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北海道の交通関係
JR北海道定例会見からいくつか
2018/06/15
6月12日の自民党のJR北海道対策プロジェクトチームおよび6月13日のJR北海道定例会見では先の運賃改定関係の発言の他、いくつか気になる事柄がありました。
北海道新聞 2018年06月14日
「エアポート」増発など柱 JR北海道、経営再生見通し骨子案 31年度以降 自立目指す
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/199190
快速エアポートの増発や観光列車運行による線路使用料収入の確保など、四つの柱を掲げた。国などの支援を受けるのは北海道新幹線札幌開業の2030年度までと明記。札幌開業で新幹線の収支均衡を図るなどし、経営自立を目指す方針を強調した。
経営基盤の強化策で挙げた快速エアポートの増発は、20年をめどに実施を計画。観光列車については、国土交通省がJR北海道の線路を国内外の企業に公募で貸し出し、観光列車を運行する新たな仕組みの検討を始めている。
日本経済新聞 2018年06月13日
北海道新幹線、速度引き上げ試験 今秋に時速160キロ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31718360T10C18A6L41000/
JR北は新幹線が営業運転している時間外での試験を計画する。北海道新幹線は青函トンネル内で貨物列車とすれ違う際、風圧でコンテナの荷崩れが起きる恐れがあるため、現在は最高速度を時速140キロに制限している。ただ、国土交通省が17年に安全性を確認し、速度引き上げを容認する方針を示した。
毎日新聞 2018年06月14日
北海道新幹線 青函トンネル内、9月までに160キロ試験 /北海道
https://mainichi.jp/articles/20180614/ddl/k01/020/056000c
JR北海道の島田修社長は13日の定例記者会見で、北海道新幹線の青函トンネル内での高速走行実験を9月までに実施することを明らかにした。
JRによると、営業運転の列車の合間に試験列車を最高160キロで運行させる。実現すれば東京-新函館北斗間の所要時間が3分短縮され、最速で3時間59分と4時間を切る。
国土交通省は昨年12月、2019年3月までに最高160キロに上げる方針を決定。今回の走行実験で高速走行に問題がないかを確認する。JRは将来、さらなる高速化も見込んでいる。
北海道新聞 2018年06月13日
支援要請「30年度まで」 JR北海道 路線再度見直しも
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/198869
JR北海道が「単独維持困難路線」の見直し問題で、国や道などに支援を求める期間について、北海道新幹線が札幌へ延伸される2030年度までをめどとしていることが12日、分かった。新幹線延伸により収支の大幅な改善が見込まれるためとみられる。また、道の有識者会議が存続を訴えた根室線釧路―根室間など7路線8区間の収支改善が進まない場合、JRが25年度中にも再び見直しを提起する方向であることも分かった。
NHK 2018年06月12日
JR社長 施設更新へ支援求める
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20180612/0000705.html
JR北海道の支援策を検討する自民党の作業チームの会合が12日開かれ、JRの島田社長は2030年度に予定される北海道新幹線の札幌延伸を機に経営の黒字化を目指したいとして、それまでに老朽化した施設の更新などで国の支援を求めました。
島田社長は、2030年度に予定される北海道新幹線の札幌までの延伸を機にグループ全体で経営の黒字化を目指したいという考えを明らかにしました。
そのうえで、それまでに線路や駅舎など老朽化した施設の更新費用が経営を圧迫しかねないとして、これらに対する国の支援を求めました。
運賃値上げよりも驚いたのは「国の支援」には30年度の北海道新幹線札幌開業までという認識を持っているということですね。もちろん北海道新幹線の札幌開業はJR北海道の経営内容には寄与することは間違いないのですが、2030年を乗り越えれば(少なくとも単年度で)黒字化できると踏んでいることになります。
その北海道新幹線の高速化について青函トンネル内の高速化試験を行うことも想定内の話で、これは特段問題が無いことが既にわかっているからこそ一応確認で試験もするよレベルなのだと思います。元々青函トンネルを含めた80kmは新幹線規格で設計されておりそれを阻害している要因は在来線との共用によるものだけとも言えるわけです。ただ、当然現時点で貨物列車を排除できないそのぎりぎりが160km/hということになりましょう。
また、路線維持に関しては、当然の如く北海道の有識者会議で「維持」を主張した路線も改善、地元の支援が無ければ再度協議になることを明言したわけですね。何故かいくつかの酷い路線を廃止さえすれば維持に問題無いような気持ちになってる自治体がありそうですが、実際には何も解決していないわけで、利用喚起すると言っていた沿線自治体の次の一手が一切見えないのも気がかりです。例えば車内販売を地元で行った石北線沿線の自治体はその後車内販売の話を聞いていませんがどうなったんでしょうか?
さて、例によって私は以前別な場所でですが、鉄道事業をある程度マシにするにはどうすればいいか?という話を書いたことがあるのですが、
1利用当たりの収入
●定期券144.13円
●定期外996.91円
●平均500.51円
1利用当たり平均輸送距離
●定期券19.22キロ
●定期外50.21キロ
●平均32.17キロ
となって、1キロあたりの収入が
●定期券7.50円
●定期外19.85円
●平均15.56円
という非常に低い金額であると書いています。JR北海道の運賃賃率は200kmまでの区間で17.85円ですので、定期券は半額以下、定期外(特急等への乗車も含めて)ではほとんど運賃以外の付加価値を取れていないと書いています。
ちなみに2015年当時に試算したもので新幹線については考慮していません。この状態ですら運賃を1.57倍にすれば赤字体質では無くなるとしています。(しかもこれだけ値上げしても千葉県の北総鉄道等比較的高額な私鉄路線より安く、中央バス一般路線並の運賃になるのですが)まぁ、それだけの値上げはあり得ないにせよ、10%程度の値上げ、定期運賃の割引幅減少で相当な改善になります。
ちなみに
20kmの運賃を比較しますと
JR北海道幹線 360円 通勤定期1ヶ月11,520円
JR北海道地方 360円 通勤定期1ヶ月12,070円
札幌市地下鉄 370円 通勤定期1ヶ月15,550円
中央バス札幌 480円 通勤定期1ヶ月21,150円(札幌-輪厚20.6km)
中央バス地方 660円 通勤定期1ヶ月28,800円(千歳-輪厚19.3km)
(関東圏)東武鉄道 310円 通勤定期1ヶ月12,100円
(関東圏)京成電鉄 320円 通勤定期1ヶ月12,450円
(関西圏)近畿日本鉄道 400円 通勤定期1ヶ月14,780円
(関西圏)南海電鉄 430円 通勤定期1ヶ月15,500円
(千葉県)北総鉄道 670円 通勤定期1ヶ月29,000円
(千葉県)いすみ鉄道 600円 通勤定期1ヶ月24,350円
現在のJR北海道の運賃制度は関東、関西圏の大手私鉄(高いものと比較しているとはいえ)と同等程度となります。特に定期運賃は非常に安いと言わざるを得ません。
さて、では北海道新幹線の需要予測から収支改善を考えてみますと、国交省予測では北海道新幹線での関東-道央圏鉄道利用者が1日5500人になる予想。東北-道央で2700人、道南-道央の利用も含めると1日17,700人と予想されています。
http://www.mlit.go.jp/common/000207256.pdf
これは現在の札幌-函館の特急利用客の単純に4倍以上の数字になります。現在の運賃・特急料金と同等の収入が得られたとすれば430億円程度の増収となりますので、単純に鉄道事業収入が1320億円程度、函館線並行在来線区間の切り離しで営業費用が120億円程度減りますが、当然新幹線の営業費用とほぼ相殺されるとすれば、JR北海道単体損益で100億円程度の赤字まで改善されることになります。(現在のJR北海道の営業赤字額が525億円である)
そうなると先の基金運用益が100億円以上あれば黒字化されるという単純な計算です。
もちろん需要予測通り乗らない可能性もありますし、新幹線の営業費用ははっきりわかりませんが、現在の既存開業区間の営業費用が170億円であり、特殊な設備の存在しない新規開業区間がこれを上回ることは考えにくいことから、単純に「北海道新幹線が開業したら赤字が増える」ということになるのは考えにくいことがあります。もちろん黒字額もそう多くありませんが、どのみちJR北海道は経営安定基金の運用益で埋められる赤字を許容する会社(現在は埋められていない)であるので、北海道新幹線にある程度の期待があるのは間違いが無いところです。
北海道新幹線の利用客を増やすためには高速化が大事なわけで、それが青函トンネル区間での高速化試験でありJR東日本区間の東京-大宮や最高速度が制限されている盛岡以北の高速化試験、新型車両開発に関わってくるわけです。JR北海道も期待していますが、東北新幹線に直通する客数が無視できないJR東日本にとっても大きなプロジェクトとなるわけですね。
そういう観点から記事を見ますとJR北海道としては2030年以降「黒字化できるよう」運賃値上げもするし路線も見直すという観点で、国に頼るのはそれまでのつなぎとそれらの行動が円滑に動くようサポートして貰うというようにみえますね。その間に経営資源を現在のところまだ人口が増えている札幌圏と新幹線に振り向けたいという思想は致し方ないところでしょう。