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JR北海道の線区別輸送密度、収支の発表で思うこと

2018/11/12

JR北海道は11月9日に平成29年度の「線区別の収支とご利用状況について」を発表しました。これは平成26年度から毎年発表されていて今年で4年目となります。それまでは「国土交通省 鉄道統計年報」で路線毎の輸送密度だけは発表になっていました。しかしこの場合区間を区切っていないために比較的利用の多い区間と利用の少ない区間が平均化された数字になるという弊害がありました。

JR北海道
「平成29年度 線区別収支とご利用状況」
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20181109_KO_LineAccount2017.pdf



今回JR北海道は輸送密度の集計方法を変更しています。これは北海道レールパスと大人の休日倶楽部パスの利用者を各路線平均算定から実利用に基づいた算定を行ったとしています。ですので、特に「大人の休日倶楽部パス」では本州から新幹線での来道、函館線、室蘭線周りの特急への利用が多く、道北、道東まで足を伸ばすことは少ないこと。また、北海道レールパスも多くは新千歳空港で引き替え、道央圏、道南圏(洞爺・登別など)への旅行が大きいと思われます。特に道北、道東(釧路や旭川などからレンタカー利用も多いのでは?)の輸送密度への算定がされにくい2つの道内フリーきっぷの算定を変更するのはいささか恣意的ではないかとも思うわけです。

再掲となりますが、比較表は次の通りとなります。

なお、当サイトの「JR北海道各路線の「平均通過人員」(輸送密度)」でも公開しています。
https://traffic.north-tt.com/09_article.php?article=123

減少幅の大きいのが釧路-根室の4割もの落ち込み、また釧網線も随分落ちている印象です。これが先のフリー切符の使用算定によるとすれば、今まで大幅に「盛っていた」とも言えます。
増加している区間は札幌圏以外はニセコ・富良野・トマムというインバウンド客が比較的多い区間となります。これもフリー切符算定によるものでしょう。特に富良野線、根室線の滝川-富良野は大幅に伸びています。これは逆に地元客がほぼ使わず、インバウンド観光客頼りであることを浮き彫りにしているとも言えます。しかし増えたといっても台風で運休の多かった昨年度より伸びただけで一昨年より減っているのですから減少傾向は明かです。

今回の発表はJR北海道が「当社単独では維持することが困難な線区について」を発表した2016年11月以降最初の集計期間になります。本当に鉄道をなくなって貰ったら困ると考える自治体ならこれは一大事と利用者を増やす方策を考えるはずです。しかし結果は全くどの路線も大幅に減らしただけです。住民に利用を呼びかけるわけでもなく、発表内容を広報等で知らせることも無く、ただ「JRは唐突に突きつけてきた」などと言っているだけ、協議会が開催されても単純なJR糾弾大会を開き、未だに協議どころか国がJRが~と戯言抜かしてる結果がこれです。悔しかったら減少幅抑えるくらいして見なされって話です。

北海道新幹線に関しては予想通りで、以前の海峡線並の輸送密度が出ている以上問題は少ないと見ます。北海道新幹線の対象とする地域が函館圏だけになっていることから、これが需要そのものです。札幌延伸までこの数字を一定維持できればよいし、収支の観点で言えば青函トンネルの維持費用をここに付けざるを得ませんので「98億円の赤字!」は取り立て騒ぐようなものではありません。そもそも路線収支を出している新幹線路線は他には無いわけですから比較しようもないわけです。逆に数字的には今の倍程度、輸送密度1万人レベルで収支がとんとんになると思えば札幌開業時の一定の収支改善(黒字化)は約束されたようなものです。もちろんこのままでいいとは思いませんが単純な赤字額だけで叩くのはよくないですね。

札幌圏の赤字についても考えます。新幹線もそうですが、札幌圏の赤字は減価償却費の問題があるわけです。車両や設備を更新すれば資産が増え、それを毎年償却計上する必要があります。その額が大きいのがこれらの線区の赤字要因です。そして、札幌圏の設備を地方からの車両も使うわけですし、企業としての管理部門は札幌にあるわけです。路線規模縮小などが続けば当然札幌の設備もスリム化します。要は利用者数で割った赤字額が少ないなら優秀なわけですね。

なので私は基本的に赤字額も営業係数も重視しません。見るのは輸送密度や駅利用者数そのものです。赤字額が多くても利用客が多いなら1人あたりの赤字額は微々たるものになります。それこそ少しの値上げで黒字化できる。しかし、地方の1人あたり数千万の赤字ですともう値上げしようが何をしようがどうやっても赤字を解消できませんし、現実的にその赤字を企業が持つことはできません。

これを放置して包括的な赤黒だけで議論していたのが国鉄です。「分割民営化の結果だ」とかいっている「識者」はそういう観点が全く無いのです。国鉄時代に一般に路線収支を公表せず輸送密度と「営業係数」だけを公表して赤字だ黒字だやっていたことが判断を誤らせたわけです。赤字であっても「利用があるなら」鉄道は残すべきですし、たとえ黒字であっても利用が少ないなら鉄道である必要がないのです。まして高赤字低利用では「判断」すらいらないわけです。

ただ、個人的に言えば、分割民営化は地域交通と広域交通に分社した方がよかったようにも思っています。同じ線路を貨物同様線路使用料負担で走る広域交通鉄道会社は全国一括、航空会社のようなものです。これなら会社境界がどうのなどの面倒くさい方式を考えなくていい。そして、地域交通は当然その地域が自前で維持する形になります。線路使用料は入ってきますので設備は維持できる。しかし、普通列車のような地域だけで使うような列車は当然地域で維持する必要があります。

JR北海道問題で各自治体が単純に反対しているのは地域内の通学など「狭い地域の問題」を全国的にしているだけです。本来地域内の交通は鉄道にせよバスにせよその地域内で解決できる問題です。札沼線廃止区間や留萌線に必要なのは地域内交通ですから、その地域だけで議論できる話です。国が~とせびる必要は本来ありません。

もうすこし広く、札幌や新千歳空港との交通という「全道」という観点では北海道庁の出番なはずです。どの地域とをどのような交通機関で結ぶかを考えるのが北海道の役割です。

そういう意味では

北海道新聞 2018年11月10日
護岸崩落「解決目指す」 高橋知事、JR日高線で方針
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/246828
知事は具体的な支援策は示さなかったが、高波で崩れた線路脇の護岸については「道が中心になって解決を目指さなければいけない」との考えを示した。


苫小牧民報 2018年11月10日
高橋知事、被災護岸の復旧に意欲 沿線7町長と意見交換会-JR日高線
https://www.tomamin.co.jp/news/main/15052/
日高町が求めている鵡川―日高門別間の運行再開を実現した場合、JR北海道が沿線自治体に運行経費などの負担を求めていることについて、「(私の町では)負担できない」との意見も出た。


という北海道知事の発言はズレすぎていますし、日高門別という極小さい地域の話は地域で判断することで、国が道がというのは間違いな訳です。

北海道知事が考えなければならないのはJR北海道がどうこうよりも、道内の交通をどうするかという観点です。赤字でも動かさなければならない交通機関、そして黒字でもやめる(事業者に丸投げする)交通機関を考えなければなりません。
10年内に日高をはじめ人口減少地域では高速バスも残れない地域が出てくるわけで、そのときまた騒いでも遅いのです。

逆にJR北海道は単独での維持可能とした区間をいつまで維持できるのかを出さねばなりません。先の札幌圏での輸送障害は「札幌圏に優先投資できない」結果です。鉄道は装置産業ですから札幌圏のそれなりの人数が乗る路線も、地方の乗らない路線もそれほど維持費用に変化はありません。だからこそ札幌も地方もと維持費用を出す必要がある。しかしそれでは重要な札幌圏でこのような事故を起こす可能性が高いわけです。
本来札幌圏で重点投資するというようなメリハリが批判されようが必要なわけです。JR西日本の閑散地区の徐行による設備不良箇所の修繕先送り、廃線直前のマニアが集まる状況ですら増結もできないという状況は批判はありますが正しいわけです。

よくJR北海道はJR東日本に合併するべきという話、札幌圏に近い輸送量のある路線でも本数は半分以下、例えば千歳線や札幌-小樽は内房線蘇我-君津、川越線より少ないわけで、いずれも日中の本数は昼間時間3本程度ですよ。このレベルになれって話になりますし、逆にこれらの路線の方々は千歳線並みの本数と快速サービスがあってもいいはずなんです。現実には首都圏の列車であっても、都心の利便の高い地域以外はJR東日本の路線は利便性が高くは無い。それは大幅に需要が減って、JR北海道の地方路線以下に利用が減少している東北等のローカル線を維持することを是とされているからです。

もし、JR北海道の路線維持を前提にJR東日本がJR北海道を救済したなら、首都圏ですら減便を受け入れて貰うほかありません。そして札幌圏は列車本数半減です。地方は何も変わりません。もしかすると車両が新しくなるかもしれませんし、観光列車も走るかもしれません。しかし、それは日常の利用の多い路線の犠牲の上に成り立っているものです。そしてそれを最も色濃く行っていた組織が「国鉄」だったことを忘れてはならないのです。そして国鉄時代の札幌圏への無理解(東京視点でいう北海道への投資を不要とする観点)による列車本数や貧弱な設備。それが今のJR北海道の苦悩に繋がっているのです。北海道は少なくとも青函トンネル開業時には新幹線が札幌まで開業していなければならなかったですし、札幌圏の線路高架は札幌オリンピック近辺には行われていなければならなかったのですよ。札幌高架駅開業30周年ってJRになってからやっと札幌にまともな鉄道投資が行われたということを時の政権も北海道選出議員も、歴代北海道知事も恥じなければならないのです。

JR北海道の歴史は地方の利用客が減ることが前提で札幌圏で売り上げるという策しかなかったわけです。結果がJRタワーもそうですし、札幌駅の利用者数でもあります。そして新幹線駅を「大東」などという場所にできるのも札幌駅東側がろくに投資されていない古い施設がそのままだからできることでもあるのです。札幌駅周辺はあらかた投資してしまったわけですから。そしてその投資が実際にJR北海道の不動産業としての屋台骨になっているのです。そこを理解せずに批判してはならないのです。

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