北海道の交通関係

JR北海道への400億円の支援が意味する「JR北海道のやるべきこと」

2018/07/28
今回JR北海道に対して国が考えた支援メニューはどのようなものでしょう。報道を紹介する前に国土交通省の発表をまず見てみましょう。これは広く国民に公表されました。

国土交通省の発表資料

 

国土交通省 2018年7月27日
JR北海道の経営改善について
http://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo05_hh_000085.html
本日、国土交通省では、JR北海道の経営改善に向けた取組及び関係者による支援・協力について公表するとともに、JR北海道に対して、経営改善に向けた取組を着実に進めるよう監督命令を発出しましたので、お知らせします。詳細については、添付資料をご覧ください。

 

国土交通省 2018年7月27日
【別添1】JR北海道の経営改善について
http://www.mlit.go.jp/common/001247327.pdf

ここで触れられた「JR北海道が行う支援の前提条件」が

 


札幌市圏内における非鉄道部門も含めた収益の最大化
新千歳空港アクセスの競争力の一層の強化
インバウンド観光客を取り込む観光列車の充実
北海道新幹線の札幌延伸に向けた対応
JR貨物との連携による貨物列車走行線区における旅客列車の利便性の一層の向上及びコスト削減
経営安定基金の運用方針の不断の見直しを通じた運用益確保
JR北海道グループ全体を挙げてのコスト削減や意識改革
地域の関係者との十分な協議を前提に、事業範囲の見直しや業務運営の一層の効率化

この8項目です。
このうち事業範囲の見直しについて「他の交通手段が適して」いる5線区の転換、「利用が少なく鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要」な8線区について「国は交通体系のあり方の検討を行う地域の関係者に対して、必要な支援を行う」としています。
最初から国土交通省資料で「全ての路線を維持する」という観点は一切無いことがわかりますし、JR北海道が単独維持が不可能としている線区の維持は「地域の関係者」の努力が前提としているわけです。

 


JR北海道と地域の関係者は、集中改革期間における取組の結果を毎年度検証し、最終年度(平成35年度)には総括的な検証も行う。その際、利用者数等の目標に対する達成度合い等を踏まえ、事業の抜本的な改善方策についても検討を行う。

ここで国土交通省が放ったのは必ず「地域の関係者」という文言を入れたことです。国土交通省(国)とJR北海道だけが努力するのではなく、地域が一体でなければ意味が無い、また、地域が無関心であることは許さないという強い決意も感じます。

では、国の支援メニューを見てみます。

 


(1) 利用が少なく鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区における鉄道施設及び車両の設備投資及び修繕に対する支援
(※)地方自治体等からも同水準の支援が行われることを前提に、具体的な仕組みについては、地方自治体等との協議も踏まえ、今後検討・調整する。道内自治体の厳しい財政状況を踏まえ、必要な地方財政措置が講じられるよう要求を行う。
(2) 貨物列車走行線区における貨物列車の運行に必要な設備投資及び修繕等に対する支援
(3) 青函トンネルの維持管理に対する支援
(4) 経営基盤の強化に資する前向きな設備投資に対する支援
総額(2年間) 4百億円台
なお、額は今後確定する。
(1)から(3)までは全額助成、(4)は助成1/2、無利子貸付1/2

このメニューに関しては基本的に既存の中小鉄道に対する補助やバス等の補助を参考に、それから逸脱しないメニューを作った印象です。
そして「地方自治体等からも同水準の支援が行われることを前提」という文言が着いています。つまりは地元自治体からの支援無く国は支援しないという通告です。
また、青函トンネルと貨物列車走行区間に関する支援は貨物会社からの線路使用料の不足分、および青函トンネルの特殊な環境維持を国が肩代わりするというもので、国家的インフラである青函トンネルを今まで民間が維持していたことに対する批判に答えたものとなっています。
「経営基盤の強化」に関する支援はあくまで貸付金であることにも留意が必要です。先のJR北海道の支援前提条件が札幌圏では必要な投資をして稼ぐようにするのですから稼ぎが発生するなら「返して貰う」形でなければ国民の批判を受けましょう。
無利子貸付を含めた400億円規模、しかも2年ですから、単純なJR北海道の赤字をカバーするような内容では無いことは明かなのです。

国土交通省のいらだちが見え隠れする

今回の支援内容について、あくまで発表資料だけで思うところは、国土交通省のJR北海道、沿線を含めた自治体に対する苛立ちのようなものを感じます。
「第1期集中改革期間」という名目で支援するこの2年について、最初に書いてあるのが

 


JR北海道と地域の関係者が一体となって、利用促進やコスト削減などに取り組み、持続的な鉄道網の確立に向け、2次交通も含めたあるべき交通体系について、徹底的に検討を行う。

というところからも見えます。これ、交通政策基本法で制定されている「地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。」を地域が全くやっていないじゃないか。という考えです。二次交通を考えるのは本来国土交通省ではありません。駅から乗り継ぐ交通網の制定は地元自治体の仕事です。それをここで書かれてしまっているわけですから、やってないじゃないか、まず2年掛けてそれやれ、徹底的にやれと書かれているわけです。

さらに

 


JR北海道の経営計画等に盛り込まれた取組について、四半期ごとに鉄道局とともに検証し、情報を開示。数値目標の達成状況を迅速に検証し、速やかに改善方策を講じるため、部門別の収支管理などの体制を整備。

四半期ですよ。3ヶ月おきに報告を求める。それだけ「急いでやれ、今すぐやれ」です。これはJR北海道へハッパよりも、その先に見える自治体との交渉での話を求めているように見えます。今までのように時間を掛けて廃線論議なんてしてる暇は無いという考えの表れと見ます。

それをある程度の強権をもって行うという意味が

 

国土交通省 2018年7月27日
【別添2】監督命令書
http://www.mlit.go.jp/common/001247326.pdf

「監督」という意味になりましょう。国の金を使う、国民の税金を使う以上、それは見合った内容でなければなりません。「できませんでした」を認めないということは、北海道の沿線自治体、道民の言う単純な「路線維持」を認めることは無いという強い決意を感じるわけです。

この件はどう報道されたか

さて、いずれの報道機関もこの報道発表資料に沿って報道していますので、その内容よりも社説や記者のコメントのような部分から報道を紹介します。

 

日本経済新聞 2018年07月27日
JR北海道、国の追加支援が決定 改革努力鈍る面も
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33505400X20C18A7EA4000/
JR北はこれまでも国の支援を受け、すでに2030年度までの支援も求めている。自力での経営再建は難しいと見ているためだが、支援が続けば経営改革の努力が鈍る恐れがある。

この「改革の努力が鈍る」からこそ、支援の額が決められたように見えます。2年で400億円規模であれば経営的な赤字は解消できないが、青函トンネルなどの設備費用の負担が軽減されることは直接の支援よりはっきりとした効果がある。金額から追うのが得意なはずの日経にしては微妙な記事です。

 

日本経済新聞 2018年07月27日
JR北支援 北海道知事「本格議論の出発点に」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33506050X20C18A7L41000/
高橋知事は「地域による協力支援に関する本格的な議論の出発点と考える」と述べ、JR北の経営再建の枠組みについて国や同社と議論を急ぐ考えを示した。
棚野町村会長も「現行法の中で国が責任を持って2年間はJRを支えてほしい」と応じた。

これまでは出発点でもなかったというのに高橋知事の無関心さが伺えます。棚野町村会長の言っている意味が理解できません。現行法でJR北海道を支援する枠組みが無いから今回支援の枠組みを作り必要があれば法改正が必要なわけです。2年という枠自体は法律ではあるけれど、どのような法律で今回の支援が行われているのか理解していないようにも見えます。

 

北海道新聞 2018年07月28日
社説)国のJR支援 抜本改革には不十分だ
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/213105
 経営難で路線見直しを進めるJR北海道に対し、石井啓一国土交通相はきのう、2019、20年度の2年間で400億円台の財政支援を行うと表明した。
 これまで「地域の問題」として距離を置いてきた国が支援に転じたことは前進と言えよう。
 とはいえ、2年という短期の枠組みでは、資金が枯渇しているJRの抜本改革は困難だ。
 国は早期に21年度以降の支援態勢を明確にし、道や沿線自治体とともに長期的な視点で地方の鉄路を支えていくべきだ。
 JRは、単独では維持困難とする13区間中8区間について存続に向けた支援を国に求めている。
 今回の財政支援では、路線維持のための経費を地元自治体と折半するほか、青函トンネルの維持管理や、快速エアポート増強といった増収策などにもお金を出す。
 一方でJRと道が求めていた30年度までの長期支援は見送った。
 財政支援の根拠となる国鉄清算事業団債務等処理法は20年度で期限切れを迎え、21年度以降の支援継続は法改正が前提となる。
 その前に、JRが経営改善の成果を示し国民を納得させる―というのが見送りの理由だ。
 国はJR会社法に基づく監督命令を出し、経営改善の進展を厳しくチェックしていくという。
 JRが支援にこたえて経営努力をすべきなのは当然だ。
 だが、改正案の審議が見込まれる20年の通常国会までの2年足らずで目に見える成果を求めることが、現実的と言えるだろうか。
 経営効率を重視するあまり、赤字路線が切り捨てられる事態は何としても避けるべきだ。
 現在のJRは慢性的に資金が不足し、細切れの支援で経営が上向く状況にはない。
 国鉄時代から使い続ける古い車両の置き換えさえ満足に進まず、地方路線を走る約160両の更新は手つかずのままだ。
 新製車両の投入は安全、サービス両面の向上につながるが、設計から完成まで数年かかる。
 こうした長期的な資金の裏付け抜きには実行できない計画こそ、国が下支えする必要がある。
 そもそも、JRが資金難に陥った責任の一端は国にあることを忘れてはならない。
 国鉄分割民営化の際に導入した経営安定基金の運用益は、低金利の影響で当初想定を大きく下回った。民営化31年間の制度疲労を正すには、それに見合うだけの腰を据えた関与が求められる。

道新社説もそういう法律面の根拠を無視した論調に見える。「経営効率を重視するあまり、赤字路線が切り捨てられる事態は何としても避けるべきだ。」という点だけででも北海道新聞の主筆と国土交通省の意識の差は大きいだろう。
そもそも今回は国鉄再建法に基づく廃線を別なアプローチで行うことを国が考えたことで、地元自治体にとっては「国により残念ながら廃線させられた」という言い訳が立つ意味がある。5路線は2年以内に廃止の道筋をつけ、本当に国が期待しているのは実際の廃線だろう。それは赤字黒字ではなく「見せしめ」にちかいもので、目に見えた廃線がなくJRへの資金援助など他の地域にとっては納得できないこと。現実にJR西日本など、路線維持できず廃線は実際に発生しているのにJR北海道は国の金で維持するなどというのが認められるわけが無いのです。

 

北海道新聞 2018年07月28日
JRへの支援2年「結果出せるか」 8区間の沿線戸惑い 対象外5区間は危機感
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/213144
特産品の車内販売などに取り組み、利用促進に頭をひねる沿線住民や自治体関係者からは「2年で結果を出せるか」と戸惑いの声が上がった。一方、利用が少なく支援の対象外とされた5区間の沿線の関係者は危機感を募らせる。
市民団体「石北沿線ふるさとネットワーク」(北見市)の長南進一事務局長は、長期的な支援を求める。同団体は今月から、特急列車で地ビールなどを販売し、利便性向上に取り組む。利用促進には息の長い取り組みが必要で、長南さんは「これからも官民一体で続ける」と話す。
網走市の市民団体「MOT(もっと)レール倶楽部」の石黒明会長は「自治体はいち早く、鉄道を活用した振興策をJRに提案する必要がある。自治体の本気度が問われる」と話し、迅速な対応を求めた。

そういう意味で「特産品の車内販売」なんて全く明後日な支援を行っている自治体が2年で結果が出せるかと言うのは片腹痛いわけで、真面目な支援で本当に客が増やせてから言ってくれって話です。市民団体でもこのくらい温度差があるわけですね。

 

北海道新聞 2018年07月28日
長期想定のJR落胆 再建策転換余儀なく 値上げや減便 選択肢に
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/213097
■不退転の覚悟で経営自立を JR社長一問一答
 JR北海道の島田修社長が、監督命令を受けた後、国交省内で行った記者会見の主な一問一答は次の通り。
 ――まずは2年間の支援となった。
 「法律の制約があり、2年間の支援策が示されたが、法改正に向けて国民の理解を得るためにも2年間で目に見える成果を出すことが必要と認識している」
 ――目に見える成果とは。
 「今後具体化すると思うが、少なくとも改善のプロセスを確認してもらえるようなものを示すことが必要。できるだけ早い時期に『たゆまぬ経営改善が次から次へと進んでいる』と認識してもらえるようにすることが大事だと思う」
 ――2014年のデータ改ざん問題に続いて2度目の監督命令となった。
 「国の支援も具体的に示されたので、重く受け止めなければならないと考えている。不退転の覚悟で取り組み、なんとか経営自立を果たしたい」

さて、JR北海道側の会見ではこのように応えた島田社長ですが、2年間での目に見える成果というのは矢継ぎ早に改革への矢を放つ必要があります。もはや運行してもしなくても1両に数人の客では貰える運賃の額は変わらない。ならば減便は避けられない事態です。運賃値上げは決定事項としてもそれで改善される額はそう大きくない。あくまでやってますパフォーマンスの一環になるわけです。しかも、そのパフォーマンスは規模が大きい方がいい。インパクト勝負な感じになっているわけです。

JR北海道が行う「次の矢」は極端な札幌圏優遇と地方冷遇になるのは仕方が無いことですし、現実に鉄道利用が少なくクルマで良い住民にはほとんど問題が無いわけで、騒ぐのは報道だけというのが見えます。
元よりJRは「使われている列車」には対処しますので、通学列車以外の大幅減便なんかも視野でしょうね。

カテゴリ: 北海道の交通関係 JR北海道 北海道新幹線 観光列車

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