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北海道の交通関係
北海道交通・物流連携会議の報道(とJR貨物の線路使用料)
2018/06/08
この会議の内容、共有すべき内容はともかく、最初にこのように「センセーショナル」な部分だけが報道されてしまったので、何故かJR北海道vsJR貨物の応酬があったというだけの印象になってしまいましたが、この会議は元々は「持続的な交通ネットワークを実現」というところがスタートとなっています。
HTBニュース 2018年06月05日
確執が表面化 JR貨物がJR北海道に抗議
https://www.htb.co.jp/news/archives_1537.html
異例の応酬に場が凍りつきました。道内の交通と物流の事業者らが集まる初めての会議が札幌で開かれ、線路保守費を巡るJR北海道の発言にJR貨物が抗議しました。
5日に道が主催した道内の交通ネットワークについて話し合う初めての会議で、JR北海道の小山俊幸専務は「貨物列車が走ることによる線路の負荷というのも非常に多い。線路保守費の大半を私どもが負担している」と述べました。すると、JR貨物の玉木良和取締役は「それは国鉄改革のスキームについて論じる議論、私は抗議したいと思う。この場で議論することはおかしいということを私は一言申し上げたい」と不快感を示す場面がありました。この日は災害時の情報共有や物流対策などがテーマでしたが、思わぬところでJR北海道とJR貨物の確執が表面化した格好となりました。
人口減少、高齢化により、既に物流網の維持自体が難しい状況にきているのは以前も当ブログでは取り上げていますが、もう個別の事業者がなんとかすればそれでいいという状態に無いわけです。であれば、各事業者が現状を公開し、これからどのようにしていくのかの方向性を出すことが大事なわけです。
この会議は6月5日に第1回が開催され、北海道庁のページでは具体的な事業者名などは記載されていませんが「学識経験者、交通・物流団体・事業者、経済団体、観光団体、産業団体、行政機関」が集まったとされます。
日本経済新聞 2018年06月05日
人手不足対応の物流効率化などを協議、北海道の会議
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31397920V00C18A6L41000/
北海道は5日、道内の交通や観光、農業などに関連する事業者や行政でつくる「北海道交通・物流連携会議」の初会合を開いた。会議では道が3月に道内の全交通網のあり方を示した「交通政策総合指針」に基づき、事業者と課題解決策を議論する。まず、人手不足に対応するための物流効率化や災害時の情報共有・発信の具体策を重点的に協議していく。
会議には鉄道やバス、船、航空、観光、農業などで道内交通網に関係する事業者などが参加。高橋はるみ知事はあいさつで「道の交通を取り巻く環境は大きな転換点を迎えている。課題に向き合い、交通・物流ネットワークの充実につなげたい」と述べた。
2018年度は主に2点を議論する。1つは物流対策。人手不足などでトラック運転手の確保が困難になり、農作物の輸送などに影響が出始めている。今後は物流の関係機関が連携し、効率的な輸送手段を検討する。
2つ目は大雪や地震などの発生時の情報共有の強化。16年に大雪で航空便の欠航や鉄道の運休が相次いだことなどを踏まえ、自然災害の発生時に関係機関が交通情報を円滑に共有し、利用者に情報を迅速に提供できる仕組みを検討する。
道は6月以降、テーマごとに個別に協議する場を設ける予定だ。
北海道新聞 2018年06月06日
道交通・物流連携会議が初会合
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/196686
道内の交通事業者や物流業者などで構成する「北海道交通・物流連携会議」(座長・吉見宏北大大学院教授)の初会合が5日、札幌市内で開かれた。JR北海道の路線見直し問題に絡んで、JR北海道とJR貨物が線路使用料を巡って火花を散らす場面もあった。
JR2社に加え、北海道トラック協会、北海道バス協会など28団体で構成。災害時の交通情報の共有、トラックの運転手不足など物流網のあり方などを協議し、JR貨物の利用区間が廃線となった場合の物流のあり方についても検討する。
さすがに日経新聞はまとまっている。今年度に行われる会議では物流対策であり、そのためにJR北海道とJR貨物、そしてトラック協会、バス協会が参加したわけだ。
NHK 2018年06月06日
北海道交通・物流連携会議
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20180606/0000555.html
会議には道や経済界、それにバス協会といった交通関係の団体などおよそ30の団体が出席しました。
各業界からは、輸送コストが上昇していることや、運転手不足といった物流業界が直面している課題が報告されたほか、フェリー業界の代表は、「JR北海道の路線見直しが今後どうなるかで、道内の物流の状況は変わっていく」などと指摘しました。
一方、会議では、災害時の交通についても意見が交わされ、旅行業者からは、外国人観光客が増えていることを踏まえ、気象に加え、道路状況や交通機関の運行情報を一元化して提供する仕組みが必要だといった意見が出ていました。
なので、まず、この会議の基本的なスタンスと中身に触れたところで、そのセンセーショナルな「JR貨物怒りの内容」を確認してみたい。
朝日新聞 2018年06月06日
線路使用料、JR北とJR貨物が火花
https://digital.asahi.com/articles/CMTW1806060100001.html?rm=173
JR北の小山俊幸専務は会議で、貨物列車の運行が他地域より多いにもかかわらず、線路修繕費の大半がJR北の負担になっていると指摘。新幹線が通る青函トンネルや、空港アクセスを担う新千歳空港―札幌間を貨物列車が走り、速度アップや増発が難しいため「JR貨物の協力をいただきながら課題解決に努めたい」として、暗に線路使用料の引き上げを求めた。
これに対し、JR貨物の玉木良和取締役は「この場で議論するのはおかしい」と抗議。「線路使用料は国鉄分割民営化の際に決まったスキームで、議題と離れている」と語気を強めた。
JR貨物は旅客6社に線路使用料を支払い、貨物列車を走らせている。JR北によると、JR北が負担する線路修繕費は200億円に上るが、受け取る線路使用料はわずか20億円だという。小山専務は会議終了後の取材に「JR貨物を挑発する意図はない。北海道の交通物流に関する重要な課題があることを、この機会に知ってもらうのは意義がある」と話した。
なるほど、JR北海道が課題として上げた内容にJR貨物の線路使用料の問題を「暗に」入れたことにJR貨物が反発したように見えます。議事録の公開などがあるかはわかりませんが、これ、JR貨物としては線路使用料の負担増はJR北海道問題では避けられない議論な訳でジャブ打った感じだよね。
では、JR貨物が負担している「線路使用料」とは何か?ですが、元々国鉄分割民営化では旅客会社は地域に分割、貨物会社は全国一律としました。旅客の長距離輸送を航空に逃げられていた旧国鉄は、多くの利用が「地域内」であることから地域分割が良いという結論になったと考えられます。しかし、貨物は北海道から九州への輸送など広域的なものも多く分社はなじまないとされました。
旅客列車と貨物列車は多くが同じ線路を走りますので、貨物列車は旅客鉄道会社の線路の上を走ることになります。このとき線路使用料を旅客会社に支払うという形にしました。しかし、鉄道貨物も実質的には赤字であり、そのまま線路使用料を支払えば維持できないこともわかっていました。
このため、線路使用料は「貨物列車が走行しなければ発生しない費用を除いた分」だけ支払う形にしました。これをアボイダブルコストルールといいます。
例えば旅客列車は2両以上の編成で走らないような区間でも、貨物列車用の長大な設備が必要であったり、幹線であっても一般車両であれば10t程度の軸重が、機関車では16t以上にもなる貨物列車走行区間の維持はなかなか難しいわけです。しかし、その費用は払われず、旅客列車が走ってるんだから、それ以上は求めないよという形になっているわけです。
このアボイダブルコストルールが適用されない区間があります。例えばJRから分離された道南いさりび鉄道にJR貨物から支払われる線路使用料は10年で107億円と試算されています。単年では10.7億円ということになりますね。先のJR北海道全体への線路使用料が20億円程度ですから37.8kmしかない道南いさりび鉄道には非常に手厚く線路使用料が支払われていることになります。この鉄道も貨物列車以外はディーゼルカーが1,2両で行き来するような路線で、いわば「貨物列車のためだけ」に線路や電気設備を維持する必要があるわけです。そこで、整備新幹線開業により分離された第三セクター鉄道会社には整備新幹線の貸付料を原資に「貨物調整金」をJR貨物に支給することで、これら第三セクター鉄道の線路使用料に上乗せして支払うことになったわけです。
昨年度の決算では年間の旅客運輸収入はわずか1億5000万円ほど、JR貨物からの線路使用料13億2000万円となっています。この鉄道会社がどれだけこの「線路利用料」に依存しているかがわかると思います。
仮に「貨物調整金」と同様の上乗せがJR北海道に適用になったとすれば、だいたい70億円程度の線路利用料となるはずです。しかし、これをJR貨物が負担できるかはまた別の話となります。
JR貨物は30年3月期決算で税引前118億円程度の黒字決算を出しており、上場間近といわれています。しかしながら、この鉄道部門の黒字は低額な線路使用料によってもたらされているわけで、鉄道事業の赤字に苦しむ「3島会社」にとっても、上場し店頭公開しているJR4社の株主にとっても、JR貨物の上場には若干の疑問を感じることでしょう。上場会社にしてみても長距離輸送が新幹線に移行した中、両数の少ない在来線列車だけの設備では貨物列車を運行できないため、多大なコストを掛けて貨物列車を通しているわけです。
今回の「北海道交通・物流連携会議」ではJR貨物にとって「痛い問題」である「線路使用料」問題をこれ以上蒸し返すなという強い意志を感じますし、逆に北海道の物流関係者は特に遠距離でのコンテナ輸送コストが低額なことが、このような優遇にて行われていることを意識しなければならないとも思うわけです。
特にJR北海道にとっては青函トンネルの貨物列車用線路コストや、貨物列車のために減速している新幹線に関しても、これだけは「言っておかなければならなかった」ことでもあるのですね。たとえば石北線の貨物列車は機関車の更新で軸重が上がったことで、各線路施設を再整備していますが、そのコストは請求できないわけですからね。
ただ、この会議では物流に必要な「人不足」も大きな議題で、1両の機関車1人の乗務員で800tの貨物を110km/hで走れる貨物列車というのは相当なアドバンテージでもあります。同じだけをトラックで運ぶとすれば何人、何台が必要なの?ということです。
道内の貨物輸送もできるだけ貨物列車にまとめることで人不足を解消していこうという議論は必要でもあるわけです。そのときに誰がコストを負担していくのか。そういう面での議論も必要なわけです。そのときに「線路提供者」であるJR北海道と「線路利用者」であるJR貨物との議論は避けられないでしょう。