北海道の交通関係


北海道の交通関係サイト終了のお知らせ

当サイトは終了することといたしました。本件に関しましては以下をご確認ください。
当サイトは2023年12月末で閉鎖することといたしました


花咲線沿線バスの「新設」「通学無償化」と根室市の動き

2023/05/30

このことについては、当サイト的には静観しておこうと思っていた面です。なぜなら実際の通学生の確認に現地を訪問することは難しく、実態を見ることができないからです。

数日前よりTwitterで発言された方を元に、当サイトの過去の記事にも多くアクセスをいただいており、以前からその当時と事情が変わっているかどうかも含めて調べていたものの、地元新聞の記事にも、北海道新聞などブロック記事でもあまり取り上げられず、まして当の根室市のWEBサイトでも確定的な情報が得られない以上、当サイトが突っ込んだ形で記事にすることはできないかなと思っておりますので、まず事実の面だけ。

根室市がはじめた「通学バス事業」

まず、根室市は人口2万3千人ほど、北海道の最東端に位置し、北方領土を目前にしています。市内の公共交通はJRが根室線(花咲線)として釧路方面と連絡しているほか、市内路線バスは根室交通が、また、釧路・札幌との都市間バスが運行されています。しかし、人口の減少によるバス路線の縮減とそれに対する補助が市の財政としても苦しいのも現状でしょう。

昨年度末に市民に対する公共交通の意見交換会が行われ、根室市は市内の路線バスの一部を「デマンド交通」として実証実験を行うことを発表しています。そしてさらに落石地区の路線バス復活、高校生以下のバス運賃無償化を表明しています。

デマンド交通 市が実証実験 新年度、中心市街地で 予約制の乗り合い車両 本格運用を模索
2023年02月11日 北海道新聞 釧路・根室面
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/800458
> 【根室】市は9日、市総合文化会館で開いた交通に関する市民意見交換会で、予約制の乗り合い車両「デマンド交通」の実証実験を新年度に中心市街地で実施すると明らかにした。
>参加者からは、現状のバスは市内各地を循環する路線が多く目的地までの乗車時間が長いとし「予約制をぜひ進めてほしい」などの声が上がった。
> また、市は新年度に落石地区発着で試験的に路線バスを走らせる考えも示した。複数のバス停から根室高校と市立根室病院まで高校生や高齢者らを有償で運ぶ。
 このほか、市は意見交換会では18歳以下のバス無償化や、厚床地区などの高校生のJR花咲線での通学費助成などについても検討していることを示した。


重要な記事ですので引用が長くなりましたが、まず現状のバス路線について整理します。運営する根室交通のサイトを見てみましょう。

根室交通
https://www.nemurokotsu.com


サイト内に路線図がないので、当サイト管理者が2016年に作成した根室交通の路線図をGoogleMyMapで表示します。基本的なところは変わっていないとは思いますが、市内路線バスは大幅に減便再編されていること、根室高校へのスクール便が新たに運行されていることなどが変更点でしょう。

Northtt 根室交通路線案内


現状でこのくらい情報としては公開されていないと言える路線バスに関してですが、市民の足であり利用する市民にとっては路線は判っていることもあって、域外の人にそれほど情報提供の必要性は無いと考えられているとも言えましょう。

さて、新たにJR北海道が発表した「調査・実証事業」に花咲線ではこの内容が挙げられています。

2023.05.17 【社長会見】輸送密度200人以上2,000人未満の線区(⻩線区)における調査・実証事業について
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20230517_KO_demonstration_project.pdf

 高校・病院直行バスの実証運行
高校・病院直行バスの実証運行



根室市と根室交通が4月からはじめた内容が、鉄道沿線への通学バス運行です。

 厚床からの通学便
厚床からの通学便
花咲線の根室市内の駅である厚床を7:05に発車するバスを新設、これが伯陵中学校バス停で乗り継ぐことで根室高校には8:10に到着します。4月以前は厚床発7:40が始発でしたから根室高校始業には間に合わず、JR花咲線の7:11発の列車での通学となっていました。根室交通は根室駅からの高校行きバスは間に合う形では運行していませんから高校までは東根室駅から徒歩で20分ほどを要します。東根室駅は花咲線サイトでも「沿線の高校生たちで賑わう青春列車の駅」としています。

厚床-根室に関しては鉄道とバスは大きく経路が異なります。元々厚床からの通学バスは過去にも出たことは無く、途中の川口地区を始発とする通学バスのみが運行されていました。それも2000年頃には廃止されており、その後途中地区からの通学需要はほぼ無かったと考えられます。(2019年閉校の根室西高校の始業には間に合ったのかもしれませんが、それ以降今までバス時刻の変更が無かったわけですから、やはりバスでの通学需要は無かったと言えましょう)
今回2023年4月より厚床始発の通学バスが設定されたのは4月以降18歳未満の市内在住者はバス運賃が無料であるためで、JR通学定期も無料になったとはいえ当然に厚床からの通学生は徒歩のないバスを選択するようになること、そしてそれがバス会社、路線維持に必要であるという意味がありましょう。

また、1990年9月に廃止になり、当時から通学生を全く扱っていなかった落石からの路線バスを復活させることも決定しています。

路線バス「落石線」10日から実証試験【根室】
2023年03月29日 釧路新聞
https://hokkaido-nl.jp/article/28787
> 【根室】市は来月10日から、公共交通空白地帯の落石地区で、路線バス「落石線」を運行する実証試験を行い、同地区からの通院、通学の足としての可能性を探る。運転手不足や利用客減少に悩む市内公共交通の在るべき姿を探るために策定した「根室市地域公共交通計画」の一環だ。
>  落石地区はJR花咲線の利用が可能だが、駅舎から集落までの距離があり、公共交通の空白地帯が生じている。
>計画は「行き」が落石港を午前7時20分に出発。落石駅前、浜松、長節など10カ所を経由して根室高校着が同7時57分、市立根室病院が同8時2分着。
>市は4月1日から、子育て応援事業として、18歳以下と小学生未満の子供に同伴する保護者1名を市内区間無料にする「バス乗車フリーパス」を発行する。
>無料対象路線は花咲線、納沙布線、厚床線、西浜線、根高線に加え、同10日からは「落石線」も対象となる。


こちらも通学需要を色濃く反映していることが判ります。この落石線は落石の他、昆布盛、西和田の駅前も通ります。

 花咲線過去の利用状況(2015年度以降無人駅非公開)
花咲線過去の利用状況(2015年度以降無人駅非公開)
つまり、別当賀以外のすべての根室市内の花咲線駅(既に駅としては廃止になった花咲地区はバスがある)から基本的に市内への定期的な利用者は少なくなるということになろうかと思うのです。

これがJR北海道のサイト内で公開されている「調査・実証事業」で、結果によってはこれが継続されることになり、4月10日から開始されています。「地域公共交通確保維持改善事業」により、国等から運行費が支援されていると思われます。

路線バス「落石線」実証試験 【根室】
2023年04月11日 釧路新聞
https://hokkaido-nl.jp/article/28937
> 【根室】公共交通空白地帯の落石地区で10日、路線バス「落石線」を運行する実証試験が始まった。地域の通院、通学の足として、さらに事業者の維持存続を模索する地域公共交通計画に基づく取り組み。初日は根室高校生7人が利用した。
>初日の利用者は根室高校生のみ。昆布盛と長節の停留所で各3人、浜松駐車公園で1人の計7人が利用、同高校で降車した。
 事務局の市総合政策室では同高校が入学式だったこともあり、「新入生は保護者と車で通学したのではないか」などと分析、当面利用状況を見守る方針だ。


落石地区が駅から集落が離れているのもありますが、少なくとも高校生は無事にバスに移行したのではないかと推測できますね。

この利用実態を私は実際のところを確認できていないのでこの項はあくまで、このような便が運行され、少なくとも花咲線根室市内の駅にに関してはほぼ高校生が鉄道を使わなければ通えない状況が回避されたという事実のみを記載します。


根室市バス運賃無償化の原資

さて、根室市は新年度予算案に18歳未満のバス運賃無償化を盛り込み成立しました。これによりここまでに記載したバス路線の時間変更、新設が行われたことになります。(JR花咲線を通学利用する場合の通学定期券の補助も行われることに留意が必要です。ただし、バスと異なり一般利用としての鉄道利用は無償になりません)
 根室市 18歳未満のバス運賃無償化
根室市 18歳未満のバス運賃無償化

一般会計247億円 過去最高 根室市新年度予算案 18歳以下のバス運賃無償化
2023年02月22日 北海道新聞 釧路・根室面
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/805359
>新規事業では18歳以下のバス運賃無償化など子育て支援を手厚くし、「つくり育てる漁業」の確立など水産振興にも力を入れる。
>  人口減対策を兼ねた子育て支援として、根室高生のJR通学費を全額助成。
>*ふるさと納税依存率19・8%  石垣雅敏市長再選後初の編成となった根室市の2023年度予算案。
過去最大の一般会計247億円の財源には、ふるさと納税による基金から49億円を投入する。
>積み立てた基金は3月末に188億円となる見通しだ。新年度は、この基金から新庁舎に4億円、病院経営に15億円を活用する。子どものバス運賃無償化、高校生の通学費助成などにも支出する予定だ。


今年度の目玉事業が「18歳以下のバス運賃無償化」「根室高校生のJR通学費無償化」です。もちろんそれ以外にも18歳未満の医療費無償化など少子高齢化対策に充てるとしています。その原資となるのが「ふるさと納税」です。ふるさと納税による基金が188億円となり、そこから49億円が使われます。

根室市のふるさと納税は
・根室市一任
・ふるさと未来創生に関する事業
 (ここに「交通体系の維持、広域交通ネットワークの充実【根室市ふるさと応援・公共交通維持安定化基金】」が含まれる)
・住みたいと思える「ひと」と「しごと」を呼び込むプロジェクト
・みんなで実践する「市民協働」の推進プロジェクト
・北方領土問題等の解決の促進を図るため必要な事業
・寄附者の意向を反映し住み良いまちづくりのために市長が必要と認める事業
があります。
そしてさらに別枠で

日本最東端の鉄路を守りたい!「地球探索鉄道花咲線」プロジェクト

がありますのですが、こちらも寄附金は、「根室市ふるさと応援・公共交通維持安定化基金」に積み立てるとします。
 公共交通維持安定化基金
公共交通維持安定化基金
この寄付金「花咲線」とそれ以外には「分けられている」としていますが、では、平成30年度から基金残がほぼ変わっていないというのは、基本的に当初3億円集めた基金はほとんど使われていないという言い方もできるわけです。


(1)維持確保対策事業
ア. 根室市花咲線利用促進PR事業の企画立案・実施など、第1期集中改革期間の対応検証
・花咲線存続に向けたブランド再構築
・花咲線の魅力発信(WEBサイト、ムービー、ポスターなど)
・花咲線利用可能性調査(夏の繁忙期の2両運行の実施)
イ. 花咲線沿線観光振興協議会への参画、並びに沿線自治体と連携した利用促進策の実施
ウ. 根室地方総合開発期成会根室本線花咲線対策特別委員会での花咲線存続の調査・検討
エ. 根室本線花咲線対策沿線地域連絡協議会での花咲線活性化に向けた連絡調整・協議
(2)花咲線普及活動
ア. 市民団体に対する花咲線普及促進活動助成金交付事務を通じた普及の促進


結果的にはJR北海道に流れているのは増結に対する費用、あと、幼稚園児を列車に乗せたなどのかなり限られた額といえましょう。確実にこれに使った!と断言するのが「2両運行」で、それ以外は非常にざくっとした内容だとは思わないでしょうか?実際の利用促進策として報道されたものは少なく、あとは調査費、会議費などに消えるのみで、結果元々の基金3億円中3千万使った余りがそのまま積み立てられているという現状になっているとなりましょう。

今回市内高校生が「JRを使って通学する」ならば、この基金からJRにその通学費用が補助されるものと思われます。

もちろん今後花咲線では指定席の設定(これも増結費用負担でのJR単独の事業と思われる)などはあろうかと思いますが、実際に地元が花咲線にどう利用促進していくかを今後も随時見ていきたいと思います。

新設される根室-釧路空港都市間バス

根室交通は7月1日から10月31日まで根室と釧路空港を結ぶ都市間便を運行することを発表しています。
 根室-釧路空港
根室-釧路空港
国の「交通・観光連携型事業」として採択された事業となります。根室と厚岸の道の駅を経由し釧路空港を経由する道外客が根室で宿泊観光することを前提としているように見えます。あくまで根室-釧路の都市間バスとは異なり釧路市内での乗降はできません。

国土交通省・博報堂 交通・観光連携型事業
https://kankosaisei-kotsu.net



ツアー客出迎え

先日花咲線では大手旅行会社のツアーが行われ、それを出迎えたという記事がありました。

特急列車根室に到着 市職員らツアー客出迎え【根室】
2023年05月24日 釧路新聞
https://hokkaido-nl.jp/article/29407
> 【根室】旅行会社大手のJTBが企画したツアー「夢物語プレミアム・日本の旬号で行く・春を感じる北海道列車旅4日間」で23日、JR北海道の特急「はまなす」編成車両5両が根室駅に到着。市と市観光協会の職員らが乗客156人を出迎えた。
>「日本・アジア最東端鉄路JR花咲線」「ようこそ根室へ」などと書かれた横断幕で歓迎。乗客らは眠郎との記念撮影などを楽しんでいた。また、北方領土啓発グッズや花咲線のポストカードが配布され、一行は5台のバスに分かれて宿泊地の釧路市阿寒湖温泉に向かった。
>  市はJR北海道が単独では維持困難とした花咲線の存続と利用促進に取り組んでおり、特急列車による臨時便の運行もその一つ。JTBの企画が実施されるのは、2021年度にJR側に特急列車運行を要望してから初めて。


全国旅行支援対象のツアーではありますが、花咲線利用は片道、ここでも市が独自な形での誘客を行ったものではありません。


根室市が地元高校の維持に期待し、不便な鉄道通学よりも安全で少しでも楽なバス通学を考えること、また、道外客誘客のために利便性の高い空港連絡バスを運行すること(これは中標津空港よりも就航地が多いという意味がある)そして「特急列車」を動かせとJRに働きかけることは根室市として必要なことであります。
その中で、花咲線をどう活用するか?について確固たるものが見えない面があります。地元利用は一切しなくて良いから観光に使って欲しいという割に、観光客を鉄道に誘客するような形は見えないことも含め、あくまで私にはその意図が見えにくいと思っています。

少なくない方が「花咲線を残して欲しい」と根室市に(花咲線に寄付したと寄付者が思う形で)寄付しました。根室市はそれから5年以上を費やしています。ここまでの期間があったのですから花咲線をどう活用するのかをもう少し具体的な形で見せていただけると、さらに支援の輪が広まっていくと思うのです。
そして市民にとっての「花咲線は不便だから」をどう改善していくのかも求められます。せっかく駅前にバスターミナルがある環境で、残念ながらその立地を余り生かし切れていないことも含めて、根室市の公共交通全体が今後も維持されていくこと、利便が上がっていくことが求められるとも思うのです。現時点で具体的な運行計画はサイトにもありませんが「デマンド交通」がその一端になるといいなとも思います。

2023年5月31日追記

根室市デマンド交通と4月以降のバス、鉄道に関する施策について釧路新聞の記事がありましたので紹介します。

乗り合い交通、今秋試行 根室市が公共交通計画【根室】
釧路新聞 2023-05-31
https://hokkaido-nl.jp/article/29501
> 【根室】市は30日、持続可能な公共交通の在り方をまとめた「根室市地域公共交通計画」は公表した。同計画に即した鉄路とバスの施策はすでに展開中で、いずれも好調な利用状況にあるという。秋にはタクシー・ハイヤーを主とする事前予約制の乗り合い交通(AIオンデマンド交通)を試行する計画だ。


記事によると「落石線」の1日平均利用者は「学生23人、大人1~2人、小学生1人」、「バス乗車フリーパス」事業は、4月実績で389件の申請、延べ3294人の利用、「JR花咲線を利用して根室高校に通う生徒の定期代(全額)助成制度は16人が申請」とのことです。

花咲線の駅別通過人員から、定期客は最大30名(往復と考えらる)でありますので、16名は変わっていないとも言えましょうか。

 花咲線駅間通過人員
花咲線駅間通過人員
また、定期券の発売枚数は根室、東根室で14枚程度ですので、これを見る限りもあまり変わっていないのかもしれません。
 花咲線定期券発売枚数
花咲線定期券発売枚数
JR北海道 地域交通を持続的に維持するために
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/region/index.html

根室市の施策的にバスと鉄道の両方を申請可能かどうかまでは確認できていませんが、そうであれば鉄道もバスも支援できるとも言えます。(厚床、落石線沿線の高校生利用者と令和3年の鉄道定期券発売数が合わないのが不可解)
また、帰宅時間帯のバス本数の制限を考えると「行きはバス」「帰りは鉄道」の可能性も捨てきれない部分で、これも含めて現地の状況や根室市サイトから詳しい制度情報が得られない以上、当サイトではこれ以上の内容での記事にできない面があります。

北海道の交通関係 JR北海道 花咲線 路線バス

検索入力:

記事カテゴリ