北海道の交通関係


北海道の交通関係サイト終了のお知らせ

当サイトは終了することといたしました。本件に関しましては以下をご確認ください。
当サイトは2023年12月末で閉鎖することといたしました


花咲線クラウドファンディング事業は花咲線の維持には逆効果では?

2018/12/05

北海道新聞 2018年12月05日
花咲線、全国から3億円 ネットで募ったら目標の9倍 ふるさと納税2万人協力
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/254761
 【根室】JR北海道が「単独では維持困難」とする花咲線(釧路―根室)の存続と魅力発信を目的に、根室市がふるさと納税の制度を利用してインターネット上で寄付を募った「クラウドファンディング(CF)」で、目標の3331万円の8・94倍に当たる2億9778万円が全国の約2万人から寄せられた。市は「これほどの応援をいただき驚いている。魅力ある路線と再認識した。有効に寄付金を使いたい」と話す。
 市は本年度、集まった寄付から当初の目標額3331万円を活用し、花咲線をPRする動画作成と特設サイト「地球探索鉄道 花咲線」の開設などに充てた。10月に公開された動画は再生回数が68万5千回に上る人気だ。残りの寄付金は基金として積み立てて、観光ツアーの誘致や特設サイトの充実など沿線の活性化に役立てたい考え。市の金田真司総合政策部長は「2万人以上から寄付をいただき、大変励みになった。これからも花咲線の魅力を全国に知ってもらい、維持存続につなげたい」と話す。


この詐欺まがいのクラウドファンディングが3億円も集められたのは凄いことだが、コメントを見るとこれだけ集めたのにJRは廃線するのかくらいな明後日な話を見るし、これによって廃線が回避されるような論調も見るので、このクラウドファンディングが一切「路線維持」には使われないということは伝わらないし、多くの人が釣書だけに惑わされて、これが何に使われるのか、何に使われたのかにはそれほど興味が無いのだなとも思うわけです。

以前にこの件については記載しましたが

North-tt
花咲線「観光列車」と摩訶不思議な沿線自治体の「資金調達」
https://traffic.north-tt.com/09_article.php?article=279


まず、このクラウドファンディングの使途を確認してみます。

ふるさとチョイス
日本最東端の鉄路「根室本線花咲線」を守ろう!~美しい大自然が織り成す絶景、海と大地のグルメ路線~
https://www.furusato-tax.jp/gcf/312
■ご支援いただいた寄附金の使い道
花咲線の魅力化の取り組み 33,311千円
・人気写真家による絶景ポイントの掘り起こし
・花咲線PRムービーの制作
・花咲線ウェブサイトの構築、運営
・その他普及促進活動、満足度及び魅力度向上のための事業
※いただいたご寄附は、根室市ふるさと応援・公共交通維持安定化基金に積み立てし、活用させていただきます。


まず、最初から「根室市ふるさと応援・公共交通維持安定化基金に積み立てし、活用させていただきます」となっています。その具体例が写真家、PRムービー、ウエブサイトなどとなるわけです。

「根室市公共交通維持安定化基金」とはなにか

根室市
根室市ふるさと応援基金活用事業一覧
https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/material/files/group/3/H30_katsuyou_ichiran.pdf
根室市ふるさと応援・公共交通維持安定化基金事業一覧
中標津空港利用促進事業 12,196
生活交通路線維持対策事業 32,460
根室本線花咲線維持確保対策事業 33,311 (千円)


7千万円以上がふるさと納税から寄付されましたが、そのうち花咲線に関わる項目に使われたのは3,331万円ということになります。つまり、当初予定されていたクラウドファンディングでの調達予定額3,300万円分だけを花咲線関係に使い、残りを花咲線とは特別関係ない中標津空港利用促進事業(これは中標津空港-根室の路線バス維持補助金として支出)と生活交通路線維持対策事業(根室交通釧路線、納沙布線、花咲線、厚床線、公住循環線、西浜線への補助金拠出)に使うとされます。

なお、平成29年度のふるさと納税での交通関係の支出は0です。空港バスや市内路線バスの補助金は「花咲線維持とは一切関係がありません」ここはあくまでもクラウドファンディングで3300万円入るという前提の当初予算ではありますが、この町は自分達で拠出しなければならない予算すら他人の懐に頼っているのか?という話です。

北海道新聞 2018年05月31日
花咲線PR、ネットで資金調達 写真撮影やPV制作 根室市が31日から募集
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/194587
【根室】JR花咲線(根室―釧路間、135キロ)の魅力を発信し利用促進につなげるため、市はインターネットで寄付を集めるクラウドファンディング(CF)を6月1日から始める。有名写真家による沿線の絶景写真撮影や、プロモーションビデオ(PV)の制作などを行う。11月末までに事業費約3300万円の調達を目指す。



根室本線花咲線維持確保対策事業とななにか

さて、それでは3300万円確保された花咲線維持確保対策事業としては以下のことを上げています。

根室市
根室市花咲線普及促進活動助成金
https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/kakuka/sougouseisakubu/sougouseisakusitu/chikikoutsuu/5632.html
助成対象事業
助成対象事業は、市長が花咲線普及のために利用促進や魅力向上等につながると認めた事業とし、予算の範囲内で助成対象事業費の全部または一部を助成します。
ボランティア活動事業(駅前の除雪、駅内外の清掃、美化活動)
・ビニール袋、スコップ等の購入費
・花や苗木等の購入費
花咲線普及イベント実施事業(シンポジウム、フォーラム、花咲線を利用し
たツアー、フォトコンテスト、駅構内展示会、駅舎等の見学会、花咲線沿線マップの作成)
・ポスター、チラシ、しおり、パンフレット、マップ、のぼり等の作成費
・講師、司会、ガイド等の謝金及び旅費
・会場借上料
・花咲線の普及啓発物品代金及び作成費


平成30年度の予算は40万円です。元々これだけしか花咲線に関する補助は無いのです。

で、今回3300万円という最初から予算を組まれて最初から「PR動画・WEBサイト構築・運営」という拠出先が確約した形で、それを市が負担したくないという一心でクラウドファンディングという形で公募したのではないかとも思えるわけです。

根室市
平成30年度花咲線利用促進PR業務委託に関する公募型企画競争の実施について
https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/kakuka/sougouseisakubu/sougouseisakusitu/chikikoutsuu/5451.html
委託料の上限額
32,724千円(消費税及び地方消費税含む。)


つまり一括での委託です。同一の業者でムービーとWEBを取り扱え、ロゴなどの作成も含めた包括的な委託ですので、地元事業者や北海道内事業者があまり視野に入っていないということになります。ドメインの持ち主もお名前.comですし、最初から市が主体的に関わる意識は無いといえそうです。

サイトにあるここの内容に根室市が主体的に関わったようなものは皆無。観光列車はJR北海道単独事業、北海道銀行のPR動画放映も中学生による駅舎清掃も。なにもかも「市はなにもしていない」を表に出しているわけです。

はっきり言いますが、根室市は市のPR事業にすら市の金を惜しみ、「花咲線」というネームを使い金を集め、自分達が一銭も負担すること無く廃止反対だけを言い続けられる「活動資金」としてクラウドファンディングを使ったわけです。さらに市内バスや空港連絡バスの補助金にすら流用。3億円あればしばらく交通行政に対して市が拠出する必要がないわけです。

多くの人が純粋に花咲線を無くさないために何かできることはないかと少なくない金をこのクラウドファンディングに拠出しました。その数2万人以上です。しかし、この3億の金は1円たりともJR北海道には流れません。また、観光列車の取り組みにも活かされません。これはクラウドファンディングとして金を出した人の気持ちに一切沿えてはいないわけです。

根室市が来年度このクラウドファンディングで得られた金額を花咲線への支援に回すかきちっと見なければなりません。

なにより「地球探索鉄道 花咲線」というタグでSNSを使うようWEBで書いていてTwitterアカウントには何の情報もない。
https://twitter.com/hanasaki_line
こんな誠実では無い対応を見る限り、根室市も本心は花咲線なんてどうでもいい、別に花咲線は使わないし、あれば誰かが使うんじゃね?レベルのことしか考えていないのは明白です。

ついでに言えば、根室市も他の市町村同様「1円たりとも鉄道路線維持には使いたくない」という意識だけは共通です。まだ形として鉄道を意識づける観光PRをやったというだけマシなだけ。根底には鉄道には1円たりとも出したくないというスタンスが透けて見えるのです。
先日の国からの「地元支援見送り」もそうですが、そういう意地汚い市町村を既に見限ってるのですよ。本気で維持を訴える地域には金を出すのです。そのための法律も存在するのです。こんなレベルの「維持への訴え」は市が金を出さないという意味で逆効果でしか無いでしょう。

クラウドファンディングに協力した方々、自分の金の行方に敏感になりましょう。そして自分の意図とする使途ではなかったら文句を言う方がいい。2万人の声は市を動かすことができるはずです。あなたがた欺されてたんですよ。


追記

根室市は花咲線名目の寄付金については別枠にしており、バス維持関係には流用していないとのご指摘を頂戴していますが、結局「何に使ったのか?」を明確に公表していないのは変わりません。

根室市
寄附金の活用状況
https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/kakuka/sougouseisakubu/shousikataisaku/16/879.html





ならばこのような書き方は不親切です。
私が調べた上でそう思う。別枠だといいながら、同枠でしか書かない理由、そして細かな使途について記載できない理由はなんでしょうか。
バスには使っていませんよ。では何に使ったんですか?私が知りたいのはそれだけです。ふるさと納税は一定のこの程度の使途報告でもいいかもしれませんが、クラウドファンディングはもっと細かい使途を出さなければならなかったんじゃないでしょうか。その成果物が動画やWEBサイトだけで、それに億単位がかかってるわけではない。詰みあがった部分を「何に使うのか」をどう考えているのかをある程度出さなければならないんじゃないですか?

ふるさと納税なら例えばそういう項目が一つでもあれば、喜んで寄付する人は増えます。むしろ、そのあたりがはっきりしないから返礼品目当てで、その中で使途が花咲線ならいいかなぁという方を集められているのは、根室市にとってはいいことですし、寄付者も満足もでき、返礼品も受け取れます。しかし、それは返礼品が他と比較して落ちれば急激に寄付者が減るという問題が出てきます。

寄付をする方が、根室市は花咲線に対して「こんな素晴らしいことに使っているんだ!」と喜んで寄付ができる。それが目指す方向だと私は思いますが、市はそうは思わないのでしょうか。


(2021年7月7日追記)

朝日新聞 2021年07月06日
幼稚園児が「初めての鉄道旅」 苦境のローカル線をPR
https://www.asahi.com/articles/ASP7646PNP75IIPE00P.html
>  根室市は花崎線の存続に向け、ふるさと納税の仕組みを使ったクラウドファンディング(CF)で集めた寄付金で、PR冊子の作成や首都圏での広告などを続けている。CFは2020年度、目標額200万円の25倍以上となる5073万円を集めた。
園児の乗車体験は、寄付金から市が計138万円を助成して実施する。


クラウドファンディングの寄付金の使い方として地元幼稚園児のJR乗車体験の試みが報じられました。こういう試み自体はとても素晴らしいので、このような直接JR北海道の利用促進になった使途を是非紹介して欲しいのです。ここでの支出はわずか138万円。昨年度の寄付金からすれば恐ろしく少ない金額です。では、他に何に使ったのか?を知りたいんですね。

北海道の交通関係 JR北海道 路線バス 観光列車 花咲線

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