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「免許を返納したら電車やバスを使う」はファンタジーである
2018/06/30
最初から少々過激なタイトルを付けてみた。
当ブログはタイトルを最初に考えて本文を羅列していくので、時にタイトルと中身が大きく乖離したブログを見かけると思うが、今回はこれに沿って書いていきたい。
鉄道やバスの廃線議論が起きると決まって「車に乗れなくなったら鉄道やバスに乗るんだから廃止は困る」という議論が起こる。しかし、これだけ免許返納の流れがあって鉄道やバスの乗客が大きく増えたという話を聞くことは無い。本当に「車に乗れなくなった」人は「鉄道やバスを使う」のか。これには私は大きな疑問を持っている。
●なぜ車を使うのか?
最も最初のスタートだが、何故あなたは車を使い出かけるのだろうか?
・買い物
こまめに買い物していても買い物カゴ1つ分程度の買い物をするのは日常的。例えば飲料水や牛乳などの液状のもの。簡単に2キロ3キロという重量になる。米などの重量物、パンやトイレットペーパーなどの軽いけど嵩の張るもの。
あなたは今日の買い物を全て鉄道とバスで買い出すことを想定できるだろうか?
そして、日常に存在した身近な店舗の閉鎖が相次ぐ現状がある。都市部ですら郊外の大型店舗へ「車で行く」のが当たり前なわけで、家の近所に存在するのはコンビニだけとなった地域は決して少なくはない。徒歩圏では買い物できない住民は更に車での買い物を選択せざるを得ない。そして、車を持たない人はどうすれば良いだろうか?駅前にショッピングセンターが存在するような町は多くない。
・通勤
通勤は鉄道ではないか?と思うのは都市の方かもしれません。
国勢調査における「通勤・通学時交通手段分担率」東京都を除く100万人以上の都市で「鉄道」の分担率が50%を越えるのは横浜と川崎だけです。自動車交通での通勤が人口的に難しい首都圏を除くと通勤に鉄道を使う率はそう多くはありません。
都心部には比較的密な鉄道網が存在する札幌市でも通勤・通学手段での自動車分担率は41%と非常に大きくなっています。これは先の100万都市では仙台に次ぐ値です。
札幌に限らず、多くの企業はその町の中心地にあり、その企業に勤める人が鉄道・バスを使い通勤するというスタイルが徐々に崩れている現状があります。企業・工場などの郊外移転はそれだけ公共交通機関の不便な場所への通勤でありますので、極端を言えば「自家用車を持たないと通勤できない」ことにすら繋がるわけです。
・通院
「通院のために車を使う」のは本来的には本末転倒な気もするが、現実的に病院すら郊外型になっている以上、家から病院へ直行するバスで行ける地域はそう多くはなく、多くは車を選択せざるを得ないのも現状な訳です。
本当に運転できない高齢者のタクシー利用の比率は増えるものの「車が無ければ通院できない」人は少なくないのも現状なのです。
また、地方では「通院バス」を用意する病院も少なくありません。そして、一時期問題になった病院・薬局から自家用車送迎する施設など、車を使わない人への配慮が必ずしも公共交通の利用に繋がらないという現状もあります。
地方では病院の閉鎖、そして地域拠点病院の大規模化、郊外化もありますので、身近で医療を受けられないというのもあるわけです。一定の年齢まで「車を手放せない」理由のひとつでもあります。
・余暇
「いい年した大人が電車でデートに行くのか?」というのは尤もなことで、行き先で飲酒するなどが無ければ公共交通機関を利用した余暇の過ごし方を提案するのは難しいことでもあります。そして、先の札幌市資料では「車を持たない高齢者は外出率が低い」という結論を出しています。高齢になるほど外出は減り、外出率を見ると自動車保有者と非保有者では20ポイント程度の差になるということです。
自動車保有者は当然外出のほとんどを自家用車で行い、非保有者は「徒歩圏内の移動」かタクシーを含めた「送迎」がなければ移動しにくいという現状があるわけです。
資料:札幌市総合交通計画・札幌市民の交通実態より
http://www.city.sapporo.jp/sogokotsu/shisaku/sogokotsukeikaku/index.html
自家用車を保有するということは、一度購入し、毎年の税金を納めた後は基本的に走った分の燃料費だけがかかるわけです。単純に200万円の車を購入し、10年乗ることを考えると。単年あたりでは以下の金額になります。(ざくっとした金額ということで)
・車両費20万円
・自動車税4万円
・重量税・自賠責3万円
・自動車保険3万円
車検時の整備費用を含めず、1年で均すとざっと年間30万円程度車両所有するとかかるはずです。これに燃料費がかかります。もちろん軽自動車など軽減されますし、高級乗用車などはもっとかかります。とはいえ月2万5000円~3万円車にかかるわけですね。
なお、我が家の例ですが、年間30万-80万円程度、均すと月に4万8000円ほど車にかけていることになります。それほど高級ではないミニバンと、年間1万キロ程度の走行距離ですらです。1キロあたり58円の経費となります。
これは運転する人の人件費を全く考慮しない数字ですら公共交通よりも高額な移動を行っているわけです。(ただし、走行距離が増えれば燃料費は増えても固定費変動が無いのでもっとキロ単価は安くなる)
●現実的に高齢者が車から公共交通にシフトできるのか
・車に乗れなくなるということ
高齢ドライバーの事故のニュースが出れば、免許を返納させるべきだという世論が出てきます。家族は何をしていたんだ?という批判も少なくない。
平成28年の自動車事故で65歳以上の運転者が「第1当事者」になった事故は20%を占めます。事故件数は年々減少しているのに比率が上がっているのです。そして、この比率を底上げしているのが80歳以上が「第1当事者」となった事故件数です。平成18年(2006年)に9436件(1.1%)だったものが、平成28年(2016年)は14632件(3.0%)と上がっています。高齢者以外の全年齢の事故率が下がっているのに、高齢者だけが増加、特に85歳以上が倍以上になっているという現実があります。
資料:警察庁 平成28年における交通事故の発生状況
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/Pdfdl.do?sinfid=000031559551
改正道路交通法で認知症検査の義務づけはされたものの、現実としてこれで「免許を取り上げた」例はそう多くはない。2017年の施行から2018年3月までに認知症の恐れとされた「第1分類」と判定された方5万7000人あまり。そして、実際に取り消し、停止となった数は1892人(自主返納、今後手続きする者を除く)となっている。
産経新聞
免許更新検査、認知症の恐れ5万7千人 免許取り消し3倍に 改正道交法施行1年
https://www.sankei.com/life/news/180607/lif1806070019-n1.html
75歳以上の免許保有者は当然増え、今年度は570万人と推計、80歳以上でも232万人と推計されます。
この現状で、高齢者に運転をやめろというのは口で言うのは簡単ですが現実はそうなっていないわけです。
さて、では、仮に認知症という判定をされて免許を失った方が、バスや鉄道を使えるでしょうか?これは難しいと言わざるを得ません。
もう一つ、足腰など運動能力の衰えで車の運転を諦めた方はどうでしょう?自宅から自宅前に止めてある車に移動し、極端を言えばペダルを踏む力とハンドルを回す力さえあれば運転できる自動車の比較して、駅やバス停まで自力で歩き、場合によってはバリアフリーの完備されていない交通機関を利用し、目的地でまた移動し、帰宅するということが可能なのでしょうか?これもまた難しいと言わざるを得ません。
つまり、「免許を返納したら電車やバスを使う」が成立するのは認知症にもなっておらず運動能力の衰えが少なく一定の徒歩移動が出来る方だけに言えるという、極端に狭い範囲のことではないかと思うわけです。多くの方が「免許返納したい」と思った時(もしくは「免許返納せざるを得なくなった」時)既に公共交通に乗れない状態の方が多いのではないでしょうか。
・80代を迎えた2組の夫婦の「この先」
私の知人の2組の夫婦が非常に対照的であります。
・クルマも使うが公共交通も使うA夫妻
札幌市の郊外に居を構えるA夫妻。子育ては随分前に終わり、娘夫婦の家の近くに住み休日は孫に囲まれています。
単身赴任の夫をもつ娘夫婦を考えて近所の送迎や孫の移動に車を使い、公共交通が存在しない墓参りなど年に何回かの遠出以外は近所だけを運転します。その遠出も「今年が最後」とは言っていますが、これを無くしてしまうのは本人も寂しい模様。
夫婦の楽しみの一つが、平日の日中のお出かけ。手にしているのは札幌市が発効する敬老パスです。札幌市の敬老パスはICカード型。最大年間7万円分チャージでき、7万円分チャージしても利用者負担金額は1万7000円です。ざっと200円区間の地下鉄を49円で乗っていることになります。
参考:札幌市・敬老パス
http://www.city.sapporo.jp/koreifukushi/ikigai/ikigai4.html
家の近くのバス停から地下鉄駅で乗り継いで都心まで約30分。都心で駐車場を捜す必要はありませんので大通公園をのんびり歩きながら、デパート巡りや美術館、観光施設巡りを楽しんでいます。
野球観戦が大好きなお父さんは札幌ドームのファイターズ戦だけでなく、円山球場や麻生球場で行われる高校野球の地区大会も観戦。お母さんは近所の地下鉄駅隣接の大型スーパーで買い物。ただ、疲れちゃうから帰りはタクシーも使うとのこと。
近所に買い物できる施設は乏しく、買い出しは娘の運転で出かけることが多く、バスでの買い物はあまりしたくはないとのこと。
夫婦が言う不満点は1時間に2本のバス。ただ、一定の間隔で来るので、田舎暮らしを思えばたいしたことは無いとのこと。ただ、将来的に歩くのが億劫になったら困るなという感想でした。
・クルマしか使えないB夫婦
札幌郊外に息子夫婦と同居しているB夫婦。共働きの息子夫婦の代わりに孫の面倒をよく見ていました。その孫も今では高校生であまり手がかからなくなりましたが、洗濯などの家事はまだまだ現役です。
お父さんは今でもたまに仕事。郊外の会社での仕事のためクルマは手放せない。バスも地下鉄も含めてここ30年は乗ったことが無いと言い切る。
日常の買い物はクルマ。徒歩圏内のスーパーから、郊外ショッピングセンターまで何店舗も回り、駐車場待ちはいつものこと。
ただ、都心部には行きたくないんだよねと、都心部に用事がある時は息子夫婦に送迎を頼むことにしている。
お父さんは趣味の釣りのため月に1回は遠出。年に1回は数百キロも離れた道東までの釣りドライブを楽しむ。
先日近所のスーパーで運転を誤り物損事故を起こしたが、あれはたまたまだとクルマを手放す気はない。もちろんクルマを手放してしまえば趣味の釣りも楽しめないことを知っているからだ。
運転できないお母さんは徒歩圏内のスーパーだけが日常。たまに親戚に車で送って貰わなければ通院もできない。地下鉄どころかバスの乗り方も複雑すぎてわからないという彼女が使える交通機関は少ない。
いずれの夫婦も今は問題がない。しかし、10年後どうなっているか?いずれの夫婦ももう移動手段はかなり限られるかもしれない。逆にA夫婦は足腰が悪くなり歩ける距離に制約が出たらクルマ利用に戻っていくかもしれない。
・90代を迎えた地方に住むCさんの例
最後に、地方の例を一つだけ。独居で暮らすCさん。1時間に1本程度バスが走る典型的な地方に住む。妻を亡くし、娘は遠く離れた札幌で暮らす。家族はない。
もうクルマを手放して長いため、通院は専らバスを頼る。この辺りのバスは以前は観光型のステップの高いものが多かったが、昨今ではノンステップ型のバスが入り乗降は楽になった。彼はバス降車時に足を滑らせ転倒し怪我をしたことがある。
それでも家からバス停までの数百メートルの道のりは平坦ではないし、国道を横断する必要がある。押しボタン信号も面倒がって押さずに渡り何度も怖い思いをしている。
バスは拠点病院を経由してくれるので非常に便利になった。しかし、買い物は難しく、近所の親戚に頼っている。しかし、その親戚も町を離れることになって困ってしまった。
この町の老人ホームなどの施設は空き待ちの状況。娘は少し離れた町に介護施設を確保したが、彼はこの町を離れないと言い張ったそうだ。
いよいよ歩くのが辛くなり、日常的に救急車を呼ぶようになり、しかし、急病では無い患者でも無い彼を運べないとの押し問答があり、かといって福祉タクシーもこの町では満足な台数は無く、しかも、彼の町から日常の買い物、通院する場所への距離が長く、費用がかさむ状態になります。
・でも取り組めることはある
さて、「免許を返納したら電車やバスを使う」ことができるためには、どのような施策が必要でしょうか。
・家からバス停等への数百メートル程度を歩くことができる
・バスや駅、列車の一定のバリアフリーが進んでおり、極端な段差無く利用ができる
・バス停や駅から、病院・介護施設・役所・スーパーなどの施設が近い。またはある程度集積している
これがまず最初の段階です。
まず、徒歩で公共交通機関の発着点に行けないことにはどうしようもありません。また、目的地から必要な公共施設も歩ける場所になければなりません。
そして、輸送機関はある程度のバリアフリーが達成されていなければなりません。列車に乗るのに階段しか無い跨線橋を使わないと乗れないなんていうのは論外です。
そして、目的地の病院だったりスーパーだったり、金融機関や役所なども含めて、ある程度一定の地域に固まっていなければ、現実的に公共交通機関で用を足すことはできません。
その次に便数、経路、運賃などの充実が続いていきます。最初から公共交通機関に乗る気のない人を公共交通機関利用に結びつけるには非常に大きいコストがかかります。
しかしながら、このコストを受け入れなければ、移動困難者のコストを受け入れなければならないことにも繋がるのです。「免許返納」の話と「まちづくり」は既にリンクした話なのです。そして、公共交通機関が利用できなくなったその先。どのような「自宅」への交通機関を考えるのか。介護タクシーや家の前まで走るデマンド交通的なものも含めた検討が必要なのです。