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北海道の交通関係
過疎地域のインフラ維持は相当な覚悟が必要
2018/10/25
先日新聞の宅配制度についても書いたのですが、現実的に過疎地域で新聞配達地域外として郵送配達になっている地域があり、そのコストを読者が負担している例を紹介しています。
新聞が「再販制度維持」を訴え「消費税の軽減税率」を勝ち取ったのは情報の公共性について能動的に取得の意思のある人には国内どこにいても同一価格で提供しなければならないという新聞社の「公共性」が判断されたからです。現実的に郵送料負担や都市部の実質的な値引き販売はあれど基本的に新聞は全国どこで買っても同価格で提供される理由ですね。
例えばどの新聞社も同じ日に新聞休刊日にするのは都市部に住むなら疑問に感じます。各社が別の日に休刊すれば、情報を得られない日が無くなるだろうにと。しかし、地方はそうではありません。基本的に「専売」となっている新聞販売店が他の新聞も扱っている例が多々あります。休刊日が各社違うなら、こういう複数の新聞を扱う販売店は休業できないことになります。
このように既に地方では複数の新聞を扱う販売店があったり、宅配業者も自社では無く委託で配達したりと、「専業」できない状況が出てきています。
昨年国はNTT東日本、NTT西日本に課している「ユニバーサルサービス」の提供義務を見直すことを検討すると表明しました。現在携帯電話も含めた電話加入者はユニバーサルサービス料として数円負担しています。NTT各社の自助努力では地方過疎地域の電話サービスを維持できない状態なわけです。2016年はNTT東西に70億円近くが拠出されています。1電話番号あたり2.36円の負担額になります。現在全ての電話通信サービス利用者は1番号あたりのユニバーサルサービス料を2円から3円負担しています。
このユニバーサルサービスが見直される背景は携帯電話の普及で固定電話が「必須のインフラ」と見なされなくなったということです。固定電話の契約者数も減り続け、今やピーク時の1/3ほどの2042万回線。現実的に公衆電話も多くが撤去されている現状があります。今や携帯電話の圏外地区解消のほうが求められていますが、それは「ユニバーサルサービス」に含まれません。携帯各社が自力で拡張するしか無いのは新規参入事業者には酷な話です。
国が「携帯電話の値下げ」を言い出す背景には、このユニバーサルサービスの減額、廃止も当然に含まれましょう。過疎地域の固定電話を無線サービスに変更できるなら電柱、電話交換設備などの統廃合が可能。インフラ部分を大幅に縮小できるわけです。既にNTT東西は電話サービスの「IP網」への移行を行っています。2024年には全固定電話がIP網で接続され従来型の交換設備を廃止する予定です。そのなかで、IP通信さえ可能なら途中が有線だろうが無線だろうが構わないという観点もあるわけです。
ただ、実際には過疎地域で今でも携帯電話の圏外地域は少なくなく、これをどう改善するかという観点もあります。総務省は携帯電話会社に支援を行い圏外地域解消に動いていますが、その地域からの要望が無い場合もあり、圏外人口は減ってはいるものの完全な解消は難しいのが現状ですし、住民が住むところだけ使えればいい訳でもありません。
郵便・宅配便に新聞の配達も一定の統合を行わなければならない状況になってくるでしょう。日本郵便では居住者がいる交通困難地は公開しています。
https://www.post.japanpost.jp/about/yakkan/1-7.pdf
厚岸町の大黒島は夏季のみ有人らしく、交通困難地として郵便配達地域外になります。ここまでの場所でなくても、集落人口が非常に少なく、採算では全く割に合わない地域は多々あるわけです。それでも郵便料金を全国統一しているのは都市部の利用者にコストを引き受けさせているわけです。見た目の金額ではわかりませんが、郵送料のかなりの金額が「ユニバーサルサービス」に対する料金ではないかと推測できるのです。
郵便集配局の8割が赤字で、の頃2割の集配局の黒字で維持しているということになります。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000372799.pdf
ヤマト運輸が郵政事業の黒字を理由にこのユニバーサルサービスを理由とした日本郵便の優遇(信書扱いなど)を批判していたのはそう昔のことではありません。
http://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/ad/20151112/
結果的に「クロネコメール便」はやめざるを得ない状態になりました。黒字事業であったとしていますが、宅配便リソースの一部を利用したサービスが、メール便専用の車両、人員を確保し全国同一の金額で配達すれば採算が難しいことは明かでしょう。
今後過疎地域の配達に郵便、宅配便各社のリソースを維持しつづけられるのか?その費用を都市部の利用者に転化し続けられるのか?が問われるわけです。これは宅配事業者が信書を扱えるかどうか以前の話です。
交通のユニバーサルサービスはお寒い限りです。鉄道の廃線を大声で反対し続ける層が完全に無視する地方のバス路線の廃線問題は、その土地に住むことができるという生存権の問題です。自家用車がなければ「移動の自由」を担保できないという状況を是としているのは正しくはない。では、その交通網を誰が負担するのか?事業者も自治体も、住民自体も負担できない状況になれば甘んじて受け入れるしか無いわけです。
岡山の両備バスの廃止届提出問題はそれを物語ります。都市部の儲かる路線に新規参入する事業者と、過疎地域を「都市部路線で儲かっているから」と事業者に丸投げしている自治体側、そして、全く乗らないで反対だけを声高に言う住民側の誰も幸せになれない。しかし、現実に企業が倒産しバスを運行できなくなった例も実際にあるわけです。
「突然死」した井笠鉄道
2012年10月12日に報道された「井笠鉄道 破産申立」「10月末日で路線廃止」という岡山県の例です。わずか完全廃止の19日前に公表され、定期券、回数券も11月以降は使えないというものです。通常なら事業廃止は1年前に行わなければなりません。これはこのような定期券などのリスクを回避させるためですが、このように「突然死」されたら住民はなすすべも無いわけです。ここに手をさしのべたのが両備グループだったりするわけです。
都市部でも(逆に言えばある程度都市部であるから乗務員数や車両数コストが大きいことで)このような破綻は起きうるわけです。札幌市内でもばんけい観光バスの破綻問題が起きたのは2008年のことです。札幌市内ですら大手バス会社であっても多くの路線に補助金が拠出されてやっと維持されているのが現状な訳です。
これが過疎地域の鉄道事業、バス事業において「客を増やす努力が足りない」などと書くマスコミや識者は何を知っているのか?って話なんです。ただ、私は以前から言うように客が増えないなりに地域の住民が使っていることが大事だとも思うわけです。地域が使わないものに補助はできないわけです。本来バスの利用をする人が、白タク行為的な自家用車での移動などに移行していっているのもよくない傾向です。それを合法化しようとする一部自治体の取り組みも交通機関の縮減に繋がっていくわけです。
世界最大の(売上高)鉄道会社JR東日本とて、首都圏人口の減少が将来的に確約している中いつまでも過疎地の路線を維持できない。しかし、幹線輸送である新幹線に力を入れてその地域への輸送の担保を通じて地域への輸送を維持しようとしているのはよくわかります。その中で北海道新幹線も自社路線を長距離利用する優良顧客と考えるから東北新幹線の高速化にも力を入れます。それが一定の答えです。
しかし、地方路線そのものは維持できないでしょう。規模が大きい会社だからこそ人員の確保が行いにくくなる中いつまでも地方路線の要員を確保できなくなるのが原因です。それも地方で利用する人が多い路線に優先度を求めるでしょうから、今からでも輸送人員の減少を抑える施策を地元はやらなければならないわけです。JR東日本の路線だから安心と慢心していれば北海道より早く廃止の話が出てもおかしくはありません。
そのJR東日本が東日本大震災の被災路線で代替として走らせているBRT(バス高速輸送システム)での無人運転実験を始めます。BRTは旧鉄道敷きを道路化し他の車両が入らない状況で運行する路線ですから、そういう実験には最適ですし、実用化の可能性も早そうです。この結果次第では東北の各路線のBRT転換も可能性はあるでしょう。
こんな状況で「JR北海道は鉄道を廃止するな」「国は金を出して路線を維持するべきだ」などというのがどれだけ絵空事かということです。積雪過疎地域でインフラを維持するにはどうするべきか、どうシステム化するのかを本気で考えなければならないわけです。