北海道の交通関係

JR北海道路線問題と財務省財政制度等審議会

2018/06/18

まず、当ブログですが、当方ではオリジナルのブログプログラムであり、あまり利便を高くしていないのをお詫びしなければなりません。
各媒体などへのリンクをわざとリンクとしての埋め込みを行わない、画像も特段利便よくは表示しません。これは、このブログはあくまで私の思うことを書いているわけで、内容が気になればご自分でちゃんとソースを当たって調べることが大事で、ただリンク走らせて正しいかどうかを調べるのはよくないことです。
このブログの内容はできる限り様々なソースを用いてはいますが、私の個人的な見解を書いているわけですから、これが必ずしも正しいわけではありません。

ただ、今のブログシステムでは検索性がよくないので、今回検索プログラムを追加しました。標準では1ヶ月以内の内容を検索します。過去記事検索にご利用ください。

さて、今月に入ってJR北海道の路線維持問題ではいくつかの動きがありました。

NHK 2018年06月12日
赤字路線問題で町村議長会が決議
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20180612/0000695.html
道内の町村の議長が出席する会合が開かれ、JRの赤字路線問題について、社会基盤の維持、確保は国全体の問題だとして、国に抜本的な財政支援を求める決議を採択しました。
JR赤字路線問題は北海道の公共交通に重大な影響を及ぼすものだとして、持続的な鉄道網の確保に向けた決議を採択しました。
それによりますと、鉄道は医療、観光、物流など地域社会を支える重要な社会基盤で、維持、確保は国全体の問題として捉えるべきだとしています。
その上で決議では、国に抜本的な財政支援を求めています。


つまり、北海道の自治体では鉄道の維持は国の問題であり、オレたちは関係ないという意識が見えるわけです。

よく思いだして頂きたいのですが「国」は鉄道維持に対して何らかの働きかけを各鉄道会社、まして国鉄時代ですら行ったことがあるのか?ということです。国鉄が主体となった1968年からの赤字83線による路線廃止はともかく、特定地方交通線に至っては「国鉄再建法」に基づき国が基準を作り、さらに沿線自治体との協議が成立しなくとも廃止とバス転換を行える「見切り発車」ができるオプションまで付いていました。
ですので「国」を頼ってこの時代の路線より営業成績の悪い路線を「維持させる」なんていうことが行われないことくらい誰の目にも明らかなことなのです。
これは、よくネット上で見かける「JR北海道は国鉄に戻せば良い」なども含めて、国鉄という組織や国が地方の不採算路線をどういう目で見ていたかを考えれば、JR北海道が仮に国鉄になったところで路線は維持できないことは、これまた明らかなことなわけです。

日本経済新聞 2018年06月12日
線路はどこまで続くか 北海道新幹線、赤字の現実
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31550570Y8A600C1000000/
■財制審で悪例として指摘
 「JR北海道の経営状況を一層悪化させ、地域交通網の維持に影響を及ぼすおそれがある。客観的な見通し策定を制度的に担保し、こうした事例が繰り返されないようにする必要がある」
 4月25日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会に提出された資料には、北海道新幹線(新青森―新函館北斗)に対する厳しい指摘が盛り込まれた。


ちょっと前の記事ですが、財務省の財政制度等審議会での議論では北海道新幹線をやり玉に挙げました。


https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia300523/03.pdf



今まで北海道新幹線とJR北海道の財務内容や決算書を見ていればこのような内容は「アホか?」という内容なのですが、特に囲みになっている方、北海道新幹線の赤字と維持困難な線区の営業損失が無ければ経常利益の黒字化が見通せると書いていますが、これは北海道新幹線だけではなく、北海道内の「維持困難線区」全てを廃止するという前提になります。
それは当たり前です。北海道新幹線の有無は全く関係なく、財務省の諮問会議は「維持困難線区を全て廃止せよ」という前提条件でJR北海道の黒字化ができるとおっしゃっているわけです。北海道新幹線にかこつけていますが、数字の内容に北海道新幹線は全く関係ないのです。
整備新幹線の整備前提に「営業主体であるJRの同意」があります。本当に北海道新幹線が全く儲からない路線ならJRはこの路線の建設を拒否することができます。北海道新幹線自体はJR北海道にいい影響があると理解し、また、北海道にとっても必要なインフラになるという想定があるからこそ建設を許可されているわけです。そもそも建設費の一部は北海道など自治体も出しているわけです。
この財政制度等審議会では港湾、空港はインバウンドへの対応などの投資を進めるよう答申しており、本当にインバウンドが大事なら現在の空港混雑と大幅な拡張ができない状況などを考えも一定の国内輸送を新幹線に移行させることすら必要になるわけです。

とはいえ、JR北海道とすれば「赤字路線廃止すれば黒字化できるじゃねぇか」と財務省(と有識者である委員)に言われた以上、国に頼るならば一定の路線廃止は努めになるわけです。ここをまず意識した上で、以下の記事を読むと、JR北海道の置かれた立場と路線維持の「拒否」という形での発表になった理由が伺えると思うのです。

NHK 2018年06月17日
“維持区間”廃止含め検討も
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20180617/0000833.html
収支の改善に向けて今後は沿線の自治体も巻き込む形で方策を検討していきたいという考えを示しました。
さらに、これまで自治体などの負担を前提に「維持したい」としてきた釧網線など8つの区間について、収支の改善が見込めない場合は廃止も含めて検討していくという認識を明らかにしました。
島田社長は、「利用促進の効果が表れず、沿線自治体の負担がもっと必要になる場合が出てくれば、バスへの転換という選択肢も含まれてくる」と述べました。


朝日新聞 2018年06月18日
北海道)経営自立は2030年度以降 JR北が再生案
https://digital.asahi.com/articles/ASL6K4J5JL6KIIPE00B.html?rm=371
JR北海道の路線見直し問題をめぐり、JR北は17日、国や関係自治体から支援を受ける前提となる経営再生案を公表した。乗客が極端に少ない4線区の廃止や北海道新幹線の高速化などに取り組むという内容。経営自立は新幹線が開業する2030年度以降になるとの見通しを示した。
JR北がそれぞれの利害関係者と協議中の事項を「経営再生のための課題」にまとめた。JR北が一昨年秋に「単独では維持困難」とした13線区のうち、4線区(留萌線全線と札沼線、根室線、日高線の一部区間)について「鉄道よりも便利で効率的な交通手段に転換」と明記。廃止を前提に経営再生を目指す姿勢を明確にした。
残る「維持困難」8線区(廃止が決まった石勝線夕張支線を除く)については、国や自治体の財政支援を前提に「経費節減や利用促進などの取り組みにより徹底した収支改善を図るとともに、地域住民との連携による持続可能な交通体系の構築」をめざすとした。成果が出ているかを定期的に検証し、改善しなければ存廃を再検討するとした。


つまりは
・留萌線
・札沼線(北海道医療大学-新十津川)
・根室線(富良野-新得)
・日高線(鵡川-様似)
(石勝線夕張支線は廃止決定済)
は廃止を進め
・宗谷線北線
・石北線
・釧網線
・根室線(花咲線)
・根室線(滝川-富良野)
・富良野線
・日高線(苫小牧-鵡川)
・室蘭線(沼ノ端-岩見沢)
も5年程度を区切り定期的に存廃検討とするわけです。
さきの財務省の「絵」と重なることがわかるはずです。これら全てを廃止できたなら、JR北海道の赤字額は大幅に改善し、あとは小手先で黒字化まで伺えます。

しかし、よく考えて欲しい。私たちが求めてるのは「JR北海道の黒字化」なのか?

そうではない。極端を言えばJR北海道が会社として無くなっても、地域の公共交通機関、そして都市間の移動の担保がされることが大前提にあるわけです。こんな机上の論理で路線廃止がまかり通るなんてことはあってはならないのです。これが国(財務省と有識者とよばれる方々)の考えだというなら北海道をバカにするのもいい加減にしろと声を大にして私は言いたい。

JR北海道が廃止を前提としている4路線、区間に関しては、沿線自治体と住民の考え方も、路線の利用状態も、道路事情などを勘案してもとても残せるものではなく、廃止になるのは妥当と思います。しかし、各沿線が本当に残したいという態度を「国が国が」ではなく、自らが汗をかくならば方法はいくつかある。しかし、それを行わず、利用促進にしても「インバウンドが来る」レベルで言っている以上、廃止は致し方ない。

残りの8区間について、これは北海道が維持に動いたとしても、その内容が伴わなければ何度でも廃線協議が発生するわけで、沿線自治体に「安心させない」内容です。確かに一時的に金銭が入れば維持されるが、また数年後更に利用の減った各路線をどうするのかがまた出てくるのは予想できた話です。

北海道新聞 2018年06月18日
深川―留萌などJR5区間に国の支援なし 6者協議 社長、8区間存廃にも言及
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/200354
JR単独で維持が難しい10路線13区間のうち、JRが廃線とバス転換を求めている輸送密度(1キロ当たりの1日の輸送人数)200人未満の5区間は、今夏にもまとまる国の財政支援の対象外とすることが固まった。JRは、輸送密度200人以上2千人未満の8区間では国に支援を要望し、収支が改善しなければ、将来の廃線も含めて検討する考えを示した。


北海道新聞 2018年06月18日
国は公的支援策示さず 道肩透かし、地域協議に暗雲 JR6者協議
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/200355
JRや国、道などによる2回目の6者協議で、国土交通省は4月の初会合に続き、今回も公的支援策を明らかにしなかった。道は国の支援策の公表を受け、地域との協議を加速させる狙いだったが、その思惑は外れた格好だ。
 「支援のあり方については財政当局と議論を重ねており、現時点で内容、規模を申し上げられない」。国交省の藤井直樹鉄道局長は「今夏にもまとめる」としていた公的支援策の一端すら示さなかった。
藤井鉄道局長は、この日の協議で「各路線の将来像には自治体のリーダーシップが不可欠」として、自治体が率先して路線の存廃を判断する必要性を強調。これに対し、北海道町村会の棚野孝夫会長が「(JRの経営安定基金の)運用益が今もあるなら、問題は起きていない。十分認識して対応してほしい」と反発する一幕もあった。
高橋はるみ知事は「JRが経営再生の見通しを示したことは、地域で協議を進める上で大変大きな足がかりになる」と評価した一方で、「道と市町村はいずれも厳しい財政状況で、われわれの負担軽減に向け(国の)財政支援は不可欠だ」と強調した。


北海道新聞 2018年06月18日
「一方的」地元反発 国への支援要請対象外5区間 JR6者協議
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/200357
廃止・バス転換を提案している5区間について、国に財政支援を求める対象外としたことを受け、沿線の関係者からは「一方的だ」などと反発の声が上がった。
 JRが支援要請の対象外としたのは、札沼線北海道医療大学―新十津川間、根室線富良野―新得間、留萌線、日高線鵡川―様似間、石勝線夕張支線。夕張支線は、夕張市とJRが既に廃止・バス転換で合意した。
上川管内南富良野町の池部彰町長は、JRの方針について「根室線は十勝と道央を結ぶ幹線。物流や観光など将来像を十分に議論せず、現在の利用者数だけを根拠に存廃を判断するべきではない」と批判。今後は「国や道に対し、JRの示す方針で良いのかと問いたい」と話した。
 留萌線の存続を目指す深川商工会議所の富岡正幸会頭も「一方的な話で遺憾だ」と語気を強める。訪日外国人客の呼び込みなど、留萌線の利用拡大について検討する余地は十分にあるとして「JRにはわれわれの意見も聞いてほしい」と訴えた。


まず、一斉に反発した沿線各自治体ですが南富良野町にせよ深川にせよ、全く自分達の足という言葉が出てこない上に自分達が何らかの負担をする気もさらさら無い以上無理。全く他人事ですな。話にならない。まして、話し相手はすでにJR北海道ではないことくらいわかってる話だろうし、わからないのなら頭が悪すぎる。

そして極めつけがこれ。

朝日新聞 2018年06月18日
鉄道存続へ制度見直し訴え
https://digital.asahi.com/articles/CMTW1806180100006.html?rm=215
JR北海道の路線見直し問題をめぐり、今ある鉄道の存続の可能性を考える「北海道の鉄道の再生・存続に向けた道民集会」が16日、札幌市の北海道自治労会館であった。約120人が参加し、国による抜本的な制度見直しを訴えた。
基調講演した荒井聰衆院議員(立憲、北海道3区)は、JR北の独自の再生策を提言。(1)利益を上げているJR東日本やJR東海が財政支援する(2)JR貨物北海道支社をJR北と合併し、線路使用料をめぐる課題を解決する(3)JR北を東西に分割し、東部は鉄道沿線自治体が第三セクターをつくり運営する、とした。
 最後に、JR北の経営危機は国鉄分割民営化の失敗が原因だとして「国が鉄道設備を維持し、鉄道運行はJRや自治体が協力して担う」との新しい制度の創設を提案するアピールを採択。道が国に積極的に働きかけるよう求めた。


一応国会議員で、北海道知事に立候補した方ですらこの程度のレベルでしかなく、これを真顔で言ったなら申し訳ないが二度と荒井氏を支持することは無いだろう。
1 上場企業のJR東日本・JR東海から拠出させる根拠を明言せよ。
2 JR貨物北海道支社とJR北海道が合併すれば「線路使用料」は一切発生しなくなる。全国一律の貨物運賃が崩れ、「本州貨物会社」とは運賃案分であるからたとえば北海道から九州行き貨物のコンテナ1個運賃10万円なら、3万円程度の収入しか北海道会社に入ってこない。回避するために値上げするのか?北海道だけの貨物列車の維持は当然できなくなり、本州貨物会社も北海道路線を失えば取扱量は大幅に少なくなり上場の目は絶たれる。そもそも誰にメリットがあるのか。
3 北海道内で東西に分けると先の結果と同様「JR北海道を維持する」ことにつながるが、路線の維持には繋がらない。そもそも分割した第三セクター東側会社には大幅な北海道庁と沿線自治体の投資が必要だが、そこに国は関与しようが無い。ましてほとんど貨物列車が無いので、先の合併した北海道会社の貨物は真っ先に東側から撤退する状態になる。もともとそれほど極端な量は運んでいない。
いったい、何を維持して何を捨てるつもりでこの案を作ったのか。全てにおいて少し考えれば出てくるレベルの疑念すら考えないのかと情けなくなる。
そもそも道民集会と良いながら参加が120人っていくら野党系の主催としても少なすぎるだろう。もう少し動員掛けろよ。みんな興味が無さすぎるんだよ。

北海道建設新聞 2018年06月18日
JR北海道が経営再生見通し案を公表
https://e-kensin.net/news/106508.html
経営努力では経営基盤の強化として、札幌圏輸送の強化・事業の多角化を図る。快速エアポートの輸送力増強を含めた空港アクセス輸送強化、道新幹線札幌開業に対応した特急輸送体系の整備に取り組む。
開発・関連事業では、札幌駅周辺再開発による商圏拡大、グループホテル事業のネットワーク拡大、苗穂駅再開発を皮切りとしたマンション販売事業参入による不動産事業で基盤を支える。
 安全対策に関しては「安全投資と修繕に関する5年間の計画」が最終年度を迎えたことから、次期計画の策定・実行に取り組む。安全投資の資金確保のため、社宅集約による跡地の売却や駅のワンマン化、使用頻度の少ない路線設備の使用停止で資産売却・コスト削減をする。
 経営努力効果を検証するため、四半期ごとの線区別収支情報公開や部門別収支の開示に努める。
自社単独では困難な経営再生の課題としては、道新幹線札幌開業に向けて新幹線収支の均衡を図るため、新幹線の高速化を主張。札幌―東京間の移動時間を現行の5時間強から4時間半程度に短縮するため、貨物との青函共用走行や青函トンネル固有施設の維持管理コストの負担解決を目指す。
利用者や地域に対しては、1996年以来の運賃値上げや無人駅の廃止について理解を求める。


最もまとまってるのが北海道建設新聞ってのが、本当に道内マスコミの質の低下を感じるのですが、非常にこの記事はわかりやすいので是非全文ご覧頂きたい。
この関連は明日も記事があると思われるので、私なりの見解をもう一度書きたいと思う。

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