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JR北海道平成29年度決算を確認する
2018/05/11
先ず、報道関係を紹介する前にJR北海道から発表になった「平成29年度 決算」を見てみましょう。報道では「赤字が増えたのは北海道新幹線の赤字が増したから」としていますが、ちゃんと実数で確認しましょうね。
ところで、JR北海道の決算を見る時に大事なのは「単体決算」なのか「グループ含む連結決算」なのかというのが大事になります。JR北海道の鉄道事業としてどの程度のポテンシャルがあったのかというのは単体決算で見なければなりません。そういう意味で過去に「黒字決算」だったJR北海道が単体で単純な黒字決算を出したことはありません。改めて確認しておきますが、JR北海道は「赤字が約束された鉄道会社」であります。過去に鉄道事業が黒字になったことはありません。その赤字額をどう圧縮し、何で補填して黒字決算をしていたのか?というのを踏まえていないと単年度の決算を見て「赤字だ!けしからん!」と言っても無意味です。
それではおさらいを含めて過去の決算と比較していきます。JR北海道サイトには平成24年(2012年度)からの決算情報が掲載されています。対前年比がありますので平成23年のデータも見ることができますので、これと比較していきましょう。あくまでJR北海道の単体での決算で見ていきます。
まず、収入面。「鉄道運輸収入」が鉄道利用者が支払った運賃等となります。728億円を確保しています。うち約10%をわずかな区間でしかない北海道新幹線が占めています。
なお、JR北海道が発足した昭和62年(1987年)は623億円、ピークであった平成8年(1996年)は800億円の収入がありました。その後730億円程度で推移し平成21年(2009年)に700億円を割り込んでいます。その後平成28年(2016年)に727億円まで戻したのは北海道新幹線の開業以外の理由がありません。
ところで極端に減らした2009年は何が起きた年でしょう? 道東自動車道占冠-トマムが開通し、日勝峠区間が開通した年です。もう一つ、大きな出来事があります。いわゆる「1000円高速」が実現した年です。このときの休日の鉄道利用客は10%以上の大幅な落ち込みとなりました。その後2010年高速道路の実質無償化がおこなわれ、これは東日本大震災後の2011年6月まで続けられました。
平成29年度の決算を収入面で見ると、想定には届かなかったものの平成29年度の728億円は悪化しておらず概ね良好な成果だったと言えましょう。JR北海道直営の関連事業(旅行業、不動産賃貸、線路使用料など)を含めて897億円を確保しています。
では、次に支出の面を見てみます。JR北海道は平成27年決算から営業費用の内訳を公開するようになりました。前年を含めて平成26年以降の内訳を比較できます。
まず、北海道知事も含めた多くの「識者」に批判されているJR北海道の人件費です。466億円を計上しています。JR北海道の人件費がピークだったのは平成4年(1992年)の830億円。鉄道運輸収入以上の人件費がかかっていたわけです。当時の職員数も現在の倍近くおられたわけですね。人件費が鉄道運輸収入以下になったのは平成10年。その後も人件費を減らし続け、現在に至ります。
次に修繕費です。379億円を計上しています。JR北海道は発足以来国鉄の資産を改修し使用していますので、発足直後にある程度一括して修繕を行い昭和63年に304億円の修繕費を投じて以来200億円以下を保ち続けました。これは本来だったらもっと必要だった修繕費を「ケチった」結果単体利益を出そうとしていたとも言えます。修繕費が最も少ないのは平成9年の144億円ですが、この頃がスーパーおおぞらなどの鉄道設備投資が多かった時期でありますし、北海道の出資を受けた北海道高速鉄道開発による根室線等の改良で相対的に修繕費が少なく済んだ時期でもありましょうか。
平成23年(2011年)以降修繕費は加速度的に増えています。言わずと知れた特急スーパーおおぞらの火災事故が車両や線路の適切な修繕を怠った結果であることが明るみに出たことであります。現在の修繕費は過大ではありますが、ここでちゃんと整備せずに事故を起こしてはいけませんし、元々このくらいの修繕費をかけなければ安全な運行が担保できないはずで、今これを重点的に行っているということになります。
続いては減価償却費です。減価償却費は直接出ていく費用ではありませんが、設備投資した結果で減価償却されるわけですから、ここが大きく出ているということは、過去に大きな設備投資を行ったということになります。JR北海道の最近の大きい設備投資はもちろん北海道新幹線です。北海道新幹線の線路設備などは鉄道・運輸機構の保有で直接的にJR北海道の資産ではありませんが、車両、駅などの営業設備はJR北海道の資産になります。新幹線開業前からこれらの投資ははじまっており、平成26年には437億円の設備投資をしています。また、在来線特急車両や札幌圏の新型電車などの投資もここ数年重点的に行っておりますので、今後も減価償却費として計上される金額は高額を維持すると思われます。
営業収益から営業費用を引いた金額が「営業利益」です。ここが「過去最大の赤字」となったのが平成29年のJR北海道の決算です。もちろんこの赤字は少なければ少ないほど良いのですが、この赤字を減らすには営業収益を上げる=「乗客を増やし、乗客から多く運賃・料金をいただく」か、営業費用を減らすしかありません。ではその赤字を「減らせるアテ」としては、残念ながら存在しないのも事実な訳です。これは「鉄道を営業している以上減らせない項目」が営業費用として存在するのですから、費用を減らせというのは現状を維持する以上不可能なのです。
では、営業収益を上げるという意味で考えますと、仮に開業年並みに北海道新幹線が使われたとして改善効果は20億円程度ですから結果的に500億円程度の「営業利益(赤字)」となるわけです。
つまり「北海道新幹線の収支悪化」を赤字の「主要因」として上げるのは決算書上無理があるということになります。
さて、決算書を読み進めましょう。あまり他では見かけない「営業外利益」の項目です。「経営安定基金運用益」ってのは、何度かJR北海道の経営問題が出てきた時にマスコミが解説してると思いますし、詳しくはちゃんと調べてって話ですが、とかく、国鉄分割民営化時に収益基盤が弱い北海道・四国・九州に経営安定基金を渡し、これを運用した利息で赤字を解消しなさいなと用意した金です。ちなみにこの基金は「国鉄長期債務等として処理」されていますので「国の金」でも「国民の税金」でもないことは頭の片隅に入れておきましょう。
さて、この基金運用益が金利低下で少なくなったことがJR北海道破綻の要因と繰り返し報じられていますが、確かに昭和63年(1988年)に498億円あった運用益は平成7年(1995年)頃から急速に悪化、300億円を切るようになり、この頃から「それに合わせ修繕費を節約して」帳尻を合わせていることがわかります。JR北海道など3島3社が運賃値上げを申請し、鉄道運輸収入は一時的に改善したもののその後の景気悪化とともに運用益、運輸収入とも下がっていくことになります。さて、平成25年から27年までの3年(2013年-15年)極端にこの運用益が改善して350億円近くに改善しています。これは「経営安定基金評価差額金」として資産を時価換算した差額金をここに含むためです。「経営安定基金」がこの低金利時代に利息を産むのはおかしな話です。そこにはいくつかのからくりがあり、そのなかのひとつの方法です。極端を言えば「鉄道・運輸機構からの補助金」という言い方もできます。これも税金ではなく本州3社の新幹線利用料などが原資になっているとも言えます。「JR本州各社はJR北海道を助けるべきだ」と言う声は、実際には鉄道・運輸機構を仲介に行われているとも言えるのです。
さて、せっかくの基金運用益、そして債権受取利息(これも鉄道・運輸機構からの実質的な補助金)を受けても経常利益は199億円の赤字になりました。特別損益は主に資産の売却等があったと思われますので、これで純利益を109億円の赤字にしています。
さて、ここまで見まして、JR北海道の赤字の要因が
北海道新聞 2018年05月11日
JR北海道、過去最大の営業赤字416億円 新幹線悪化
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/188410
> JR北海道が10日発表した2018年3月期連結決算は、本業のもうけを示す営業損益が416億5300万円の赤字となり、4期連続で赤字額が過去最大を更新した。純損益も87億3500万円の赤字で2期連続の純損失。開業実質2年目だった北海道新幹線の収支悪化などが響いた。
このような「北海道新幹線の収支悪化」が要因のように書くのはミスリードに思えるわけですね。北海道新幹線の収益が期待通りだったとしてもこの赤字は避けられないというのが現状です。北海道新幹線そのものの赤字が100億円程度との報道もあります。
日本経済新聞 2018年05月11日
北海道新幹線の営業赤字100億円 JR北の前期
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30324160Q8A510C1L41000/
> JR北海道が10日発表した2018年3月期の連結決算によると、北海道新幹線の営業赤字は100億円と前の期(54億円)に比べ2倍近くに増えた。開業効果が一巡し、利用者数が落ち込んだうえ、インフラ修繕費がかさんだ。
>JR貨物が17年度、JR北に支払った線路使用料は20億円だったのに対し、貨物列車が走行する線路の修繕費は200億円規模に上った。 連結営業損益は416億円の赤字(前の期は398億円の赤字)と過去最大の赤字だった。
北海道新幹線をやめても青函トンネルの維持管理費用はかかりますし、70億円以上の運輸収入も得られないわけですから、北海道新幹線は「キー」ではありますが、これを赤字の要因とするのはやはり無意味な議論となります。
さて、この中で出てきたJR貨物の線路使用料についてです。JR貨物は自前の線路を持たずJR北海道の線路を使って貨物列車を走らせています。北海道新幹線と共用する青函トンネルも含めてJR貨物がJR北海道に支払う線路使用料は20億円程度。これは過去の決算書では平成23年は10億円、平成25年は16億円を計上していますが(現在この数字は公開されていない)本年は20億円と少々増えてはいる模様。しかし、貨物列車だけが要因でないとはいえ「貨物列車が走行する線路の修繕費は200億円規模」からすると非常に少ない金額であると言えます。
旅客の鉄道輸送量は増えていて、収入も前年並みを確保、関連会社からの収入も含めた連結決算では純利益73億円の赤字と昨年より改善したことも考えますと「助け方」によればJR北海道を黒字転換することは充分可能ですし、手遅れになる前に方策を考えなければなりません。その方法は一部のメディアや識者のいう「観光列車」やちょっとした客数増加ではなく、もっと根本的な「JR北海道という会社をどうするべきか」という観点でなければなりません。
本来必要なのはJR北海道を残すという議論ではなく、北海道の交通網をどう発展、維持していくかという議論なはずです。逆に赤字が出るからまともに考えますが、赤字が出なければ「黒字会社がかってにやればいい」になってしまう。これでは交通網を考えるということから逸れてしまいます。たとえば現在の宗谷線や石北線のような鈍足な災害の多い路線を今のまま残す方が問題が大きいわけです。本当に残すなら完全に新規路線に付け替えるくらいのドラスティックな改革が必要です。