北海道の交通関係

小幌駅に行ってみました

2022/08/16

このようなサイトを運営していますが、JR北海道の全路線は一応は乗ってはいるものの、全駅に降り立ったことがあるとは言い切れませんし、他の方法であっても訪問したことのある駅というのは少ないものです。いつかは「全駅」とは思っていますが、まぁ、なかなか足が向かない路線なんかもありますしね。

たまたま仕事が洞爺でありまして、変な時間に終わってしまい、急いで帰る必要も無かったので、こんな機会でもなかったら行くことがないだろうと小幌駅を降りてきました。過去に降りたのはかなり昔で、その頃は今のような「観光」という話もありませんから、単なる変人であります。車掌さんに「本当に降りるの?」と言われるくらいであります。

 小幌までの往復乗車券は「話せる券売機」で購入できる
小幌までの往復乗車券は「話せる券売機」で購入できる
なお、今回は札幌-洞爺は特急往復でしたので、飛び出し区間の切符だけ別途購入しています。


小幌駅の成り立ち

小幌駅が当時単線の中、信号場として開設されたのがこの区間が開通した1928年より後、戦中の輸送力増強に追われた1943年(昭和18年)となります。1967年の室蘭線複線化で用途を失いましたが仮乗降場としての運用を続け、JR化後に駅昇格します。
マニアにはそこそこ有名だったこの駅は、地元には無視された存在でした。駅自体には道路でのアクセスができず、そんななかでも最盛期には11軒が付近で生活していたとされます。(元国鉄職員の証言として2011年道新掲載)2000年頃までは岩屋観音に付いての記事がいくつか検索できますが、当然に豊浦町としてもこの駅を利用する住民は皆無であり、その必要性は全く無かったのです。
2006年に長く休止されていた張碓駅が廃止された際に「秘境駅」として注目することになりますが、長くは続きません。私がこの駅に最初に降りたのもこの頃ではないかと思われますが、全く記憶が残っていないのです。

2009年には痛ましい心中事件が起きています。

長万部の海岸に女性と幼児遺体
2009/10/08 北海道新聞夕刊
> 【長万部】8日午前11時ごろ、渡島管内長万部町静狩の海岸で、女性と幼児の遺体があるのを、行方不明者捜索中の八雲署員らが発見した。心中の可能性もあるとみて身元を確認している。
 同署によると7日午後4時半ごろ、現場付近のJR小幌駅で「泣いている子を連れた女性が下車した」とJR北海道から警察に通報があり、町内からも「娘と子が外出して帰ってこない」と連絡を受け、同町内の女性(40)とその娘(5)ではないかとみて捜索を続けていた。


10月8日の日の入り時刻は札幌で17時頃です。夕方に降りる「家族連れ」なんているわけもなく、ワンマン運転士が「本当に降りるのか」を確認したとしてその決意は固かったのでしょう。当時のダイヤでは長万部方からの小幌到着が15:26、無線が使用できる大岸または有人駅の洞爺で通報したものとおもわれます。18時台、19時台に停車列車はあったであろうとは思いますが、警察もおいそれ近づけない場所であります。

「秘境駅」という「評価」について、無秩序に取り上げるマスコミに対して、JR北海道は警告を発しますが、多分多くの方はそれを無視しましょう。

<西いぶり鉄道物語>7 マニア訪れる秘境・小幌駅 陸の孤島 ひっそりと トンネルに挟まれた無人駅 付近には洞窟 観音像や鳥居 50センチの氷筍も
2011/02/15 北海道新聞 胆振面
> この秘境駅がなぜ生まれたのか。話は1943年(昭和18年)までさかのぼる。線路が単線だった当時、列車同士がすれ違うための信号所として設置された。複線化され、87年に駅になり、現在は保線作業の拠点となっている。洞爺湖町の元国鉄職員、加藤茂さん(83)は47年から同駅に勤務。線路の分岐ポイントを掃除する転轍(てんてつ)手や信号係として20年間働き続けた。
 加藤さんは当時、宿舎のあった礼文華地区から通った。小幌駅付近の海岸には漁師が住み、多い時は11軒の民家があったという。「小幌地区の子どもが急病になった時は、貨物列車を小幌駅に止めて乗せ、病院のある豊浦駅まで運んだこともあった。捕った魚を駅舎に持って来た漁師と一緒に食べることもあり、住民は強い連帯感で結ばれていた」と懐かしむ。
 鉄道ファンの人気を集めていることについて、JR北海道は「周辺に住民がいない駅という珍しさと、自然あふれる駅に新鮮さを感じるのでは」と話す。ただ「周囲に自動販売機や風雨をしのぐ家屋はまったくない。駅を訪れる時は、事前に計画を立ててほしい」と呼び掛けている。


そして、JR北海道は駅の廃止を検討します。

JR社長「マニアのため維持すべきか」 秘境・小幌駅 姿消す?
2015/07/18 北海道新聞
> 「マニアの方々のためにコストをかけて維持していくべきなのか」。JR北海道の島田修社長は17日、札幌市中央区の同社で開いた記者会見で、鉄道ファンから「日本一の秘境駅」と呼ばれて人気があるJR室蘭線小幌(こぼろ)駅(胆振管内豊浦町)について、廃止の可能性を示唆した。
 同社は数年間利用客ゼロだった無人駅の石北線金華(かねはな)駅(北見市)を廃止する意向が明らかになっている。島田社長は会見で、金華駅に関連して「(小幌駅は)保守が非常に困難。(廃止駅は)利用実績ゼロの場所に絞り込むことはない」と述べた。


そしてそれに対して、今までほぼ無視し続けた豊浦町が「マチの財産」と訴えますが、自分たちで維持するための金銭負担はしたくないという意思を表明します。
その間に北海道新聞は大岸駅まで車で行って小幌駅を往復したという老夫婦の投書を掲載しファンを笑わせます。

<読者の声>60年ぶり小幌駅に感動
2015/09/02 北海道新聞
主婦 XXXX 70
(日高管内新ひだか町)
> 先日、盆休みの主人と、隣の大岸駅まで車で行き、そこから汽車に乗って小幌の駅に降り立ちました。帰りの汽車まで50分です。
> これで最後という寂しさと、記事のおかげで小幌に来ることができた喜びと。60年前の私に、「来てよかったね」と語りかけました。


また豊浦町も、今まで観光客がと言いながら実態を一切見ていなかったことも恥ずかしくもなく記事にされます。

小幌駅核に観光振興を 豊浦町、町議ら視察 洞窟も
2015/09/13 北海道新聞 室蘭・胆振面
> 【豊浦】町と町議会が合同で12日に行ったJR室蘭線小幌(こぼろ)駅の視察は「日本一の秘境駅」として鉄道マニアらに人気のある駅を核とした観光振興の可能性を探るのが狙いだ。周辺の小幌洞窟などを見て回り、魅力を再確認した。
 視察には村井洋一町長や木村辰二議長ら約20人が参加。隣の礼文駅から乗車し、同日午前11時半すぎに小幌駅に降り立った。
>山道は1人がやっと通れる幅で海側が崖になった場所が続き、防護柵の必要性を指摘する参加者もいた。
 小幌駅を核にした観光振興を地方版総合戦略に組み込みたい村井町長は「豊浦はこれまで1次産業中心だったが、道の駅など町内の施設をトータルに結びつけ、観光産業を発展させたい」と強調した。


これをちゃんと記者を引き連れていくというのは、マスコミの使い方をよくわかってらっしゃる。ついでに鉄道に乗る区間を最小限にするのも、対決姿勢として清々しい。そして鉄道を使う距離を最小限にしたバスツアーまで企画。

秘境小幌駅を巡ろう 25日札幌発着ツアー 豊浦町が初企画
2015/10/03 北海道新聞
> JR以外で訪ねることが難しい小幌駅へは豊浦駅から普通列車で向かう。約4時間滞在し、徒歩で世界ジオパーク(大地の公園)の見どころであるジオサイトの一つ小幌洞窟などを見て回る。昼食は洞窟近くの海岸で地場産ホタテなどのバーベキューを味わう。


結果的に2016年から豊浦町は負担の上マニアから金を集める形での駅存続を行うことになります。

小幌駅管理に470万円 豊浦町予算案 警備や除雪など
2016/02/26 北海道新聞 室蘭・胆振面
> 【豊浦】町は25日の町議会全員協議会で、2016年度一般会計予算案にJR室蘭線小幌(こぼろ)駅の維持管理費として約470万円を計上する方針を示した。JR北海道との協定書の調印時期は3月22、23日を軸に調整していることを明らかにした。
>財源としてふるさと納税の寄付や、インターネット上で資金を集めるクラウドファンディングなどを活用する考えをあらためて示し、理解を求めた。


ただ、豊浦町がよく頑張ったなと思うのは2016年8月の段階でトイレの設置を行ったことで、それまで国鉄時代から設置されていたと思われるトイレから、くみ取りが基本的に不要なバイオトイレを設置しています。これは、くみ取り自体を車両が駅に来ることのできない小幌駅ではできないことがあります。
なお、現実的に駅周辺から離脱する手段のない小幌駅では、下車した「観光客」に何かの問題が発生した場合、救出の手段がありません。トイレは最低限の設備になります。なお、雨風をしのげる建屋の設置に関しては「秘境の雰囲気を壊す」と設置の予定は無いとしています。

小幌駅の訪問

洞爺駅から478D列車に乗ります。列車は数分遅れていたようで、小幌駅に着いたのは15:10ころだったようです。夏休み時期、青春18きっぷ時期ではありますので、ひとりで降りることにはならないだろうと思いましたが結果6人が下車しています。
 小幌駅
小幌駅
正直、降りたことを後悔するくらい絶望的な気持ちになる駅ですね。やはり道路がないというのはそれだけでも不安です。
まぁ、いずれにせよ約40分後列車が来てくれなければこの駅を離れることもできません。

まずはその圧倒的な存在感を持つ目の前のトンネルを見てみましょう。小幌駅から岩見沢・東室蘭方です。上りホームから見ますとトンネルがまさに目の前です。上り線は新しい新礼文華山トンネル(2759M)であります。
 小幌駅岩見沢方(上り新礼文華山トンネル)
小幌駅岩見沢方(上り新礼文華山トンネル)
 小幌駅岩見沢方(下り礼文華山トンネルと封鎖されているトンネル)
小幌駅岩見沢方(下り礼文華山トンネルと封鎖されているトンネル)
礼文華山トンネル(2726M)は下り線トンネルが信号場開設当時に掘られたトンネルで、開通当時に掘られたトンネルが真ん中のトンネルとなります。トンネル名表示の下部にあるトンネル延長が2727mと1m長いのはそれが理由でしょうか。小幌駅というか、トンネル間の明かり区間は88mほどしかありませんから、この間だけでは列車が交換できなかった。結果的にはトンネルを洞内で分岐させて有効長を確保していたということになります。そしてもう一つ考えなければならないことがあります。当時は蒸気運転ですからトンネルの中に機関車を停車させることは困難というか、乗務員の環境としてもそれは避けたいことです。
 礼文華山トンネルと使われていない線路
礼文華山トンネルと使われていない線路
 小幌駅長万部方 美利加浜・幌内トンネル
小幌駅長万部方 美利加浜・幌内トンネル
そして、小幌駅から長万部側、こちらも2つの入口がありますが、トンネルの表示看板が2つになっています。この2つのトンネルは現在はスノーシェッドで接続されていますが、ここで「小幌信号場」として、トンネル外に機関車を停めたい場合はどうするのか?と考えますとこの幌内トンネルの長さが気になるわけです。
 Googleの航空写真で見る幌内トンネル
Googleの航空写真で見る幌内トンネル
つまり、その先端では機関車が「外」に出ている。これを実現したわけですね。下り礼文華山トンネル内、上り美利加浜トンネル内に分岐するためのポイントがあったことも山の中の雪が少なくない信号場としては都合が良かったのでしょう。この美利加浜トンネルは現在上り線として使用されています。小幌駅から見える現在の下り線の幌内トンネルは長万部方で新辺加牛トンネルと接続されています。1964年に複線化が完了していますが、それまでの経緯を考えると、鉄道が物資輸送に重要であって、何度も設備改良されながら使われていることがわかると思います。
なお、現在は複線化されていますから、この付近には分岐はありませんが、今も目をこらせば礼文華山トンネル、美利加浜トンネルに洞内分岐が見えるんじゃないかと思います。
なお、別件ですが礼文華山トンネルには「トンネル内送風機」があったのですが、現在は撤去されています。日立評論に現役時代のトンネルファンが掲載されています。信号場の概略図がありましたので、それだけ引用。

日立評論 隧道排煙用送風機
https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1952/ex01/1952_ex_01_03.pdf


なお、非自動化時代ですが、トンネル内での通票受け渡しは行わないよう連動閉塞になっていたとのことであります。

2009年頃に私が降りた時は礼文華山トンネルの真ん中の使っていないトンネルは開いていたと記憶しています。今のように封鎖されたのはその後です。


それでは上りホームから見てみましょう。

 小幌駅上りホーム
小幌駅上りホーム
 小幌駅上りホーム
小幌駅上りホーム
 小幌駅上りホーム
小幌駅上りホーム
 小幌駅上りホーム
小幌駅上りホーム
ホーム下は小川が流れています。一応ロープなどで区切っていますが近づかない方が良いでしょう。先ほどからぶんぶんいっている蜂がいるのが気にかかります。虫が多いのは当然の環境ではあります。
 小幌駅上りホーム
小幌駅上りホーム
 小幌駅上りホーム
小幌駅上りホーム
ホームは簡易的な鉄でできているものです。下りホームが石積みになっていることを含めても、現上りホームが複線化開業後新礼文華山トンネル貫通後にここに設置されたものと推測されます。では、旧上りホームは?というと、幌内トンネル手前の空間だけでは場所的に難しかったと思われ、待避線側は貨物しか使わなかった、旅客列車は現在の下りホームのみ使用していたのではないか?とも推測しますが、どうだったんでしょうね。

下りホームには駅ノートなどがあるらしい「バケツ」がありましたが、当サイト管理者は駅ノートは一切見ませんので手を触れていません。下りホームがトンネル側に少し延長されているのは機関車列車時代トンネル手前に停めたと思えば、また、その後短編成になった列車全てがホームにかかる必要がある状態になっての策ではなかろうかと思われます。
 小幌駅下りホーム
小幌駅下りホーム
 小幌駅下りホーム
小幌駅下りホーム
 小幌駅下りホーム
小幌駅下りホーム

上下線間は構内踏切で結ばれています。
 小幌駅構内踏切
小幌駅構内踏切
 小幌駅構内踏切
小幌駅構内踏切

駅付近の建物ですが、保線用の小屋とトイレがあります。唯一立入できる建物がトイレです。
 小幌駅保線詰め所とトイレ
小幌駅保線詰め所とトイレ
 小幌駅保線詰所とトイレ
小幌駅保線詰所とトイレ
 小幌駅保線詰所とトイレ
小幌駅保線詰所とトイレ
 小幌駅トイレ
小幌駅トイレ
 小幌駅トイレ
小幌駅トイレ
 小幌駅トイレ
小幌駅トイレ
 小幌駅保線詰所
小幌駅保線詰所
なお監視カメラがあります。豊浦町が管理しているとしています。これにより訪問客のカウントを行っているとのことです。また、付近はマムシなどがいる恐れは充分にありますので、気をつけて行動したいものです。

 小幌駅付近
小幌駅付近
 小幌駅付近
小幌駅付近
 小幌駅付近
小幌駅付近
 小幌駅付近
小幌駅付近
 小幌駅付近
小幌駅付近
付近を散策していますが、足を踏み外すと命取りな場所、軽くサンダルやスニーカーなどで歩くのは躊躇するような道です。駅まで歩けない状態になるとヘリコプター救助のような状態になりますので、お気を付けください。
 小幌駅付近
小幌駅付近
少し海が見える場所まで来ましたが、木々によりよく見えませんし、よく見えそうな場所まで降りるには装備が不足でした。
少し高いところから駅全景を撮影。
 小幌駅付近
小幌駅付近

列車接近警報が流れ、トンネル内の涼しい風が吹き抜けてきたらキハ281の特急北斗が駆け抜けていきました。ホームで撮影してる方怖くないかなぁ。多分運転士さんも。
 小幌駅
小幌駅

マンホールがありましたが、何のマンホールなんでしょうね。
 小幌駅付近
小幌駅付近


 東室蘭行き列車
東室蘭行き列車
さあ無事に列車がやってきました。帰宅できます。今回は夏休みシーズンで一定の客がいることで、身の安全はある程度大丈夫だろうと思いながら来ていますし、飲料や最低限の食品、そして防寒になる羽織り物を持参していますが、天候も変わりやすく基本的に半袖短パンでは夏期でも寒いと思います。
また、虫も多く、最悪虫刺されなどの状況も考えられます。マムシに咬まれるなどすればそれだけでは済みません。
そのあたりも含めて観光として楽しめるのであれば訪問も悪くないと思います。

とかく無理をしないことを最優先に。そして、豊浦町には観光としての訪問を受け入れるのであれば是非最小限の「駅舎」を設置して、雨風だけでもしのげる形を作っていただければと切に思います。冬期はこの40分程度でも充分に身の危険を感じることができる、そういう空間です。万が一があれば観光どころではありません。
訪問予定のある方はお気を付けくださいね。ご安全にです。

北海道の交通関係 JR北海道 室蘭線

検索入力:

記事カテゴリ