北海道の交通関係

「第二青函多用途トンネル構想研究会」の道路トンネル構想

2018/07/04
北海道が本州と(道路的に)切り離されていることが北海道の発展を阻害する要因であるっていうのはわからないでもありません。

本州と九州を結ぶ関門トンネル。鉄道用のトンネルが完成したのは1942年(昭和17年)のこと。道路トンネルもこの時代に建設が開始されたが戦中戦後の混乱もあり、中断し、最終的には1958年(昭和33年)に開通しています。ここは徒歩でも通過できる人道トンネルも併設されています。海底区間は780m、全長でも3.5kmほどと比較的短いこと、当然に大規模な工業地帯を有する北九州との接続の必要性で建設が急がれたこともあります。その後高速道路には1973年に関門橋が、1975年には新幹線の新関門トンネルが建設され、本州と九州は鉄道2系統、道路2系統の移動手段が存在するわけです。

本州と四国には道路、鉄道併用橋である瀬戸大橋が1988年(昭和63年)に開業。その後神戸淡路鳴門道、西瀬戸道の2ルートが高速道路として開通し鉄道1系統、道路3ルートを有しています。瀬戸大橋は新幹線用のスペースを有しており、新幹線開業時は在来線線路を支障することも、新幹線の減速の必要性もありません(ただし、新幹線区間の最高速度を160km/hとして設計されている)橋梁部は約9.4kmとなります。

さて、北海道はというと、1988年(昭和63年)に青函トンネルが開業し、これは暫定的に在来線鉄道が利用するという形で建設されました。トンネル全長が53.85km、海底区間だけでも23.30kmと長大です。鉄道車両も難燃構造、火気類の使用禁止となっており、特殊な消火装置を持つ発電エンジンを有する車両など一部を除き電気列車しか運転されません。
トンネル建設費用は約7,500億円です。ちなみに瀬戸大橋は1兆1,300億円(ただし道路部6,400億円、鉄道部4,900億円となっている)、しまなみ海道の総事業費が7,500億円ほどとなります。

青函トンネルには列車の走る本坑の他、作業坑、先進導坑と3本のトンネルが掘られて貫通していますが、これらのトンネルは幅5mほどで、クルマは走れないことはないものの、通常の使用は難しいわけです。もちろん排気設備などは完備されてはいるものの、それは大量の自動車の排気ガスを逃がすような設計のものではないのです。

本州と日本列島を大きく構成する北海道・九州・四国への「陸路」を見てきましたが、北海道だけは本州との距離が大きいこともあり「橋」を選択できなかったため、道路として作られることはありませんでした。今回「第二青函多用途トンネル構想研究会」が「有人自動車走行用トンネル」を考え、実現したいと思うことは自然なことでありましょう。単純に青函区間に道路がないから特に物資輸送を不安定な海上輸送に頼らざるを得ないわけです。


さて、北海道内の産学の有志による研究会である「第二青函多用途トンネル構想研究会」がまとめた第二青函トンエルについて確認してみましょう。先ずは記事です。

 

日刊建設工業新聞 2018年06月05日
【産学有志が構想取りまとめ】第二青函多用途トンネル、総工費は7229億円
http://nikkankensetsukogyo2.blogspot.com/2018/06/blog-post_44.html
◇有人自動車走行用トンネルは建設可能◇
北海道と本州を結ぶ有人自動車走行道路トンネルの可能性を検証する北海道内の産学の有志による研究会がこのほど、「第二青函多用途トンネル構想」をまとめた。
トンネル構造は現行基準に適合した道路幅と管理用道路、上下線分離方式による緊急車両走行スペース、避難路などを確保し、内径14・5メートルの円形構造を想定、総工費は7229億円と試算。現行の道路基準に照らし合わせ、安全面や技術面、採算性から実現は可能と主張している。
研究会は、石井吉春北大大学院公共政策学連携研究部教授を座長に、神尾哲也戸田建設執行役員、加森公人加森観光社長、栗田悟北海道建設業協会副会長、田中義克トヨタ自動車北海道顧問、田村亨北海商科大学教授が参加。日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)が17年3月に発表した提言「次世代活性化プロジェクト」に第二青函トンネル構想が盛り込まれたことを踏まえ、海上輸送によるコスト高と輸送自由度の制限が加わる北海道と本州間のトラック輸送の課題解決の観点から、延長約30キロの海底トンネル部分のみを対象に有人自動車走行の実現性を検証した。
構造については、有人走行を想定するための現行基準に合わせ、走行車線3・5メートル、路肩1・75メートルの片側1車線、中央分離としての隔壁、管理用通路、緊急車両通行路と乗車員の避難通路を配置し、内径14・5メートルの円形構造を想定。上部を走行車線、下部を人の避難通路と救急搬送通路として利用することで安全性を確保する。
海底トンネルで課題となる換気対策についても、換気についてはトンネルアプローチ部の陸上部分に換気塔を設置しトンネル内はファンによる排出を行うことで課題を解消。技術的にも現行のシールド工法などで施工可能とした。
建設事業費は、延長30キロ、内径14・5メートルとした場合、本体工事費に6900億円、非常駐車帯を750メートル感覚で設置する費用に100億円、設計速度毎時100キロの場合の換気設備に229億円と試算した。
構想では「有人走行自動車トンネルは決して夢ではなく、自分の意志で自由に自走でき、かつ速く、安く本州と北海道を結ぶことが実現できる」と有効性を強調。今後はシンポジウムの開催などで道民の機運を高め、プロジェクトの実現を目指す。

 

北海道建設新聞 2018年06月05日
有人自動車道の第2青函トンネル 7200億円試算
https://e-kensin.net/news/106235.html
 第二青函多用途トンネル構想研究会(座長・石井吉春北大大学院公共政策学連携研究部教授)は、有人自動車道を想定した第2青函トンネル整備に関する提言を取りまとめた。延長30㌔、内径14・5mのシールドトンネル整備に7229億円の事業費を試算し、PFIなど民間主導だと48・2年で投資額を回収できると推計。道内への経済波及効果は730億円に達するとみている。
 同研究会は、石井座長をはじめ、神尾哲也戸田建設執行役員、加森公人加森観光社長、栗田悟北海道建設業協会副会長、田中義克トヨタ自動車北海道顧問、田村亨北海商科大教授という委員で構成し、オブザーバーとして北海道経済連合会、北海道商工会議所連合会も参画。青函トンネルは、①貨物列車との共用走行による新幹線の低速化②北海道―本州間のトラック輸送が海上のみという課題があると分析した。
 日本建設業連合会鉄道工事委員会が2016年3月に考案した「第2津軽海峡線建設構想」は、列車専用トンネル1本を増設し新幹線の高速走行を実現することを主眼に置くが、②の課題には対応していない。
 17年3月に日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)がまとめた構想によると鉄道貨物・カートレイン共用、無人運転トラック走行という2本のトンネル整備で①、②のどちらも対応できる一方、将来的な技術開発が前提のため、同研究会は17年に会合を重ねて現行の基準における有人自動車専用トンネルの可能性を探った。
 構想では、シールドマシンやTBM(トンネルボーリングマシン)による推進工法で30㌔の新トンネルを既存トンネルに並走させる。片側1車線の走行車線各3・5m、両側路肩各1・75mに加え、柵かスリット壁による中央分離帯1・5mを確保するため内径14・5mが必要で、走行車線の地下には緊急車両走行車線と両側に避難用人道を設ける。
トラックや一般車両の通行で経済波及効果をもたらす
 ジェットファンと換気塔による換気方式を採用。トンネル6900億円、非常駐車帯100億円、換気設備229億円を試算し、早ければ10年で建設可能と予想する。
 1日当たりの走行台数は4000台、少なくとも3000台という想定で、大型1万500円、普通乗用車5250円の想定でキャッシュフローを算出。4000台の場合48・2年、3000台の場合78・3年で整備費用を回収可能とみており、道内での観光による消費額は4000台のケースで年間730億円、3000台でも365億円に達すると見込む。
 栗田副会長はSPC(特別目的会社)が整備、管理運営を担うPFI方式の採用が前提と述べ、「経済界の支援がなければ実現は難しい」とシンポジウムなどで構想を広める考えを表明。また、高規格道路との接続など陸上の整備は国が積極的に関与する必要があると提言している。

 

北海道新聞 2018年07月02日
第2青函に自動車道構想 片側1車線30キロ 10年で完成
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/204815
 道内の有識者らでつくる研究会が、一般自動車道として本州と道内を海底で結ぶ第2青函トンネル構想をまとめ、月内に札幌市内で開くシンポジウムで発表する。第2青函トンネルを巡っては、中央の政策提言機関などが貨物列車用や無人運転専用自動車道の建設を提言してきたが、一般向けの自動車道構想は初めて。整備事業費は7229億円と試算し、通行料収入で48年程度で整備費を回収できるとしている。
 構想をまとめたのは「第二青函多用途トンネル構想研究会」(座長・石井吉春北大大学院特任教授)で、加森公人・加森観光会長、田中義克・トヨタ自動車北海道顧問(前社長)、栗田悟・道建設業協会副会長らがメンバー。
 既存の青函トンネルの延長53・85キロに対し、新トンネルは傾斜を急にすることで延長は約30キロ。片側1車線で、走行車線の下には緊急車両用スペースと歩行者の通行が可能な避難路を設置する。早ければ10年で建設可能という。
 通行料金は大型車1万500円、普通車5250円と想定し、1日当たりの走行台数が4千台の場合は約48年で整備費用を回収できると試算。3千台の場合は約78年。新トンネル建設による経済効果は、1日4千台走行だと道内観光消費額で年間730億円を見込む。
 第2青函トンネル構想では2017年2月、ゼネコンなど全国200の企業・団体でつくる政策提言機関・日本プロジェクト産業協議会(東京)が貨物列車専用や無人運転専用自動車道建設を発表。ほかにも民間コンサルタントなどによる貨物列車専用構想がある。今回は一般自動車道で結ぶことで、観光客増やトラック輸送の需要も高くなるとみている。
 シンポジウムは17日に札幌市内で行われ、研究会のメンバーによるパネルディスカッションなどを予定している。


研究会のメンバーは
・石井吉春北大大学院公共政策学連携研究部教授
・神尾哲也戸田建設執行役員
・加森公人加森観光社長
・栗田悟北海道建設業協会副会長
・田中義克トヨタ自動車北海道顧問
・田村亨北海商科大学教授
・北海道経済連合会(オブザーバ)
・北海道商工会議所連合会(オブザーバ)
などとしています。北海道の頭脳北大の公共政策関連と建設会社、自動車会社など産学が連携して取り組んでいるというのがわかります。

トンネルの構造を
・延長約30キロ
・内径14.5メートルの円形構造
・下部に管理用道路と緊急車両通行帯
・非常駐車帯を750メートル間隔
・総工費7,229億円
としています。

経済効果は
・1日当たりの走行台数は4,000台(少なくとも3,000台)
・大型1万500円、普通乗用車5,250円の想定
・4,000台の場合48.2年、3,000台の場合78.3年で整備費用を回収
・道内での観光による消費額は4,000台のケースで年間730億円、3,000台でも365億円に達する
としています。建設期間は10年としています。

さて、これを元に考えますと想定されている14.5mのトンネル幅ですと、道路1車線の幅員3.5m、路肩1.75mというのは標準的な高速道路の幅員構成ですので、上下線間に1.5m程度の分離帯を儲けて12m、片側に非常駐車帯(3.0m+1.0m程度)が設置されれば14.5mという幅はほぼ現在の2車線区間の高速道路トンネルと同様ということになります。上り勾配側に登坂車線を想定しているかもしれません。

次に勾配です。現在の青函トンネルが53.85kmあるのはトンネルの勾配を約12パーミルとしているからです。海面下240m下を通りますので、約260m潜るとして必要な距離は約22kmとなります。本州側から約22km潜り、約6kmの水平(緩い勾配)区間の後また約26km上って北海道側へ出ます。

100km/h設計の高速道路では勾配を通常3%(30パーミル)まで許容、例外的に6%許容です
ので、2%程度の勾配で計算しますと本州側から13km下り、約260m潜り、水平区間4km、北海道側も13kmほど上る形にすると約30kmということになります。海底部は23kmほどですので、陸上区間は7kmとなります。ただ、特に本州側は何も無い山間部に出ることになるので、もう少しカーブを入れるのかの工夫が必要かもしれません。

想定される交通量4,000台/日については現状年間の北海道-本州のフェリー航送台数が31万台程度ですので855台/日です。しかしながら瀬戸大橋の通過台数が2万2,000台/日(これは通行料値下げ効果が大きく、開通時は1万台/日程度だった)、神戸淡路鳴門道大鳴門橋が2万5,000台/日、西瀬戸道多々良大橋が7,700台/日であり、通行料金によっては4,000台は過小予測とも考えられます。なお、関門橋は3万8,000台/日、関門トンネルが2万8000台/日となっています。

さて、ここまでざっと調べてみた感想なのですが、やはり片側1車線道路というのがかなりなネックになりそうな印象があります。管理用道路、緊急自動車通行路を併設しますが、車両転回も難しいとなると、事故の心配、そして、100km/hで走ったとしても20分程度は通過にかかる30kmのトンネルの居眠りや脇見などの心配もあります。途中に休憩施設等の設置が可能なのかも含めたものですね。仮に渋滞があれば、トイレなどの心配もありましょう。
そういう意味ではこのスペックで建設されるのは少々きつい印象があります。というか、最初からもっとスペックが必要で工事費が積み増されるってのが前提って感じを受けます。

現在世界最長の道路トンネルはノルウェーの「ラルダールトンネル」で24.51kmで、ここは幅員9mという非常に狭い道路のようです。1日1,000台程度の通過しか無く、途中にいくつかの待避設備があるようです。これはドライバーの居眠り事故を防ぐ目的があるとのこと。2位は日本の山手トンネル18.2kmですが、ここは2車線トンネルが上下線2本併走となり、約3万4,000台/日。途中にいくつかの出入口があるなどの「変化」があるのが大きいですね。

将来的に「自動運転」や、一定速度で運転する「台車」のようなものに乗せられた自動車「輸送」ならばともかく、人間の注意力に頼った形でのトンネル内運転ってのは正直きつそうな印象を受けます。

ちなみに昨年「鉄道路線強化検討会」という名前で大成、鹿島など大手建設会社が参加し、単線の貨物列車用青函トンネルを約3,900億円の工費で建設できるという試算をあげています。これは作業抗を既存青函トンネルと共用するなどすることで工費を下げるという観点で、貨物列車用(在来線用)とすることで、現在の青函トンネルを新幹線線用にでき新幹線の高速化を図ることができるというものです。こちらは現在の青函トンネルに沿うことで地質などの問題がある程度確認できていることもあり、現実性は高いようにも思われます。ただ、その金額をかけても新幹線高速化以外は「既存と何も変わらない」ことが納得できるか?ということでもあります。


最後に青函トンネル内の新幹線高速化について具体的な内容が出てきました。現在、在来線時代と同等な速度で抑えられている新幹線の最高速道を160km/hに引き上げるもので、9月以降に試験を行い来年3月改正から実施したい考えです。既に技術的な問題は解決されていると思われ、確認作業だけということなのでしょう。

 

毎日新聞 2018年06月14日
北海道新幹線 青函トンネル内、9月までに160キロ試験 /北海道
https://mainichi.jp/articles/20180614/ddl/k01/020/056000c
JR北海道の島田修社長は13日の定例記者会見で、北海道新幹線の青函トンネル内での高速走行実験を9月までに実施することを明らかにした。
 青函トンネルでは新幹線と貨物列車がすれ違った際に荷崩れが起きることを防ぐため、最高時速が140キロに制限されている。
 JRによると、営業運転の列車の合間に試験列車を最高160キロで運行させる。実現すれば東京-新函館北斗間の所要時間が3分短縮され、最速で3時間59分と4時間を切る。
 国土交通省は昨年12月、2019年3月までに最高160キロに上げる方針を決定。今回の走行実験で高速走行に問題がないかを確認する。JRは将来、さらなる高速化も見込んでいる。

 

東奥日報 2018年07月04日
青函トンネル新幹線高速走行 9月に試験
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/49464
青函トンネル内を含む共用走行区間での北海道新幹線の高速走行実現に向け、JR北海道とトンネルを所有する鉄道建設・運輸施設整備支援機構が青函トンネル(長さ約54キロ)内で行う高速走行試験の日程が9月2~19日となる見通しであることが3日、関係者への取材で分かった。下り線で、時速160キロから最大210キロの範囲で試験する見込みという。
共用走行区間は、貨物列車とすれ違う際に風圧で荷崩れを起こす恐れがあるため、
新幹線の最高速度を時速140キロに制限している。
関係者によると、最高速度を20キロ上げて時速160キロで貨物列車との
すれ違いの状況を確認するほか、最大210キロで軌道や架線の状態を調べる。
2019年3月のダイヤ改正から160キロでの営業運転を目指す。

東奥日報にはもう一段踏み込んだ記述があり「最大210キロで軌道や架線の状態を調べる」というのもあります。元々新幹線規格で設計された青函トンネルでの問題は無いと思われますが、貨物列車との時間を分けての高速化は検討にあったため、これも同時に検証するということのようです。

カテゴリ: 北海道の交通関係 北海道新幹線 JR北海道 貨物輸送

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