北海道の交通関係

人手不足による「減便」は都市部から始まる

2018/11/13
さて、JR北海道問題などの議論では「地方」の路線維持が~とか減便に反対!とかいう議論はよく聞こえてきます。

しかし、今後起こる人手不足による減便は「都市部」の路線から始まるということを書くメディアも識者も少ないのが現状です。

単純に考えましょう。1人の運転士が田舎のローカル路線を運行するとします。札沼線の末端部のような車両2両で朝と夕方何往復かするような路線。必要な運転士は朝2名、夜2名の4名です。それに2人で午前午後交代する駅員氏、石狩当別にある保線設備は以南とも共通の方なので、減員があったとしても微々たるものでしょう。列車運転の信号設備などの要員も札幌ですし、石狩月形駅の駅員氏はその先の運行の信号などを扱う要員でもあります(そのため無人化されず残っている)
この路線を廃止したことで捻出される乗務員、駅員の数は交代要員を含めてもせいぜい10人程度。逆をいえば既にその様な最小限の人数で運行を行っていたわけです。(もちろん保守要員、除雪要員、駅維持管理などを含め、鉄道はバスよりも非常に多くの人員で運行されている。ここではあくまで直接的な運行要員として記載する)

現在JR北海道の職員が100人単位で辞めているという報道もされています。

 

北海道新聞 2018年03月28日
JR北海道、赤字最悪179億円 新年度計画 土地売却益が減少
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/175563
>17年度の離職者は16年度を20人ほど上回る約120人程度になる見通しも示した。

仮に100人単位の退職が進み、乗務員の確保ができない場合、全体の乗務時間は当然超過できません(すでに超過勤務で廻している現実もある、歴代の社長が自殺したのも36協定違反の問題)できることは「減便」しかないわけです。

このとき地方路線を1便減便しても乗務員1名を捻出できるかという話になりますし、その1便が通学列車であるとなれば廃止しにくいことになります。
しかし、札幌圏列車で一定の便数を減便すれば、少なくとも運転士、車掌の2名を捻出でき、それを各線毎に行えば10人単位で捻出できることになります。しかも、列車本数は減るものの、運行間隔が開くだけで列車が無くなるわけではありませんから、影響は最小限に抑えられることになります。

実際にはこれをされると車内の混雑も増えますし、いいことは全く無いですが、地方より影響の少ない都市部の列車から削減される可能性が今後は増えていくわけです。日中でも同じような時間に快速と普通列車があれば普通列車に集約するなど、今後運行コスト削減目的より乗務員確保のための減便は行われるでしょう。

保守に関しても、影響の少ない日の日中の運行を中止による線路保守のようなこと(細切れに列車を通しながらの線路保守は非常に時間と手間がかかる)も行われるだろうと思います。JR西日本が以前から行っている方式です。今まで影響が大きいためJR北海道ではこの方法を取っていませんでした(比較的日中の列車本数が少ないこともあろうが)

路線バスに関してはもっと深刻です。地方路線の廃線、減便は幹線系統ですら進んでいる状態です。休日にはほぼ便がないという地域も今では珍しくありません。
それ以上に札幌圏でも「幹線」系統であった路線でも終車繰上、減便が進んでいます。複数の系統があれば1系統に集約されているのも見かけます。これはバスは1人の運転手が運べる人数が少ない労働集約的産業でありますので仕方のない面もあります。

特に今後札幌市内でも比較的長距離を走る都心直通路線を地下鉄駅に集約する動きは増えていくものと思われます。路線距離が長くなれば遅延リスクが高まり、一人の運転手が運べる人数が減るという面があります。都心まで1往復する間に、地下鉄駅までの短縮運行なら2往復から3往復できるなら、その方が利便が高いわけです。
また、地下鉄駅発着路線でも集約が行われることになりましょう。地下鉄乗車距離が短い路線は地下鉄駅に接続するメリットが少ないことから廃止、減便が進みそうです。
将来的には「幹線系統」を連接車など1便当たりの乗車人数を増やした形にした上で減便せざるを得ず、地下鉄駅以外にも「乗り換え拠点」を儲ける新潟BRTでうまくいかなかった方式も検討せざるを得ないでしょう。

どのようなインフラでも「地方」なら残すべきだという声が大きくなります。たった一人の高校生が使うから、集落の老人5人が通院するのに必要だから。そういう気持ちはわかりますし、残せるのがベターだとは思います。しかし、その反面影響の大きい都市部のバス路線の廃止、インフラの縮小に無頓着です。代替策がいくつかあるからいいという意見、都市部は利便を得ていたんだからいいという「識者」は都市部の小さな声を無視し、地方の大声を上げる意見に寄り添います。

夕張が鉄道廃止で「幹線」だけバスを残し、あとはデマンド輸送で交通再編を行う方法が必ずしも良いかは検証が必要でしょうが、今のまま全ての集落にバスを残してもバス会社の体力と人手では維持できないのは明かです。自治体補助金財政にも制限があり、鉄道は老朽施設を多く抱え運行の継続が難しい。今このタイミングだから鉄道廃止を前提に交通網を再編するための人材と資金ををJRから得て、幹線にバスを集約し、その赤字費用新車購入の費用もJRに負担させ20年運行できる確約とデマンド路線などの運行について総務省など国への協力まで取り付けてきた市長の動きはお見事だと思います。いくつかの方法を検討し、これがよいと決断することそのものが他の自治体ではなかなかできていないわけです。

これは将来都市部である地域でもどこかで決断しなければならないでしょう。バス会社が並行した路線を作り客を取り合う時代はとうの昔に終わっています。あの旭川ですらICカード乗車券は共通化しているわけです。札幌も地下鉄・JR沿線以外にどれだけ交通網を維持できるかは未知数です。都心直通路線が最も安価な運賃だからこそ反対は起きますが、その運賃を維持できないところに来ているわけです。反対意見が多い中新札幌や宮の沢で乗り換える形にしたジェイアールバスがその例です。
しかし、地下鉄終点が福住という中途半端な場所になっている豊平区・清田区方面では以前に比べれば減ったものの、いまも直通バスを多く走らす必要がある。せめて清田区役所あたりまで地下鉄があれば相当にバスの集約ができるのですが、それができない以上バスの乗務員が確保できなくなっていけば減便を受け入れざるを得ません。

先日の記事でも書きましたが地下鉄、JRとて満足な便数が動かせられるのかは今後はっきりはわかりません。その状況は札幌市の人口減少より速いペースですから、郊外に住む札幌市民、周辺市など札幌圏の交通から不便になっていき、そしてクルマ利用が増え渋滞がどんどん悪化していく。どこかでこの流れを断ち切っていかなければならないのです。東豊線開業前豊平区方面から都心へ通勤していた人がよく覚えているであろう豊平橋の渋滞。あの時代から橋の数はそれほど増えていません。交通網を維持できないということは都市生活に多大な影響があるという観点が「識者」や「マスコミ」に少ないと思うのです。

今議論しなければならないのはバスやタクシーという小回りのきく交通機関で済む地方の足より、今目の前にある危機である都市部の交通網の確保なのです。

カテゴリ: 北海道の交通関係 JR北海道 札沼線 路線バス 人手不足

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