北海道の交通関係 JR北海道 札幌市交通局 北海道新幹線 北海道新幹線工事箇所 サイトアクセス傾向 乗車促進運動 北海道鉄道活性化協議会 札幌市電 高速バス 人手不足 北広島球場輸送 外国人観光客 路線バス 根室線 並行在来線問題 保存車両 夕張鉄道 車両更新 新しい施策 自動運転 サイト更新情報 話せる券売機 日高線 高規格道路 花咲線 夕張支線 廃線跡 留萌線 ダイヤ改正 地域交通 路線維持問題 輸送障害 読まなくていい日記 人口減少 バリアフリー 札沼線 室蘭線 高速道路 ICカード乗車券 徒歩 踏切 貨物線 えきねっと 鉄道高架化 新型コロナウイルス JR東日本 千歳線 自転車 深名線 列車位置情報 時刻表 北の大地の入場券 輪行 北の40記念入場券 空港民営化 観光列車 運行トラブル わがまちご当地入場券 一日散歩 地方と札幌 航空 フォーラム 夕鉄バス 空港輸送 宗谷線 JR九州 石北線 夜行列車 認知症JR事故死関係 東北新幹線 青い森鉄道 バス業界 道南いさりび鉄道 JR西日本 ホームドア 新幹線 LCC 国鉄廃止路線のその後 バニラエア 免許返納 釧網線
北海道の交通関係
北海道の交通関係サイト終了のお知らせ
当サイトは終了することといたしました。本件に関しましては以下をご確認ください。
当サイトは2023年12月末で閉鎖することといたしました
石北線の今後の維持を考える
2016/08/16
石北線は旭川と北見・網走を結ぶ路線です。ここ数年は減便や駅廃止などネガティブなニュースしか発生しない路線ですし、JR北海道が進めてきた新しいタイプの特急車両も導入されていません。
そして、営業赤字額も比較的大きい路線であり、特急列車の見直しが検討されています。なぜそのような見直しが必要なのか沿線環境などを調べてみました。
まず、石北線沿線区間の現在の状況を見てみましょう。
●沿線人口
石北線の沿線人口は
・網走市 37,000人
・大空町 7,500人
・美幌町 20,000人
・北見市 120,000人
・遠軽町 20,000人
・上川町 3,800人
・愛別町 3,000人
・当麻町 6,700人
・旭川市 343,000人
となります。沿線人口は微減傾向です。
北見市のように合併で非常に広い地域となり、鉄道利用が物理的にできない地域があることに留意が必要です。
旭川の都市圏として普通列車の流動があるのは上川までとなります。上川遠軽間は普通列車が1往復の他は特急と快速のみとなり、遠軽-北見-網走は都市内需要もあるものの量は多くはありません。
●沿線の道路事情
石北線は非常に険しい峠区間をいくつか通過します。道路も以前は同様に険しい峠道を通過する必要がありました。
しかし、旭川紋別自動車道の峠区間浮島IC-白滝ICが2002年に開通し、その後も区間延長がなされ、2010年には旭川-丸瀬布が連続して通行可能になりました。
旭川紋別自動車道は比布から丸瀬布までの供用全線が無料で走行可能となります。
現在主な区間の自動車での所要時間は
・旭川-北見 178km(旭川紋別道経由) 2時間55分
・旭川-北見 166km(石北峠経由) 3時間4分
・旭川-網走 214km(旭川紋別道経由) 3時間38分
・旭川-網走 220km(石北峠経由) 4時間13分
なお、札幌からの時間では
・札幌-北見 310km(旭川紋別道経由) 4時間29分(高速バス4時間40分・JR4時間40分)
・札幌-網走 347km(旭川紋別道経由) 5時間12分(高速バス6時間00分・JR5時間20分)
列車の速度は残念ながら車に及んでいない状況です。
なにより高速道路を経由することで、峠道の通過を避ける形での運転が可能になり、特に冬期は非常に運転が楽に、安全になりました。
なお、旭川紋別道は今年度丸瀬布ICから遠軽瀬戸瀬ICまでが開通しますし、旭峠道路や美幌バイパスなど途中途中に自動車専用道路が提供されています。
最終的には旭川紋別道から生田原道路-旭峠道路-遠軽北見道路(整備未着手)-美幌バイパスと接続される予定となっています。
また、札幌-帯広-足寄等道東道を経由する北海道横断自動車道(十勝オホーツク自動車道)も建設中で、小利別-訓子府が今年度開通予定となっています。(うち足寄-陸別は整備未着手)
これにより小利別-北見中央-北見東
札幌-北見に関しては、歴史的に旭川経由のルートを使用していますが、高速全通時には道東道ルートの方が早くなると考えられます。
この結果最終的な札幌-北見の所要時間は4時間程度、札幌-網走の所要時間は4時間半程度まで短縮されるものと考えられます。
現在も高速バスは道央道や旭川紋別道の通行止め等の場合に道東道経由で迂回運行することがあります。
北海道商工会議所:北海道高規格幹線道路網図
●沿線の空港事情
北見網走地区の最寄り空港は女満別となります。ちょうど北見と網走の間に有り、道内へは新千歳空港便が就航しています。JAL・ANAあわせ7往復、50席~70席クラスの航空機が使用されます。
正規運賃は26,300円で非常に高価ではありますが、フライト時間は40分ほどとなります。札幌市内から北見市内、網走市内とも2時間から2時間半程度の所要時間となります。
●札幌と石北線(北見)との流動
国土交通省の政策資料「生活圏間流動表 出発地-目的地」
の「交通機関別流動表」から見てみましょう。
この表では交通機関別の流動(利用者数)がわかります。なお、国土交通省的には北網走と旭川はあくまで同じ道北圏内のため、旭川-北網走についてはデータが提供されていません。
最新データは2010年度になります
①全機関
出発地-目的地 年間(千人/年) 1日あたり(人/日)
札幌-北網走 666 1,825
北網走-札幌 560 1,534
②航空
札幌-北網走 46 126
北網走-札幌 44 121
③鉄道
札幌-北網走 115 315
北網走-札幌 115 315
④バス
札幌-北網走 90 247
北網走-札幌 96 263
⑤乗用車等
札幌-北網走 415 1,137
北網走-札幌 306 838
なお、北網走地区の中心地は北見となりますので、札幌-北見流動としてとらえることができると考えられます。
あくまで交通OD調査は利用実数でないことと、地域内流動(この場合旭川-北見等)は含んでいないことを留意しなければなりません。
北見市は地域の中核都市ではありますが全機関でも1日1500人程度しか札幌との流動が無いのはかなり意外な数字です。
そして全体の流動の半分も公共交通機関はシェアできていません。移動のメインは自家用車であるということが言えます。
実際私の経験上も出張のほとんどは社用車によるもので、公共交通機関を使うことは非常に少ないことがあります。
これは広大な土地の現地移動を考えると、車が便利であること、そして、道路事情が比較的良いことが上げられましょう。
特に峠を通過することがなくなったことは冬期の運転の「気楽さ」が全く違います。
ちなみにJR北海道が2016年4月に発表した「方面別ご利用状況」(特急車両の老朽・劣化の状況についてに内包)
によると石北線特急の利用客はこのようになっています。
区間 1991年 2015年各1日あたり(人/日)
旭川-上川 1,492 778
遠軽-北見 1,221 602
北見-網走 617 301
上記の札幌との比較で考えるとJRの利用客に旭川からの利用が多いことが伺えます。これは実感としてあります。
また、JRとバスの客数差異が少ないことが上げられます。10往復とほぼ日中1時間おきに出発するバスは便利で、続行便が出ることも珍しくありません。
ただし、石北線の特急利用者が減る理由をバスへの移動ととらえることは危険であると考えます。実際に多いのは自家用車利用なのです。
●列車とバスの運賃
・札幌-北見
JR 9,050円 往復12,340円(札幌往復限定きっぷ)
高速バス 5,340円 往復10,050円
・札幌-網走
JR 9,910円 往復14,400円(札幌往復限定きっぷ)
高速バス 6,390円 往復12,040円
なお、乗用車の札幌-比布JCTの高速料金は3,710円となります。旭川紋別道および、新直轄方式で建設される北見道路等も含め、比布以東の自動車専用道料金は無料です。
●列車とバスの本数と原価
JRの特急オホーツク号は現在4両編成で定員は200人程度となります。運行本数は4往復ですので提供座席数は片道約800席。
高速バスドリーミントオホーツク号は10往復(うち1往復は北見発着)となり、片道約300席となります。列車は増結を、バスは増便を行いますのであくまで最低限の運行時の提供座席数です。
バスの運賃からバス運行の原価は5万円程度、1便あたり約10人が乗車すればほぼ収支が均衡すると考えられます。1便あたり平均25人程度が利用している状況ですので、バスの収支は非常に良いことが伺えます。
なお、バスは中央バス・北見バス・網走バスの共同運行のため、美幌などの拠点で運転手交代が可能、一部便や区間ではワンマン運行も行われていますので、これも効率化される理由になります。
(所要時間の異なるバスは夏季ワンマン運行を行っている)
道路維持の費用を燃料税だけとなるバスに対し、鉄道の線路維持や除雪費用はすべてJRの持ち出しとなります。つまりその分の経費を運賃として利用客が負担しなければなりません。
石北線の営業費用は年間52億4700万円で、収益が16億6700万円ですので、差し引き35億8000万円の赤字となります。1日あたりの赤字額は793万円です。
これを特急利用客だけで埋めるとして、特急利用客がざっと400往復800人ほど増えればほぼ赤字が解消することになります。
つまり、バス利用客が全て鉄道を使っても、石北線の赤字は解消しないのです。
●石北線のいままでとこれから
・石北線は維持前提で投資が行われていた
石北線の合理化は1984年にはじまります。北海道は自動制御が遅れていたこともありますが、すれちがいのできる各交換駅に駅員を置き、通行証であるタブレットを介して運行していました。
これを自動化して、途中駅の多くを無人化することでのコスト削減を行いました。この自動化で駅だけでなく信号場も無人化、また、貨物支線も1987年に廃止されています。
このため貨物列車は宗谷線北旭川駅へ運行するためにスイッチバック運転をしなければなりませんが、常時貨物列車が運行するわけではないので、線路維持よりも列車運行の手間を取ったものです。
民営化後は夜行運行を中止、普通列車本数も削減されています。積極的な投資をせず縮小均衡で維持していこうという努力があります。
しかし、特急については最低限の投資が行われています。
陳腐化していた車両のリニューアル、トイレ洋式化、出力増大(所要時間短縮には繋がらないものの、冬期の安定運用に寄与)そしてグリーン車の半室普通車化です。
つまり、車両編成を増大させることなく運用させる工夫が行われました。現在の4両編成約200人定員という形となります。
これでも年平均の乗車率は45%程度となり、充分な輸送力となります。
また、旭川-上川を中心に駅を高速で通過できるよう一線スルー化工事も行われています。
大きなスピードアップではありませんが、新車両導入によるスピードアップができないなか、こつこつとした投資は行われていました。
・駅廃止といくつかの駅の交換設備廃止
除雪や設備自体を自前で行わなければならない鉄道にとって、駅設備の維持管理も大きな課題となります。特に乗降客の非常に少ない駅であっても巡回しての除雪作業などには人手が必要になります。
また、幹線である石北線は列車本数の割に交換駅が多く、交換駅のポイント維持も必要な作業です。
このため昨年度白滝付近や金華などの駅廃止を行っています。交換設備も常紋信号場を停止しています。
今後本数の減少で、いくつかの駅、信号場の交換設備も停止されるように考えられます。また交換設備を廃止しなくても、側線の使用停止、一部駅の安全側線停止も考えられます。
・特急の札幌直通を維持するには
北見市などが反対しているようですが、特急列車の旭川乗り換え案がJR側から打診されているようです。
これは札幌-旭川を現行「スーパーカムイ」に、旭川-網走を現行気動車特急で輸送することで、使用車両数を削減できるというものです。
元々札幌-旭川は30分から1時間おきに特急が走り、足の遅い特急気動車がその間を縫う形で走っており効率的ではなかった面があります。
この乗り継ぎでは乗り継ぎ時間を含めても現行の所要時間とほぼ変わる事はなく(元々直通特急の札幌-旭川の速度が遅いため)不便は最小限になります。
また、特急利用客の札幌直通客が以前より少なく、旭川発着の利用客も多いことも上げられましょう。
ただし、これの要因は旧型特急気動車の寿命および新型特急気動車の両数不足から来るものですので、新型気動車を導入できるように支援することでこれを避けることもできそうです。
島根県と鳥取県は山陰本線高速化事業への拠出および老朽気動車を新型車両に置き換えるために無利子でJRに貸し付け、特急車だけで18両を製造しています。
北海道でも宗谷線高速事業で同様に車両を保有しJRに貸し付けることでスーパー宗谷を運行している実績があります。
仮に石北線沿線が20両程度貸し付けることで石北線特急の札幌直通が今まで通り維持できますし、逆に旭川止まりで良いとするなら増発できることになります。
現行の設備であっても新型車両による短縮は20分程度が考えられ、軌道強化工事も同時に行えればさらに5分程度の短縮が可能です。これは現行の道路利用と変わらない程度となります。
とはいえ宗谷線高速化のような劇的な時間短縮も難しい状況であるので、沿線自治体も拠出には慎重にならざるを得ません。
・しかし沿線の意識は薄い
北見や網走市のホームページで石北線関係の検索を行った結果「要望活動」がいくつか出るだけで、主体的な関わりを持とうという考えは無いようです。
要望ということは「自分たちは金を出さないがいつまでも赤字路線を維持しろ」という意味合いになります。
また、高速バスの増便や高速道路の延伸が続いており、これに関しては市は金銭的な関与はしなくて済みますし、実際自分たちが石北線を使っていないという考えもできます。
こと沿線から札幌・旭川への流動でのJR利用は現状が維持されていれば充分というスタンスであったと考えられます。
その結果JRも長い間車両もダイヤも変更することなく運行を続けてきました。
しかし、少なくともこのあと10年以内に車両設備の更新が必要で、そのためには現在赤字である石北線に投資は難しい状態です。
その結果が旭川乗り継ぎ案であり、これも両数の確保ができなければ減便も検討されることになります。
先の計算通り、全ての公共交通利用客が石北線を利用しても石北線の赤字体質自体が改善されるわけではないのです。
・北海道のリーダーシップを問う
結局は北海道が札幌と各中核都市との交通網をどうしたいのかというグランドデザインの観点が不足しているように考えられます。
札幌と函館・釧路は陸路でもほぼ4時間以内で結ばれます。
北見も先のとおりほぼ4時間半を達成していますし、高速道路の延伸でほぼ4時間となることは確約されているとも言えます。
北海道としてはこの道路での達成をもってヨシとしているように考えられるわけです。
もちろん二重化としての高速道路と高速鉄道があることが理想とはいえ、今の石北線の利用者数から投資効果を見いだすのは難しいと考えていると思われます。
しかし、JRが単独で行った函館線高速化と、道も関係した根室線・宗谷線高速化での実績もあり、ある程度の利用客減少の歯止めがかかったことは事実で、
石北本線は車両だけでもそれなりの短縮効果を生むだけに、道の関与は必要であると考えます。
そして、道が関与しないのなら石北線に関しては縮小を繰り返し最終的には廃線せざるを得ません。
個人的には季節貨物列車の維持と同列に特急の維持を優先し、地域輸送の普通列車については縮小、駅廃止、交換設備の集約での効率化しか石北線の生きのこる道は無いと考えます。