北海道の交通関係

では、公共交通の「理想」とは何か?

2018/06/23

当ブログは主にマスコミ記事から北海道の公共交通について記載しています。(おかしいなぁ、このブログは歌謡曲ブログでは無かったか?)

JR北海道問題では各地域での「利用促進」があまり適切に行われていないこと、自治体のJR批判と、路線維持への国、道の(金銭的も含め)関与が声高に聞くものの、現実の利用が少ないこと、また、特に北海道知事が一時期ただひたすらにJRの自助努力を言い続け、解決するという観点を持っていないのではないか?という印象を持ち、当事者であるJR北海道にしても、確かに優先順位的に難しいにせよ列車ダイヤなども含めまだまだやれることはあるのでは?という印象をもっています。また、適切な報道を行っていないように思える道内マスコミ関係も批判しています。

では、お前は北海道の公共交通に関してどんな解決を思っているのか?どのような形になるのが理想だと思っているのか?という問いには答えなければならないとも思います。あくまで私の考える地域の公共交通の理想についていくつか記載したいと思います。

●交通接続点の整備
今までたいていの地域は公共交通同士の接続については無頓着であった面があります。鉄道路線は「線」でありますし、広域から客を運ぶ「幹」となるべき路線です。では、その鉄道から「駅」という点に降り立った時、駅前だけ、徒歩範囲内だけで用事を済ますことは多くの場合できません。
札幌のような広い市街地を形成する都市だけでなく、地方都市、はては市町村の中心部が駅から離れている町は少なくありません。
では、駅から目的地までバスやタクシーなどどのような交通機関が存在し、使えるのか?というのが広報されていない現実と、もっといえば「存在しない」という現実があります。

さて、さきほど鉄道路線を「幹」と言いましたが、現実に地方では幹となっているのは高速バスだったり、空路だったりというシフトが起こっています。特に高速バスは必要があれば地域内の必要な箇所にバス停を作り、都心そのものに直通することができます。特に規模の大きくない都市なら多くの施設は「国道沿い」にありますから、遠く離れた駅までのアクセスを考えるより「停留所」を設置し、ここから直接バスに乗れる方が便利なわけです。空路についても空港と必要な箇所への連絡はバスの方が都合がいい地域がほとんどです。空港から需要地が大きく離れている新千歳空港で鉄道アクセスが利用されるのは珍しいことです。駅と空港が少々近くても多くの場合役には立ちません。

・留萌市の例
JR北海道が「鉄道よりも便利で効率的な交通手段に転換」とした留萌線の終点留萌駅。駅を降りると今もタクシーは出迎えてくれるでしょう。しかし、バスの案内は見当たりません。留萌駅員の手作りと思われるバス停案内図を見なければ多くの方はバス停にたどり着くこともできないでしょう。留萌市内を巡るバス路線は本数は少なくなったものの存在し、鉄道が廃止された増毛方面、羽幌方面へのバスも駅前を少し行くと待合室がありますが、駅前から直接見えないのでその存在を感じることは難しいですね。
また、札幌への都市間バスターミナルはその更に先、土地勘無しにその存在を確認することは難しいでしょう。これは逆に都市間バスターミナルを降りた客が、他のバスやJRへの乗り換えが全くわからないということでもあります。
札幌への都市間バスは市内中心部である錦町、留萌振興局の局舎前、留萌市立病院に比較的近い東橋を経由します。増毛や羽幌への路線バスも含め多くの便は高校や病院に近い停留所を経由し、市内中心部を巡回します。
留萌の街の中で「駅」はとても不便な場所に存在し、市役所、振興局の職員の出張、通学、通院に至るまで、この「駅」を使うのは非常に難しいのが現実な訳です。
元々留萌駅は貨物のために大きなヤードを持ち、駅を中心に放射状に街が形成されていったのは今でも地図を見てわかるとおりです。しかし、公共施設や学校等も含めて集積した市街地地区には作りにくく、少し郊外の国道沿いに建設されることになります。留萌市立病院はその後高校近くの線路沿いに移転しましたが、当然そのときに駅を作るわけでもなく、大きな駐車場を要する郊外型拠点病院となりました。この位置は比較的どこからもアクセスしやすく、また、郊外型ショッピングセンターも近くにあり、クルマでの利用が便利です。

仮にです、留萌駅にターミナル機能を持ち、鉄道・バス・タクシーの相互乗り換え施設ができたらどうでしょう。駅の裏にあった使用されなくなったヤード跡は広大な公園となっています。しかし、もし、この場所に公共施設を集め、留萌市内のたいていのご用事が駅周辺で済み、そして、駅から郊外、観光への足が確保されていたら、鉄道利用がこれほど存在しない駅にもならなかっただろうなと思うわけです。

もちろんそれは理想論です。しかしながら、現実に留萌線を利用して留萌に通学する学生は(増毛駅までの路線が存在していた頃から)皆無。通院も皆無、出張も皆無、そして、観光でこの駅を降り立っても、どこへも行けませんし、駅周辺に見るところがあるわけでも無く、駅前の観光案内所がどれだけ観光地の宣伝をしても、そこへの交通機関がほぼ無いので、タクシー以外の選択も無い。元々この案内所も車での来店を前提にしているのではないかという状態です。

・交通接続点でスピードアップ
公共交通を「使わせたい」と思うなら、駅周辺に全ての交通機関を接続し、ワンストップで情報を得られ、そして移動できる施策が必要なのだと思います。留萌に関しては今後高速道路延伸で、一定区間を一般道を経由する都市間バス・路線バスとの時間差が顕著になります。札幌までクルマで2時間、旭川まで1時間ちょっとという環境の中、バスは札幌2時間40分、旭川2時間ではバス自体も維持できるか厳しいわけです。しかし、途中の拠点である深川に「拠点」を持たせることで、留萌-深川をノンストップで高速道路を直行する便と、この区間を一般道で走る便を接続し、乗り換えられるようにすることで、利便を高める方法はあります。深川から特急列車を使うことで場合によっては車より速いかもしれません。
つまり、いくつかの「拠点」となる駅にこのようなターミナル機能を設置し、バス同士、鉄道同士、バス-鉄道相互に乗り換えることができることで、早く行きたい人、途中で降りたい人、全てに利便をもたらすことができるのではないか?こう思うわけです。

●運賃制度の一元化と、並行路線の同一運賃、共通化
さて、駅を「乗り換え拠点」としても乗り換えたら運賃がその都度かかり、また、乗り換え駅で初めて乗り換え先の路線がわかるという状態なら、結局公共交通を使いにくいのは変わりません。
また、鉄道とバス、バス同士の併走路線では、運賃も定期券も共通ではなく、本数が沢山あるのに自分の乗れる路線が限られるという状態も発生します。公共交通を使う客が多く、それぞれの客だけで運行できた時代ならともかく、今や多くのバス路線は補助金頼み、JR北海道も赤字路線の維持に四苦八苦し減便しているような状態で、各路線がバラバラに、しかも近い時間に並行して走るなどという非効率をいつまで行えるかわからない状態になっています。

・JR留萌線と沿岸バス・道北バス留萌旭川線・空知中央バス沼田線の例
先日留萌線の接続バスのブログでも記載しましたとおり、留萌線の沿線には並行するバス路線がいくつか存在します。長年の競合関係にあった各路線が同じような時間に並行して列車とバスが走る状態が長く続いています。どちらの便も通学時間帯以外は数えるほどの乗客しか乗せず、沿線自治体は各社に別々に補助金を拠出しているのが現状です。そして、運賃も定期券も別。例えば帰宅の高校生は自分の持っている会社の便以外は、家の前を通る便でも乗れない、もしくは別払いで乗るというのを強いられるわけです。もし、これを平均化し、1時間に1本で統一します、拠点駅の案内窓口ではどちらの会社の便でも案内し、運賃も同一でしたらどうでしょう?
「留萌線は本数が少なくて不便だ」が「留萌線はなんと1日17往復、1時間に1本あるんだ(バスも含むが)」になるわけです。

・運賃制度を統一するもう一つのメリット
運賃制度を一定にするということはもう一つのメリットがあります。それは駅からの「ラストワンマイル」の運賃問題です。(ラストワンマイルは主に通信で使う言葉で、拠点である通信会社の施設から利用者の自宅や職場までの区間の意味。ここでは「拠点」である駅から自宅や職場までのバス等の公共機関という意味で使う)先の話にありました駅まで到着しても、そこから自宅なり職場なり観光地までバスを使えばその分運賃がかかるわけです。札幌-留萌高速バス2370円といっても、バスを降りて市内バスに乗ればさらに220円とかかる部分です。
運賃制度を一定にすることにさらに「拠点と周辺地域の運賃」を込みにするというのを加えれば、躊躇無く拠点駅からバスに乗り換える、バス同士を乗り換えることができます。
つまり、「深川-留萌」を、JRでもバスでも同一運賃(ここでは例として1000円とする)とし、しかもそれは「深川市内のバスから乗り継ぎ-留萌拠点駅から留萌市内バスに乗り継いだ」運賃という形にすることです。

・まず、高校生の通学を考えよう
JR問題でいつも「高校生が使っている」をよく聞く。JRも通学に利便のよい便を走らせる。しかし、現実に駅から学校が非常に遠い例がいくつもある。その区間に夏季は自転車、冬期はバスを使うという状態は、夏季と冬期の必要なバス運転手が変わり、運賃収入も変わるということです。そうではなく、平均的に乗ってくれるのが良いわけです。また、地方都市の市内中心部の「シャッター通り」対策にも高校生が帰宅時にどこに立ち寄り何を買うかという面もある。であれば、先の「市内」で定期を組めれば拠点駅から学校の間だけでなく、市内全域が乗り降り自由になるわけです。高校生の購買力をバカにしてはいけないのです。
彼らの利便を担保できれば、通勤にも用務にも公共交通を使う下地ができる。今まで公共交通は不便で仕方が無い、クルマ運転できればバイク乗れれば解決するのにと思わせていることが問題なわけです。

・次に観光客を考えよう
現状バス路線で「フリー切符」を販売している事業者は多くはありません。観光でなんとかその地域までJRや高速バスを使っても、その先の運賃が怖くてバスに乗れない。いきおい空港ついたらレンタカー、札幌出たら自家用車になっちゃう。空港から上川・留萌・宗谷・オホーツク区間のJRもバスも全て乗れるフリーパスを比較的安価に購入できたらどうだろうか?タクシー割引クーポンを付けても良いだろう。これを全道的に(ある程度地域区切っても)できると観光需要は大きく変わる。もっといえば、札幌-稚内の切符を持つ人は途中下車自由、留萌で観光し、日本海を北上し、いくつかの町で飯を食い、夜に稚内に着く、国鉄時代なら当たり前だったかもしれない「周遊券」の考え方だ。それをもっと広く交通機関を渡って使える。これが理想。

・当然アナウンスも一元化
90年代に弘済出版・JTB・JR3社から発行されていた北海道内を扱った「時刻表」現在は交通新聞社からの1紙になっていますが、地方路線バスのほとんどが掲載されなくなりました。私の思う鉄道と並行バス路線の共通化と、各地域バスの通算化ができるなら当然それに合わせた時刻表、そして、各案内所で各社の情報を出せなければいけません。JRとバス協会、各バス会社がインフォメーションを共有できる形にしなければならないのです。

・運賃一元化と「ゾーン」
現在JRも路線バスも原則運賃収入で路線を維持する形になっています。これでは各社がまちまちに運賃を設定することになります。
今回考えているのは、JRと路線バス会社を「運行会社」として残し、運賃制度と実際の運賃支払先を「運営会社(地域交通会社)」とすることで、運賃通算と並行路線の運賃共用化、定期券などの共用化を行うという考えです。地域内交通ではヨーロッパの「ゾーン制運賃」に近いかもしれません。
運賃制度ももっとわかりやすくする必要があります。バスも鉄道も同一市域は500円以内などの制限を付け、その市域もある程度の面積で統合し、複数の市域をまたがれば、それが加算されるようにするとかなりわかりやすくなります。例えば深川-留萌なら「深川ゾーン」となる深川市・妹背牛町・秩父別町・沼田町をひとくくり、「留萌ゾーン」となる「留萌市・増毛町・小平町」とし、1ゾーンは500円ですから深川-留萌は1000円、ここから乗り換えて小平へ行っても1000円、その先羽幌まで行けば「羽幌ゾーン」内で1500円という形になります。距離より「地域」を重視したいのです。
もちろん同一ゾーンは「高校の通学区域」にも関わります。

・「地域交通公社」その財源は?
さて、あくまで理想論を並べてきました。形的には各鉄道・バス会社ではなく「地域交通公社」に運賃を支払い、公社は各運行会社に運行費用を支払うという形で運行を担って欲しいということになります。
「地域交通公社」は北海道を4つに分割「道央」「道北」「道東」「道南」とし、北海道庁の所管としたいところですが、なかなか難しいものかもしれませんね。バス会社への補助金拠出は各社合わせて国が11億7千万円ほど、道と合わせれば27億円ほどの補助があります。札幌市内のバスですら札幌市単独でも6億5千万円の補助があります。
しかし、鉄道に関しては補助の財源が全くありません。北海道が単独「道」に「単独鉄道会社」なのですから、経営安定基金と運用は北海道側に持たせ、「公共交通安定基金」として運用し直し、JR北海道に補助する形の方がよいと思っているところです。
もう一つは「公共交通利用推進税」の検討です。これは一定規模の企業で、社員の通勤に公共交通を利用する割合が一定より少ない場合「マイカー通勤の非課税額」相当分を「公共交通利用促進税」として徴収する。(端的に言えばヨーロッパに見られる交通負担金であるが、多くのヨーロッパ諸国では「通勤手当」の概念もないし、通勤手当分所得税を減免するという観点も無い。そのまま日本で採用すると著しく企業負担が大きくなるので、マイカー通勤分の通勤手当の減免分を公共交通に関する税として移譲したいと考える)

当然通勤に使えないような運行しか行えない路線に関しては改善要求できる形にはしなければならないが、地域の交通の維持を地域の企業が行うというのはある程度理にかなっていると考えるがいかがだろうか。ざっと北海道の就業人口230万人のうち、3割程度しか通勤に公共交通を使っていないと推計するので、ざっと年間60億円程度の「公共交通利用推進税」を想定でき、この税を嫌い10%程度が公共交通に移転するだけでもざっと年間30億円程度の定期運賃収入になるわけですので公共交通へのシフトという意味合いもあります。

●笑い話でしょ?
何を現実的ではない、勝手なことを言うんだ?という方も多いだろうし、多くのアイデアは新しいものではなく、ヨーロッパ各国で取り組まれたことだし、日本でも一部地域で日の目を見ている方法の一つであります。
しかしながら、現在のJR北海道の路線維持議論にせよ「鉄道を維持する」ことが主目的になっています。本当は、バスも含めた地域の公共交通をどう維持するのか?という話なはずです。鉄道は維持できました、しかしバスは撤退しましたというのが現在もあちこちでおきている。しかも多くの地域は鉄道よりバスの方がこまめに停車し、公共施設へ直行する分利便が高いはずなのに、車の利便が高いことで利用するのは高校生など免許を持たない年齢層だけ。これでは全ての路線が維持できなくなることすら危惧されているわけです。
「観光客が使う」といいながら、駅を降りても観光地へのバスが見当たらない、タクシーも無いというのも多い。それなら空港からレンタカーにするって話で、観光客すら使われないことになってしまう。

ならば、鉄道もバスも分け隔て無く活用し、なおかつその相互の乗り換えを便利に、運賃を単純に、そしてなによりその「運営」を「単独の会社」にするのはわかりやすさの一歩ではないでしょうか。「運行」は地域のバス会社、鉄道会社が行い、大きい枠での「運営」を「道」など大きい枠で行う。これは個人的には進めないと各運行会社が共倒れすると思っています。

そして、住民が全く公共交通に興味が無く、無くても困らないと思っていることが非常に問題で、「クルマの無い人は移動できない」世の中にしてはならないのです。「クルマがあるから使わないから要らない」から「クルマが無くても移動できるよう公共交通を整備する」という策に向かなければなりません。そのために「通勤」を使いましたが、北海道民550万人、就業人口230万人が「1人年間1万円」使えば鉄道もバスも維持できることは明らかなことなんです。その「徴収方法」が大きな負担にならないように個人的には考えたつもりではあります。また、各自治体や北海道が今後も道内のバス会社に補助金を拠出続けられるか?そして、国の補助である幹線補助のように下限を決めて補助を終了されれば路線が維持できないことも含めて、鉄道よりも深刻な事態になっているわけです。

JR北海道問題も「路線維持」されればそれでいいわけではなく、使われない路線を多大な補助で維持することは正しくなく、老朽化した施設を改修し、災害に強い路線に変えていく必要もあります。今のまま維持されれば必ずや数年後こんどは改修費用の負担をどうするかという議論が発生するのです。しかも根本的に何も変わっていないなら当然利用客は更に縮減しています。どう利用促進するかも大事なのです。そして本当は利用する人は「北海道民」でなければならないのです。

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