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北海道の交通関係
更に周回遅れなJR北海道問題に対する朝日新聞の社説
2018/08/16
先日8月7日の読売社説と、8月2日の日経社説をいかがなものかと書いたわけですが、
https://traffic.north-tt.com/09_article.php?article=349
今日になってさらに周回遅れな社説を見ることになるとは思わなかったですね。
朝日新聞 2018年08月16日
(社説)JR北海道 地域の足を守るには
https://www.asahi.com/articles/DA3S13637361.html
経営再建中のJR北海道に対し、国土交通省は2020年度までの2年間に400億円超の財政支援を行うことを決めた。人口減と過疎化が著しい北海道で、維持費のかかる鉄道網をだれがどう支えていくのか。
この2年半の間に、解を見つけなければならない。
JR北は16年11月、道内の全路線の約半分にあたる1237キロ(10路線13区間)を「単独では維持できない」と表明した。高速道路網がJR発足時に比べて6・5倍以上に延びるといった環境変化も踏まえ、利用者が少なく構造的な赤字路線の存廃を地元と共に考えたい、との判断からだった。
それから1年9カ月。5路線5区間の311キロは廃止の方針を固めているが、来年4月1日の廃止が決まった石勝線の夕張―新夕張間以外はなお、沿線自治体との協議が続いている。
JR北はかつて、脱線事故やレールの検査データの改ざんなどの不祥事を起こした。その会社が経済合理性をたてに路線廃止を迫ることに、納得いかない利用者は少なくないだろう。
北海道新幹線が30年度に札幌まで延伸するのを見据え、島田修社長は「不退転の覚悟で取り組み、なんとか31年度に経営自立を果たしたい」と語る。年間400億円前後の営業赤字が続く経営をどう立て直すのか。地元との協議を進めるためにも、人件費抑制など経営改善の計画や実績をわかりやすい形で示す必要がある。
自治体や住民も、当事者として知恵を絞りたい。乗り合いタクシーや、乗り降り自由なバスになったら、利便性はどう変わるのか。鉄道を続けるのなら、だれがどう費用を負担するのか。結論を先送りすれば、事態は悪くなるばかりだ。
国もこの機会に、31年前の国鉄の分割民営化のしくみを検証するべきだ。
JR北はもともと赤字が見込まれ、民営化の際に国から受け取った経営安定基金の運用益で穴埋めする構造で発足した。ところが低金利で運用益が半減し、これまでも基金の積み増しや財政支援を受けたが、再生にはほど遠い。
鉄道にどのような機能を求め、地域外の人も含めてだれが支えるのか。JR北という企業のあり方を含めて検討しなければ、時代に合った地域公共交通の新しい姿は描けない。
JR四国も同じような赤字の構造にあり、地域の路線網維持という難題も共通する。地域の足を守るしくみを、根本から考え直す時期に来ている。
とはいえ、まぁ、いくつか引っかかることはあるとは言え、一定のバランスを考えた社説になるのかなとも思います。現実の当事者(地域住民)ではない本州の主筆の考えはこんなもんだろうし、とってつけたような四国の話も本質を理解しているとは思えないかな。
そもそも「赤字」はダメなことか?
各新聞が問題視していることは「赤字」なのでしょうか?単年度で1兆円単位の赤字を出し、7000億円の補助金を得ても累積赤字に対する利払いすらできなかった国鉄時代にせよ「赤字」だけを解消すれば良いって観点だと、路線を維持することもサービスの維持もできないわけです。今回の社説もまた始まったよ的な「人件費抑制など経営改善の計画や実績をわかりやすい形で示す必要」というのがある。要はそこで働く人が不幸になろうが「(路線を維持し)赤字さえ解消すれば良い」という観点が見える。そうじゃないわけです。人件費をどれだけ抑制しても現実に決算上赤字は解消しないのですから人件費の抑制をすれば解決すると思っているのも間違いだし、パフォーマンスで人件費抑制すれば周りが納得するという観点なら「読者はアホだ」と言ってるだけになってしまうわけです。社説という限られた中でも数字を上げて、本来必要な解決策を語ることは必要ですが、天下の朝日新聞様が役に立たない「人件費抑制」というワードで読者をミスリードするのは残念過ぎるわけです。
人件費をパフォーマンスにするのは簡単です。社員一律10%カットします、これを見せしめにして地域と協議します。これで誰が喜び、何の解決になるのか?運行するためには人がいる。生産者人口が減っている以上それなりの報酬が無ければ人は集まらない。ついでに新卒が運転士となり現実的に運行に関わるまでの年数は「給与を払い研修させる」必要があるわけです。現在JR北海道で中途退職者が年100人単位で出ていることはもっと危機感がなければなりません。赤字黒字以前に人員面で運行できなくなる路線が発生する可能性が高いわけです。それを防ぐ唯一の手段は給与面、福利厚生面の充実しか無いのです。「個人の責任感」などの意味不明な根性論で給与を減らして今まで通りなんてことは絶対にあり得ないわけです。
なので、毎度私は「JR北海道を維持せよ」などとは思っていない。本当に地域が鉄道が必要だというなら地域鉄道会社になればいいだけ。そのときに好きなだけ給与を下げればよい。運行が維持出来る可能性は皆無だがね。
朝日社説はまだ
「鉄道にどのような機能を求め、地域外の人も含めてだれが支えるのか。JR北という企業のあり方を含めて検討しなければ、時代に合った地域公共交通の新しい姿は描けない。」
というワードがあるだけ他よりマシ。
本当に必要なら赤字でも支えて運行させれば良いし、誰が出せば良いのかを協議すれば良い。JR北海道が信用ならない会社だというなら排除すれば良い。JR出なければ運行できないということはない。北海道は一時的にせよふるさと銀河線を運行してきた実績があるし、現在もいさりび鉄道に関わっているわけで。
「値上げすれば良い」は本当か?
この社説では触れていないが、朝日新聞は特集記事でもう少し踏み込んだ記事を書いている。朝日新聞 2018年07月30日
岐路の鉄路:経営努力アピール、期限は2年 JR北海道は自立できるか?(上)
https://www.asahi.com/articles/CMTW1807300100011.html
収支を改善する方策はコスト削減と収入増の二つしかない。コスト削減の柱は、利用者が極端に少ない赤字路線の廃止だ。まずは全路線の1割強にあたる留萌線など5路線5区間(311・5キロ)の廃線に向けて、沿線自治体との協議を急ぐ。一方、収入増は、不動産などの「副業」強化のほか、約20年ぶりの運賃値上げにも取り組むという。
値上げは既定路線かもしれないが、値上げについては一定の制限が必要だとも思う。値上げではどうしても収支均衡が取れないのだから「値上げする意味」があるか?という話になるわけで。
JR北海道の平成29年の連結決算。
鉄道運輸収入 728億円
関連事業等収入 1,737億円
営業費用 2,154億円
ですから営業利益は416億円の赤字になるわけです。さて、ここで経営安定基金運用益等310億円がありますので、経常利益106億円の赤字となるわけです。
JR北海道の決算は「経営安定基金運用益」を含めて黒字なら極端言えば鉄道がどれだけ赤字でも「健全経営」となります。ならば「106億円」を何で埋めるか?って話な訳です。いいですか。単純に1列車特急も普通も長距離も短距離も含めて目の前走る1列車あと2万円稼げれば収支は黒字になる。
では、そのために運賃値上げして幾ら稼げるのか?なわけです。札幌駅の利用客数18万人ほどですから、1日札幌駅利用者が200円負担すると赤字が解消できるわけですが、でも、例えば札幌から新札幌や手稲まで今の260円が460円になったら一体誰が使うんですか?って話ですよ。客数を減らす運賃値上げが本当に収支の改善に繋がるのか?はもっと考えなきゃならないわけです。
運賃値上げで確実に減る利用客を考えると運賃値上げは北海道民にJR北海道が本当に危機なんだという「パフォーマンスにしか過ぎない」わけです。改善される金額が現状から考えるとたかが知れてるからですね。
とはいえ、地方では既に鉄道から地元に利用客は離れきっているわけで、運賃が値上げしたところでたいした影響が無い(元々使っていない)というのもあります。多くの自治体が鉄道での移動を推奨せず本数が少ないのでレンタカーがおすすめくらいに観光情報を書いている以上鉄道が運賃を値上げしようがたいした変化も無いわけです。だからこそ運賃値上げは単純なネガティブ報道とパフォーマンスに過ぎないと思うわけですね。
訪日客が使う!けれど
訪日客は北海道で安価に鉄道を利用できます。とはいえ北海道を対象にしたレールパスは日本人向けとそれほど金額が変わらず、JRにとっては収入源の一つとなります。北海道新聞 2018年08月16日
外国人向け乗車パス好調 JR北海道 昨年度10万枚超「海外でもPR」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/218715
JR北海道が販売する外国人観光客対象の企画乗車券「北海道レールパス」の売れ行きが好調だ。2017年度は前年度より7千枚多い10万1千枚を販売し、6年連続で過去最高を更新した。北海道を訪れる外国人客の増加を追い風に18年度も販売は順調で、勢いは今後も続きそうだ。
北海道レールパスの代金は3日用15,000円、7日用22,000円でグリーン車用もあります。
JR北海道
「北海道レールパス」7日間用、「JR HOKKAIDO留学生パス」を発売します
https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2011/110309-2.pdf
ざっと10万枚売れたら15億~20億円ですよ。これは平成20年には1万5000枚しか売れてなかったわけですから、当時から10倍に増えているってことです。北海道民の利用者を減らしても海外からの利用者を増やしている。これが企業努力でなくてなんなのですか?
逆に言えば、鉄道を「使う人」さえ少し増えれば値上げ分の収入は確保できるわけです。だからこそいつも沿線自治体等の乗車促進運動に「ちゃんと切符を買わせて定期的に乗せる」が必要だと私は書いているわけです。
200万札幌市民、500万道民の1割が年間1万円JRを利用したら?20億50億の売り上げなんですよ。逆に言えば、北海道新幹線の話で「期待できない」とか言ってる回答者だって、年に1回新幹線で函館なり東北なり、東京なりに出かけるだけでどれほど改善されるかなんて誰でも想像できる話なんです。
今、JR存廃問題になっている各路線の沿線の方。自覚を持って、どこかへの移動で月1回でも半年に1回でもいい、鉄道を使うだけで輸送密度も駅売上も大幅に変わるんです。オラの町は人がいないから~の「少ない人数ですら効果がある」ことをわからなければいけません。
いいですか?この訪日フリーパスの利用人員は各路線の乗降客や輸送密度データには入ってこないんです。だから他人任せにしないで自分達が使うんだ、観光客も使うんだ、訪日客も使うんだと自分達がまず使わなければなりません。使わない理由だけいくら言っても残せはしません。乗らないなら維持など言わなきゃいいのです。
そして朝日新聞はそういう観点が全く抜けてるから間抜けな社説になるのです。