。

地方鉄道“JR輸送密度1000人未満区間バス転換含め協議を”
2022年07月25日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220725/k10013734501000.html
>協議会での議論は路線の「存続」や「廃止」を前提とはしないものの、利便性や持続可能性の向上が見込まれる場合には、▽廃線によるバスやBRTなどへの転換や、▽自治体が線路や駅を保有し、鉄道会社が運行を担う「上下分離方式」など、運営方式の見直しも含めて検討するよう求めています。

ただ、輸送密度「1000人未満」の区間でも、通勤や通学の時間帯に利用が集中するケースを想定し、ピーク時1時間の乗客が、上り・下りのいずれかで500人を上回っている場合は対象から外すとしています。

また、▽特急列車が都道府県庁所在地など拠点都市をつなぐ区間や、▽貨物列車が重要な役割を果たす区間も対象としないということです。

そのうえで、協議を始めてから3年以内に自治体と鉄道事業者が合意の上、対策を決定すべきだとしています。


基本の部分です。実際には本来都道府県が設置しなければならない面をすっ飛ばしています。1000人未満は必ず協議しなければならないようにも読めますが、実際はそうでもなさそうです。ただし、自治体がそれを制御はできません。


鉄道を存続させることで合意した場合、利便性や競争力を向上させるため、新たな駅の設置や構内のバリアフリー化といった新たな施設の整備のほか、観光列車の導入などの新たな投資に対して国が財政面で支援を行うことをあげています。

一方、廃線してバスなどに転換することが決まった場合も、国が財政面で支援すべきだとしています。具体的には、新たにバスを購入するための費用や、バス専用道路の整備のほか、自治体と協力して運行費用を補助することなどをあげています。


これもきちっと中身を書いています。そして釘を刺すのも忘れてはいません。


今回の提言について、検討会の座長を務める東京女子大学の竹内健蔵教授は「どれだけ深刻な状況か客観的な物差しが必要なため、『1000人未満』という数字を目安の1つとして示したが、『1000人を超えたから安心だ』とか『1000人を下回ったから大変だ』という次元ではないことを理解してほしい。それぞれの地域にとっては第一歩でこれからが本番となるが、地域の議論をうまく進みやすくするためにも、国には全体の調整役として役割を果たしてもらいたい」と話しました。


協議の経緯にも触れています


これまでの議論の経緯は
検討会の議論は、ことし2月に始まりました。

<2月14日>
初会合では、有識者から「単に『鉄道を残す』ということではなく、地域の利便性を高めることが重要だ」とか「乗客が減っていて、このままの形で鉄道を維持することは非常に難しい」といった意見が出されました。

<3月3日>
2回目の検討会では、赤字経営の続く鉄道が通る自治体へのヒアリングが行われ、この中で、広島県の湯崎知事は「一部のローカル線の収支のみを問題視することは地方の切り捨てに直結する。新幹線や特急で訪れる観光客を中山間地に呼び込むためにはすべての路線を維持することが重要だ」などと主張しました。
こうした中、JR西日本は、ことし4月11日、人口減少に加え、コロナ禍で利用者が特に少なくなっている地方路線の30の線区について個別の収支を初めて公表しました。
30の線区、すべてで赤字となっていて、会社は、バス路線への転換なども含め沿線自治体などと今後のあり方の議論を進めたいとしました。

<4月18日>
このあと3回目の検討会では、有識者から、地方の赤字路線についてこれまで議論を避けてきたとして「今回議論しなければ鉄道が大変なことになる」、「路線をこのまますべて残すことは次の世代に無責任になる」といった意見が上がりました。
そのうえで、有識者からは鉄道事業者側が厳しい経営事情を示したうえで、沿線自治体側からも地域での鉄道の必要性について丁寧に意見を聞き取り、路線を維持すべきか、廃線やバスなどへの転換を図るべきか、議論していくべきだという意見が出されました。

<5月13日>
そして前回、4回目の検討会では、有識者から鉄道路線の維持について「なぜ地域に鉄道が必要か」理由を明確にできるかどうかが今後の論点になるという認識が示され、事業者と自治体の双方が問題意識を共有して協議していくためにも、国が積極的に関わっていくべきだとする意見が出されました。


本当に時間を割けることがNHKのいいところです。経緯が見えることが重要なことです。これは提言書だけを読んでも出てきません。
そして芸備線沿線、日南線沿線、鳥取県平井知事、JR西日本倉坂氏のインタビューの他、北海道では日高線についてかなり大きく割きました。申し訳ないのですが、NHK記事は見えなくなってしまうので、このあたりを全文貼ります。


北海道 JR日高線 “廃線でバス転換”
赤字が続く地方路線が廃線になった場合、懸念されるのが、利便性の低下やにぎわいの喪失です。
こうした中、バスに転換したあとも、鉄道会社が利便性向上のために協力を続けているのが北海道のJR日高線です。

苫小牧市と様似町の間のおよそ150キロを結ぶJR日高線は、80年以上にわたって地域の公共交通を支え、観光客にも人気の路線でした。しかし、2015年の高波などの被害で、全線のおよそ8割にあたる鵡川と様似の間で運休を余儀なくされ、バスによる代行運転が行われてきました。厳しい経営が続くJR北海道は、復旧費用が86億円に上るという試算を示したうえで、復旧の条件として、年間の維持費16億4000万円のうち、13億4000万円を沿線の7つの自治体で負担するよう求めました。自治体側は「負担が重すぎる」として拒否。
JR北海道は毎年10億円を超える赤字が見込まれる中、路線の維持は困難だとして復旧を断念し「鉄道を廃止してバスに転換する」という意向を示しました。

その後、沿線の7つの自治体と廃線にすることで合意し、去年4月、バスに転換しました。現在、ジェイ・アール北海道バスと道南バスの2つのバス事業者が運行していますが、住民からは鉄道の廃止を惜しむ声も少なくありません。
住民の女性は「鉄道が長年、身近な存在だったのでなくなって寂しいし、札幌や苫小牧など遠くまで移動することも減りました」と話していました。
鉄道を廃線にしてバスに転換するにあたり、重視したのは、バスの特性を生かした柔軟な運行ルートの設定です。新ひだか町にある静内高校では、およそ3割にあたる150人余りの生徒がバスで通学しています。鉄道を使って通学する場合、最寄りの駅から15分ほど歩く必要がありましたが、運行ルートを変えて学校の前にバス停を設けたことで以前より便利になったといいます。
バス通学をする生徒たちからは「すぐに学校に行けるのでありがたい」とか、「バスは快適です」など好意的な意見が聞かれました。
また、車の運転が難しくなる高齢者などの需要を取り込もうと大型スーパーや病院の近くにもバス停を設けました。

JRからの支援金を使ってバリアフリー対応型のバスも導入しました。
こうしたバスの利便性の向上に一役買っているのが、鉄道を廃線にしたJR北海道です。廃線にしたあとも協力を続ける覚書を交わし、資本関係のない「道南バス」にも乗客のデータを引き継ぎ、運行ダイヤやルート設定についてもアドバイスしたといいます。今も定期的に打ち合わせを行っているということです。

ただ、新型コロナの影響が長引く中、バス転換後の利用者は当初見込んでいたほどには至っておらず、通学時間帯を除く、日中の利用者をどうやって増やすかが課題となっています。

北海道新ひだか町の柴田隆総務部長は「町や地元のバス会社だけで議論するより交通に関する、さまざまなノウハウもあるJRと一緒に議論を続けられる意義は大きいと思っています。災害もあり、最終的に鉄道廃線を迎えたが、もともと利用者が大きく減っていたのも事実で、これからさらに人口減少も加速する中で何か手を打っていかなければ、いずれバスも撤退しかねないという危機感があります。バス事業者に加え、JRとも連携しながら、引き続き、知恵を絞っていきたいです」と話していました。

JR北海道地域交通改革部の海原邦夫専任部長は「鉄道が廃線になったことで、地域の皆さんの移動の足がなくなり、困るようなことがあってはならないと思っています。鉄道事業者として地域の皆さんからいただいたデータやノウハウの蓄積もあるので少しでも利便性を高めていけるように引き続き、町などと連携していきたい」と話していました。


国土交通省もバス転換の「よい事例」と思ってるであろう日高線です。道内メディアが今まで全く触れてこなかったバス転換に対するJR北海道の関与についても割いています。廃線後も日高に関わるJR北海道。それは協議の中で触れられていたことでもありますが、頑なな態度だった首長に対し各自治体担当者はJR北海道とバス会社とともに協議を重ねバス転換の道筋と利便性の確保に取り組んだのであろうと見えるのです。
しつこいですが、道内メディア(道内のNHK記者ですら)これに触れないのはあまりにもダメです。全国記事のほうが詳しいってどうなってるんですか。(NHKはこの地域を取材する室蘭局の縮小で記者が札幌局に変わったのも大きいのかもしれません)


朝日新聞は提言の骨子としてまとめます。

乗客1000人未満、見直しの条件 JR5社に61路線100区間 有識者会議提言
2022年07月26日 朝日新聞 
https://www.asahi.com/articles/DA3S15368073.html
>■提言の骨子
 ・1キロあたり1日の平均乗客数(輸送密度)が1千人未満の路線について会社と自治体の協議を促す
 ・隣接駅間で1時間あたりの乗客が500人以上や主要な特急、貨物列車が走る路線は対象外
 ・廃線前提の協議にはしない。開始から3年以内に結論を出す
 ・バス転換やバス高速輸送システム(BRT)の導入を国が支援
 ・設備を自治体が保有し、鉄道会社が運行を請け負う「上下分離方式」も検討


また、2面でも大きく取り上げています。バス転換後も先行きが楽観できないと月形町町長の言葉でまとめにしています。実際に札沼線の沿線を走っていたバスを2003年に要らないと廃止している月形町が言うには「重い」ですね。

(時時刻刻)ローカル線、支え限界 JR、コロナで乗客減 国「廃線ありきでない」
2022年07月26日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/DA3S15368119.html
> バス転換したところも先行きは楽観できない。
 JR北海道は16年、輸送密度が2千人未満の10路線13区間を「単独では維持困難」とした。利用者が特に少ない5区間について自治体と協議。これまでに3区間をバス転換した。20年5月に廃止されたJR札沼線の一部区間では代替バスを走らせているが、利用者は伸び悩む。運行の中心となる月形町によると、21年度の町内における利用者は平日で1日あたり41人。札沼線の旧区間の町内利用者142人を大きく下回る。
 月形町の上坂隆一町長は「このままではやがて維持できなくなる。地域の公共交通はやはり国が支えてほしい」と訴える。



北海道新聞は本来地元事であることをわかっているかいないか、廃線圧力と国批判に終始した記事になりました。さらに分割民営化まで批判を混ぜています。ちゃんと読んで書いているはずなのに、書いていない行間をクローズアップする報道は「報道」ではなくて「捏造」です。

<フォーカス>国交省有識者会議 赤字線区 協議会設置へ 道内も「議論加速を」
2022年07月26日 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/710145
>  経営が厳しい地方鉄道の存廃を国主導で協議することになった。ただ乗客を増やし、鉄路を維持するのは容易ではない。廃線圧力が高まれば、自治体が反発を強める可能性もあり、事業者との対話が進むかどうかは見通せない。各地では、地域交通の再編を模索する動きも活発化している。
 「貴重な移動手段がなくなれば、地域の衰退が加速する」。国土交通省の有識者検討会のヒアリングで採算重視の切り捨てにくぎを刺していた広島県。湯崎英彦知事は25日、「輸送密度千人未満」など存廃協議の目安について「いかにも廃止を目的としたものに見える」と懸念を示した。



当サイト管理者は、鉄道が好き、バスが好きというマニアよりも。自分の経験上でも高校通学、社会人になって通勤、所用での公共交通機関利用。それがいつまでも続くことが大事であると考えています。バスになったら廃止になるから鉄道がいいなんて都合のいいことはもはやありません。必要ではないところは鉄道もバスは走れません。そしてバスよりも大量の人員と設備管理が必要な鉄道が輸送密度1000だから大丈夫なんてわけがないのです。そこに都市部の利用者の金をつぎ込むあらたな「地方利権」にしてもいけません。

空港も高速道路も欲しい、鉄道はおらは使わないが必要、そんなものが成り立つことはありません。自分たちが出せる金額、そのなかで最大限の利便。これを考えないと、その町に住めないのです。

 日高線代替バス
日高線代替バス

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