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北海道の交通関係
北海道の交通関係サイト終了のお知らせ
当サイトは終了することといたしました。本件に関しましては以下をご確認ください。
当サイトは2023年12月末で閉鎖することといたしました
路線バスの人員問題と地域交通活性化法
2023/02/24
先日国土交通省は地域公共交通活性化法の改正案を閣議決定しました。何度か本サイトでも取り上げている地方の公共交通に関しての国交省の会議は複数行われていて。今回はコロナ後を見据えた「アフターコロナに向けた地域交通の「リ・デザイン」有識者検討会」から「地域公共交通活性化法」の一部改正について書いていこうかと思います。
そもそも国土交通省とは
省庁再編が行われる前、中央省庁としては運輸省
鉄道・港湾・船舶・自動車交通・気象等を所管建設省
道路・建築物・住宅・河川等建設事業を所管北海道開発庁
北海道内の道路・港湾・農業など開発事業を所管国土庁
土地・水資源・離島振興・災害対策を所管この4つの省庁を統合することになりました。極端に予算規模も事業規模も大きいものでしたが、それぞれが重なる分野があるという面がありました。
統合前の運輸大臣、建設大臣、国土庁長官、そして北海道開発庁長官も兼務した扇千景さんがそのまま初代国土交通大臣となりました。発足は2001年1月ですから既に20年以上の歴史があります。
さて、その国土交通省と統合前の運輸省がどのような地方公共交通の補助を行っていたのか確認してみます。
路線バス補助内容の推移
路線バスへの補助、助成が始まったのは運輸省時代の1966年(昭和41年)から離島バス整備補助制度創設、そして、1969年(昭和44年)から「燃料、車両補修費」の名目で「地方バス路線運行維持対策補助制度」が始まることになります。私鉄鉄道も、民間路線バスも基本的には企業として利益を上げることができることが当然であった時代を経ています。国策として整備され、石炭輸送など物資の大量輸送をメインとした国有鉄道に対し、その大量輸送の性質から特に地方路線では旅客列車本数が限られることから、地域輸送をメインに路線を延ばしていた路線バスは棲み分けができていたといえましょう。
その1969年は「新石炭政策」により石炭から石油へエネルギー転換がもたらされる時代になります。これは北海道に関しては農業政策とともに地方部からの人口流出という面で鉄道も路線バスも急激に利用者の減少がもたらされていくという時代背景になります。
赤字バス補助、さらに5年間。運輸省が概算要求方針
1989/08/18 北海道新聞
>一九九〇年度(平成二年度)予算概算要求で、本年度予算(約百二億円)より一、二億円上積みした額を盛り込む。
>運輸省はバス事業者に対し、車両の冷房化や運行の効率化など指導する一方、乗車密度が十五人以下の路線を対象に、経常欠損額や車両購入費を都道府県とともに補助している。
>運輸省によると、こうした地方バス補助の実施状況(八八年度実績)は、埼玉、神奈川、三重、奈良の四県を除く全国四十三都道府県の計百六十社、九十九億六千九百万円に上っている。
特に、北海道の十七社、七億九千八百万円をトップに、東北、中国、四国地方で、地方バス経営の苦しさが目立っている。
「地方バス路線運行維持対策補助制度」は5年毎に制度改正を行っており、毎年予算規模が膨れ上がっている現状がありました。
国鉄が分割民営化され、北海道でも多くの路線がバス転換された時代の記事です。路線バスの補助内容ですが、北海道は17社が補助を受けています。逆をいえば多くのバス事業者はまだ補助がなくても自立運営ができていた時代とも言えましょう。これは企業としては収益が上げられる分野がまだあった、その収益で赤字路線を埋める運用がまだ可能だったということになります。
1994年運輸省は「経営改善努力が足りない会社への補助金を減額するなどの制度改正」を盛り込みます。これにより第二種生活路線である1日あたりの利用数が5~15人を持つバス会社に「経営努力」を求め、そして、路線が維持できない路線では自治体バス等への移管についての補助を行うことが決まります。
また、これは15万人以上の市街地エリアの補助金カット分の緩和なども含まれましたので、利用の少ない路線から利用の多い路線への経営資源のシフトという政策が執られたことになります。
そして、規制緩和によるバス事業の自由化が行われる2001年を迎えます。参入・撤退が自由になるとして、赤字運行が予想される地方部の路線に参入する事業者はなく、貸切バス、都市間バスへの参入による既存バス会社の収益圧迫も充分に予想された中で、国や地方自治体としても1998年の段階で既に北海道内のバス補助金は30億円を突破しており、この圧縮も必要という判断と板挟みともいえます。この当時道内37社の路線バス事業社中33社が既に赤字である現状は重かったといえます。
これに併せバス路線への補助制度も変更されることになります。新しい制度では、「国」の補助対象は「複数市町村を走る広域的な路線や県庁所在地などに繋がる幹線」等に限定することになり「地域間幹線補助」となります。そして、生活路線は地方自治体が補助を行う形になり「足切り」が設けられました。通学のみの路線や利用の少ない路線は幹線でも国が直接は補助しないという姿勢を明確にした形です。
国土交通省の地方への鉄道・バスの補助制度、基本的には赤字補助を行わず設備投資や取り組みに対して補助していく方向にしたいという考え方があったように見えます。
地方バス支援 運賃下げ、増発に補助 国交省 赤字補てんから転換
2007/06/06 北海道新聞
国土交通省は五日、地方のバス会社支援策として、運賃の大幅な引き下げや運行本数の増加など、実験的な取り組みに対する補助を新設する方針を決めた。併せて過疎地に適した中・小型バスの開発を進め、バス会社の経営効率化や地方バス路線の活性化、再生を支援する。
支援策は《1》斬新な取り組みへの補助新設《2》めりはりある補助金運用《3》中・小型バスの開発-が柱。これまで中心だった赤字補てんから「攻め」の経営の支援に改める。対象は大都市圏を除く、道内など地方のバス会社。
「地域公共交通活性化・再生総合事業」となります。これまでの補助制度では、経営努力を行き過ぎた結果、努力をすると補助金が減るという逆進的な運用になるという面があったことによります。自治体も巻き込んだ形でバスの利便性アップやバスマップ作成、また、事業者も乗り継ぎ割引の導入や路線の変更、運行時刻の変更等大きく変わった地域と変わらなかった地域に別れたのがこの制度の利用をどの程度本気で考えたかの差でしょう。
さて、2009年、日本の政治は大きく変わりました。308議席を確保した民主党と社会民主党、国民新党の3党連立内閣が成立したのがこの年です。そして2010年予算案概算要求を前に「事業仕分け」が行われました。
国土交通省の案件では「地域公共交通活性化・再生総合事業」を「国が関与する必要性はない」とし、地方移管と判定することになります。また、「バス運行対策費補助、バス利用等総合対策事業」としては車両購入費補助や総合対策事業を廃止することになります。
士別市が士別軌道に補助したハイブリッド車両は車両購入費補助廃止前の駆け込み申請で2009年度内に申請し2010年に納車されたものです。
また、地方委譲された「地域公共交通活性化・再生総合事業」については対象案件が200万円以上となり、補助は行われるものの事業規模の小さい地域では使いにくいものになったとも言えます。
2011年、国土交通省は新たな地域交通サービス維持に関して「交通基本法案」と、地方バス路線の補助拡充、地方鉄道の施設費補助を要求します。この交通基本法は民主党と社民党が提案していた内容でもあります。ただ、このときは「移動の権利」を盛り込むことはできず、財政負担も「現実的な対応」と思ったような内容にならなかった面はありましょう。
そして、「交通基本法案」として閣議決定、国会への提出まで行われたものの、その3日後に東日本大震災が発生し、2011年11月の衆議院解散により「交通基本法案」は廃案となりましす。
これが再度審議され2013年11月「交通政策基本法」として成立します。
国土交通省 交通政策基本法について
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport_policy/sosei_transport_policy_tk1_000010.html
交通政策基本法
もちろん交通政策基本法が地方公共交通について切り捨てる方向とはなっていないのですが、国としては単純な赤字補助を廃していくという政策、そして、事業者への努力を求める形を継続していっているということがわかります。2017年にはバス路線への補助上限の引き下げを示唆しますが、結果撤回することにはなります。
〈解説〉赤字バス路線 補助金抑制へ 生活の足 縮小懸念
2017/04/08 北海道新聞
> 国交省によると、国の2016年度の全国の補助総額は約90億円。5年間で20億円近く膨らみ、財政状況が厳しさを増す中で重荷となっている。国交省は昨年、内定していた補助額の減額を示唆。結局減額はしなかったものの、事業者などの混乱を招いた。
国交省は今回、補助上限引き下げに加えて、事業者が利用促進策や路線の統廃合を進めて利益率を上げれば、補助を増やす方針も示した。同省は「努力次第で影響は最小限に抑えられる」と強調する。
国交省としては補助金額の縮減の目的もありますが、事業者側の改善がなく補助金額が増えることは避けたい。結果「事業者の自助努力」が必要としますので、事業者側も補助を得るためには労働集約的な産業であることも含め「人件費」に手をつけざるを得ない。結果バス乗務員の給与はその業務内容に見合わない、結果採用が難しい「バス乗務員不足」に繋がっていくという批判はできましょう。
そして、直接的な補助ではなく設備投資や車両更新などに特化した補助に関しては政権交代によってそれが捥ぎ取られたこともひとつの要因とは言えましょう。
地方鉄道への補助内容の推移
地方鉄道への補助も1969年(昭和44年)から経営改善に資する近代化設備投資に対して補助を行うようになったのが最初と思われます。この年に成立した「日本国有鉄道財政再建促進措置法」があり、国鉄への再建投資を認めるならば中小私鉄も対象だろうという考えがあったものと考えられますが、やはりこの頃を境に急激なモータリゼーションが進んでいくという面があります。そして、特に大きく助成されたのが近代化投資で、信号システム関係(CTC、ATS)それに伴う駅業務省力化に関する投資に補助します。
裏返せば単純な赤字補填に補助することは例外的な国鉄転換や鉄建公団案件以外は過去も現在も行われていないということです。これは鉄道の特性としての利用数がない小さな単位はバスへの転換で補助を行うということが考えられているといえましょう。
地方中小鉄道助成
・近代化補助
近代化設備整備費を国と地方公共団体で1/5又は1/3ずつ補助
緊急保全整備事業については5年間に限り、国と地方公共団体で2/5ずつ、
安全対策教育指導費については3年間に限り、国と地方公共団体で1/3
・公共交通移動円滑化補助
低床式路面電車(LRT)の購入、情報提供システムの導入を行う路面電車事業者に対し、国と地方公共団体で1/4ずつ補助
・運営費補助
日本鉄道建設公団が建設した地方鉄道新線を経営する鉄道事業者に対し、経常損失額の4/10を補助(事業開始より5年間)
・踏切補助
踏切保安設備の整備を行う鉄道事業者(軌道経営者を含む。)に対し、その整備費の1/2又は1/3を国で、1/3を地方公共団体で補助
・災害補助
災害復旧事業費を国と地方公共団体で1/4以内ずつ補助
(災害補助はJR含む)
地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(地域公共交通活性化再生法)
バス補助でも少し触れましたが、2007年10月「地域公共交通活性化再生法」が施行されました。この法律名で検索しても、なかなか報道では出てきません。直接的な「赤字補填」をなるべく行いたくない国としては、地域に必要とされていない、使われていない交通機関に補助はできないという考え方になります。そして、公共交通が地域にどう使われているか知っているのは当然地元の自治体だろうと考えるわけです。それが「地域の主体的取り組みや創意工夫を推進して、その基礎となる地域公共交通の活性化と再生を図ろう」という理念になります。なので自治体には「主体的に行う」努力義務が課されます。
これにより「鉄道事業再構築事業」として地域が必要とするならば上下分離方式を採用し自治体が鉄道を維持していくことに対して補助を行う例も出ますし「軌道運送高度化事業」としてそれまでなかなか行えなかった路面電車の延伸や高速化、快適化の投資が行えるという形になりました。
2014年には一部改正され「地域公共交通網形成計画」の策定が盛り込まれています。これに対して朝日新聞はこんな社説を書いています。
(社説)公共交通再生 自治体がまず動こう
2014年12月24日 朝日新聞
苦境の公共交通をどう守るか。その礎となる改正地域公共交通活性化再生法が先月施行された。自治体を中心に、地域交通網の再構築を促すものだ。
交通のこれからを考えることは、人口減少時代の地域の未来像を探る切り口となる。自治体の積極的な行動を期待したい。
> 07年施行の地域公共交通活性化再生法は、公共交通への市町村の関与を定めた。地方の創意工夫で再生を図るためだった。
だが実際は、民間撤退路線に市町村がコミュニティーバス(コミバス)を走らせるといった局所的な対応が目立った。採算が合わずに公金支出が膨らんだり、コミバスと民間バスが競合したりする問題も起きた。
改正法はこうした反省を踏まえ、地域全体を考えた交通網の立て直しを求めている。市町村に加え、都道府県も計画づくりにかかわれるようにした。
> どんなやり方がふさわしいかは地域ごとに違う。車通勤の職員ばかりで、公共交通の課題を理解していない自治体も少なくない。住民の声を聴き、有識者に助言を求める。地域の総力を束ね、知恵を絞ってほしい。
朝日新聞は法律の理念を理解して、また、公共交通に理解の少ない自治体への牽制も行っているように見えます。そして大きく「県」が動いた地域はニーズに合わせた路線に変えていくことができたと事例も挙げます。
残念ながら北海道のマスメディアでこの「地域公共交通網形成計画」についてはほぼ取り上げられていません。当サイトでも紹介しています2017年6月のシンポジウムで名古屋大学の加藤教授と埼玉の谷島イーグルバス代表とのやりとりが記事になっています。
公共交通のあり方シンポ詳報 JR維持 地域一体で
2017/06/11 北海道新聞
>■パネル討論
> 加藤氏 イーグルバスは今春、埼玉県日高市のバス路線の一部を廃止しました。一方、同じ埼玉の東秩父村ではバスの利用者を増やしています。
谷島氏 撤退するか残すかの違いが出たのは、首長の差だと思います。成功した東秩父村の首長は地域のことを考え、政治生命を懸けて路線再編をやりました。人口約3千人でも気持ちがあればできるんです。一方、日高市は約5万7千人いても、(地域公共交通活性化再生法に基づき交通計画などを検討する)法定協議会もつくっていない。
加藤氏 首長が地域交通をどう確保するかを事業者と議論する場の一つが、法定協議会です。その結果、計画ができ、実行できる流れになります。
もちろんここで出てくる「日高」は埼玉県の日高ですが、同様に当時はJR日高線の復旧に関して日高振興局の自治体も網計画どころか法定協議会も作っていなかったわけで(JR路線問題としての沿線自治体協議会はある)、かなりこの「法定協議会」について国土交通省が重要視していたことがわかろうとも思うのです。ちなみに日高振興局管内で「北海道日高地域公共交通活性化協議会」が作られたのは令和の世になってから、しかもとっくに鉄道が廃止になった昨年のことです。つまり、このような法定協議会無しでJR北海道が考えた「代替交通」を何も考えずに受け入れるしか地元ができることがなかった。全て「他人任せ」だったということです。そして、その後ろ盾があまり期待できなくなって、また、改正地域公共交通活性化再生法で後がなくなったことで「重い腰を上げた」ということです。
朝日新聞は2020年にも社説でこれに触れます。
(社説)「地域の足」確保 競争と協調で工夫を
2020年10月14日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/DA3S14656985.html
> 地域ごとに路線を定める乗り合いバスでは、一定の条件のもとで独占禁止法の適用を除外する特例法が11月末に施行される。事業者の合併促進のほか、ダイヤや運賃を事業者間で直接調整したり、運賃をプールしてから配分したりする行為が「共同経営」として認められる。
> 2000年代以降、乗り合いバスの分野も鉄道や航空、タクシー業界と同様、規制緩和による競争を基本としてきただけに、政策の大きな修正と言える。全国の事業者の7割で地域の路線バス事業が赤字(18年度、国土交通省調べ)という現実が背景にある。
> 特例法の制定と並行して、地域公共交通活性化再生法が改正された。自家用車による有償運送の強化や物と人の混載輸送の手続き円滑化が進む見込みだ。スクールバスや商業施設の送迎バス、NPOによる福祉目的の輸送を多目的に活用していくことも課題になる。
活性化再生法では、自治体と事業者、住民らでつくる協議会で地域公共交通計画を策定することが求められている。国の役割は、現場発の工夫を財政や制度改正を通じて支えることだ。
後で触れる特例法にも関わりますが、こちらも論説委員がよく理解した上で熊本などの事例を交えて書いています。JR北海道問題では威勢の良い北海道新聞がこれにだんまりだったのは「地域のバスも国が面倒を見よ」レベルすら書けない、論説委員の路線バスに関する危機感が非常に薄いことが覗えます。
地域公共交通網形成計画は2020年に「地域公共交通計画」と改め、地方公共団体の作成を努力義務として規定しています。それまでは補助要件ではなかったこの計画ですが、2021年以降は幹線補助、フィーダー補助とも「都道府県・市町村のいずれも参加している法定協議会において協議がなされることが必要」とした結果補助を得るには計画を作らなければならなくなったということです。
北海道運輸局 地域公共交通に係る各種制度等について
https://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/content/000273005.pdf
地域公共交通計画作成状況(2022年) 広域公共交通計画の調整状況(2022年)
そして、これを持ってしても未だに協議会が行われない現実もあります。自分たちは関係ない、事業者が勝手にやればいい、役場職員も首長も自動車で移動するからどうなってるかわからない。それがまかり通っている現実です。
地域公共交通活性化再生法の改正
さて、今年2月10日、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。では、どのような変化があったのか?を見てみましょう。「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案」を閣議決定
~ 地域公共交通「リ・デザイン」(再構築)に向けて ~
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo12_hh_000292.html
概要
まず、改正の背景として、公共交通の利用者が「人口減少」等を要因に「長期的」に落ち込んでいること。特に鉄道の「大量輸送機関」としての特性が発揮されていない路線について「地域の関係者の連携・協働」で「地域公共交通ネットワークを再構築」(リ・デザイン)するということを謳っています。
端的には鉄道としての必要性が認められない大量輸送のない路線はバスなど他の輸送機関に変えていく必要があるのではないか?という意味があります。リ・デザインという言葉をしていますが「バス転換」を言い換えているだけともいえましょう。ただ、当然メニューには鉄道の維持・高度化というものはありますが、これとて国が全面負担するものではなく沿線自治体の覚悟と負担を伴うことが必要です。「鉄道を無くすな」と声を上げる自治体に単純に餌を放り込むことは行わないという意思が表れています。
ここで必要となるのが国土交通省が組織する「再構築協議会」で事業者、関係自治体と「再構築方針」を作成するとします。「鉄道維持・高度化」と「バス等への転換」というメニューがありますが「調う」つまり協議会で歩調が合った場合はそれでまとまるわけですが、当然各者の言い分は異なりましょうからそのときは「国が積極的に関与」して合わせましょうということになります。国が積極的に「方向性を決めて」各自治体に「飲ませる」かどうかまではわかりませんが、ここはかなり踏み込んだ表現をしたと思っています。
では、拗れないようにどうするか?今回「エリア一括協定運行事業」として期間と範囲を決めた地域の交通利便性を上げる負担を行うこと、さらに複数年の支援総額を明示することで予算面でも自治体を支援することになります。上下分離の原資としても使えますから、沿線自治体が本気になるならば支援しますよという形を国が見せたと言えましょう。
また、運賃設定を届け出で可能にする「協議運賃制度」も創設しますから、その区間だけの割引・加算運賃なども協議が調えばできるとしています。また、共通運賃制度なども行いやすくなると期待できるものでもあります。
今回の地域公共交通活性化再生法の改正について国土交通省の斉藤大臣は記者会見に答えています。せっかくですので内容を確認しましょう。
国土交通省 斉藤大臣会見要旨2023年2月10日
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin230210.html
>(大臣から)地域公共交通活性化法案の閣議決定について
(大臣)
冒頭2点御報告いたします。
1点目は閣議案件です。
本日の閣議で、当省提出の2本の法律案が閣議決定されました。
1本目は、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案」です。
これは、人口減少や新型コロナの影響等により、引き続き多くの事業者が厳しい状況にある地域公共交通について、地域の関係者が共に創る「共創」、すなわち連携・協働して、ローカル鉄道をはじめ地域の路線バス等も含めて全国で、利便性・持続可能性・生産性の高い地域公共交通ネットワークへの「リ・デザイン」の推進を図るものです。
>地域公共交通活性化法案について
(記者)
ローカル線について伺います。
閣議決定した、地域公共交通再編に向けた関連法の改正案では、国主導の再構築協議会の設置が盛り込まれていると思いますが、JR芸備線などで難航している協議について、この協議会の設置の要請があった際には具体的にどのように介入して協議を進める考えでしょうか。
教えてください。
(大臣)
今回の法案において、国は、自治体又は事業者からの要請を受け、対象となる線区が大量輸送機関としての鉄道特性を発揮できておらず、関係者による協議が急務と判断された場合には、再構築協議会を設置することとしています。
これは、これまで、危機的状況にあるローカル鉄道の在り方について、自治体・事業者双方の主張がかみ合わず、協議の場すら持てない状況が見受けられたため、必要な場合には国の関与を強め、相互の連携と協働を促すこととしたものです。
具体的には、廃止・存続、いずれも前提としない中立的な立場から会議を主催します。
そして自治体や事業者、利用者の皆さまの御意見にしっかり耳を傾け、新たに創設した調査・実証事業も活用して、客観的なファクトとデータに基づく議論を促します。
試験的にこうしてみようということに対して、それに期待し、国もしっかり支援する。
お金がかかるのであればお金も出そうという立場で国はしっかり支援していきたいと思っています。
そして、大臣指針を遵守すべき立場にあるJRを含め、鉄道事業者を適切に指導するとともに、地域の出した再構築の方針を予算面でもしっかり支援してまいります。
しっかり話し合っていただいて、そして出てきた結論については、国が責任を持って、予算面も含めて支援をしていくというものです。
これらにより関係者の協議が円滑に進み、地域にとって最適な形で合意が得られるように、国として、積極的に関与していきたいと決意しています。
(記者)
今お話にあったように、中々協議がかみ合わずに進んでいない現状があるかと思いますが、そういった協議が進まないことの課題、なぜ進まないのかということを大臣としてはどのようにお考えでしょうか。
(大臣)
やはり存続ありき、廃止ありきということについて、相互に不信があるのだろうと思います。
そうではなく、今のままで良いわけが無いわけで、その現状をしっかり事業者も、そして地域自治体も、今ある姿をしっかり把握する、認識を共有するところから、どうしたら地域公共交通を守っていけるのか。
やはり視点は地域住民の方になければならないと思います。
地域住民の方が最も利便性の高い地域公共交通、これをしっかり提供していく、そのためには、どういう姿が良いのか。
これは虚心坦懐にですね、それぞれの立場がありますけども、話し合う、認識を共有する、そして、どうしたら良いのか、そこで国も関与して、国も責任を持ってサポートする、そういう体制で、地域公共交通の将来のあり方を決めていく、決まったことに対しては、国も責任を持ってそれをサポートする、そういう形で今ある意味で膠着状態に入って進まない状況をなんとか打開したい、そして、ある意味で皆さんが納得するような形の結論を得ていきたいと思っています。
斉藤大臣の回答は、正直というか、特に地方鉄道の今後にかなり危機感がある、人口問題も含めてもこのままにしておけないという強い意志があることは窺えるところです。そして鉄道が単純に残ることが地域の利便にならないこともよくわかっている。そして特定地方交通線のような一定の強権的な方法でなければまとまらないこともわかっているので、それを「客観的なファクトとデータに基づく議論」と言い換えているともいえましょう。
では、これについて報道はどう伝えたんでしょうか。
ローカル線見直し 国交相判断で協議会設置…関連法改正案 国が仲介 明記
2023/01/14 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230113-OYT1T50389/
> 利用者が著しく少ないローカル線など地域公共交通網のあり方を見直すため、国土交通省が検討している関連法改正案の概要が13日、判明した。国交相が必要と判断すれば、鉄道事業者と沿線自治体がローカル線の存廃を話し合う「再構築協議会」を設置できるようにすることが柱。23日召集の通常国会に改正案を提出する。
「地域公共交通活性化・再生法」の改正案では、再構築協議会の設置に向け、鉄道事業者と沿線自治体の間を仲介することを、国の努力義務として位置付ける。
一方で、沿線自治体が協議会への参加を拒むケースも想定される。このため改正案では、両者の意見を聴取した上で、国交相が必要と認める場合は、協議会を設置できるようにする。
> 国交省は関連予算を拡充し、自治体が次世代型路面電車(LRT)やバス高速輸送システム(BRT)の整備を行う場合の支援も手厚くする方針だ。
鉄道事業法も改正し、同省の認可が必要な鉄道運賃の値上げについて、地域の関係者間で合意できた場合、届け出だけで運賃が設定出来るようにする。地域の実情を踏まえた運賃設定につながることが期待できる。
ローカル線協議会、大臣判断で設置へ 見直し議論、国が後押し
2023年01月18日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASR1K6QKVR1KULFA00X.html
> 赤字が続くローカル線など地域の交通のあり方を見直すため、国土交通省の有識者会議は17日、自治体や鉄道事業者からの求めに応じて国交相が協議会を設置できるとする中間取りまとめを公表した。事業者との話し合いに消極的な自治体も多く、国が協議を後押しする狙いだ。
> 国交省の有識者会議は昨年7月、ローカル線の見直しについての提言をまとめた。1日1キロあたりの平均利用者数(輸送密度)が「1千人未満」の線区を目安に、自治体と事業者に見直しを議論することを促し、再構築協議会の創設を盛り込んだ。
運賃制度を定める鉄道事業法も改正する方針だ。現在は運賃の上限額の引き上げには国の認可が必要だが、自治体や事業者らが合意すれば、柔軟に変えられるようにする。路線バスへの乗り継ぎなど、乗客が利用しやすい運賃にする。
予算面でも見直しを後押しする。社会インフラの整備に使える交付金を活用し、鉄道からバスなどへの転換にかかる費用の半分を国が負担する。来年度当初予算案で約50億円をあてる。
全国紙2誌を見てみます。朝日新聞がかなり細かく報じているのが目立ちましょう。廃止か否かもそうですが、この運賃制度への言及がないと「新しく利便性のある交通機関」を作ることが伝わりにくい面がありましょう。
北海道のメディアでは北海道新聞だけが取り上げたように見えます。
鉄道存廃 国主導で協議 法案骨格 維持へ値上げも
2023/01/18 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/788594
> 協議会は、鉄道事業者や自治体の要請を受けて国土交通相が設置する。利用状況が危機的で、複数の自治体にまたがるなど広域調整が必要な線区が対象となる。協議会では存続や廃止を前提とせずに議論。実証事業などを経て、存続させるかバスに転換するかといった具体策を盛り込んだ再構築方針を作成する。具体策の実施に際しては国が財政面で手当てする。
>鉄道局の担当者は有識者会議後の記者説明で「北海道のように以前から任意で協議会を設置している場合でも、協議会の費用や実証事業について支援できないか、財政当局と調整している」と述べ、今回の対応策の対象になる方向との認識を示した。
鉄道の運賃制度見直しは、事業者の収支を改善するのが目的。増便によるメリットなどを地元に説明し、合意を得れば、届け出だけで国の認可上限を超える運賃を設定できるにようにする。
タクシーの定額乗り放題も可能にする。鉄道やバスが不便な地域で、高齢者らが買い物や通院などに利用することを想定している。
路線バスなどについては、自治体と事業者が最適な路線網やダイヤに関する協定を結び、一定エリアで複数年運行する事業を創設する。
「維持へ値上げも」ってのは法の理念と全くかけ離れていてタイトル詐欺ではありますが、事業者の収支についての問題以前に利用しやすい運賃体系に持って行けるか、何故か途中で出てくるタクシー定額乗り放題とともに、法律の内容を逸脱した報道となっており、これは読んだ人にかなり違った印象を与えるように見えます。
いずれも法案成立後について特段記事はありません。しかし、北海道新聞は社説で取り上げることになります。
<社説>赤字地方線存廃 道内も国主導の協議を
2023年2月12日 北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/788594
全国でローカル鉄道の赤字問題が深刻化する中、国が主導して各線区の存廃を検討する協議会設置が新年度に制度化される方向だ。
自治体や鉄道事業者の要請を受けて国土交通相が設置し、存続や廃止を前提とせずに議論する。
バス転換などの実証事業も行い、地域の公共交通再構築の具体策を示す。手厚い財政支援もある。
鉄道網の崩壊を防ぐのは国の責務であり、制度新設は評価できよう。だが先行する道内赤字線協議で、これまで国はJR北海道固有の問題として距離を置いてきた。
> 国交省はJRへの監督命令で8区間の方向性を示す期限を新年度中とする。今の協議会でも「費用や実証事業の支援を調整中」というが、仕切り直すのが筋だろう。
JRは今まで廃線以外の具体的な選択肢を示そうとしなかった。コスト削減に傾斜し、経営改善は北海道新幹線札幌延伸頼みだ。現行の協議会のままでは巨額の投資を伴う存続策は期待できない。
道は沿線とともに新制度への移行を国に強く要請すべきだ。傍観姿勢に終始すれば、道内の鉄路は捨て石にされてしまう。
ここでも法律の「概要」だけでも読んだのか怪しい論説氏の自己主張となっています。ただ、早くからJR北海道は「当社単独では~」と表明し、沿線自治体が拒み続けたなかやっと「5線区」の道筋ができた今、この国が協議に乗り出す方向性ができたのはたしかに納得のいかない面があろうかとも思います。しかし、本来的には地元自治体が目を背け続けた結果であって、その間国交省はJR北海道に少なからぬ支援をせざるを得なかった。この反省が法律面で生きているともいえましょう。
なので、今更8線区は「仕切り直し」などという都合の良いことが起きるわけもなく、沿線自治体はまず自分たちがどういう公共交通が必要なのか、考えることで支援が受けられる面となりますし、今まで当事者でありながら「オブザーバ」的に傍観しているような印象をどうしても受けしまう北海道の問題への認識がどのくらい行われるのか?が今後の観点となりましょう。
北海道の「8線区」の新たな動き
この項を書こうと思ったら急に入ってきた記事がこれです。宗谷線の名寄-稚内で「普通列車と同じ時間帯」に「高校生や通院利用客のために沿線の高校や病院にもバスを停車させ」るバスを走らせるという実証実験です。<鉄路の行方>宗谷線並行バス実証へ 活性化協 JRなどに提案方針
2023年02月22日 北海道新聞 名寄・士別面
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/805445
> 【名寄】JR宗谷線沿線と周辺26市町村などでつくる宗谷本線活性化推進協議会(事務局・名寄市)は20日、宗谷線名寄―稚内間で通勤通学に利用される普通列車と同じ時間帯に、並行する国道などにバスを走らせる実証実験を国や道、JR北海道に提案する方針を決めた。
宗谷線を中心に持続可能な地域交通体系を探る目的。実験では、乗客の多くを占める高校生や通院利用客のために沿線の高校や病院にもバスを停車させ、利便性や満足度を確かめる。
「利用促進」とはしますが、基本的には鉄道の維持を前提に、地域輸送分をバスが肩代わりすることで利便性を上げるという題目での利便性向上を謳った補助となりましょうか。
実際宗谷線名寄以北は各普通列車が1両で充分な利用数しかない、通学需要といっても多くないことから、普通列車を廃することで特急列車は維持できるか?という検討の一つであろうと理解しますが、残念ながら沿線自治体のサイト(宗谷本線活性化推進協議会はサイトを持っていない)などに情報はなく、今後の追加報道に期待しますが、北海道新聞以外の後追い報道も特にありません。
「バス」は維持が可能か
さて、鉄道のバス転換に関しては、バスの乗務員不足があるから鉄道を残すべきだという主張をされる方は少なくないですし、マスコミ記事でも見られます。その根本的な原因は何か?という面が「路線バスの補助」にあるともいえます。冒頭で記載したとおり路線バスへの国、道、自治体の補助は事業者の自助努力があることを前提としていますので、事業者は運行コストを極限まで下げているというのが現状です。
国土交通省 バス事業者の経営状態、経費構成等
https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000010175.pdf
ブロック別実車走行キロ当たりの収入・原価(グラフ)
そして、バスの運行経費のうち大きな割合を占めるのが人件費でありますし、燃料、車両等の固定費用の縮減はなかなか難しい面があるために、人件費、結果的にバス運転手の給与を抑制し続けてきた。これが根本的な原因であると言えます。
この「自助努力」ということば、本来は黒字路線や黒字事業から赤字路線運行を維持するという意味だったのが、JR北海道問題でも黒字事業の少ない中で「人員」面で「身を切っている」ことを暗黙的に求められた面があります。
つまり、赤字で運行できないなら給与を削減すればいいじゃないかという「声」が少なくなかったという面です。これでは事故等のリスクも大きいバスの乗務員は集まりません。もちろん鉄道職員も同様になります。
いくつかの媒体で「管理職」に大型二種免許を取得させることで人員不足に対応していると肯定的に報道された十勝バスの例ですが、よく記事を読むと別な面が見えてきます。
足りぬ運転手 幹部が救世主 減便の十勝バス 免許取得支援 4人合格 接客向上、事故防止にも反映
2023年02月17日 北海道新聞 帯広・十勝面
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/803225
> 運転手不足で3月末までの減便を決めた十勝バス(帯広)が、管理職の大型2種免許取得を支援する取り組みを始めた。
> 十勝バスでは、路線バス運転手の定年退職や離職が続いており、2020年は144人いたが、昨年9月には122人に減った。運転手の時間外労働や休日出勤が問題となっており、今年2月上旬から、1日410便だった平日の運行数を391便に減らしている。
> 運転手確保に向け、バスの運転体験ができる就職説明会やパートでの募集といった工夫を重ねるが、16~19年に運転手養成枠で採用した高卒新人13人のうち11人が離職するなど苦戦。少しでも運転手の負担を減らすため、本年度から管理職の免許取得支援を始めた。
高校への求人、採用は基本的に1社しか受けられない「一人一社制」ということもあって、本来は採用後は企業が手厚く育成していく必要があろうかと思います。しかし、免許制度的に大型二種免許が取得可能になるのは21歳からと3年間は運転手以外の職種につけるしかないというバス会社側も採用を躊躇する問題がありました。
新入社員は運転手候補生 十勝バス 16年から自社育成【帯広】
2019年02月14日 十勝毎日新聞
http://www.hokkaido-nl.jp/article/10247
>バス運転手に必要な大型2種免許は(1)満21歳以上(2)普通免許などを取得して3年以上が経過-などの要件がある。
> 「養成運転手」は2016年から採用し、18年までに9人が入社。自前運転手第1号として、16年に高卒で入社した****さん(21)、****さん(21)、****さん(20)と、18年に短大・専門卒で入社した****さん(21)、****さん(21)の5人が、大型2種免許に挑むことになった。
5人は普通免許を取得して3年が経過するまでの間、整備業務やバスターミナルでの窓口対応など、各部署を数カ月ごとに異動して経験を積んだ。
このような先進的な取り組みを行った十勝バスではありますが、ここに記載して記事には名前がある彼ら、ほぼ既に離職しているということになります。
国土交通省は2022年5月に道路交通法を改正、二種免許の取得要件を「受験資格特例教習」を受けることで「19歳以上で免許保有歴1年以上」に緩和しています。
19歳運転士 拓殖バスの**さん 年内デビューへ最終研修【音更】
2022年10月07日 十勝毎日新聞
https://hokkaido-nl.jp/article/26800
> 北海道拓殖バス(本社音更、中木基博社長、社員144人)の運転士志望で入社2年目の****さん(19)が9月28日に路線バスの運転に必要な大型自動車第二種運転免許を取得した。年内に運転士としてデビューする予定だ。
>運転士になる日を夢見ながらひたすら仕事に打ち込み、入社2年目に期せずして、第二種運転免許の取得要件が緩和された。 同社の乗務員は**さんを含め78人。20代2人、30代3人、40代18人、50代23人、60代23人、70代8人で、10代は**さんだけ。
これにより北海道拓殖バスでは19歳のバス乗務員が誕生することになります。その制度自体の優劣はともかく、バス乗務員不足に関してはもはやなりふり構わぬ制度改革を行っているという現状でもあります。そしてそれ以上に60代、70代の運転手数を考えても、今後路線バスの維持はもう難しいことがわかろうというものです。
高卒新人を雇えても運転手になるまでの期間、養成に時間がかかる面、そして、採用した社員が残らない面(これが給与の問題なのか他の問題なのかはともかく)が非常に大きな問題になっている、特に高卒新人を13人採用できているのに残っているのが2人という惨状では学校としても後輩を斡旋することが難しいという面があります。
補助金でなんとか維持してきた路線バスではありますが、これまでの補助金面、利用者数の縮減、そして人員面で、もう限界になってしまったというのが現状であろうと思います。
そして、これは何度もJR北海道が会見している鉄道でも起こっている話でもあります。公共交通というものがどれだけ残せるのか、残せないとしてどうするのか、国に頼る意味はわかりますが、各自治体が考えていかなければならないことでもあるのです。