北海道の交通関係

JR北海道について勉強不足すぎて意味不明な社説2つ

2018/08/07
私は新聞を作る人たちはそれなりに教養があり、文章力があり、確かな目を持つ人たちだと教わってきたし、そういう目で見ていた時期もある。

しかしながら、昨今興味を持つ対象であるJR北海道問題だけを見る限り多くの新聞社の記者はろくに調べもせず、自らの思い込みだけで記事を作成して、無意味な「説」として流布しているわけです。複数調べるような読者は、何を書いてるんだ?この記者はろくに調べもしないのか?という印象で見ますが、残念ながら多くの読者は暇ではありませんから、自分に大きく関わらず興味の無い項目に関しては報道のいっていることを「仮想的に正しい」として認識せざるを得ません。
私にしても他の興味の薄い事項に関しても、ああ、新聞の社説はたいてい主筆の思い込みだから気をつけないとなという意識が強くなり、特に政治関係は必ず元ソースを捜すようになったのはいいことです。新聞は「信用に足らないメディア」に成り下がった(昔からきっとそうだったのだろう)わけです。

とはいえ、全国に記者網を持ち、特に北海道新聞等北海道のかなり細かい地域に記者を配置していることを思うと、これを代替するメディアが簡単には出てこないのも事実です。なので、記事の裏に記者の思い込みはないのか?と気にしながら事実はどこなんだろうと読むようになっています。また、やはり中央メディアは地方を全く意識しないで書いているということも念頭に「ああ、東京の意見はそうなのね」という見方もします。
JR北海道問題も含めて根底には地方の人口減少というより「生産者人口」の減少があるわけで、新聞は生産年齢以上の老年層でも読めるので「少し後に部数変化が起きる」ことを考えると、あと20年もすれば今の「新聞」という形態が維持出来ない可能性も高いのです。批判している先の10年、20年後が自らの姿だと思えば無責任な批判はできないようにも思うわけです。まぁ、その頃主筆は隠退生活だから関係ないのかもしれませんが、若い記者は不遇だなとも思います。

あまりに残念過ぎる読売社説

 

読売新聞 2018年08月07日
JR北海道再建 赤字体質から脱却できるのか
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20180807-OYT1T50001.html
 人口減少時代の地域交通をどう再構築するか。JRと国、自治体が直面する重い課題である。
 国土交通省は経営難のJR北海道に対し、今後2年間で400億円超の財政支援を行うことを決めた。
 JR北海道は2年連続で過去最悪の経常赤字を記録している。このままでは、赤字を国が穴埋めする事態を繰り返しかねない。抜本的な経営改革が急務だ。
 国交省は、経営監視を強める監督命令も出した。四半期ごとに経営状況を検証し、収益改善へ経営の多角化やコスト削減を促す。
 北海道新幹線が2030年度に札幌に延伸されることを踏まえ、31年度には国の支援から脱却した自立経営を目指す。だが、新幹線効果は限定的との見方が強い。再建への道のりは険しい。
 JR北海道は営業地域が広いうえに積雪対策も欠かせず、施設の維持コストがかさむ。域内の人口は右肩下がりで、運賃収入の伸びは見込みにくい。
 鉄道以外の事業をテコ入れする必要がある。増加する外国人観光客を取り込んだビジネスや、不動産関連、ホテル、小売りなど多角的な事業展開が求められる。
 最大の課題は、乗客数の落ち込みが激しい路線の存廃である。
 JR北海道は「単独では維持が困難な13線区」を公表している。その総延長は、全営業路線の半分にも相当する。
 沿線自治体にバスによる代替輸送などを打診しているが、方針が決まったのは、夕張市がバスへの転換を決めた石勝線だけだ。背景には、長年親しんだ鉄道を失うことへの不安があるのだろう。
 地域の交通体系の将来像をどう描いていくのか。地元自治体とJR、国が、幅広い角度から話し合うことが大切である。
 交通インフラを、新たな街づくりに役立てる視点も重要になる。過疎地の足として、自動運転車両を導入するための実証実験が始まっている。こうした先端技術の活用にも期待したい。
 廃線には地元への丁寧な対応が肝要だ。広島、島根両県をまたぐJR三江線の廃止では、JR西日本が5年がかりで説得し、バス路線への転換にこぎつけた。こうした先例は参考になる。
 JR北海道は経営悪化の影響で安全投資がおろそかになり、列車の出火や脱線などの事故を相次いで起こした経緯がある。
 公共交通を運営する以上、業績にかかわらず、労使とも安全を最優先する姿勢が欠かせない。

まず、今日の読売社説です。これ、数日前の日経社説からかなり影響を受けて同じようなスタンスで書こうとしてますよね。でも失敗です。ろくに調べていないから中身が全く伴っていません。
そもそもJR北海道の「赤字」せっかく紙面で「経常赤字」と書いているくらいですから、赤字の要因はちゃんとわかってるはずと思うんですが、どうなんでしょうね?なぜここ2年で急激に経常赤字が発生したと思っているんでしょう?
何度も見せますが

経常赤字は大きく発生している。しかしながら鉄道運輸収入は右肩上がりになっているという(今年度は幾分下がりそうだが)で、人件費を下げて、大きくなっているのは設備投資と整備費用。逆に線路施設、信号設備などの設備投資と整備費用を削っているからJR北海道は経常利益が出ていたんですね。単体で過去最高の経常利益出したの平成26年度ですよ。

ここから単純に「赤字を国が穴埋めする事態を繰り返しかねない」という結論出してるのは内容を理解していないとしかいいようがないわけです。しかもその支援は国からただ金をプレゼントされるわけではなくて、使途を決めた安全施設更新等の支援金と設備投資に関する融資であることにも気をつけなくてはなりません。どこに赤字を直接補填するようなことが書いてありましたか?と。国交省の資料すらろくに読まずに書くのは本当にアホとしかいいようがない。本当にあの内容を読んでこの結論書くのはアホです。そもそも日経社説のパクリなんじゃないですか?これが日本を代表する大手新聞社の社説なんて恥ずかしくないですか?

で、「鉄道以外の事業をテコ入れする必要がある。増加する外国人観光客を取り込んだビジネスや、不動産関連、ホテル、小売りなど多角的な事業展開が求められる。」これも、少しか関連事業の内容確認したの?と、まさかJR北海道の単独決算資料見てこれ書いてるの?

連結決算では営業収益1737億円のうち鉄道運輸収入は728億円ですから実に関連事業収入は58%。これを越えたら「何屋ですか?」って話じゃないですかね?実際JR九州は55%が関連事業収入ですので、関連事業収入の実態は「関連事業で儲けている」とされるJR九州より高いわけです。

ただし、関連事業の粗利率はJR北海道6.2%、JR九州10.1%と差が出ます。これは利益率の大きい不動産関係の比率が大きいという意味があるわけです。なのでJR北海道も見習ってもっと関連事業で儲ければ良いじゃないか!というのはまぁ、わからないでもないです。

しかし、読売主筆さん、忘れていませんか?JR北海道はJR会社法で一定の制限のある会社です。そのJR会社法にステキな文言があるんです。それが「中小企業者への配慮の義務」です。地域に存在する中小企業の業務を侵害しないルールがあるわけです。北海道は大手と言われる不動産ですら中小企業ですので、JR北海道が一時期マンション建設に乗り出した時期、マスコミが叩いたわけです。また、大手スーパーと共同で店舗を開発した時も叩いたわけです。結果どうなりましたか?今JR北海道は利益は少ないものの流通業で地域を支える会社を運営していますが、それはあくまでも大手と組まず、自前でやっているからです。
駅を中心とした店舗開発、不動産事業にJR北海道は特化せざるを得なかったわけです。街に出よ?それを「中小企業者への配慮」の名の下に批判し続けたのはあなたたちマスコミではないですか?

 

日経ビジネス 2018年6月29日
JR九州は儲けに走らず、地域社会への貢献を
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/062800037/


仮にJR九州並みに、道内各所でホテル開発、流通業、不動産業に進出していたら、正直資金力の問題で多くの地場産業を壊滅させることに繋がったはずです。それをやってもJR北海道が儲けを出し続けるべきだと言い切れたかどうか。北海道知事すら「本州で不動産事業を」というわけです。これは「北海道でやられたら地場産業が壊滅する」ことを懸念しての発言です。

そして始まった「自動運転車両」あのね、自動運転で長距離のバス運行できるまでってまだ長いよ。自動運転だから経費がかからないわけではないわけで、自動運転でも乗らない路線は負債なの。

そもそもJR北海道にとって鉄道業が最大の負債なの決算書見れば明らかでしょ。新幹線は自前で建設費を出さないで駅設備、車両、メンテナンスだけを負担するいわば上下分離なんだから、損益分岐点は在来線より大幅に低く、なおかつ10年程度は大規模なメンテナンスが不要だと思えばどれだけ収益に寄与するかなんて、経理的に考えたらすぐわかるでしょ。JR九州は更に固定資産を経営安定基金で償却しちゃってるんだから、新幹線にしばらく金がかからない前提。これだって将来長崎新幹線で少なからず投資したら収益大幅に変わるんだぜ。JR九州はJR九州はってそういうリスクを突っ込むのがマスコミの役目だろうに。

今のJR北海道の大きな問題は明治から昭和初期の線路設備を直しながら使い続けた在来線の今後大規模なメンテナンス費がかかること。50年以上経過したトンネル、鉄橋等をどうするのか?って話が大きいのですよ。逆にその部分を国が「安全投資」としてある程度負担すればJR北海道が少し延命できるってのが今回の400億円でしょ。これで青函トンネルの設備更新して10年程度機器延命できればその後は新幹線の客数によってはある程度のサイクルができるって判断もあるわけです。

そもそも民間バスの「赤字補助」に関して読売主筆はどう考えてるの?「廃線には地元への丁寧な対応」って、今までの経緯見てきていないの?そもそも三江線は地元と増便実験やってるけど北海道の各自治体はそんなことすらしていないんだよ。JRだけの問題じゃないでしょ。

「公共交通を運営する以上、業績にかかわらず、労使とも安全を最優先する姿勢が欠かせない。」って、金が無きゃ安全投資もできん。全てが全く中途半端な聞きかじりのすっからからんの知識で書いたダメ社説の見本です。話にならない。

ついでに日経社説

 

日本経済新聞 2018年08月02日
社説)JR北再建は基本に立ち返れ
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO3369471001082018EA1000/
 経営再建中のJR北海道に、国土交通省が2年間で400億円台の公的支援をすることを決めた。人口減の著しい北海道で鉄道を取り巻く経営環境は年々厳しさを増している。支援が単なる赤字の穴埋めに終わるのでは意味がなく、キリもない。この2年間を持続可能で自立した地域交通をつくる第一歩にする必要がある。
 JR北の再建をどう進めるか、鉄道という輸送体系の基本に立ち返って考えたい。鉄道の得意技はバスや車にはマネのできない大量輸送だ。線路の整備維持や車両調達にかかる固定費は高いが、大人数を運ぶことで乗客1人あたりのコストは下がり、二酸化炭素の排出など環境負荷も減る。
 裏返せば、少人数しか利用しない路線は必要な費用をまかなえず、投資不足から輸送の基本の「安全」さえ揺らぐ恐れがある。
 その場合はバス転換などを検討するのが本筋だ。あまり費用をかけずに便数を増やしたり、近くの学校や病院を経由する新ルートを開設したりして、利便性を高める可能性も広がる。
 これは人口減や車との競争で乗客の減り続ける他地域のローカル線についてもいえる。「何が何でも鉄路維持」という発想を再考すべき時期である。
 JR北では近年「あわや大事故」という重大事態が続発し、悪質なデータ改ざんも発覚した。
 同社はその後「単独では維持困難な13線区」を公表し、バス転換などに向け地元との協議に入ろうとしたが、必ずしも計画通りにいっていない。背景には経営や組織のあり方に対する住民や自治体の不信感があろう。
 島田修社長は「この2年間で目に見える成果を出す」と繰り返し言明した。与えられた時間を有効に使い、鉄道の実情について関係者の理解を得て、持続可能な地域交通に向けて踏み出す時だ。
 国交省もJR北に厳しく向き合う必要がある。支援がとめどなく続くようなら、痛みを伴う改革に本気で取り組む人はいなくなる。

読売は「支援が単なる赤字の穴埋めに終わるのでは意味がなく、キリもない。」を同じような形で紙面にしたんだけど、数字に強い印象の日経もこのあたりは全然理解しないで書いてるんですかね?そもそもこれが「東京の考え」ですか?
バス転換に関してはそれの方が利便が高い路線とそうでない路線があるわけですね。鉄道であることで高速性が発揮できる。また、高速性が発揮できるように作り替えることが可能な路線に投資して直していくってのは90年代にJR北海道が頑張ってきた成果でもあるわけです。
その後島根県鳥取県なども直接自治体補助での鉄道への投資が行われて法律的に難しかった直接支援ができるようになってるわけです。

「支援がとめどなく続くようなら、痛みを伴う改革に本気で取り組む人はいなくなる。」っていう考えが中央らしいのか。中央にしてみれば地方の要求に金を出すのは自分達だという意識がある。その上で都心のラッシュなど鉄道の改良が進んでいないのもまた事実で、しかし、北海道と本州を一定の速度で結ぶ物流ルートがあるからこそ全国に安定した食料を送付できてる面もある。一定の鉄道の維持は全国に利点があるという前提が無ければならないわけです。

そのなかで、JR東日本は今や上場企業で株主利益に反することは難しい。しかし、北海道新幹線が絡むと話は別なわけです。新幹線で東京-札幌の利用客は東北新幹線の全線を利用する優良顧客なんです。しかも駅設備は片側しか使わないんですよ。今ざっと1万人/日の新青森付近の新幹線利用客数。単純に今羽田-新千歳の3万人の利用客の30%程度取れたら利用客倍になるわけですよ。彼らが片道1万5000円支払えば・・・JR東日本が何が何でも北海道新幹線札幌開業に挑む理由がおわかりいただけましょうよ。逆にそのニンジンがぶら下げられてないならJR北海道を支援する理由なんか無いでしょ。

じゃあ、何故JR東日本は直接JR北海道を支援しないか?といえば今はしたくないよねって話ですよ。これ、10年後、新幹線札幌開業前後で、一定の路線廃止と線路設備などの安全投資が終了した時点で「何らかの行動」には出られるんじゃないですかね?逆にそれまでは一定の人的支援くらいしかやりようも無いわけです。

そういう面から考えれば、この2つの社説があまりちゃんと考えて書いてないんじゃないかとは思うんですね。もちろん私の意見はそれもまた思い込みの妄想ですが、垂れ流す先は限られますからね。せめて日本を代表する言論機関ならもう少し「客観的な事実」で書いて欲しいなとも思うわけです。

カテゴリ: 北海道の交通関係 JR北海道 北海道新幹線

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