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北海道の人口と産業構造からJR北海道問題を改めて考えてみる
2018/08/14
生産年齢人口
JR北海道の各種問題を考える時に、これから産業や経済、人口がどのように推移していくのか?を考えてみると、また別の見方ができるとも思うわけです。北海道の平成30年1月1日末現在人口は5,339,539人です。人口がピークだったのは平成9年(1997年)の約570万人だったわけですから、ここ20年で7%ほど下がったことになります。この1997年頃、北海道は高齢者人口が年少人口を上回りました。2010年のデータになりますが、割合では年少人口が12.0%、生産年齢人口が63.3%、高齢者人口が24.7%となっています。つまり、6割の人が4割の高齢者と子供を支えているという構造です。これは全国でもそれほど大きな割合差はありません。
年少者人口が減っているわけですから、これから「生産年齢人口」となる人は少なく、また、「生産年齢人口」から高齢者となって抜けていく人は増えていくわけです。これが「人が足りない」の要因になるわけです。
北海道
平成27年 北海道人口ビジョン
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/csr/jinkou/senryaku/vision.pdf
(リンク切れのため令和2年版をリンク)
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/2/3/4/3/4/1/7/_/02_2_sosei11_zinkoubizyon_zimukyokuan.pdf
今大学を卒業する年齢を含む20-24歳人口が約23万7千人、単年で約4万7000人いるわけですが(5歳年齢階級による推計)15年後には4万人を切ることになります。今北海道に住む0-4歳人口が18万1591人そのまま北海道から離れることなく大人になったとすれば、単年で3万6000人しかいなくなるわけです。今年大卒新卒者を100人取れた会社は、そのままなら20年後76人しか取れないんです。
退職者はもっと深刻かもしれません。現在60-64歳人口は約36万6千人です。単純に単年7万3千人が退職します。もし今年100人新入社員が入った会社なら、事業規模が変わらないなら今年150人退職している計算です。そして、20年後現在40代である団塊ジュニア世代の退職がピークを迎えます。新入社員76人、退職者155人ですから半分以下の人数で仕事を回していかないと今と同じサービスができなくなるということなんです。これが毎年続くんです。
さて、JR北海道の社員数は約7000人です。平成23年(2012年)の安全報告書2012には当時の社員の年代別人数がグラフ化されています。
JR北海道
安全報告書2012
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/safe/pdf_06/safetyreport2012.pdf
ここから6年経っていますから、当時の55歳以上の約1400人は既に退職しているはずです。コンスタントに200人から300人退職していますので、この分の補充だけでも当時から200人から300人程度の採用を行っているというのがこのグラフでの話です。
また、当時の52歳、53歳の職員数が400人を数え、この2年分で約800人いるわけです。平成30年度、平成31年度、彼らは相次いで60歳を迎え定年退職します。もちろん、非常勤、嘱託、定年延長などがあるにせよ、彼らはもうすぐ退職してしまう。そして、今度は数年後に迫る国鉄採用抑制期の社員の退職です。今度は急激に退職者が減るわけですから、同じ人員を採用すると余剰してしまう可能性があるわけです。
しかし、先の今現在の「新卒者数の減少」から考えて、今後も200人300人とJR北海道が人材を確保できるかは未知数な話です。そもそも今の7000人規模を維持できるかは中途退職者数が昨年120人に及んだことを考えても無理でしょう。その前年も100人が中途退職。つまり300人採用しても200人しか増えず、定年退職者を考えると「減る」要素しか無いわけです。
これはJR北海道だけに留まる話ではありません。バスなど運輸機関だけでなく、様々な職種での人不足は今後更に深刻になることは避けられず、これは社会の根幹を揺るがす事態なのです。
今後生産者年齢の「取り合い」が続くことになります。そして、一人が受け持つ仕事量が倍増するような状況すら発生する。それを避けるには集約化と電子化、効率化が避けられないわけです。そのあたりに対する危機感が政治の世界でも、社会、企業関係全体的に薄いのではないかと私は感じています。
北海道は何で飯を食っているのか
北海道の基幹産業は農業・漁業です。と言われて、当たり前じゃねぇか?って思う方は前例に惑わされている方かもしれません。例えば水産業では私の子供の頃は「釧路港は水揚げ日本一」って習ってきていますが、今や銚子漁港に7年連続1位を明け渡して水揚げ量も半分以下です。北海道の水産業は昭和62年(1987年)の316万トンの漁獲量がありましたが、ついに平成28年86万トンと100万トンを割り込みました。2014年と少し前ですが北海道の産業別総生産の構成を見ると、既に1次産業である農業・漁業の占める割合はわずか4.1%にすぎません。これは行政サービス生産者(役所、消防、警察など)の13.3%なども含めれば、全国と比べて大きく違うことが見て取れます。北海道は製造業の割合が低く、その分農業・漁業の比率、そして「官依存」的なところもここで見えるわけです。建設業比率も高いことがわかります。
北海道
北海道データブック2017
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tkk/databook/2017/0301.htm
3次産業はもちろん生産加工などの1次産業に直結した部分はあるものの「観光」という面が離せないわけです。観光による生産波及効果は約2兆900億円と推計していますが、そのうち約1/4を訪日外国人観光客が占めているわけです。
北海道
北海道観光産業経済効果調査
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kkd/toukei/6th_Economic_impacts_research_20170922_58.pdf
もちろん1次産業は疎かにできません。しかしながら、北海道が生きていくためにはどうしても観光へ投資することを避けられないわけです。そのときに「北海道に観光客を集めるために必要なものは何ですか?」という最初の関門が「交通」なわけです。
道外、海外から北海道へ入り込みする最初の地は新千歳空港であることを考えますと、新千歳空港が潤沢に使えることが大前提となります。しかし、現在、新千歳空港の日中発着枠は1時間42回に拡大したものの、これでも夏の観光シーズンには発着枠やターミナルビル枠を確保できず就航を諦めるケースが発生しています。発着枠は1992年に24回だったものを段階的に引き上げてきた経緯があります。しかし、これでも足りずに旧千歳空港である自衛隊千歳基地の活用まで検討されている有様なのです。
また、地上での誘導や手続きなどを行う事業者も不足し、福岡の西鉄エアサービス、静岡のエスエーエスが新千歳に参入しているのですが、それでも地上支援が足りないという事態になっています。
この現実を見た時に、北海道新幹線で国内線の東北、関東方面への便を振り替えることがどれほど北海道の観光に直結し、特に堅調な国際線増便に繋がるかは誰でもわかるはずです。「飛行機が便利だから新幹線は使わないわぁ」という北海道民の事情など、ここには何の関係も無いですし、北海道新幹線より在来線を強化しろという話は全く観光客増加に繋がらないわけです。
毎度言っていますが、航空機の定員以上に輸送しないということは、飛行機の定員が「観光客の上限」であるということです。もっと言えば、1日20便の国際線増便が実現すれば、定員が200人としても4000人北海道に宿泊する観光客を増やす効果があるわけです。もちろん本州から新幹線で北海道に来る観光客はいるわけですが、直行便に期待する国、地域が多い以上、それを取りこぼしているのが現状なのです。
また、国内観光客についても、LCCでも当日は高額になる北海道路線に対して、毎日変わらない運賃・料金で提供する新幹線は「今日行ける」という安心感があります。新幹線には満席でも移動できる手段がありますので、何が何でも移動するという需要に応えることになります。航空と新幹線が相互に補完した北海道-本州輸送ができることで、北海道の強みである観光をよりもり立てることに繋がるわけです。極端ですが、訪日パスを持った人は京都-東京-北海道ですら新幹線で移動することを考えれば、そういう需要すら取りこぼしているのも現状なのです。
現在、札幌市内を中心にホテル建設が相次ぐのは、先に立地条件のよい地域を手付けているという意味があります。それでなくても発着枠の拡大で観光客の伸びが期待できるわけですから現在の投資は無駄にならないという観点もあります。そして、函館地域が新幹線開業後にそういう動きになるのも「札幌との所要時間の短縮」がもたらすわけです。札幌で日中遊んで列車に乗れば函館夜景が楽しめて、函館に宿泊することが想定できるからこそです。北海道の地場企業より先に本州企業がそれをリサーチし北海道でホテルを建設していること。どれだけ北海道の企業はこういう事実に目をつぶっているのだろうとも思うわけです。
北海道が生きる道、JR北海道が生き残る道
この2つの観点から、JR北海道は人員を不足しながらも新幹線と空港輸送に邁進するしか生き残る道が無いわけです。そして、空港や新幹線で到着した客を道内各所に送り届けることも使命の一つです。それならば、鉄道の必要性をもう一段加味して道内の基幹路線網の維持と人員の確保についてもっと真剣に「北海道」は検討しなければならないのではないかとも思うわけです。北海道に到着した客を、観光地、宿泊地に確実に快適に送り届けるという意味で、人材不足に悩むバスでの拠点輸送を一部JRで肩代わりするだけでも、バス側の車両、乗員の走行距離を抑える方向に働きますし、各バスに乗るガイドの人数も抑えられるわけです。そのためにはもう一度鉄道の高速性向上と車両面などでの快適性向上(観光客の利用に耐える新車両開発や観光ガイドのIT面との連結など、いまのJR北海道には遅れが目立つ)も必要になるわけです。
JR北海道問題では「観光客の足である」という意見を言って縮小に抗う自治体も多いわけですが、現実に列車にどのような観光客が乗っているのかも知らず、観光客を乗せる誘導もしてこなかったわけです。広域の観光を司る北海道が音頭を取って、JR問題の解決の一つの方策としての「観光」をもう一度考える必要があると思うのです。これは「観光列車」とは全く違う観点です。日本語の観光案内しか流さないような「観光列車」では意味の無い話です。