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ちょっと問題のある記事はこう作られる

2018/08/17

北海道新聞 2018年08月17日
富良野―新得のバス転換運行費、最大2億5000万円 対策協試算
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/219022
 【富良野】JR北海道が「単独では維持困難」とするJR根室線滝川―新得間の沿線7市町村の首長や議会議長による根室本線対策協議会(会長・北猛俊富良野市長)の会合が16日、富良野市内で開かれ、富良野―新得間がバス転換した場合の年間運行費用を1億9千万円~2億5千万円とする試算が示された。
 市町村や道、JR北海道の担当者らでつくる同協議会の事務レベル検討会議が試算をまとめた。
 年間運行費用は、既存のバス路線を乗り継ぐ「既存路線接続案」が1億9千万円、既存路線を一部延長して乗り継ぎを少なくする「既存路線延伸案」が2億4千万円、新規バス路線を設ける「現状踏襲案」は2億5千万円。
 自治体が出資する第三セクターなどが駅施設や路線を所有する「上下分離」方式についても、滝川―新得間の年間経費を24億2千万円とする試算が示された。
 この日の会議には、JR北海道の小山俊幸副社長、道や北海道運輸局もオブザーバーとして参加し、冒頭以外非公開で行われた。出席者によると、協議会は今後、鉄路の維持存続の方針は守りつつ、バス事業者や経済団体など関係機関も交えて生活、観光、物流の3方面から路線の可能性や課題、より利便性の高い公共交通について検討、協議する方針を確認した。(古市優伍)


数字をタダ並べると間違えるという記事です。この記事ではいくつかの数字が出てきました。
●既存のバス路線を乗り継ぐ「既存路線接続案」が1億9千万円、
●既存路線を一部延長して乗り継ぎを少なくする「既存路線延伸案」が2億4千万円、
●新規バス路線を設ける「現状踏襲案」は2億5千万円。

●「上下分離」方式についても、滝川―新得間の年間経費を24億2千万円とする試算

あんまり考えないでこの記事を見ると、鉄道で残す上下分離とバス転換だと10倍の金額差が出るんだなぁ。なんて思いませんか?
よく見てください。
記事の上の方「富良野―新得間がバス転換した場合の年間運行費用を1億9千万円~2億5千万円とする試算が示された。」そう。あくまで3例上がった「案」はあくまでも富良野-新得のもので、上下分離については滝川―新得と全く区間が異なっているわけです。こういう記事を簡単に作っちゃうのが北海道新聞らしいというか、読者を試しているというか、危険な記事なんですよね。

私は記事に関してはある程度信憑性のある数字を入れ込むべきだと思っています。メディアでよく見かける
「大幅な赤字」
とか
「多くの利用者」
なんかも含めて、受け取る側の「想像」によって評価が変わるような表現をメディアはよく行います。

これは世論調査でも時折行われていて、設問が「多額の赤字が見込まれる北海道新幹線の建設に賛成ですか反対ですか?」という場合と「JR北海道の収益改善が見込まれる北海道新幹線の建設に賛成ですか反対ですか?」では随分結果が変わってくるのではないかと思うわけです。

本来はメディアに触れる我々が元の数字を自ら調べて、本当に「多額」なのか、しかも額だけではなく率でも考えなければなりません。よく「年商100億円のセレブ社長」とは言いますが、実際は「利益」が幾ら残っているか?が大事であって、年商100億でも経費がかかれば赤字であってもおかしくないわけです。数字を使っても知識の無い読者を欺すことは簡単にできます。だからこそ読者はその数字の意味や表現についてちゃんと知っていなければならないのです。

「~を求める声が上がっている」
とか
「識者は~」
など、誰が言ったかわからない表現をしているとき、多くの場合、それを発言した人はおらず、記者が勝手にでっち上げたと言っても過言ではないでしょう。記事をよく見ればわかりますが、話をした人が特定される場合は、必ずその人、組織担当などが入るものです。なので、このような記事は最初から怪しいと思っているわけです。記者が「取材すらしていない」で勝手に書いている可能性さえあると思っています。


さて、とはいえ、今回根室本線対策協議会の会合では非公開とはいえかなり突っ込んだ費用の面での話が出たように見えます。今回出された「バス運行費用」はあくまで運行費用ですからこれがそのまま赤字化するわけではありませんが、現実的に流動の少ない南富良野町-新得町と、逆にインバウンドをはじめとする一定の需要が存在しながらも公共交通での移動が不便である富良野-トマムなどの一定のバス路線も検討したと考えられます。

ただ、記事からこの3つの案がどのような区間で検討されたのかはっきり見えない上、この協議会は非公開ですから当然議事録も出てきませんし、沿線自治体の過去のものを見ても何の情報もありません。
こうなると、市民は判断できないわけです。このような中途半端な数字だけが一人歩きして廃線を決められるのは私は納得できません。(私自身はこの区間の廃線が致し方ないとは思いますが、それを決めるのは当然沿線市民でなければなりません)

どの協議会にも言えますが、中途半端な報道だけでしか表に出てこない。「いろいろ考えました」の考えた内容が出てこない。そして、数字に関してはツッコミどころばかりのスカスカなものばかり。こんなものでお前達は協議してるのか?って話ですよ。JRから出てきた資料は一定の正しさはあります。しかし、JRの出す資料はフリー切符やインバウンド向け切符の輸送量を含んでいない。ついでに地元バスの輸送状況、どのような人が乗っているのか、目的地はどこなのか、沿線は調べもしていない。よくそれで「より利便性の高い公共交通について検討、協議する方針」なんて言えるね?って思うわけです。

何度も書いていますが、
●JR北海道が考える「利便性の高い公共交通」
●北海道庁が考える「利便性の高い公共交通」
●地元自治体が考える「利便性の高い公共交通」
●国内観光客が考える「利便性の高い公共交通」
●インバウンド観光客が考える「利便性の高い公共交通」
そして
●地元住民が考える「利便性の高い公共交通」
は違うわけです。その声を拾い集め、検討して、費用対効果を最大に考えるのが「協議会」なはずでしょ。現実は誰も責任を取らずに、「国が」「JRが」と「誰かのせいにして」いるだけの無責任会議なわけです。恥ずかしくないなら議事録出せるはずでしょ。責任ある立場の人が出ている会議で、本当に地域のことを考え協議している会議が「非公開」で済ませる理由が全く理解できません。

その根底に、結局「どうでもいい」が見えるわけです。鉄道なんて自分達は使っていないからどうでもいい。しかし、自分の代で廃線決めたら批判される。だから現状維持で「国とJRが出せば良い」という観点がある。住民の、利用者の、観光客のことを何にも考えていないから、このレベルが未だに通用するわけです。「公開されたら恥ずかしいことを言っているのがばれる」から出せないのではないですか?

報道が無ければ「やってることすらわからない」ような協議会を密室で行って結果だけ出してくる。これは札沼線の協議会でもそうでしたが、そんなもので未来を決めて良いのか?って話です。国会だろうが道議会だろうが議事録は誰でも見れるんです。それが住民に関わる、北海道の未来に関わるような協議すら秘密主義ってどうかしていますよ。

別件ではありますが

十勝毎日新聞 2018年08月16日
10月に大規模集会 根室本線存続を求める会
https://kachimai.jp/article/index.php?no=437942
住民有志で構成する「JR根室本線の災害復旧と存続を求める会」(平良則代表)は10月、新たに実行委員会を組織し、帯広市内で大規模な住民集会を開く。これに先立ち24日午後6時半からは、新得町役場庁舎に隣接する町公民館中ホールで「JR根室本線の存続を求める意見交換会」を開き、今後の取り組みについて各方面から意見を求める。


このような市民団体もありますが、こういう団体も何故自分たちが発信することをしないんでしょう?言いたいこと、やりたいことは全国に知らしめてなんぼなわけです。地方記事にちょっと載るようなことしかしない理由がわかりません。今はTwitterでもなんでもとりあえず発信だけでもできるわけです。

そういう意味で根室市のクラウドファンディングははっきり言って中身の無いスカスカな話で金だけ集めて自分達の町を鉄道をダシにしてPRする非道な内容ですが、発信する、花咲線の現状を知って貰うとっかかりにする意味はあるわけです。発信しないよりはよほどマシなんです。


それにしても根室本線対策協議会で散々検索して出てくるのが「フォトコンテスト」って、皆さんどこの沿線団体もフォトコンテスト好きだけど、なんかフォトコンテストって意味があるの?
列車に乗らない、鉄道に金を落とさないで汽車の写真撮る人集めて、なぜそんなものが「鉄道利用者の需要喚起と沿線地域の活性化を図る」に繋がるのか教えていただけませんか?私には全く理解できないんで。

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