北海道の交通関係

「JRの姿勢に疑問」という日高の沿線自治体に疑問

2018/10/11

北海道新聞 2018年10月10日
鵡川-様似の今後 JRの姿勢に疑問 日高線沿線7町長会議
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/236503
非公開の会議では《1》全線鉄路での復旧《2》鵡川―日高門別を鉄路で復旧、残りをバス転換《3》全線バス転換―の3案のうち、特に《2》案で議論が紛糾した。
 鵡川―日高門別間の輸送密度(1キロ当たりの1日平均輸送人員)は、不通となる前、JRが廃止の根拠とする「200人未満」を上回る276人だったが、JRの綿貫泰之常務は「バス転換が最善」との従来の主張を繰り返したという。
 日高町の大鷹千秋町長は会議後、JRのかたくなな姿勢に疑問を示し「JRが国などに支援を求める方針に転換するよう粘り強く働き掛けたい」と語った。


毎度言っているんだけど、日高線に関しては今からでも全線復旧の目はあるの。
2015年11月時点で国とJRが1/3負担して復旧するということでまとまっていて、北海道と沿線自治体が残り1/3を拠出せずで紛糾。このためJR北海道は路線復旧できないとして廃線提案をしたという流れです。
これは私のブログ記事でも何度か指摘している事項で。同様の事例であるJR東日本只見線ではJR東日本が頑なに廃線を提案し、福島県と沿線自治体の粘り強い交渉と50億円以上の負担(後に国の負担割合が見直され27億円の負担。そして上下分離の受け入れで復旧します。

日高線の場合最初からJR北海道は復旧に前向きであり、しかし自社内で復旧費用の全額負担はできず、国と協議し国も負担するという最も前向きな提言をしていたにもかかわらず、地元自治体と北海道が負担を拒否したから復旧しないわけです。

鵡川-日高門別の復旧を行うには線路施設の復旧工事の費用も少なく、信号関係の変更費用など1億円あまりの負担が必要であるとしました。全線復旧にかかる費用に比べれば少ない額で一定の効果があるために、これこそすんなり決まると私は思っていましたが、これに異を唱えたのは日高町以外の他の沿線自治体でした。
全線一括での復旧を唱える沿線自治体から「一抜け」することは認めないという意識です。鵡川は胆振振興局の自治体。日高はえりも町など鉄道沿線に関わらずまとまって動くという意識は見上げたものですが、背景には日高門別までという自分達に利点の少ないものに拠出することを拒否する気持ちが大きかったのでしょう。何をさておいても金を出したくないというのが日高沿線の唯一ぶれない判断なのでしょう。

私は富川高校-日高門別は鉄道と代替バスの重複になる可能性(日高門別での乗換を避けたい)だけは多少の問題になるものの、大きく迂回する代行バス区間の短縮になり、駅設備を改修すれば国道側からも役場側からもアクセスしやすい「駅前」を整備できる日高門別復旧案は各町で当然受け入れられると思っていたものです。
しかし、結果このようになったのは、沿線自治体が本当に困っている利用者に全く向き合おうとせず、鉄道維持やバス維持など交通政策に金を出すことを拒否し、それを他人(国やJR)に依存するという「わがまま」が産んだことであることは明白。

この状態を当然認識しているはずの自治体が「JRの姿勢に疑問」と日高門別復旧を今更求めるのは滑稽と言わざるを得ない。
仮にだ。JRが日高門別復旧を自社で行った場合。日高町だけが復旧地区となり他の町が「ずるい」と更に議論が紛糾することくらい誰の目にも明かだろう。何故日高町まで復旧してオラの町には復旧しないのだ!全線JRが復旧するべきだという日高門別復旧反対運動を起こすのは火を見るより明らか。

本来日高振興局管内全体に関わる交通問題を議論しなければならないなら、日高門別復旧があるかないかで大きく変わる。高速道路ICにも近い日高門別を「ターミナル」とすれば、ここから苫小牧は鉄道で、札幌、新千歳空港は高速バスでという乗り継ぎ拠点にできる。全てのバスを長距離運行しない方法で増便できたり効率化できる方法はいくらか存在できる。そうでなくても代行バスは単純にスピードアップされる。代行距離が少なくなれば同じ台数なら増便すら可能になる。

JR北海道が地震被害があった苫小牧-鵡川を復旧する方針担ったことすら批判しているが、この区間も費用によっては復旧できなかった。その上、まだマシな利用客数があったというだけだ。この区間、バスよりも所要時間の短い鉄道の利点があり、これを廃止すれば代替バスのダイヤは更に組みにくくなる。それも避けたかったに違いない。

国からも色よい返事を貰えないのは、これまでの発言、態度、そして、必要な時に必要なカネを出し渋ったという自分達の問題。国は考える自治体には支援のメニューを出している。先の只見線の復旧が例だ。仮に2015年に復旧できていれば、その後も国は継続して日高線の維持に一定の支援をしただろうと思う。

国が金を出して復旧し10年で廃線した島原鉄道等の過去の無駄遣いの例がある。地元自治体がろくに使わずJRが廃止するようなことがあれば国は拠出を責められる。只見線が復旧するのは福島県と沿線自治体が本気で復旧を考え実践し、金を出すと決めたからだ。そして廃線一辺倒だったJR東日本を動かした。

何度も言うが2015年の段階でJR北海道は日高線を全線復旧するという意思を持っていた。一部マニアがJRは日高線を廃止するつもりだったという無責任な発言をしているが、あの北海道新聞ですらJRが拠出して復旧を報道していることをもう一度調べて欲しい。

北海道の交通関係 JR北海道 日高線

検索入力:

記事カテゴリ