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JR北海道の決算に見る北海道新幹線の赤字額
2018/05/13
さて、JR北海道の平成29年度決算が出て、会見内で北海道新幹線の赤字が100億円規模になるという件で早速北海道新聞はこのような内容の社説を公表しています。
北海道新聞 2018年05月13日
道新幹線の赤字 縮減の道筋示すべきだ
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/188972
JR北海道が発表した2018年3月期決算で、北海道新幹線の赤字が約100億円に上ることが明らかになった。
2年目を迎えて開業効果が薄れたことや、青函トンネル内の修繕費増加などが背景にある。
30年度の札幌延伸まで厳しい収支が予想されていたとはいえ、赤字額の大きさに驚く。
JRは、国への支援要請も含め、早急に新幹線の赤字を縮減する具体的道筋を示すべきだ。
同社単独で維持困難とされる10路線13区間では、沿線自治体が負担を求められている。
新幹線がJRの経営の足を引っ張り続けるようでは、維持困難路線の地元の理解は得られまい。
JRは丁寧に説明を尽くさなければならない。
前期より2割減収した新幹線の赤字幅は103億円と見込まれ、ほぼ倍増する。
JRが赤字額を公表した経緯にも、首をかしげざるを得ない。
100億円を超す赤字は先月、財務省の財政制度等審議会で示された。JRは同規模の赤字を想定していたという。
維持困難路線の年間赤字の合計約160億円と比べても、決して小さくない額である。経営にも深刻な影響を及ぼす以上、早期に公表するべきだった。
一方、道新幹線固有の事情も考慮する必要があるだろう。
貨物列車との共用で管理経費がかさむ。東京から来る10両編成の列車は空席が目立ち、効率が悪い。2年目からは車両検査や、青函トンネル内の老朽設備の交換も本格化し負担が増したという。
そもそも青函トンネルは国策として旧国鉄時代に造られた。
国は維持管理に一定の負担をしてきたが、十分な支援を行う責務がある。
民営化当初に定められたルールで、JR貨物がJR北海道に支払う線路使用料が低く抑えられているのも課題の一つだ。
経営悪化や路線存廃問題にも関係しており、JR北海道は地域の視点に立ち、国にルールの変更を求めてはどうか。旅客と貨物の輸送網を両立させて維持するため、国も見直しを検討するべきだ。
新幹線の利用底上げの努力も大切だ。JRも観光業界も、開業当初の熱意が感じられない。
外国人客は長旅を楽しむ人が少なくない。新幹線で道南に入った後、道東や道北の鉄路も使って周遊するツアーなど、観光の魅力づくりに一層力を入れてほしい。
北海道新聞に限らず比較できない数字を使って比較して尤もらしく話を組み立てるのは毎度の話ではありますが、今回も北海道新幹線の100億の赤字と維持困難路線の赤字160億を比較して「決して小さくない額」と言ってるわけです。また、公表が遅いとかいう話も「何故公表しなければならないのか?」という面もあります。元々各路線の収支は公表していなかった情報で、単独維持可能ではないから公表された数字な訳です。
さて、北海道新幹線の赤字103億円について、奇妙に思いはしないでしょうか?本当にこの赤字が毎年続くのなら北海道新幹線をやめてしまえという意見は納得できる話になります。しかし、この数字が出ても新幹線をやる理由はなんなのか?と考えると「新幹線をやらなければ決算はどう推移していただろうか?」という観点になります。
まず、北海道新幹線を作ったのはJR北海道ではありません。つまりJR北海道は北海道新幹線の建設費を負担していません。ただし、北海道新幹線を運営するための「利用料」を支払う必要があります。この利用料は年1億円ちょっと。北海道新幹線は最初から区間運行で「利益が出ない」ことを想定されているわけです。ちなみに九州新幹線は年102億円で、これを上場時に経営安定基金で全額支払い済みにして、結果九州新幹線は単年度決算的に黒字になるという形になっています。
また、JR北海道は北海道新幹線の運営コストを年80億円、青函トンネルなど北海道新幹線に固有のコストとして年34億円。あわせて年114億円のコストがかかると予想しています。これに対して運輸収入は初年度103億円、昨年度79億円ですからこの時点で赤字な訳です。つまり北海道新幹線は現在の新函館北斗開業時点で赤字になることが決定されていることがわかっています。
さらに減価償却費を計上しなければなりませんから、北海道新幹線の赤字100億は多いとは思いますが、そうおかしな数字でもないわけです。
では在来線時代の収支をみますと、海峡線と江差線の収入は年45億円、支出は年73億円ですので年28億円の赤字となります。これは減価償却費を含んでいませんので、直接的に比較すると北海道新幹線となった初年度は赤字が改善、昨年度は赤字が増大していることになります。新幹線の利用客を伸ばす必要はあるわけです。そして、JR北海道が公開している北海道新幹線の開業時予測では「北海道新幹線に固有のコスト」に貨物列車併用のためのコストが年7億円としています。貨物列車を走らせるためにJR貨物がJR北海道に支払っている線路使用料は年20億円。これは全線を通してです。しかし、貨物列車を通すだけの費用として青函トンネル区間だけで年7億円。このコストもJR北海道が負担しています。
先の計算から「北海道新幹線に固有のコスト」がある程度解消された、他社のような「普通の新幹線」であるならば、あの輸送量ですら収支がほぼ均衡するということがわかって頂けるかと思います。北海道新幹線の赤字の要因は「青函トンネル」という極端な設備、貨物列車との線路共用、そしてそれにより減速を余儀なくされ「遅い新幹線」であることによるものです。この状況が続く限り北海道新幹線の特急料金値下げなどできるわけもなく、札幌延伸時の利用者数にも影響を与えるわけです。
この部分を批判せずに北海道新幹線は赤字だと叫んだところで意味が無いわけです。札幌開業がされた後、単純な札幌開業時の利用者数は1万7000人/日、これは単純に年間600億円以上の収入増となります。現在の運輸収入728億円と合わせて1300億円以上です。「北海道新幹線に固有のコスト」は新函館北斗以北ではほとんど発生しませんので、「黒字化」することになるんですよ。さらに函館線の経営分離がありますので、この分の赤字額もそのままなくなります。JR北海道は北海道新幹線札幌開業で黒字化と上場というのが政府も含めた「青写真」ではないかとおもえるのです。
(もちろんこれに減価償却費、新幹線施設利用料などで、ほぼ収支が均衡になり極端な黒字化はしない)
さて、よく比較されるJR九州の鉄道運輸収入。1987年の発足時から1100億円程度で推移し、九州新幹線新八代-鹿児島中央開業時(平成16年・2004年)で100億円増加、その後また1150億円程度まで落ち込み、平成23年・2011年の全線開業で1400億円まで増え、平成27年度に1500億円になったわけです。新幹線がどれだけ輸送量に対するポテンシャルを持ってるかというのがわかるわけです。鉄道利用を増やすのはもちろん地道な努力が必要ですが、結果的に「圧倒的な速度」で移動できる新幹線のインパクトがものすごく大きいし、収支改善にも寄与するわけです。
これに加えて、新幹線開業で並行在来線を分離しますので、赤字額も減る傾向にあります。2004年以降経営安定基金無しで経常利益が黒字化したのはそれが要因です。(鉄道事業赤字も大幅に改善している)
https://www.jrkyushu.co.jp/company/info/data/seiseki.html
さて、北海道新幹線の「黒字化」の可能性が見えたところでJR北海道自体の黒字化はできるのかという問題があります。これをするにはとかくたくさん新幹線を使って貰うしかありません。そのためにも「青函トンネル区間の高速化」が大事なわけです。今の所要時間のまま札幌に開業しても東京-札幌は5時間ってところです。これがJR東日本区間の完全高速化、そして青函トンネル区間の減速解除で4時間半程度には短縮できるわけですから、この差で使用客数が大幅に変わることくらい誰の目にも明らかなことです。
北海道新聞の言う「道新幹線の赤字 縮減の道筋」が見えているからこそ今青函トンネルを含めた共用区間の投資を行い赤字が増しているのも一つの理由であることも考え、現在の北海道新幹線の利用客増加を進めたいところです。