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ファイターズ北広島移転で地下鉄東豊線はどうなるか

2018/11/07

札幌市営地下鉄についてはいくら市がPRしても、マスコミの恣意的な報道もあって市民に大切なことが伝わっていないのが現状です。

ファイターズの北広島移転に対する地下鉄東豊線の記事にもそれが現れます。

北海道新聞 2018年03月28日
地下鉄2億円減収か 日ハム移転で乗客減 札幌市試算
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/175581
年間乗車人数は最大約117万5千人減り、収入も約2億1400万円減る見通しであることが、市交通局の試算で分かった。減少額は地下鉄の乗車料総収入の0・5%に当たる。


地下鉄東豊線が福住まで開通したのが1994年です。札幌市は地下鉄の輸送密度を公開しています。現在と同じ栄町-福住の区間で通年運行となった1995年度は東豊線だけの輸送密度は119,336人/日。全線の乗車料収入は37,758,707,000円ですから1日平均1億円ちょっとの収入でした。
ファイターズの北海道移転が2004年です。この年は142,059人/日37,178,263,000円です。
では、現在はどうか?
2016年度は152,136人/日41,180,071,000円ですので1日平均1億1282万円となります。
開業時から比較し1日あたり32800人、ファイターズ移転後との比較でも1万人増えているわけです。1日当たりですよ。これは都心回帰での地下鉄沿線の住民数の増加が影響しているわけです。では、オープン戦を含めても年間70日程度の観戦客の地下鉄利用者数は福住駅利用者数、1日平均17,120人/日が約15,000人/日に減るという意味となります。(70試合各日7500人利用と推定。平日デーゲームなどと観客の多い日を平均するとこのくらいになろう)観客が400円程度支払っていたところで乗車料収入の減少は年間2億3000万円程度、全線の乗車料の1%にも満たない数字です。実際記事にあるとおり、交通局は0.5%程度である2億円程度の減収しかないだろうと踏んでいるわけです。
年間2億円の減収は観客輸送の為に行っている増便運行を行わないこと、駅係員の多客対応人件費でほぼ相殺できる数字であり、記事ほどの影響はないはずです。

逆に記事の通りなら、ファイターズ観戦客の地下鉄の分担率は1試合7500人程度しかいないということで、2万人以下しか入らない平日も、3万人以上はいる休日デーゲームを均しても、観戦客の1/3以下しか地下鉄で輸送していないということになります。これは数字に表れていないであろうシャトルバス-地下鉄での輸送を含めても、かなり少ない。既に札幌ドームであっても自家用車での来場客が比較的多いことを伺わせます。

札幌ドームのコンサートなどのイベント輸送は今後もそれなりに発生し、野球モードとのセットチェンジなどで週末を中心に使用できない日を設けなければならなかった札幌ドームに関しては、夏季にイベント開催などが可能になりますので、集客力はともかくこれからも東豊線は一定の利用が見込めますし、もとより沿線のマンション開発なども進み利用客は増加傾向にあることから悲観的な要素はありません。

札幌地下鉄の他と違う特徴

ゴムタイヤを利用し、外を走る区間には着雪防止用のシェルターを備えるなど他の都市の地下鉄とは大きく違う一面を持つ札幌の地下鉄ですが、もう一つ大きな違いがあります。
地下鉄は大きく都市部の移動を快適にする為の鉄道です。日本最初の地下鉄である現在の銀座線にあたる東京地下鉄道しかり大阪最初の地下鉄である御堂筋線しかり都市中心部の利便を供給するための鉄道です。例外的に郊外の団地への路線なども作られていますが、高架構造にするなど「郊外鉄道」としてコストを削減しています。

しかし、札幌市の地下鉄は札幌オリンピック輸送の関係もありますが北24条-真駒内の12kmが最初の開業区間です。都市部の輸送という意味での区間はせいぜいさっぽろ-すすきの程度。あとは「郊外鉄道」なわけです。積雪寒冷地の安定輸送という題目はありますが、本来でいえば、郊外輸送は「私鉄」がおこなうもので、建設費の高い地下鉄での郊外鉄道は利用者数の割に非常に高コストなのです。定山渓鉄道跡地を転用し建設費低減を図った澄川-真駒内の高架区間もシェルターをつけたことで高コストになります。このシェルターは近隣のテレビ受信障害、落雪による建物破損などの補償を交通局が行うということで、今も交通局の財政を悪化させる要因でもあります。

もちろん、札幌は郊外電車を地下鉄として構築したからこそ冬期でも安定した輸送ができるという面は捨てきれません。ですので建設費償還を含めれば地下鉄事業はいつまでも赤字事業となるわけです。現に札幌の地下鉄は運営費ベースでは黒字で、利用の多くない東豊線ですら黒字事業です。乗車料金収入で人件費、運行経費、減価償却費がちゃんと出ています。設備が新しい東豊線は減価償却費が他線より高いことから赤字体質が続いていましたが、それが落ち着いてきたことで黒字ベースになっています。

しかし、車両、設備などの減価償却費、そして地下鉄建設に借金を行っていますので、その企業債利息が年60億円程度、そして企業債残高が今も240億円程度存在します。これをもって「地下鉄は赤字」と言うわけです。

南北線以外が「地下鉄」として建設され、郊外部の高架構造を採用しなかったのは先のシェルターによる日照権も含めた補償問題が大きすぎ、それを避けた結果で、北海道特有の条件によるものです。札幌が温暖な気候であり、なおかつ特殊な車両構造でなければ建設費は相当圧縮されていたともいえます。単純な地下鉄赤字批判はそういう地理的条件などを考慮しない意見ですし、JR北海道問題も含め本州、中央政権が北海道の特殊事情を全く考慮せずに批判することを説明できない北海道の問題だとも思います。

それを考えると、札幌の地下鉄は郊外電車なのだからもっと郊外に伸ばすべきだという観点も出ます。比較的増結、増発余地がある東豊線の清田、百合が原、屯田方面への延伸は今も続く札幌市の人口増加、福祉的に比較的低所得者層が住める住宅の提供などの観点から進める必要があると思います。しかし、歴代市長は地下鉄延伸に否定的です。結果地下鉄の恩恵のない地域は今後人口減少が進み、更に都心部が集積されるという歪な構造になってきます。既存地下鉄にとっては利用客の増加となりましょうが、札幌市という都市の維持で考えると得策ではありません。低所得者がクルマが必要な郊外に住み、都心へクルマで来ることでの渋滞は益々悪化しますし、それが都市機能の麻痺に繋がるわけです。

地下鉄は借金で作り償還していくという構造上民間では運営できない鉄道です。だからこそ、そういう事情をしっかり説明し、都市の利便が高まることは将来の札幌市民に感謝されるんだという未来を見据えた観点で整備していく必要があるのだと思います。
よく聞く「未来にツケを残すな」は「未来に不便を押しつけるな」とも言えるのです。ここ最近の日本の停滞はすべて「今がよければそれでいい」と未来に投資しないツケが回っているのです。

北広島球場輸送 北海道の交通関係 JR北海道 札幌市交通局

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