北海道の交通関係

石北線を改めて使ってみたら酷いなと思った話

2018/09/26

先日網走に用事があり、単純に札幌から網走を鉄道で往復してきました。札幌と網走には特急「オホーツク」が2往復運行されており、旭川で乗り継ぐタイプのものも含めれば5往復程度は確保されています。ただ、片道の所要時間は5時間オーバーとなります。

乗ってみたのは札幌06:56発のオホーツク1号。4両の列車に3割程度の客しかいません。旭川までは1時間36分、一般的な特急より10分以上遅く、この時点でもかなりな鈍速っぷりを発揮しています。JR北海道は各方面の特急列車の高速化に力を入れ、札幌から函館・釧路などは4時間を切る高速気動車を運行してきました。火災事故等を受けて現在は減速しているものの、車両は比較的新しい快適なものを提供しています。



しかしながら、札幌-北見・網走の特急列車は現在も寄せ集めた旧式の気動車を使用しています。先日まで函館方面や稚内方面を走っていた、いっとう古い特急用車両は見た目も走りも相当なクラシカルっぷりです。最高速度も抑えられ、カーブを高速で走る機能も無く、座席も以前よりはマシですが、他の路線のような幅広方の座席ではありません。一つだけよいのはグリーン車が展望形のカーブした屋根の肩付近までガラスになっている車両になったくらいです。これも函館方面で使っていたお古です。



旭川を出ますと更に速度が落ちます。手元のGPS速度計で90km/h以上は出ず、カーブでは50km/h程度まで速度を落として走る有様です。旭川から車窓には高規格道路旭川紋別道が併走しますが、全く車の速度にかないません。旭川紋別道は対面通行区間70キロ、分離帯区間80キロの制限が課せられていますが、そんな速度で走るクルマは無く、列車をあり得ないような速度でぶち抜いていきます。

それでも上川まではまだマシで、上川を過ぎると峠道となります。旭川紋別道以前の国道もなかなかカーブのきつい道ですが、高規格道はトンネルで抜いていますのでほぼ直線。走っている人にしてみれば峠を越えたことすら気がつかないのではないでしょうか。

列車は汽笛を鳴らし急停車。鹿と接触したようで、車掌さんが車内を廻り急停車で乗客が怪我をしていないかを確認しています。私も昨年からかなりの頻度で列車に乗っていますが、今年になって鹿との接触当該列車に乗車したのは既に3回を数え、どれだけ鹿との接触事故が多いかという話です。カーブの多い石北線は見通せない先に鹿がいれば列車が確認する術はありません。
急ブレーキを使用すると車輪に傷ができ、異音がするようになります。昨今の車両はこれを防ぐ装置がついていますが、この旧式車はそんなものがありませんので、コトコトと大きく不快な音を立てて走ることになります。これを解消するためには車輪を削り真円にする作業が必要で、それができる車両基地は札幌にしかありませんので、酷い場合は列車を運休して札幌に回送する必要があります。

車窓に旭川紋別道の浮島IC(紋別側への分岐点)が見えたあたりでトンネルに入ります。4km以上ある石北トンネルでこの区間だけが直線で少し速度が上がりますが、トンネルを抜けるとまたカーブの連続。白滝、丸瀬布といった町に入ります。途中住民が居なくなって駅を廃止し、信号場になったいくつかの駅でも速度を落とし、なかなか進めません。

旭川紋別道は瀬戸瀬まで開通しており、その終点を見ると遠軽です。石北線は遠軽から進む方向が変わりますので、3分ほど停車、車内は全員が立ち上がって座席を回転するという光景が見られます。

ここからは石北線のもう一つの難所常紋峠へ向かいます。怪談やタコ労働者の話で有名な常紋トンネルは老朽化が進んでおり。この区間も遅いわけです。遠軽-北見は1時間かかります。これも一般道経由の道路の方が早いほどです。

沿線の大都市北見市。12万人ほどが暮らします。北海道のなかでは「大都市」といっていいでしょう。ここまで列車だと4時間半ほどかかります。高速バスですと4時間40分ほど。本数の多いバスに完全にやられているのが見て取れます。それでも列車からはかなり下車があり、列車はほとんど空のような状態に。ここから網走までは50分ほど。比較的平坦な道のりですが、やはり速度は上がりません。

網走駅は網走の市街地から離れた場所であります。高速バスの終点は比較的街の中に近いバスターミナルになるというのも利便の差を感じます。


ただ、車内で駅弁を食べる楽しみなどがあるのは列車の魅力の一つです。網走にはかにめしなどの魅力的な弁当があります。

このままじゃダメでしょう石北線

石北線がこのような状況で放置された要因をJR北海道のやる気の無さと断罪するのは簡単なことです。しかし、石北線より乗客数や列車本数が少なく、特急すら運行されていなかった宗谷線が高速化事業を行い、車両を新造し「スーパー宗谷」(現在の特急宗谷)を実現したのは20年も前の話です。
石北線もJR北海道が単独で旭川-上川の各駅で駅通過時の速度向上を目的にした軌道改良を行っており。全く手を入れてなかったというわけではありません。
しかし、車両を更新するとすれば1両あたり数億、30両以上の新造が必要な車両入れ替え、カーブ改良やトンネルなどの設備投資を行えるだけの体力はJR北海道には無く、宗谷線道用の北海道、沿線自治体の一定の負担による第三セクター的な事業を行いたかっただろうと思うわけです。

そんななか池北線(池田-北見)の第三セクター化で出資を余儀なくされた北見市がJR北海道への協力、投資を渋ったのは容易に想像でき(宗谷線高速化では名寄市・士別市は投資している)また、現実に道路でも鉄道でも札幌まで4時間以上かかるなら同じなわけで、高速化の必要性ということすら意識が無かったとも言えましょう。そんななか議会だけが「石北線高速化の決議」などという自分達は何もしないが誰かが金を出してオレたちに利便を提供すべきだという意識だけは表に出していました。

今になって路線維持すら危うい段階になって、慌てたところで、そもそも石北線を日常的に使わないということを繰り返してきた沿線にできることは少ないでしょう。

宗谷線高速化に関しては名寄以北は線路を変えずに高速化しています。つまり車両が変わるだけでも大きな効果が得られるわけです。宗谷線の新型特急車両はほとんどが第三セクター北海道高速鉄道開発の持ち物です。同様に車両だけでも更新できれば札幌-旭川ですら10分の短縮、加速と登坂性能の向上で10分は短縮できますので、単純に車両の更新だけで4時間半を切ることになりましょう。それ以上の短縮は線路の改善が必要で、それだけでは効果が出にくいのですが、直線区間の多い旭川-上川・北見周辺だけでも改善できればさらに5分程度の短縮も可能かとは思います。

今のままですと石北線の特急は石勝線のスーパーおおぞらなどの車両更新が終わり、そのお古としての車両が来るまで何の改善も図れませんし、石勝線の特急車両は減速幅が大きく速度改善効果はあまり大きくありません。

石北線に関しても「現状維持」では全く役に立たず、利用者は離れるばかり、かといってJR北海道にできることは多くなく、沿線が「どうなって欲しいのか」をまず出して、それに対してどういう支援が可能なのか、支援したくないのか態度を明確にした方がいい。本来なら全線を高規格化する改革をしなければならないのです。当然それはJRの単独事業にはなりません。

その気概が無く、ただ残すべきだ、国がやるべきだという発言しか聞こえてこないようではこの路線も残らないだろうなと思いますね。

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