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北海道の交通関係
鉄道の安全対策と他の交通機関の安全対策②
2018/07/17
鉄道の安全の歴史は「事故の歴史」と言っていいでしょう。
それだけ事故が多かったのか?と言われますが、現実的に国内の陸上輸送を電子的な事故防止の支援も無く長く担っていた鉄道は、いくつかの大きな事故を持って安全になってきた歴史があるわけです。
信号とATS
自動車の事故の4割が追突です。同じ方向に向かう車、前方の車両が急停車したら、自分の車を安全に前方車両に追突せずに止めるためには、適切な車間距離と速度が必要です。鉄道の場合もこの考え方があります。しかし、前方の車両との間隔をどう確保するか?これがまず第一なのですね。ハンドルでよけられない鉄道は、前方の車両ともろにぶつかってしまうわけで被害が大きくなりがちです。
そこで考えたのが後続の列車が「入れない」場所を信号で区切っておけばいいということです。これを「閉塞」と呼びます。電車が止まっているなら、その手前の信号は「赤」、そして、その手前の信号を「黄」としておいて、黄色信号が見えたら減速してくださいねとしておけば、前の列車に追突せずに赤信号の手前で止まることができます。
北海道では今も単純な3灯式信号「赤・黄・緑」が多いですので、快速エアポートなんかに乗って前を見ていたら、北広島駅で追い越す普通列車がちょっと遅れていたら「黄」信号を見て減速するのを確認できると思います。普通列車が隣のホームに入りきって、ポイントが切り替われば「緑」になることがわかります。鉄道は「黄」信号は減速しなさいという信号ですのでその信号を越えて進むことができます。「赤」は止まらなければなりません。
そうそう、鉄道は原則的に「青信号」ではなくて「緑信号」です。このあたりは世界共通で日本では緑色を「青」と呼び慣わしてたことで自動車用は「青信号」と呼ぶようですね。ちなみに北海道で見かける縦型の信号機、上から「赤」「黄」「青(緑)」ですが、鉄道の信号は上から「緑」「黄」「赤」です。
さて、鉄道では赤信号を過ぎたり、黄色信号で高速に通過したらどうなるでしょう?道路と同様にこの信号を守らず過ぎて事故になることが過去に何度もあったわけです。運転士の注意力だけに頼る方法では事故は防ぎきれません。
鉄道は線路の同じ場所を通過するので「通過したこと」を検知し、これを過ぎたら自動でブレーキを掛ければ良いという仕掛けを作りました。これがATSです。日本で最初に採用されたのは昭和2年の現在の東京メトロ銀座線からです。そして国鉄全線(北海道の現在のJR全線)全路線に設置完了したのが昭和41年(1966年)です。
今乗用車の「自動ブレーキ」といわれるものがブームですが、それを遡ること50年以上前に自動ブレーキの仕掛けがあったというのを覚えておいてください。
ただ、この時代の自動ブレーキは「運転士が運転を継続できなかったら」ブレーキがかかる仕掛けなので、確認ボタンを押すと解除されてしまうわけです。なので解除してその後事故という例が何度かありました。今は改善されていますが、事故の歴史で安全が高まるわけです。駅停車の直前にベルが大音響で鳴るのはこのATSが前方の信号が赤であることを知らせています。その後ブレーキをかけ確認ボタンを押すと「キンコンキンコン」という音が停車まで続きます。停車しなければ勝手にブレーキが掛かり停止します。
現在JR北海道は特急が100km/h以上で走る区間、列車本数の多い区間にはさらにATS-Dnという次世代ATSが設置されています。カーブの速度制限やポイントの速度制限にも対応して「スピード違反」できない仕掛けになっているわけです。この新タイプのATSは法令で設置が義務づけられており、JR北海道は法令が求める区間の設置が完了しており、それ以外の区間も工事していくとしています。カーブでの速度超過での事故であるJR西日本・尼崎事故を受けての対策です。
デッドマン装置・EB装置
車を運転していた運転手が突然死、もしくは意識を失うなどの事故は少なくありません。読売新聞
急病で運転中に死亡したトラック、バス、タクシーの運転手…5年で200人
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171117-OYTET50020/
鉄道乗務員が同様に意識を失ったり突然死した場合、列車はどうなるのでしょうか?
法令では鉄道車両の運転席にはデッドマン装置または緊急列車停止装置(EB装置)を設置することが義務付けられています。デッドマン装置は運転士が力を入れていなければならない部分(ペダルやハンドルなど)から力を抜くと5秒以内に非常ブレーキが動作するもの。EB装置は1分以上列車を操作しなければ非常ブレーキがかかるものです。
列車の運転席後ろにいると、一定時間で「プー」というブザーが聞こえることがあります。これがEB装置の警報で、このあと5秒以内に何らかの操作をしなければ非常ブレーキがかかります。
JR北海道
デッドマン装置が働かない状態で運転した事象について
https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2017/171030-1.pdf
ただ、このような事例もあるのでかんぺきなものではありません。とはいえ、これまた昨今高速バスなどで取り入れられた運転手の状況でブレーキを掛ける機能が最近の新車には導入されてきてはいますが、まだ義務化まではされていません。
踏切事故防護
踏切での列車と車の事故、鉄道は質量も大きく速度もあるためすぐに停車できません。最高速度で走っていればざっと停車まで500m程度かかることがあります。つまり踏切で立ち往生したならすぐに「非常ボタン」を押さないと列車が500mよりこちらにいるなら止まれない可能性があると言うことです。踏切で車が動かなくなったら車内に留まってはなりません。
さて、普通乗用車なら車を押しつぶす事故になりますが、相手がトラックなら鉄道車両側にも大ダメージがあります。1991年の日高線での踏切事故では列車側も前方が大破し運転士が両足切断の重傷を負いました。JR北海道はこの車両を2002年までに全て引退させ、この後に作られた車両は運転台を高く、前方にクラッシャブルゾーンを確保しました。2010年に発生した函館本線での踏切事故では高速で大型ダンプカーと衝突したものの、車両自体は大破し廃車になりましたが乗客、乗員に死者は出ず、この優位性が証明されたことになりました。(報道は吹雪の中減速しないとJRを糾弾していましたが、元々踏切で停止しないクルマ側の問題であることは明かです)
JR北海道の踏切の数は1672。特に警報器の無い4種踏切が131ありますが、これは30年で
8割減らした結果です。ほぼ冬期閉鎖など特殊な場所以外では存在せず、昨年発生した留萌線の踏切事故は、この4種踏切に入り込み事故を起こし、これもJRを糾弾する報道がされました。いくら「見えなかった」と言ったところで、踏切手前の安全確認はドライバーの義務です。JRはこの6月-7月頃は踏切付近の草刈りを実施しています。
なお、踏切は原則的に新規設置は行えませんので、今後減っていきますが、特に地方では多く残っていくものと思われます。鉄道会社にとっても道路利用者にとっても厄介であるからこそ踏切での一旦停止と安全確認は必要なことなのです。
ホームでの接車と自殺対策
JR北海道では現在のところ新幹線のみで行われていますがホームと列車の間にホームドア、ホームゲートなどの装置を導入する例があります。札幌市営地下鉄では全駅の対応が完了しており、不用意な接触事故は無くなりました。しかしながら自殺に関しては完全に防げるものではありません。特にJR北海道では踏切等での人身事故が昨今連続して起きています。これは鉄道側だけの対策では難しい状況であります。
鉄道での人身事故は復旧までに時間を要します。では、人身事故が起きるとどのようなプロセスで運行を再開することになるのでしょう。
・事故発生
運転士は「列車防護」を行います。これは近隣の列車も含めて列車を全て現場に入れないようにする仕掛けです。これを行わないと現状確認で線路に降りた職員が他の列車に轢かれる恐れがありますし、警察や消防などの関係者も線路に立ち入れません。なので「オレの路線は関係ない」というのはありません。一旦近隣の全ての列車が停止します。
・救助
「死亡」が確認されていない以上生きているものとして救助を行います。場合によっては列車を持ち上げるようなレスキュー的な処置も必要になります。
・点検
列車車両だけでなく、線路、電線など列車の運行に必要な設備の異常がないかを確認します。見た目に問題が無くても線路に設置されているATSの装置など細かい設備も正常動作を確認しなければなりません。問題が無ければ一旦事故車両を移動します。車両の移動も誘導する係員などの手配が必要になります。また、運転士は聴取されますので代わりの運転士も必要です。
・実況見分・事情聴取
特に人身事故当事者が死亡した場合事件性の有無もあるので、運転再開には時間を要することがある。
・運転再開
運転再開しても、折返しの車両などの都合上すぐには同じ本数は確保されない。運休や途中駅での折返しなどを絡めながら通常ダイヤに戻すという必要があります。特に長距離の特急などは遅れが長引くことがあります。また、その列車と接続する他の路線のダイヤにも影響が出ることがあります。
運転再開までの時間は1時間から2時間程度が相場とは思いますが、広範囲に遺体が散らばるなど場合によってはそれ以上の時間も必要になりますし、列車運行の設備に影響があった場合はそれ以上に再開が伸びることがあります。
いずれにせよ人身事故が発生した列車に乗っていたならば2時間程度は身動きができないことも考慮しなければならないでしょう。そして、それは鉄道側だけの努力では短縮できないのもまた事実な訳です。
自殺に関しての対策は鉄道会社ではポスターなどの掲示以外にできることが限られています。