北海道の交通関係

札沼線「廃止」報道への違和感

2018/06/01
札沼線の北海道医療大学以北は非常に利用客が少なく、昨今のJR北海道の経営問題でも廃止を含めた検討が行われている区間です。沿線自治体はこれに反対していますが具体的な鉄道維持への努力を行った形跡は無く、このまま廃止されるのが濃厚ではあります。

とはいえ、ここ最近の報道では廃止が確定したような報道が相次いでいますが、実際にはどのような地元での動きがあるのかを詳細に報道していないように思います。あくまで沿線外の私が調べた限りの地域の動きを探ってみます。

まず、報道を見てみましょう。

 

日本経済新聞 2018年05月29日
月形町、札沼線存廃で住民説明会 厳しい現状に理解
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31111600Z20C18A5L41000/
月形町は29日、町民らへの説明会を開いた。町は利用が低迷する現状や、JR北から「存続は困難」などと回答があった内容を説明。住民からは利用が少ない実態に一定の理解を示す声があがった。

 

毎日新聞 2018年05月30日
札沼線バス転換 町長、理解求める 月形で住民説明会 /北海道
https://mainichi.jp/articles/20180530/ddl/k01/020/032000c
月形町で29日夜、住民説明会が初めて開かれ、町民ら約40人が参加した。上坂隆一町長は、JR北が「路線存続は困難」と町に回答したことを踏まえ、6月中に最終判断を下すことに理解を求めた。

 

HTBニュース 2018年05月30日
JR札沼線の線区存廃で月形町とJRが住民説明会
https://www.htb.co.jp/news/archives_1484.html
月形町とJRによる初めての住民説明会が29日に行われました。 月形町で開かれた説明会には住民およそ45人が集まりました。
町は今回の説明に対する住民からの意見を集めたうえで、今後、議会で議論し、線区の廃止を認めるかどうか最終的に判断します。

 

北海道新聞 2018年05月30日
札沼線バス転換 JRや道、支援に積極姿勢
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/194331
JR札沼線北海道医療大学―新十津川間について、石狩管内当別町を除く沿線3町が廃止容認に傾き、札沼線は廃止、一部バス転換となる見通しとなったことを受け、JR北海道や道は沿線自治体の支援に積極的に取り組む姿勢を示した。JR北海道幹部は「個別協議の中で各町の意向を確認していく」と慎重な姿勢を示しつつ、「よりふさわしい交通体系の構築や必要な支援について、地域と十分相談していきたい」と話す。

 

北海道新聞 2018年05月30日
廃線「ついに来たか」 JR札沼線沿線 バス転換、利便性に注文
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/194314
JR札沼線北海道医療大学―新十津川間(47・6キロ)について、沿線3町が廃止、一部バス転換を容認する方針を固めたことで、札沼線は1935年(昭和10年)の全線開通以来の大きな転換点を迎えた。地元からは諦めや失望の声が上がる一方、バス転換後の利便性向上への注文も出た。

 

北海道新聞 2018年05月30日
札沼線バス転換 支援策確保、廃線へかじ 月形町長「利便性守れる」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/194334
> JR札沼線北海道医療大学―新十津川間の存続を訴えてきた空知管内月形町の上坂隆一町長が、廃止容認の方針を固めたのは「便数が少なく所要時間もかかる鉄路を維持するより、バスの方が町民の利便性を守れる」と判断したためだ。 「情報を素早く公開して丁寧な議論を」。29日夜に月形町が開いた住民説明会では、町の姿勢に対する不満の声は出たが、札沼線廃止への明確な反対意見はなかった。上坂町長は終了後の取材に「町内の公共交通網整備も急いでおり、ずるずる引きずるわけにはいかない」と述べた。

 

朝日新聞 2018年05月30日
岐路の鉄路)「通勤圏」可能性探れないか
https://www.asahi.com/articles/CMTW1805300100004.html
> JR北海道が廃線・バス転換を提案している札沼線(北海道医療大学―新十津川間)について、沿線で最も強く反発する月形町は29日、住民説明会を開き、約40人が参加した。町は北海道医療大学―石狩月形駅間の存続を強く求めたが、JR北から「鉄道として残すことはできない」と最終回答を受けたと報告。バス転換を含む最適な地域の交通体系について、町民の意見を聴いた。 出席者からは「月形町は札幌と鉄路でつながっているのが希望。通勤圏として可能性を探れないか」「月形高校の通学生の親だが、バス転換となれば不安だ」などの意見が出た。

 

UHB 2018年05月30日
見直し対象JR札沼線 月形町バス転換容認へ 住民説明会では通学に不安の声 北海道
https://uhb.jp/news/?id=4750
月形町 上坂隆一町長:「(JRは)鉄道として残すことはできないと言っている。断腸の思いでその説明をうかがいました」 月形町の住民説明会には約40人が参加し、町とJRからこれまでの交渉の経過などについて説明を受けました。 町は一貫して存続を求めていましたが、JR側は廃止を求める姿勢を崩さず、町はバス転換を容認する方針です。
これについて、JR通学をしている生徒の保護者から配慮を求める意見が出され、町も利便性の確保に責任を持つとし6月に開かれる議会の結果を踏まえ、最終的な結論を出したいとしています。

まず、札沼線(北海道医療大学-新十津川)のここ数年の沿線町の対応についておさらいしておきます。
2016年3月 札沼線の一部列車を減便。これによって浦臼-新十津川は朝の1便のみの運行となる。(逆に言うと民営化後30年変わらずダイヤは維持されていた)
2016年11月 JR北海道が「当社単独では維持することが困難な線区」として上げた13線区、区間のうち「鉄道よりも他の交通機関の方が適している」とした3線区のうちの一つとして発表
2017年1月 新十津川町での住民説明会
2017年2月 浦臼町での住民説明会
2017年7月 沿線4町意見交換会。当別町長が新十津川-滝川延伸に言及(ただし他の町の理解得られず)
2017年8月 月形町が月ケ岡駅の改修を表明。(国道沿いのため観光拠点化するのが名目)
2017年8月 沿線4町意見交換会。北海道の鉄道ネットワーク・ワーキングチームフォローアップ会議の岸邦宏座長を招くが「利用促進を図ると言うことだけでは難しい」ことを聞く。
2017年10月 「札沼線存続」を銘打った各町長が案内するバスツアー開催。中央バス子会社に委託し1万5000円あまりの参加費を徴収。鉄道には浦臼-新十津川の260円区間のみ乗車する「存続企画」。
2017年11月  沿線4町意見交換会。新十津川町の熊田義信町長は「札沼線の現状維持は非常に厳しいという認識。浦臼町・月形町までの存続が可能かどうかについてJR北海道の考え方を聞きたい」
2017年11月 北海道新聞にいすみ鉄道社長鳥塚氏のインタビュー記事掲載。「1日1往復しかない札沼線の新十津川駅なら、駅前に全3室のホテルを造って地元が運営したらいい。「列車がないから泊まって」と地産地消の料理でもてなすだけで全国区になる。」などと無責任な放言。
2017年11月 沿線4町意見交換会。JR北海道西野副社長を迎え、浦臼町 斉藤純雄町長:「浦臼まで残れるか、月形までならどうなのか、という思いが少しあったが、この数字を見たら、希望も吹き飛びました」とのコメント。
このときはJR北海道側も踏み込んだ「高校生の利用が多い石狩月形駅など途中駅までの運行費用の試算についても、利便性を落とさずに、車両や乗務員のやりくりなどでできるだけ費用を減らせるダイヤを「白紙から考えた」と踏み込んだ。ただ、大幅削減にはつながらず、月形、同管内浦臼の両町長が「厳しい」との言葉を漏らしたほどだ。」という地元にかなり配慮した試算も行っているが、その試算すら「厳しい」とのコメントだった。
2017年12月 「札沼線沿線の自治体は、JRの路線維持について協議を深める検討会議を立ち上げることにしました。」との報道。あくまで「意見交換会」だったものを「路線維持を要望」とするとの意思。いすみ鉄道視察を発表。
2018年1月 「鉄道ネットワーク・ワーキングチーム」にて「宗谷、石北線維持」を盛り込むとの報道。月形町反発を表明。
2018年1月 沿線首長いすみ鉄道視察。新十津川の熊田義信町長は「地域事情に大きな相違があり、同様の(いすみ鉄道と)運営は当てはまらない」という考え。
2018年2月 JR北海道「札沼線(北海道医療大学・新十津川間)の新しい交通体系の提案内容について」資料発表。バス転換時のおもな路線網などの提案内容を公開。
2018年3月 JRと各町が個別に協議することを「検討会議」で発表。新十津川は「存続困難」と住民に説明。
2018年4月 JRと当別町個別協議を開始。報道は無かったが浦臼、月形も協議を行っていると報告。
2018年4月 北海道知事札沼線沿線の4町との意見交換会に初めて参加「廃線になっても協力を」との報道。
そして今回の月形の住民説明会報道となります。大きな流れで見ますと沿線町の温度差が大きく非公開の「意見交換会」「検討会議」での内容が漏れ伝えられるなか「鉄道廃止」が固まっていたような印象があります。特に北海道のワーキングチーム岸氏およびJR北海道副社長西野氏との信頼関係がある程度構築されたのではないかという印象を持ちます。この2名が「沿線の交通網として必要なものはなにか」という観点で交渉し、結果的に「鉄道を維持する」ことよりも沿線に利便が高い交通網の構築の方が将来の町の利点になるのではないかという考え方になったのではないかとも思います。当然非公式ながらJRから沿線への「支援金」の話もあったでしょうしね。

さて、報道以外に現地で住民説明会を聞いた内容を公開されている方がおられました。元町議会議員で前回町長選の対立候補だった宮下氏のブログです。
http://www.yumiko3.net/blog/2018/05/jr_5.html
この内容が全く報道内容と異なるので、いくつか引用します。
(町長発言)
○(JR存続問題が起きてから1度も説明会を開かなかったのは)町民とJRが直接対峙しないよう、私が前面に出てやってきた。
○今回住民説明会を開催することにしたのは、4月にJRと正式協議を始め、5月16日にJRから回答をもらったから。JR側は、月形町がバス転換を決定した場合、月形町の交通体系づくりとまちづくりの両面に対して責任を持って取り組むという回答をしてくれた。この答えをもらえたので住民説明会を開いた。
○今回の説明会で町民の意見を聞き、6月7・8日の定例会でしっかり議会と話しをする。その結果を見極めて町長として判断する。

その後の質疑応答でも報道にあるような「廃止、バス転換を容認する方針」が見えないわけです。これについて宮下氏は次の日の北海道新聞報道内容に驚くわけです。
http://www.yumiko3.net/blog/2018/05/jr_6.html
これについては説明会終了後に町長が取材を受け「バス転換を容認」したように話したということになります。当然まだ議会にも住民にもその「結果」を説明していないように思われます。

そもそも月形町にとって住民説明会は今回が最初の開催です。先の「年表」通り少なくとも新十津川町は昨年1月の段階で1度目の住民説明会を開き、この内容は報道でも大きく取り上げられました。この後浦臼町でも行われ、影響の軽微な当別町は月形町の行方に乗るとの報道がありました。つまり住民にとっては今回が初めて「公式に話を聞いた」場なわけです。

住民説明会で町長が出さなかった「廃線容認姿勢」を終了後に報道にだけ語り「外堀を埋めた」形にするのはどう考えてもあまり得策とは思えず、JR北海道と何か密約でもしたのかい?と言いたくなる醜態と思われます。

個人的には札沼線の北部区間は鉄道での維持よりも、沿線自治体がすくなくとも20年維持できる交通機関の構築(特にバス路線の少ない月形については)が必須と思っていますので、大まかな流れは私の期待する方向と一致しています。しかしながらそれは「住民の納得あってのこと」と思うのです。多くの住民は既に公共交通に興味も無く、使いもしませんが、彼らの子、孫が学校に通うことすらできなくなるような町にしてはならないのです。そして、それを維持するのは「国が道が」ではなく自分達そのもので、外部のJRや道の担当者が考える「便利な交通機関」ではなく「自分達が便利な交通機関」を自分達で出していかなければならないのです。

札沼線に関してはとかく地元の当事者意識が非常に薄く感じられます。もちろん域外の私としては報道と各町の広報など限られたソースからのものですが、本来沿線町が「現在の交通リソースをこのまま維持できない」ことくらい理解してるわけです。月形はいつまでスクールバス町民無償輸送だけで町内輸送を維持できるのか、浦臼はいつまで町営バスを維持できるのか、新十津川はいつまで民間バスが維持できるのか、当別は「ふれあいバス」不毛地帯の住民にどう説明するのか。各町が皆別々に交通に問題を抱えます。今回の札沼線論議で一気に解決し、その費用の一部をJRや道などに負担願うことで自分達の交通機関を再構築する。これが今できる最大限の解決と思うのです。

いずれにせよ月形のここしばらくの対応は端から見る限りどうにも解せませんし、報道内容にも疑問を感じています。

カテゴリ: 北海道の交通関係 札沼線 石北線

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