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北海道の交通関係
日高線沿線自治体の思いと、国の考え
2018/08/15
なかなか札幌にいては得られない記事を地方新聞が丹念に追うのは有り難い話です。本当はできるだけこういう新聞をお金を払って読者になりたいわけですが、全道全てとはやはり難しいです。ネット上で紹介があるだけでも本当に有り難い。この記事は道新も取り上げませんので、行ったことすら私も把握しませんでした。
日高報知新聞 2018年08月15日
被災護岸の早期復旧など
http://www.hokkaido-nl.jp/article/7301
新冠町大狩部など土砂の流出で沿岸漁業への影響が心配されるJR日高線護岸被害カ所の早期復旧と海岸整備を訴えた国土交通省の要望には、道の窪田毅副知事が同行した。
同省関係局の幹部は「護岸復旧は鉄道を維持するかどうかで要望の仕方や戦略が変わる」(北海道局長)、「海岸護岸として整備するなら交付金。鉄道護岸のままなら制度上は難しい」(水管理・国土保全局次長)、「日高線についてどうするのか。地域の議論はまだ時間がかかるのか。鉄道として復旧するのかどうかを切り離して議論するのは難しい」(鉄道局官房審議官)と厳しい返答が相次いだ。
今まで日高線の沿線では海に面し、法面崩壊などが起きている日高線の護岸について要望を行っています。たとえば
NHK 2017年07月28日
JR日高線周辺の護岸復旧を要望
http://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20170728/5497191.html
高波などで決壊したJR日高線周辺の護岸をめぐり、沿線の自治体が、土砂が海に流出し続け漁業に影響が出かねないとしてJR北海道に、抜本的な復旧工事を要望しました。
JR日高線の周辺では、おととしの高波や去年の台風で護岸が決壊して土砂が海に流出し、JRの応急的な工事が行われています。
新ひだか町の酒井芳秀町長ら沿線自治体の代表は、土砂の流出が続けば漁業に影響が出かねないとして、抜本的な復旧工事を急ぐようJRに要望しました。
要望では、周辺の昆布の漁場は泥を被って成長が懸念されるとか、海のにごりでタコの漁獲量が落ち込むなどの影響が出ているなどとしています。
一方、JRは、抜本的な工事には巨額の費用がかかるため単独で対策を講じることは難しいとしています。
JR北海道の西野史尚副社長は「これまで精いっぱいの対策を行ってきた。今後は国や道の支援を受ける方法についても検討していきたい」と述べました。
北海道新聞 2017年07月28日
日高線の護岸強化を 町村会と期成会
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/122073
日高管内の7町でつくる日高町村会と日高総合開発期成会は27日、昨夏の台風10号などで大きな被害を受けたJR日高線厚賀(あつが)(日高町)―大狩部(おおかりべ)(新冠町)間に、強度の高い護岸を整備するようJR北海道に要望した。
札幌市中央区のJR本社で、新ひだか町の酒井芳秀町長らがJRの西野史尚副社長に要望書を手渡した。要望書は、被災箇所で護岸が崩れて土砂が海に流出し、コンブの成長遅れや、タコの不漁につながっていると指摘。応急措置でなく抜本的な対策を求めている。
要望後の取材に対し、酒井町長は「漁業資源保全のため、きめ細かな護岸対策をしてほしい」と述べた。
西野副社長は約2億円を投じて応急工事を行い、8月中旬に終える予定と説明。「海岸線に線路が敷かれている場合、法令では鉄道会社が護岸を行うことになっているが、これ以上の対策は難しい。皆さんと相談していきたい」と話した。
日高線の被災区間の護岸は「鐵道として復旧するしないとは別に」JR北海道が金銭負担をして護岸工事を行っているわけです。これは、海岸線に面している「私有地」とされる鉄道用地は鉄道側が負担しなければならないわけです。
もちろんこれを沿線の自治体は知っているからJRに護岸を直せと詰めていて、JR側は億単位の費用を出しても「応急復旧」しかできないとしているわけです。実際鉄道を復旧させるとすれば本格復旧を検討せざるを得ませんが、それを自ら拠出するのは難しいとの判断になります。
沿線自治体としては、鉄道の復旧よりも護岸崩壊で漁業被害が出ていることの方が重要ですから、働きかけることになります。JRでは埒が明かないから国に要望することになります。
苫小牧民報 2017年02月18日
日高線の廃線・バス転換方針示す JR北海道が沿線自治体に正式説明
https://www.tomamin.co.jp/news/main/10627/
道の鉄道ネットワーク・ワーキングチーム(WT)がまとめた報告書について、今回の会合で説明した黒田局長は、「日高線がどのような位置付けかは定まっていない。地域の状況や各町長の意向を踏まえ、早急に協議が進むよう取り組みたい」と話した。
JR北は災害復旧を86億円、海岸浸食対策費を含めると100億円を超えると試算している。
ちなみにJRは鉄道の災害復旧と海岸浸食対策費で100億円以上と試算していますから、沿線自治体と北海道が方向性すらまとめない以上、これをおいそれと拠出することはないことになりましょう。元々2015年時点ではこの区間の復旧費用は国とJRが1/3拠出する話でまとまっていたのを沿線自治体がひっくり返したわけですから、国としてみれば「おまえたちが話をすすめなかったのではないか?」という印象を持っているとも思われるわけです。
その上で
●国土交通省北海道局長の
「護岸復旧は鉄道を維持するかどうかで要望の仕方や戦略が変わる」
●国土交通省水管理・国土保全局次長の
「海岸護岸として整備するなら交付金。鉄道護岸のままなら制度上は難しい」
●国土交通省鉄道局官房審議官
「日高線についてどうするのか。地域の議論はまだ時間がかかるのか。鉄道として復旧するのかどうかを切り離して議論するのは難しい」
という3人の言葉には日高線沿線自治体への不快感が表れているとも言えます。「鉄道を維持する」という主張はするものの「JRと国が金を出せ」と言い続ける沿線自治体に対して、結局護岸も含めて自分達に関わることにすら一切負担をしないというふうに聞こえるわけですよね。実際「JR日高線護岸被害カ所の早期復旧と海岸整備を訴えた」わけで、回答は簡潔に「鉄道護岸でなければ補助金が出せる」なのですから。
ただ、鉄道局が「鉄道を維持するなら使える補助があること」は教えて貰わなかったのかは気になるところでもあります。
鉄道・運輸機構
鉄道防災〔鉄道防災事業費補助〕
http://www.jrtt.go.jp/02business/Aid/aid-anzenBousai.html
JR各社が施工する落石・なだれ等対策、海岸等保全等の施設整備工事のうち、その効果が単に鉄道の安全確保に寄与するのみならず、一般住民、道路、耕地等の保全保護にも資する公共的防災事業に対して、補助します。
事業内容
落石・なだれ等対策、海岸等保全等に資する防災施設の整備
補助率
海岸等保全・・・・・補助対象経費の1/2及び1/3
つまり、鉄道局としては「鉄道として復旧を決める」のが前提なら補助の方法があるわけです。しかし、鉄道として復旧することを決めないうちにこの補助を行うことはできない。なので「日高線についてどうするのか。地域の議論はまだ時間がかかるのか。鉄道として復旧するのかどうかを切り離して議論するのは難しい」は、早くどっちか決めやがれという国土交通省の苛立ちが言わせているように見えるわけです。
とはいえ、国土交通大臣は「被災箇所の被害の拡大防止の責務はJR北海道にあり」と明言しているわけでもあります。
衆議院
第196回国会 国土交通委員会 第14号(平成30年5月16日(水曜日))
http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009919620180516014.htm
○石井国務大臣 日高線におきましては、JR北海道におきまして、被災箇所の被害の拡大防止及び第三者である道路や民間家屋等に対する被害防止のために、大型土のうや消波ブロックの設置等応急対策工事を実施するとともに、定期的に沿線の巡回を行い、必要な対策を講じていると聞いております。
被災箇所の被害の拡大防止の責務はJR北海道にあり、国土交通省といたしましては、JR北海道に対し、そのために必要な対策が確実に実施されるよう、引き続きしっかりと指導を行ってまいりたいと考えております。
これでは日高総合開発期成会(日高線沿線自治体)としては、一体どこに言うのが正しいのかという話にもなるわけです。現実的に日高線の被災区間の直上には国道、民有地もあるわけで、このまま浸食が進むことは決して許されるものではなく、JR側も応急処置云々では済まない部分でもあるわけです。
JR側から考えれば、日高線の当該区間を維持すること=いつまでもこの区間に出費が続くという観点があります。当然一刻も早く廃止して手放したいという意識も働く。
日高線沿線自治体の決断力や物事の考え方自体の鈍さも感じますが、国(国土交通省)の鈍さも感じるわけです。せめて、廃止前提ならばこの浸食を離岸堤などの設備を設置し食い止めるという判断をする、または当該区間の線路移設を前提にその後は国有地として面倒を見るなどの何らかの「安心材料」を提供するのもまた国の努めではないかとも思うわけです。
今回要望を行った日高総合開発期成会については特段市町村サイトにも情報がなく、限られた報道と公開資料でしか第三者は判断できませんが、現状はあまりにも誰もが他人事に見えてあまり気分のよいものではなく見えます。