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北海道の交通関係
留萌線の「都市間輸送」を時系列で見てみる
2022/09/20
報道でもあったとおり、留萌線は石狩沼田-留萌、そして深川-石狩沼田と2段階での廃止が地元協議の末採択されて、まず2023年4月1日に石狩沼田-留萌が廃止されることになります。
JR北海道は国土交通省に廃止届を提出しました。
JR北海道 2022.09.09 留萌線(石狩沼田・留萌間)の鉄道事業廃止届の提出について
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/220909_KO_rumoihaisi.pdf
留萌線廃止届
留萌線に関する報道はいろいろありますが、地元記事である北海道新聞の地方面に掲載された留萌市長へのインタビューに関しては、市長の考えがよくわかりますし、批判はされましょうが、町によりよい方向性を考えたという意味でも空知地区の自治体とは一線を画していたとも思います。道内の道新読者さんは無償で閲覧できますし、無償会員でも月10本は閲覧できますので、この記事は是非読んでいただければなと思うのです。
<留萌線廃止 中西市長語る>上 前兆 ブーム去り利用は低迷
2022年09月13日 北海道新聞 留萌・宗谷面
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/729899/
<留萌線廃止 中西市長語る>中 難航 地元負担9億円に衝撃
2022年09月14日 北海道新聞 留萌・宗谷面
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/730494/
<留萌線廃止 中西市長語る>下 急転 JR新提案 見えた合意
2022年09月15日 北海道新聞 留萌・宗谷面
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/731119/
時刻表から読み取る留萌線の「使われなさ」
今回この項を書くにあたって、留萌線がこう使われなくなった理由を統計書の資料と過去の各公共交通機関の時刻情報で調べてみたいなと思っています。もし、ExcelやExcelシートを開けるソフトウエアをお持ちでしたらそれを開きながら確認いただけますと幸いです。https://traffic.north-tt.com/txt/20220920_01.xlsx
PDF表示も作成しましたが、表示が横長になります。
https://traffic.north-tt.com/txt/20220920_01.pdf
https://traffic.north-tt.com/txt/20220920_02.pdf
1981年の留萌線

留萌線は11.5往復が運行されており、うち3往復は急行で旭川や札幌に直通しています。この時刻表では直通する列車は灰色地で表示しています。急行・特急は太字です。
深川-石狩沼田の最速は15分、深川-留萌の最速は53分です。しかし、まだ貨物列車も多く、普通列車は交換待ちなどもあり最も遅い列車は1時間30分以上を要しています。
そして、深川での接続は非常に悪く、特急のパターンダイヤも不完全、遅い急行を待たずに発車するなど札幌-留萌間は2時間半を切ることができません。また、旭川-留萌でも1時間半を切ることができません。直通の急行も分割併合に伴う停車時間が長く、直通することがサービスであって、速達サービスという意味では残念ながら使いにくかったという印象があります。
この当時50kmまでの特急券、急行券はなく、特急列車にも自由席が連結されるようになりましたが高価で、L特急として自由席主体の列車があったとはいえ近距離に特急、急行を使うのは憚られる印象がありましょう。往復割引切符などはこの時期には全くありません。
並行バス路線を見てみましょう。旭川-深川-留萌の直行バスは1974年以降10往復での運行が最近まで続いています。当時から沿岸バスと道北バスによる運行で、お互いの時刻表に掲載があるというものでした。当時も今もそれほど時刻面での変更はなく、一般道を淡々と走り深川-留萌は1時間20分程度、旭川-留萌は2時間10分程度で走っています。これは今もそれほど高速化されていません。
深川-沼田町間の路線バスも長く運行されている便です。1960年代は30分おきのような頻発運行がされていましたが、1981年時点では若干減って20.5往復となっています。通学にもバスが使われていたことがよくわかります。所要時間30分は全く今と同じです。
留萌-札幌の直通バスが運行開始したのは1965年であろうかと思われますが、当時は国道12号線経由ですから江別、岩見沢、滝川、深川を経由して片道4時間以上、冬期は4時間半以上かかる行程でした。しかし、運賃は安く、一定の利用はあったのでしょう。
札幌市内の図書館で得られた留萌市の統計書は1983年版、1989年版でしたので、得られる数字が1978年以降ではありますが、急激に鉄道利用者が減っていることが覗えます。旭川、札幌方面へのバス利用も増えてはいますがバスに移行したというには急激すぎます。
道路事情が良くなったこと、1970年代以降の大衆車が一般サラリーマンにも手に入りやすくなった時期と重なっていくという面があります。
ですので、使いにくく高い国鉄からバスに客が流れたというのは、統計書を見る限りではあまり目立たず、全体的な公共交通輸送量自体が減っていった。その理由は人口減少がまだ緩やかだったことを鑑みればモータリゼーションにあったのではないか?という推測ができるように思えます。
1985年の留萌線
1971年に千歳-北広島・札幌-小樽を皮切りに建設が進められた北海道内の高速道路は1980年には苫小牧まで開通し、ついに1983年11月に札幌IC-岩見沢ICが開業し路線延長が100kmを超えます。北海道中央バスはすぐに特急便の再編を行い、従来の国道経由を「B特急」そして岩見沢から高速道路を経由する便を「A特急」とします。A特急は札幌-留萌を3時間50分程度で結び、15分程度早くなったことになります。
1984年、そんな札幌-留萌間、札幌-稚内間に北都観光が銀嶺バスの観光車両を使用して「会員制都市間バス」として参入します。札幌-留萌は深川や滝川などを経由せず、直行することで3時間、4往復を運行することになります。料金は2000円で、あくまでも「旅行」として「催行」であるとします。
中央バスは乗合免許を持たない事業者が乗合類似行為を行うことは既存業者の事業を圧迫するとして運輸省(現国土交通省)に意義を申し立てることになります。
これに既存事業者の沿岸バスは貸切バスによる21条代替運行として札幌-羽幌-幌延を、宗谷バスも札幌-稚内で「会員制都市間バス」を始めます。背景には自社のサービスエリア内での便宜乗車などが「会員制」だけに行われていた面があったようです。
結果札幌-留萌の北都観光は1985年に運行を終了、その間に中央バスはA特急を「高速るもい号」として滝川経由とし所要時間を短縮します。滝川経由は3時間10分、深川経由は3時間30分とし、8往復を運行しているのが1985年ということになります。

統計書のバス旅客人員では札幌便だけが堅調に伸びているものの、他の各路線はこの時点でも減らしていることがわかります。留萌から札幌への利便が高まったことで、旭川よりも札幌への利用に切り替わっていくという言い方もできるかもしれません。ちなみに旭川線には峠下などの留萌市内路線を含み通学利用もあることは考慮の必要があります。札幌への便は「都市間」だけの数字になるのです。
そして1987年、国鉄最後の廃止線であった羽幌線が3月30日に廃止になり、国鉄はJRとなり、留萌線はJR北海道として存続されます。
1991年の留萌線
さて、JR北海道になったとはいえ、留萌線が非常に利用が少ない路線であることはわかっている話でもあります。まず、コストダウンを進めて、なおかつ高速化も行うという難しい選択を行わなければなりません。
留萌-深川は急行並みの速度で走り、札幌-留萌の最速列車は2時間1分、旭川-留萌の最速列車は1時間25分まで短縮しアピールすることになります。
その間に道央自動車道は1990年に旭川鷹栖まで開通し、JR北海道も札幌-旭川を1時間20分で運行するスーパーホワイトアローで対抗、結果的に接続の地方路線への時間短縮効果があったということになります。
高速バスも札幌-留萌の場合高速道路に長く乗る深川IC経由のほうが早くなり2時間36分での運行となります。運行本数はじつに12往復と1時間から1時間半おきに出発し、札幌への交通は高速バスというのが基本的な住民認識であっただろうとも思うのです。
残念ながら札幌市の図書館には1988-1992年のデータが存在する統計書がありませんでしたのでこの欄を欠落していますが、1993年の札幌線は実に24万利用、1日600利用(300人)以上、対する鉄道が乗車250人程度(増毛方面含め)という差が付いているというのが現実です。そして旭川方面のバス利用は減り続けていて、これは区間運転の便も含めて通学需要も少し減っていることが高校生の数からも見えます。
地方のバス路線が厳しい状態になっているのは1990年の中央バス滝川営業所を分離子会社とする北空知バスの発足でも見えるところです。補助金や乗務員給与面で都市部と同等を保つことができない、この時期全国的に大手バス会社はこぞって分離子会社を作っていくことになります。
2000年の留萌線
JR北海道は留萌線のコストダウンとスピードアップを行い続けていました。駅員が必ず必要になるタブレット閉塞方式を自動信号に改め運行人員コストを削減し、キハ54形気動車を専用に使用するようダイヤを改めます。結果全ての普通列車が快速列車並みの所要時間で運行できますので快速列車を廃止し、各駅での利用客を集めるという形も行います。とはいえ沿線人口の減少が酷く、利用の大幅な伸びは期待できないという面もあります。
留萌管内の地場バス会社である沿岸バスはそれまで留萌市内での乗降取り扱いを一部以外行っていなかった特急はぼろ号を留萌市内である元川町などで行うようにします。深川や滝川を経由せず、深川留萌道を経由し高速道路の利用区間の長いはぼろ号は予約が必要というデメリットがあれど、途中停車が無いことと、高速道路の延伸で所要時間が短縮できるメリットを持っています。
中央バスとの乗車券の共通化などは行っていないものの、市内からの選択が増える面があります。これにより実に札幌-留萌は18往復が運行されるという状態になります。
沼田町では北空知バスの一部便が旭川に直通する運行を始めます。直通需要よりはバス運行面の話ではあろうとは思いますが、数年で再度短縮されます。深川-沼田は18往復と、この時点でも約1時間に1本の運行が続けられています。
留萌管内の人口は留萌市が3万人割れ、管内人口も大幅に減っている現状があります。その中で留萌から見ると旭川便よりも札幌便の利用客が多いという状況になります。明らかに深川、旭川方面への利用がされなくなっているという現実が見えてきます。
2019年の留萌線
時は流れて2019年。2013年に留萌大和田まで開通していた深川留萌道は2020年に留萌ICまで全通します。クルマでの留萌-札幌はわずか2時間。これでは今までの高速るもい号は太刀打ちできませんので「直行便」を開設します。しかし、留萌市内だけで客を集められないからこその深川・滝川停車という面がありますので全便を移行できずクルマとの所要時間差ができてしまっています。結果便数を減少させることになります。特急はぼろ号は留萌市内中心部こそ経由しないものの2時間15分ほどで結び、留萌以遠の各自治体で集められない客を留萌でも乗せることでなんとか便数を保てるという言い方もできます。

2018年、滝川への通学列車を深川始発にした際に留萌線の増発が地元から要請され、設備的にそれができないことから通学バスが運行されるようになりました。反面深川-沼田の路線バスは半減しています。2019年を取り上げているのはコロナ前だからです。留萌線の廃止問題に向き合わず、通学バス増便にも不満をぶつけた沿線自治体でしたが、それ以上のスピードで進んでいる沿線バスの縮減にはあまりにも無頓着でした。
JRも留萌から旭川への需要が非常に少なくなっていることから旭川へのSきっぷを廃止します。留萌-旭川のバス利用客はピークの半分にも満たない数になります。同じ便数を維持できない状況になっていることは間違いありません。
コロナ前のこの時期ですら急激な利用の減少は人口減少よりも現役世代の人数の減少と車利用にもなりそうです。クルマ出張が増えれば駅やバスターミナルからのタクシー利用の減少も説明ができましょう。
鉄道会社もバス会社もこの20年減り続ける客数に対してなんとか便数を確保し頑張ってきていた。それがコロナ渦でついに破綻してしまった。そうも言えるのです。
2022年の留萌線
まだ実施されていませんが2022年10月のバス減便を含めた留萌からの公共交通です。鉄道が3便減便した時に大騒ぎした結果深川からの通学バスが1本JRによってなされました。しかし、もう沼田町から深川に通う生徒は空知中央バスの路線バスでは通えません。JRで通わなければならない。駅まで遠くても親が送らなければ自分で歩くしかありません。
深川留萌道の無料区間を使って、多少時間がかかっても公共交通を避けてクルマで行く、コロナ渦でのそのような選択は少なくないと思われます。
留萌市の人口はついに2万人を割りました。鉄道がなくなると地域が寂れるという言葉が正しいのであれば、鉄道が残っていればこんな状態にはなっていないでしょう。
鉄道は撤退がしにくい、だから鉄道を残すべきだと言ってる間にバスは使えない状態になっています。
果たして鉄道が残っていれば解決していたんでしょうか。
2023年の留萌線
代替交通に関しての情報はまだ出てきていませんが、沼田-留萌の相互需要は非常に低いことから、この区間はデマンドタクシーなどによる輸送が行われるとしています。留萌-深川に関しては本来ならば沿岸バス、道北バスの路線バスの増便によるものを期待しますが、その前に減便してしまっていますのでどのようになるのかはわかりません。
他の路線でもそうですが、残念ながら廃止直前まで代替については公表されないのが常です。JR北海道の路線としてはどういう運行になるのかも今のところは特段の情報はありません。
