北海道の交通関係

佐川急便・JR北海道の貨客混載事業の背景

2018/10/30

NHK 2018年10月29日
貨客混載 3者連携来年から実施
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20181029/0005208.html
客を乗せる道内のタクシー会社とJRが宅配会社と連携して荷物を運ぶ「貨客混載」の取り組みが来年から始まることになりました。
この3者の連携は全国でもあまり例がないということです。
新たな連携を始めるのは、宅配大手の「佐川急便」とJR北海道、それに、道北の幌延町に本社がある「天塩ハイヤー」の3社です。
取り組みでは、佐川急便が道北で集めた荷物を稚内駅に持ち込み、JR北海道が普通列車に乗せて幌延町まで運んだあと、天塩ハイヤーが家庭や事業所に宅配します。


佐川急便がもつ宗谷地方の配達リソースは稚内営業所、浜頓別営業所のみです。札幌方面からの配達荷物は稚内営業所に一旦集約され、各地へ運ぶ形になります。それも自社だけでは配達が難しく、取次店として地元の軽貨物運送会社等への委託もされています。豊富町がそれにあたりますね。

幌延町は2010年までは留萌支庁管内の町だったわけですが、現在は結びつきの強い稚内を有する宗谷振興局に属しています。佐川急便の配達エリアとして幌延町が以前から稚内営業所管内だったかはわかりませんが、留萌管内にに営業所を持っていない佐川急便は、深川営業所からの配送となり、直接送付のエリア外だったと思われます。
なお、遠別町には取次業者を持っていますので、留萌付近は深川営業所による取り扱い、それ以北は取扱業者(過去には羽幌に業者があったはず)による配達と思われます。

そういう面から見ると今回のJR北海道の鉄道リソースを使った宅配便輸送は稚内-幌延という路線バスの運行がない区間であり、なおかつ幌延町内の配達業務も地元の天塩ハイヤー(幌延に営業所を持っている)に委託することで佐川急便としては大きなメリットがあるとも言えそうです。もちろんJR北海道と天塩ハイヤーも運賃の一部が入ることになります。なお、天塩ハイヤーは幌延に3台、天塩に2台のタクシーを持つ会社です。

これがヤマト運輸になりますと天塩、豊富に営業所があり、留萌経由で各営業所までの路線便で荷物を営業所まで配送する関係上、佐川急便よりは鉄道利用の必要性は薄いことになります。ヤマト運輸の場合路線バスで営業所と集落の間を結び、バスを宅配トラックが待ち受ける形で宅配荷物輸送を進めているのは、営業所を出た集配車を営業所に戻す距離と時間の節約という観点があると思われます。あくまでヤマトの配達員が配達する以上受け取る側は違和感が無く、同じように見える貨客混載ですがヤマトの例と佐川の例は随分違うように見えます。

最大手のヤマト運輸と郵便配達リソースのある日本郵便以外の宅配事業者はどうしても人口の少ない地方に営業所を抱えられず、比較的大きな町から長距離、広範囲を配達するしかなく、従業員の拘束時間が長くなる傾向と、トラックと従業員を長時間掛けて営業所に戻す等のタイムロスから、時間指定を引き受けできないなどの問題を抱えます。そういう意味で佐川急便が地方配達の維持を賭けた試みと言えましょう。

将来的には宅配各社が別々のリソースで配達するというのは過疎地では難しくなっていくものと思います。2009年の日本通運ペリカン便のゆうパックへの事業統合が行われたのは記憶に新しいところです。業界1位のヤマト運輸と2位の佐川急便、3位の日本郵便というシェアは変わりませんが、過疎地域での配達を共同化などの流れになっていく可能性はあると思っています。

さて、別件ではありますが都市部での宅配荷物の受け取りロッカーサービスにJR北海道の駅を指定できるようになります。

北海道新聞 2018年10月30日
JR駅に宅配ロッカー 桑園、琴似、手稲、新札幌に11月から
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/242898
 JR北海道は11月から札幌市内の桑園駅など四つの駅に宅配便の荷物を自宅外で受け取れる宅配ロッカーを設置する。同社の駅への設置は初めて。再配達を減らし、ドライバーの長時間労働や配送車の二酸化炭素排出抑制などに貢献したい考えだ。
 11月1日に桑園、琴似駅、2日に手稲、新札幌駅に設置。ヤマト運輸の関連会社が全国展開する「PUDO(プドー)ステーション」で、ロッカーは荷物が24~26個入るタイプ。
 ヤマト運輸、佐川急便など計4社の宅配物の受け取りが可能。各社の会員制サービスの事前登録が必要で、登録すれば、自分宛てに荷物が発送された時にメールが送られ、受取先を指定できる。また、不在通知をもとに再配達先のロッカーをインターネットを通じて指定できる。利用時間は各駅の始発から終電まで。(徳永仁)


PUDOステーションを使えるのはヤマト運輸、佐川急便、DHL、順豊エクスプレス(中国の運送会社)の4社。北海道ではサッポロドラッグストアの一部店舗、札幌市交通局の一部駅に設置されています。これにJR北海道の駅も加わることになります。

宅配便リソースを悩ませているのは「再配達」の問題も大きく、自宅の宅配ボックスや駅の宅配ロッカーはそれを大きく低減するリソースになります。これは再配達、時間指定の難しい地方こそ導入を進めてほしい施策かもしれません。駅に行けば宅配ロッカーがあり、運行時間中いつでも受け取れる。もう一歩進んで、最初から宅配ロッカー宛てに配送してもらうという方法なら、配達員労力は相当に軽減されるだろうなとも思うわけです。当然駅にそれなりのスペースがあるのが前提になりますが、昨今はキヨスク跡地など広々としたスペースを有する無人駅も多く、JRにとってはいくばくかの場所代でのサービス提供ができるとも言えます。

過疎地はコンビニ受け取りも難しい場合がありますので、駅、バスターミナル、役場、公民館などでの設置拡大は望まれるところですね。なんか、駅に荷物を取りに行くって「チッキ」を思い出しますね。もう死語ですけど。国鉄から手荷物、小荷物輸送を利便性で死滅させた宅配便が、また駅で荷物を受け取れるサービスを始めるというのが面白いなとも思うのです。

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