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北海道の交通関係
夕張市長の夕張支線廃止提案を考える
2016/08/10
●石勝線・夕張支線はどのような路線か
石勝線は旧夕張線の路線を活かし、札幌と十勝、釧路を結ぶために1981年開業しました。新規開業区間は千歳空港(現南千歳)-追分と新夕張-新得(上落合信号場)で、その他の区間は夕張線の線路改良を行いました。
その夕張線ですが、開業は1892年で、先行して開業した現在の室蘭線東室蘭-苫小牧-岩見沢に接続される形で作られています。これはあくまで夕張で採掘された石炭を室蘭港に運ぶことが求められた路線です。
ですので、普通列車の運行区間は千歳-南千歳-追分-新夕張-(楓)および夕張となり、新夕張-新得は優等列車のみの運行となりました。
石炭輸送は炭鉱の閉山で1980年代後半(確か87年の南大夕張線廃止頃に全廃)に廃止となっています。
その後も新夕張-楓は2004年に廃止(信号所化)東追分駅・十三里駅も今年信号所化されています。
なお、追分駅は胆振管内の安平町、川端駅は空知管内由仁町、滝ノ上駅-新夕張駅-夕張駅は夕張市に所属しています。
今回地元から廃線が提案された夕張支線は石勝線新夕張駅から夕張駅までの16.1kmを結ぶ路線です。全線が夕張市に所属し、普通列車のみの運行です。
途中の南清水沢駅付近に夕張高校があり通学輸送はありますが、それ以外は非常に利用客の少ない路線です。
今年発表された2014年度の線区別利用状況では
・輸送密度 117(人/キロ/日)
・営業収益 1400万円
・営業費用 1億7200万円
・営業係数 1,247
となっています。
また、国土交通省資料による2013年の各駅の乗降人数(利用客はこの半分となる)は
・沼ノ沢 24
・南清水沢 80
・清水沢 30
・鹿ノ谷 10
・夕張 30
となります。
どう転んでも廃線を免れないという成績の路線で、夕張市はこれに先手を打った形となります。
●夕張支線はなぜ使われないのか
さて、それではなぜそこまで夕張支線は使われないのでしょうか。夕張支線はご乗車いただきますとわかるとおり極端な無人地帯は走りません。各駅前には小さいながらも集落が存在します。
また、利用客が比較的多いのは高校のある南清水沢ですが、それ以外の駅も少ないながらも利用客があります。
利用客が少ないのは次の点が上げられます
・そもそも列車通学者が少ない
夕張市は空知総合振興局管内ですので、同一管内の夕張高校の他には栗山高校、岩見沢市内の高校への通学となります。夕張高校以外は鉄道利用では非常に遠回りなため通学はバス(乗り継ぎ含む)によります。
また、追分、千歳への進学は越境入学となりますので非常に少なく実際夕張支線から千歳の高校へ通学できる列車は存在しません。
夕張高校の平成26年の生徒数は126人で、これが全て列車を使って通学したとしても非常に少ない利用者しか確保できません。当然高校までのスクール便は各方面から存在します。
夕張市は各地区の小中学校を閉校し、南清水沢地区に集約しています。この通学にはバスを使用しており、列車利用はありません。
・行きたい場所へ接続されていない
夕張から市外へは同じ空知である栗山・岩見沢と道都札幌への流動が多くなります。これは旧夕張鉄道のルートのほうが旅客輸送ではメインだったということになります。現在市外への路線バスは以下があります。
・夕張レースイリゾート(夕張駅)-栗山-南幌-札幌駅前 3往復
(中央バス高速ゆうばり号)
・夕張レースイリゾート(夕張駅)-栗山-岩見沢駅前 1往復
(中央バス岩夕線)ゆうばり号の回送運行
・南清水沢駅前-清水沢-夕鉄本社-由仁-長沼-大谷地-新札幌 4往復
(夕鉄バス急行札夕線)
・南部-清水沢-夕鉄本社-栗山-南幌-新札幌 3.5往復
(夕鉄バス)
全て栗山や札幌を向いていることがおわかりいただけると思います。逆に新夕張から追分方面へはバスは運行されていません。滝ノ上駅-追分駅-南千歳駅には鉄道並行バスはありません。
・そもそも沿線人口が少ない
夕張は産炭地であって、最も人口が多かったのは1960年の11万7000人、国鉄転換時ですら2万8000人程度人口がありました。2013年は9,968人です。そもそもの人口が少なすぎます。
また、夕張駅の位置は2度にわたって短縮されています。初代は現在の石炭の歴史村入り口付近、二代目は夕張市役所付近(旧夕鉄夕張本町駅跡)そして現在のホテルマウントレースイ前です。
移転の理由はリゾート客の呼び込みにあったはずですが、その分地元客には利用しずらくなった面は否定できません。沿線住民が市役所や病院などに行くとき列車は使いにくいわけです。
●並行バス路線
夕張支線にはほぼ並行する国道452号線および道道に路線バスが存在します。夕鉄バスの夕張市内線です。駅とバス停は以下の対応となります。
・新夕張 新夕張駅前
・沼ノ沢 沼ノ沢駅前
・南清水沢 南清水沢駅前
・清水沢 清水沢駅前
・鹿ノ谷 鹿ノ谷駅前
・夕張 レースイリゾート前
各駅前にバス停があることがわかります。
路線は
・社光-レースイリゾート前-沼ノ沢駅前-夕鉄本社-清水沢駅前-南清水沢駅前-清水沢駅前-・・・-社光(循環便)
・登川-新夕張駅前-真谷地-沼ノ沢駅前-南清水沢駅前-清陵町
・滝ノ上駅前-(旧)十三里駅前-新夕張駅前-沼ノ沢駅前-南清水沢駅前-中学校前
という形で運行されています。また、先の郊外線である急行便および南部-新札幌の便も清水沢駅前と南清水沢駅前を経由します。
循環便は1時間から1時間半おきに運行されていますが、南清水沢-新夕張は基本通学時間のみ運行されていますので、現時点では鉄道の代替にはなりません。鉄道廃止後は当然この区間の増便で対処することになりましょう。
なお、真谷地は国道から1.5kmほど入った場所で往復しますので10分程度余分に時間がかかります。
参考:バス路線図
●廃止後のバス運行
鉄道廃止後は新夕張駅前-南清水沢(夕張高校前)-清水沢-レースイリゾート-夕張医療センター-社光という形でのバス運行が行われるものと推測します。
夕張市の市役所や病院などの施設は現夕張駅の先にありますので、現駅とは関係なく延長されるのが自然です。
また、高校、小学校、中学校がある南清水沢に予定されている「拠点複合施設」を経由することで利便を上げたいという考えと思われます。
列車の本数から現在の路線バスに加える台数は実質1台だけですので新たな投資は少なくて済み、JR北海道としても並行バス路線の無かった江差線末端部よりも転換ハードルは低いと考えられます。
仮に留萌線末端部廃止と同様の支援が行われると仮定すると、
・駅舎・ホーム・線路設備と周辺の土地の無償譲渡
・南清水沢駅周辺の整備費用(約1億円程度を想定か?)
・バス運行経費の補助(5000万円程度か)
・通学定期券の差額補助(3年分・2000万円程度か?)
が想定されます。夕張支線の年間赤字額は1億5000万円程度ですので、その範囲くらいでカタを付けたいと考えていると思われます。
それでも帳簿上の減損が可能ですのでJRとしては運行し、今後の橋梁等の改修費用を考えると利点が多い内容となります。
●なぜ夕張市は鉄路の廃止を申し出たのか
・夕張支線の全線が夕張市だけを走行しているということ
他の自治体との協議が不要であり、自分たちだけで結論を出すことが可能です。
・地元にバス会社を有していること
既に小中学校の統合でバスの運行に関しても市が関与する状況になっています。
・廃止したところで困る人が大幅に減っていること
22時台に運行していた列車が廃止となったため、現在の運行時間帯はバスとほぼ変わっていないこと
観光客入り込み数での列車利用客が微々たるものであること
高校通学での利用者も少なく、現行のバスで充分代替できること
・早く申し出ることで、有利な条件を獲得したいこと
留萌線交渉での増毛町の成果で、市としてはこれくらいあれば維持できると踏んでいる
・そもそも路線維持のための負担金をJRから求められても、それを拠出できないこと
・南清水沢(現南支所)にバス拠点を設けることは検討されており、ここに鉄道駅はありません。
参考:夕張市
ということが考えられます。逆を言うとこれからの夕張市の交通行政としてJRの運行は邪魔であるという言い方すらできます。
夕張市はほぼすべての集落にバスがまだ残っている地域だったりします(本数はともかく)そして、比較的集落が線上になっているので、バス路線も作りやすい土地です。
であれば、複数の交通機関より同じ会社の路線バスだけで運行していく方が効率がよく、接続点を整備することで市内どこにでも便利に移動できることになります。
このことから考えると、将来的には中央バスの高速便についても夕鉄バスへの移管を要望する可能性もあるかもしれません。
中央バスは夕張に拠点が無いため、利用客のほぼ見込めない岩見沢-夕張の路線を維持し、高速ゆうばり号を運行しています。既に札幌-栗山の便を6往復運行していますので中央バスとしては効率化が図れ、
夕鉄バスとしては急行線との一体運行で効率化が図れることになります。
●千歳-追分-新夕張の普通列車はどうする
今改正で廃駅となった東追分と十三里を有する本線側の普通列車については別途由仁町、安平町などとともに交渉する必要はありそうです。
大っぴらにはなっていないのですが、現在新夕張から千歳の高校に通学する生徒がおり、朝は普通列車が維持されているものの、帰りに関しては今改正で終発が大幅に早くなりました。このためこの生徒に関しては、帰りのみ特急への便宜乗車を取り扱っています。
そのため、形的には追分・新夕張に停車する特急列車へ宗谷線で行われた特別乗車票による特急乗車を認める形でこの区間のほとんどの普通列車は廃止が可能になります。
この場合時間帯的に特急が運行されない早朝と、利用単位が見込める夕方のみ普通列車を運行することで全ての利用客に特急料金を免除することなく導入できると考えられます。
(対象は定期券に絞ってもいい。また、青春18きっぷの特急利用可能区間や、元々普通運賃で乗車可能な区間を拡大する必要がない)
千歳-追分の普通列車については、比較的利用があることで現状維持にならざるを得ませんが、この区間も通学客は少ないことから、特急列車に統合という形が理想と思われます。