北海道の交通関係

室蘭線(沼ノ端-岩見沢)に関する報道と高橋北海道知事

2018/06/04

札沼線の協議とは別に室蘭線(沼ノ端-岩見沢)については北海道知事も出張って協議が行われました。この路線は空知と胆振という2つの振興局をまたぐ路線であることもありますし、ここ1年以上沿線自治体はまともに議論すらしてこなかった路線でありますが、最初から「維持するんだろう?」とタカをくくっていた感じがあります。

HTBニュース 2018年05月30日
高橋知事がJR室蘭線沿線自治体トップと意見交換
https://www.htb.co.jp/news/archives_1491.html
30日に沿線自治体と道などが初めて意見交換会を行いました。
 高橋知事はこの路線の列車に乗り、JRなどから路線維持に向けた課題について説明を受けました。JR室蘭線の沼ノ端~岩見沢間について、沿線5つの市と町のトップと高橋知事、JR北海道などが意見交換会を行いました。胆振管内と空知管内にある自治体が一緒に参加するのは初めてです。沿線の自治体からは鉄路の存続が地元の高校の存続や子どもたちの進路に影響するという指摘や、室蘭線について議論する新たな協議会の設置が提案されました。


UHB 2018年05月30日
札沼線バス転換容認でJR路線廃止問題に動き… 室蘭線で高橋知事が初めて協議入り 存続スタンス確認
https://uhb.jp/news/?id=4760
蓼沼阿由子記者:「いま通ったのはJR室蘭線・岩見沢と苫小牧を結んでいます。~検討されています」
 JR北海道が単独では維持困難としている10路線13区間のうち、室蘭線の沼ノ端~岩見沢間は、すぐに廃止・バス転換ではなく、"維持"も含めた検討路線となっています。
 沿線自治体の協議に、高橋知事が参加するのは初めてです。
 沿線の5つの自治体は「通学や通院で多くの住民が利用する必要な路線であり、物流面も含めた利用促進策に取り組んできた」と説明。
 存続のために、地元の財政負担もやむを得ないという声も聞かれるなど、路線存続を求めるスタンスを明確にしました。
 その後高橋知事は、実際にJR室蘭線の列車に乗り、沿線の栗山駅周辺を視察しました。
 北海道 高橋はるみ知事:「国・JR・地元沿線自治体との調整、一歩一歩進めていかなければならない」
 また、月形町が廃止を容認した札沼線についてはバス転換に向けた地元支援の方針を示しました。
 北海道 高橋はるみ知事:「町として方向性を出したら、実現のために支援していく」


日本経済新聞 2018年05月30日
JR室蘭線、維持策巡り意見交換 沿線5市町長と知事
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31159490Q8A530C1L41000/
岩見沢市、栗山町、由仁町、苫小牧市、安平町の首長のほか、JR北の西野史尚副社長も参加した。岩見沢市の松野哲市長は「地域の負担も含め具体的な議論に入っていかなければならない」と指摘。「5市町が議論を行う場が必要」とも述べた。高橋知事は「道の調整の役割は重要。サポートしていく」と応じた。


毎日新聞 2018年05月31日
JR室蘭線沿線5市町、協議会設置を検討 知事と首長が意見交換 /北海道
http://mainichi.jp/articles/20180531/ddl/k01/020/231000c
室蘭線(沼ノ端-岩見沢)の沿線5市町の首長と高橋はるみ知事の意見交換会が30日、岩見沢市で開かれた。路線存続に向け、今後は地域の費用負担のあり方や5市町の協議会設置を検討する。
 沿線5市町は路線存続を図る方針。高橋知事は「室蘭線は通学・通院の生活路線で、道北・道東と本州を結ぶ物流も担う。路線維持に必要な費用負担などを考えたい」と述べ、費用負担の枠組みの検討を急ぐ姿勢を示した。室蘭線にも乗車し視察した。
 沿線の苫小牧市、安平町、由仁町、栗山町、岩見沢市の5市町の首長が集まるのは初めて。岩見沢市の松野哲市長は「5市町が集まって協議する場が必要」と協議会設置に言及。苫小牧市の岩倉博文市長も「JRから赤字の根拠や乗降客数の情報開示を求め議論したい」と指摘した。


苫小牧民報 2018年05月31日
JR室蘭線・沼ノ端―岩見沢の路線の維持訴え 沿線自治体と道、JRなど初の意見交換会
http://www.hokkaido-nl.jp/article/6253
各首長からは、室蘭線について「高齢者の通院や学生の通学など地域住民にとって重要な移動手段」と路線存続を求める意見が相次ぎ、松野市長は「(存続に向けた)地域の負担を含め、具体的な議論に入っていかなければならない。沿線5市町で一体的な議論を行う場を新たに設置する必要がある」と強調。佐々木町長も「沿線自治体で協議の場をつくり、持続可能な公共交通の在り方、具体的な利用促進策の議論を進めたい」と提案した。
 岩倉市長は「議会や市民への説明責任を果たすため、赤字額の根拠を示してほしい」とJR側に要望したほか、路線存続を改めて求めた。
一方、JR北の西野副社長は、乗客数が減少傾向にある室蘭線の現状について説明した上で「まずJRが最大限の経営努力をして、路線を維持するための費用負担について地域の協力を得ながら議論させていただきたい」と述べ、沿線自治体に協力を求める考えを示した。
意見交換会の終了後、高橋知事は視察のため、JR岩見沢駅で室蘭線の苫小牧行き普通列車に乗車し、栗山駅で下車した。知事は「沿線自治体から協議体設置の具体的な提案があった。(道としては)胆振、空知両管内の垣根を超えた広域的な調整の役割を果たすことが重要。国やJRとの調整を積み重ねるきっかけにしたい」と述べた。


北海道新聞 2018年05月31日
室蘭線維持向け高橋知事と意見交換 沿線5首長
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/194719
松野哲岩見沢市長は、室蘭線が二つの振興局をまたぐことから「一体的な協議の場を」と求め、知事は「道が調整する」と応じる姿勢を見せた。岩倉博文苫小牧市長は「首長としての説明責任を果たすため、路線の赤字額の根拠を示して」と要望。西野副社長は「データはすべて示し、丁寧に説明する」と答えた。知事は岩見沢駅から同線に乗車し、栗山駅も視察した。


朝日新聞 2018年05月31日
岐路の鉄路)路線維持へ協議加速
https://www.asahi.com/articles/CMTW1805310100001.html
岩見沢市、苫小牧市、栗山町、由仁町、安平町の5市町長と知事、JR北が初めて顔をそろえた。沿線首長は、鉄道利用者のほとんどが通学・通院目的であることや、駅を中心に再開発を進めている事情を説明。安平町の及川秀一郎町長は「鉄道がなくなればまちづくりの根幹がゆらぐ」と述べ、路線の存続を訴えた。
 一方、「負担が避けて通れないのなら、どのような支援ができるのか検討したい」(松村諭・由仁町長)など、路線維持の費用負担に前向きな意見も出た。
 JR北の西野史尚副社長は、老朽化した車両の更新期日が迫っていることなどを説明し、苦しい経営事情に理解を求めた。
 高橋知事は「広域の協議体づくりを進め、道の費用負担も含めて議論を加速させたい」と述べた。


高橋知事にしても今まで道の動きが鈍いという批判もあり札沼線(北海道医療大学-新十津川)の廃線容認とともに、こちらは「維持」を明確にし負担などの協議を「北海道」として行うことを決めたものと思います。

さすがに詳しいのは地元の苫小牧民報で苫小牧市の岩倉市長がJRの赤字根拠について全く今までの資料を確認していないことも露呈する有様で、今まで本当に無関心であったことが伺えます。
JR北海道が路線維持の問題を公表したのは2016年11月のことで、すぐにJR側は岩倉市長に説明に訪れています。その後12月には沿線自治体の会合が行われていますが、その後は「要望書」提出と「JRが信用できない」と独自に乗降調査を行いJR発表資料と乖離が無いことを確認。その後も協議どころか話し合いを拒否する姿勢を貫き通し、今回北海道庁の「お墨付き」を得たことになります。

さて、鉄道が維持されるとしても、現実的にはなかなか厳しい話でもあります。この区間を走る貨物列車は岩見沢-追分で苫小牧方面に1本のみ。追分-苫小牧貨物駅で石勝線からの3本の列車を含め苫小牧方面に4本。これだけです。
たしかに札幌近郊や千歳線に貨物列車を運行したくない貨物会社の事情はあれど、現実はこれだけの本数で維持させるのは微妙な話になります。しかも、この列車は深夜にしか走りませんので線路メンテナンスをどの時間に行うか、そのコストの話にもなるわけです。

室蘭線は「幹線」として維持されていましたので、複線区間を有し、単線区間も多くの設備を抱えています。これについても単純な単線化は維持の手間のかかる分岐器を新設する必要があり、逆に費用がかさむ可能性もあります。今後石勝線夕張支線の廃止に伴う普通列車の減便や回送列車の減少などがあれば、線内の交換設備を早来・追分・栗山のみにすることでも現状の本数と時刻はほぼ維持できるとは思いますが、根本的な解決にはならないようにも思われます。

特に岩見沢方は路線バスの減便問題もあります。岩見沢-栗山-三川のバス維持には国、道、自治体による幹線補助が入っており、現在の利用客数で即対象外にはならないにせよ、岩見沢市単独で中央バスに2000万円以上の単年補助金が入っている現状があります。岩見沢市は統計書にバスについての記載が無く、利用客数等の掌握が行われているかもわかりません。
苫小牧方も厚真方面に直通するバスを含め苫小牧から早来、追分までのバスが少ないながらも存在します。こちらも幹線補助が入っており、苫小牧市の統計書では市内バスの道南バス関連の輸送人員しか集計が無いので、こちらも本当に輸送状況を掌握しているのかは疑問です。

つまり、いずれにしても並行バス路線などの地域の交通事情に全く関係なくJR路線維持だけを言っているという有様なのではないか?という疑念があるわけです。本来で言えばバスと鉄道をうまく棲み分けることで必要な場所に速達できる、または、時刻をある程度棲み分けて、利用者が待ち時間を少なく利用できるようにするという観点はあってもいいわけです。当然駅の位置よりバス停は細かく設置できるわけで、全体利便を考えることは重要です。
鉄道利用に高校生が多いというのは定期運賃の割引額が大きく、バスに比較して半額以下の定期運賃だから仕方なく使っている例もあるわけで「鉄道を使わなければならないのか」をちゃんと調査しているのか?という疑念があります。
この路線に沿線自治体が赤字負担し、実質的な三セク的な運行となれば定期運賃が今のままというわけにはいきません。

そこら辺までちゃんと考えて「維持」を決め込んだのか?JRがどれだけこの区間の路線を低コストに運行するとしても限度があります。簡単に10億以上の単年度赤字、そして1両数億の車両費負担を求められます。それでもなお鉄道がどうしても必要だと言い切れるのか。北海道も沿線も考えて欲しいと思います。そして、貨物会社はこの区間の使用料を「上下分離」とするなら負担する根拠が無いですし、三セクとするならば若干の貨物調整金があるとは思いますが、先の通りわずか4本(4往復では無い、わずか4本だ)だけの金額は知れているし、そのコストを嫌がれば他線経由でもいいという考えもあることを忘れてはなりません。

室蘭線はまだ1列車最大200人程度の乗車があり、2両編成が必要な路線ではあります。それですら維持にはかなり高いハードルがあります。沿線自治体も未だに赤字の根拠などという意味不明な不勉強さを改め、もうすこし地域の交通事情を調べ、勉強し、その地域で本当に地域の足としての交通網構築は考えた方が良い。いつまでも複数の路線を維持できるほど人口も通学生生徒数も維持できていないのが現状です。岩見沢も苫小牧も数年内に間口を2から3減少させる案が出ており、それは現状の中学生生徒数から割り出したものです。「2両編成」が維持できなくなるのも時間の問題なのです。

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