北海道の交通関係

日高線沿線にはどのような交通機関があり、どのような「支援」が行われているのか

2018/07/03

昨日に引き続いて日高線について書くことにします。「廃線」という重い決断をした夕張支線や札沼線北部区間に対して、日高線は「本線」であったこと、また非常に距離が長いこと、そして関連する自治体が多いことがあげられます。

今日は現状で鉄道として運行している区間も含めて日高線の沿線自治体と近隣の交通機関を上げていきます。

●苫小牧市
17万人以上の人口がある沿線唯一の「市」です。市内には室蘭線(千歳線)との乗り換え駅の苫小牧駅、勇払駅の2駅を抱えます。
苫小牧-勇払には沼ノ端駅を経由する市内バス(道南バス)の路線があり、概ね1時間に1本程度の運行があります。
・勇払駅 5年平均乗車人員は28.8人です。(2014年乗降客32人)
苫小牧市WEBサイトで「日高線」を検索しましたが
・日高線、室蘭線の存続を求める要望意見書
くらいしか日高線に関する行政的な内容は見当たりません。また、苫東開発関連で線路移設などの検討、過去の踏切事故に関する対策関係などの記事は発見しましたが、具体的な支援関係、利用促進関係は見つけられませんでした。

●厚真町
浜厚真駅が厚真町に存在しますが浜厚真地区は人口80人ほど(2010年国勢調査)です。
・浜厚真駅 5年平均乗車人員18.8人(2014年乗降客44人)
あつまバスによる厚真高校方面への通学バスが1往復運行されているほか、付近を苫小牧-静内・平取のバスが経由します。また、福祉循環バス(一般混乗不可)があります。
町WEBサイトではフェリーターミナル付近への新駅は難しい等の議会答弁は見られますが、具体的な支援関係、利用促進関係は見つけられませんでした。

●むかわ町
浜田浦駅・鵡川駅・汐見駅の3駅が存在します。浜田浦駅付近である田浦、晴海付近に450人ほど、鵡川駅付近のむかわ町中心部に町の半分、4000人ほど、汐見駅付近である汐見地区も440人ほどが住みます。
・浜田浦駅 5年平均乗車人員1.6人(2014年乗降客4人)
・鵡川駅 5年平均乗車人員174人(2014年乗降客208人)
・汐見駅 2014年乗降客数10人
むかわ町は旧富川線穂別方面を含め町内各所への町営バスを運行。路線バスは札幌への高速バス「ペガサス号・ひだか号」7往復、苫小牧方面への路線バスが6往復存在します。
また、苫小牧市内から鵡川高校への無料通学バスを出しており、このため苫小牧方面から鵡川方面への通学定期券発行枚数は非常に少なく、JR発表資料でも鵡川8:27着の列車は最大11人しか乗車せず、鵡川付近ではほぼ0に近い数字になっています。逆に鵡川から苫小牧方面への利用は100人程度はおり、バス区間からの利用を合わせると200人程度の利用となるわけです。極端な「方利用区間」ということがいえます。
町WEBサイトでは「JR日高線の早期運転再開と在来線の切捨てに反対する意見書」等の議会答弁は見られますが、具体的な支援関係、利用促進関係は見つけられませんでした。なお、町は鵡川駅(バスターミナルとしても利用)の管理経費を拠出しています。

●日高町
富川駅・日高門別駅・豊郷駅・清畠駅・厚賀駅の5駅が存在します。日高町は旧門別町と合併し、現在の役場庁舎は日高門別駅近くにあります。
・富川駅 2014年乗降客数212人
・日高門別駅 2014年乗降客数82人
・豊郷駅 2014年乗降客数8人
・清畠駅 2014年乗降客数6人
・厚賀駅 2014年乗降客数64人
富川には高校が存在し、通学利用が存在します。このため富川を中心に通学バスの運行があります。日高町の町営バスは予約制を含め線路並行の豊郷、清畠、厚賀も含めて存在し、通学タクシーとともに富川高校までの区間利用が可能。
札幌との高速バス、苫小牧、静内等の路線バスが利用できるのはむかわと同様です。
町WEBサイトでは「JR日高線の全線復旧要求を続けるべき」等の議会答弁は見られますが、具体的な支援関係、利用促進関係は見つけられませんでした。なお、2015年に「JR日高線の活用に向けたアイディア」を広報誌で募集しましたが、その結果についての記載を見つけることができませんでした。募集したアイデアを何らかの形で発表したのか、検索にかからないのが不思議です。
なお、日高町は被害の少ない日高門別までの列車運行再開について一時期町単独補助での復旧を目指しているとの報道もありましたが、それに関しても町のページには記載が無い模様です。

●新冠町
・大狩部駅・節婦駅・新冠駅の3駅が存在します。
・大狩部 2014年乗降客数8人
・節婦 2014年乗降客数4人
・新冠 2014年乗降客数48人
新冠は町内にコミュニティバスを運行しています。町内の路線バスの不便な地域から新冠駅への路線、そして、新冠駅から鉄道並行で静内への路線です。この新冠-静内の便は道南バスの定期券利用者のみが乗れる鉄道代行バスと同時刻で運行する便です。もちろん町内山間地域から静内への通学の便を図るという意味での運行になります。
札幌との高速バス、苫小牧、静内等の路線バスが利用できるのはむかわと同様です。
町WEBサイトでは「JR日高線の復旧に向けた取組等について」等の議会答弁は見られますが、具体的な支援関係、利用促進関係は見つけられませんでした。また、ここでも「JR日高線の活用に向けたアイデア募集」がありましたが、これに関しての結果などは見つけられませんでした。

●新ひだか町
旧静内町、旧三石町の合併でできた町で、
・静内駅・東静内駅・春立駅・日高東別駅・日高三石駅・蓬栄駅・本桐駅の7駅が存在します。
・静内 2015年乗降客数358人
・東静内 2014年乗降客数30人
・春立 2014年乗降客数6人
・日高東別 2014年乗降客数4人
・日高三石 2014年乗降客数68人
・蓬栄 2014年乗降客数18人
・本桐 2014年乗降客数62人
町内には2つの高校と地域拠点となる病院をもちます。それもあり利用の多い駅です。
町営バスは無く、道南バスの町内循環便などがまだ生きている地域です。札幌との高速バス、苫小牧、静内等の路線バスが利用できるのはむかわ等と同じです。また、静内を境に浦河への路線バスも存在します。
スクールバスの一般混乗はなく、静内農業高校への通学バスは道南バスから町の通学バスに切り替わりました。今年度からこれを受けて「高等学校修学支援事業」としてJR定期券の通学高校生への直接給付を行うことにしています。これは「一部助成」に留まることの多いなか英断で、事務手続きの簡素化や生徒、保護者負担の軽減にも繋がる画期的な事業とも言えます。ちなみに「JR6カ月通学定期券を年2回に分けて現物給付」ですので、生徒は通学期間中長期休み期間も含めた通学に困らず、JRにとっても長期休み期間の収入も確保できるというものです。今年度支援を受けているのが58人で予算規模は680万円ほどとなります。これは静内地区の2高校の維持にも繋げたいという思惑もあると思われます。
なお、町WEBサイトではそれ以外の支援関係、利用促進関係は見つけられませんでした。また、新ひだか町は前町長酒井氏が「町長コラム」として日高線関係に言及していました。しかしながら町長が替わってからは本コラムは無くなった模様です。

●浦河町
・荻伏駅・絵笛駅・浦河駅・東町駅・日高幌別駅の5つの駅が存在します。
・荻伏 2014年乗降客数68人
・絵笛 2014年乗降客数0人
・浦河 2015年乗降客数8人
・東町 2014年乗降客数114人
・日高幌別 2014年乗降客数2人
浦河町は浦河駅付近に町役場、日高振興局庁舎がありますが、浦河高校、日赤病院等の拠点は東町駅となり、大きく利用客の差があります。
札幌との高速バスは道南バスの他一部地域ではジェイアール北海道バスのものも使用でき、静内方面は道南バス、様似方面はジェイアールバスと棲み分けていますが、町内中心部では競合する関係となっています。全面的にJR路線と並行しますので、この区間は3社並行となります。ジェイアールバス代行の日交バス路線が杵臼、上尾幌地区と市街地を結んでいます。
町WEBサイトでは広報での特集記事などは見られますが、具体的な支援関係、利用促進関係は見つけられませんでした。敬老パスである「うらかわシニアパスポート」にJR代行バスが利用できない旨を明記するくらい利用させる気が無いように見えます(町内バス料金免除)

●様似町
・鵜苫駅・西様似駅・様似駅の3駅があります。
・鵜苫駅 2014年乗降客数0人
・西様似駅 2014年乗降客数0人
・様似駅 2015年乗降客数8人
高校が存在しないため基本的に浦河への通学となりますが、ジェイアール北海道バスの路線バス利用での通学がメインで、JR代行バスの利用は少ないです。
町のホームページの検索では日高線に関する項目が2個のみ、一つは町概要、そして「JR日高線の活用に向けたアイディア募集」だけです。全く様似町のWEBサイトから日高線に関する情報を得られませんでした。また、交通に関する情報が更新されておらず、代行バスは大幅に本数が少ない等の適切ではない表現もあります。
様似町にはジェイアール北海道バスの営業所があり、えりも、広尾方面と浦河方面への路線バスがあります。札幌との高速バスも本数が少ないながら存在しますが、札幌側からの観光客の使いやすいダイヤではありません。

直接沿線ではない、平取町、えりも町を含めた日高振興局管内7町の交通網はメインの交通機関が「高速道路を使う自家用車」であることを意識しなければならないでしょう。先日も記載したとおり札幌-鵡川で高速道路を経由する高速バス「ペガサス号」ですら自家用車との所要時間が1時間程度の差となってしまい、積極的に公共交通機関を使う必要性に乏しいのが現状です。「札幌から3時間」というのはある程度の都市にとって目安の時間、距離であります。日高振興局が存在する浦河も、日高の中心地である静内もこの範囲内です。「公共交通機関の高速化」を考え、なおかつ新千歳空港、苫小牧港、札幌への交通網を確実に構築する必要があります。

そのなかで日高線を鉄道としてただ復旧しても、鉄道の所要時間はとても道路にかないません。国鉄時代の急行「えりも」でも札幌-静内は3時間、札幌-浦河は4時間です。話にならないのです。それでもJR日高線は国鉄時代より軽量気動車導入でスピードアップされたという事実もあるわけで、その努力も沿線の評価には繋がらず、利用客は減る一方であったのは、当然道路事情の改善と、苫小牧を経由せずに高速道路を直行できるバスの方が時間も運賃も比較にならなかったこともあります。

日高線を復旧させるなら、沿線がどのような支援をできるかが問われます。先のブログ記事のようにJRが高速特急車両を用意しろというのは簡単なことですが、全く現実的では無いわけです。また、通学事情にしても、既に学校の始業時間に合わせたダイヤ、学校への乗り入れなどが行われている現状を思うと、沿線のバスと連携した「定期券共通化」などの施策があれば実質的な本数が増え通学だけでなく通院等の用務にも使いやすくなるわけです。
「日高線を復旧させる」という観点を維持しながらも代行バスの利便を沿線バスと同時に上げていくという工夫ができればかなり使いやすいダイヤになるとも思います。また、一部の駅への非経由(そのかわりデマンド交通等への転換)で必要な施設を経由したとしてもバスの大幅なスピードアップも実現できます。本当にその「駅」を経由するのが本当に利便にかなうのか?という観点は必要です。駅の経由が必要であれば、非効率な往復よりもその地域の方が本当に行きたい場所への直行を別に作る方が良いのです。

そして、日高の地域が本当に必要な札幌・新千歳空港などへの直行便はもう少し利便が高く、高速性を持ったものに変えていく必要があります。今のバスはあまりにも遅すぎるとも思うのです。そういうものも含めて「単純なバス転換」でも「単純な路線復旧」でもない、地域の利便の高い交通機関の構築を検討して欲しいと思うのです。

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